津田実の発言 (法務委員会)

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○政府委員(津田実君) ただいまの御質疑の点でございますが、新聞にも報道されておりましたと思いますが、この法律案立案の過程、同時にこの法律案の関係する補正予算の関係におきまして、行政府内でいろいろ討議をいたしたことは事実であります。この法律案が定まりますれば、当然それに見合う補正予算は定まるわけでございますので、問題は、法律案の関係において御説明を申し上げます。御承知の通り裁判官の報酬等に関する法律には、第十条の規定がございまして、一般の政府職員について生計費及び一般賃金の事情の著しい変動によりまして、その俸給その他の給与が増額される場合には、裁判官についても一般官吏の例に準じてその報酬あるいは給与を増加する、こういう規定でございます。そこで、今回の人事院勧告に基づきまして政府が決定いたしましたところの一般職につきましての増加は、人事院勧告の趣旨に従いますると、まさしく一般賃金事情の著しい変動、若干部分生計費の変動もあります。主としての部分は一般賃金事情の著しい変動にあるわけであります。従いまして、この点につきましてはもちろんいずれも異論はなかった。そういいたしますると、当然裁判官報酬法の十条が適用されるわけです。十条と申しまするのは、これはこの報酬法ができました当初から存在する条文でございまして、この規定の趣旨そのものは、何と申しますか、文義上はやや明確を欠く点がございますけれども、この法律案の当委員会におきましてと申しますか、参議院の法務委員会におきまするところの御審議の経過等にかんがみまして、しかも、この法律案が政府提案より若干修正された点から考えますると、要するに「別に法律の定めるところにより、裁判官について、一般の官吏の例に準じて、報酬を増加する」ということは、これは立法に対する拘束の趣旨を表わした法律であるという趣旨に解釈せざるを得ないわけであります。このことにつきまして、立法の拘束を政府は受ける、こういう観点のもとから、裁判官報酬法を改正する必要が出てきたのであります。そこで第十条の解釈といたしまして、「一般の官吏の例に準じて」ということは、いかなることを意味するものであろうか、こういうことであります。これにつきまして、この準じ方の問題について両論があり得る。こまかく言えばいろいろ議論があり得ると思いますが、大きく分けますと再論があり得るわけです。その一つは、「一般官吏の例に準じて」ということではあるが、この法律の当委員会における修正の経過を考えますると、もとは、「別に法律の定めるところにより、」ということではなくして、一般官吏につきまして生計費及び賃金事情の著しい変動があれば、自動的に最高裁判所はこの報酬を増加することができるという趣旨が政府提出原案の趣旨であったわけであります。そうしますと、自動的にできるということは、すなわち最高裁判所にその判断をまかされているということのみならず、自動的ということになりますと、非常にそこは、単純に考えるべき性質のものであるという考え方が出て参ります。元来一般の行政職と裁判官との間につきましては、その報酬、俸給の定める当初から、一定の格差がありまして、たとえば五万円の一般の行政職の職員の給与を受ける者と、五万円の裁判官の報酬を受ける者とは、金額においてまさに同額である。この同額に給与を定められた趣旨を考えてみますと、これは一般職の職員の給与に関する法律の趣旨から見ましても、職務の複雑、困難、あるいは責任の度合い、勤務年限というようなもののいろいろな要素を、あるいは勤務環境というようないろいろな要素を参酌して定められるものでありまして、その点につきましては、裁判官報酬法には何ら規定はありませんけれども、これは給与の一般大原則として同じ趣旨できめられるべきであると考えます。しかしながら、裁判官の報酬と一般行政職の給与との給与の段階のきめ方というものが非常に違っているのは何ゆえであるかと申しますと、それは、そこにおけるところの給与をきめる根拠となる要素、すなわち責任の度合いとか、職務の複雑性とかという要素に与える比重が、裁判官の場合と、一般行政職の場合とは違うという、こういうふうに解釈するわけです。しかしながら、違うのであるが、それを総合して判断しましたときには、給与としては五万円が相当である、裁判官についても五万円が至当であるというわけで、その意味では、五万円の一般職の給与が七万円になった場合に、あるいは六万五千円になった場合には、裁判官についても五万円の人が六万五千円になるのが相当である。第十条の「一般の官吏の例に準じて、」しかも最高裁判所の専権にまかしてやろうという政府の趣旨からいえば、まさにその通りに運用さるべき性質のものである。ところが、これが国会にいって修正を受けた理由は、必ずしも明確でないのでございますが、要するに、そういう場合でも、最高裁判所が独自に行なうべきものではなく、法律で定めるべきものだという御趣旨のように、当時の審議録によって承知しているわけです。従いまして、この別の法律というものは、本来いえば、最高裁判所がやっていいことだけれども、事柄を、一度国会の御審議を仰いでする、こういう建前であったということになりますれば、この十条の趣旨は、まさに五万円が六万五千円に一般職がなれば、五万円は六万五千円に裁判官もすべきだ、こういう趣旨に解釈をせざるを得ない、こういう判断でございます。これがまあ俗に申しますれば対等額スライド方式とでも言うものでございます。ところがこれに反しまして、先ほど申し上げましたその給与を定める要素の勤務年限を中心にしてものを考える場合には、たとえば採用されてから何年たった人は幾ら、それを行政職と裁判官と比較した場合に、どれだけの差があるかというような問題が出て参る。そこで勤務年限を中心にして考えますと、これは勤務年限による、すなわちアップ率を適用する。たとえば一般行政職におきまして、十年たった人が二〇%上がるものなら、裁判官の十年たった人も二〇%上げる、こういう場合、つまりアップ率スライド方式とでも言いますか、そういうものが相当ではないか。こういう論議をいたしましたが、それでいろいろ論議をいたし、検討いたしました結果、最終的には、先ほど最初に申し上げました第十条の解釈に従って、対等領スライド方式によるという結論になりました。それによって補正予算を組まれ、それによってこの法律案が立案された次第でございます。

発言情報

speech_id: 103715206X00319601221_010

発言者: 津田実

speaker_id: 17127

日付: 1960-12-21

院: 参議院

会議名: 法務委員会