内藤頼博の発言 (法務委員会)
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○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) ただいまの御質問にございましたように、裁判官の数が今日不足しておりますことは御指摘のとおりでございます。日本の現状が諸外国に比べて一体どういう状況かという御質問でございますが、これを人口との比例において比べてみますと、まあ大体欧米諸国の裁判官の数は日本の十倍見当ということが言えるのでございます。もちろん、これは各国によりましてその法制を異にしております。したがいまして、裁判官と一口に申しましてもいろいろなまあ種類があり、国によって制度が違うわけでございますけれども、裁判所で事件を裁判するという仕事に当たっております者すべてを数えますと、そういったような数になるわけでございます。特に英、米におきましては非常に多数のいわゆる治安判事というものを持っておりまして、比較的軽微な事件を処理しておるわけでございます。ドイツにおきましては区裁判所というものが非常にたくさんございまして、やはりこれも小さな事件を多くの裁判官が処理しておるわけでございまして、まず大体私どもの計算では、人口との比較におきましては、調べますと十倍見当になっているということが申せるのでございます。で、負担件数でございますが、この点につきましては、やはりこれも法制の違いからいろいろ事件の種類も違いますし、これはちょっと私ども係数が手元にございませんので御説明いたしかねますが、大体私どもは人口との比較において裁判官の数というものは考えていいのじゃないかというふうに考えているわけでございます。
そこで、こういった日本の裁判官の不足の現状におきまして、どうしてもやはりそれが訴訟遅延の原因になっているということは明らかであると申さざるを得ないのでございます。そこでその対策として一体どうすればいいかということになるのでございます。現在私どもといたしましては、裁判官が忙しい、負担が多いと申しましても、実際にどう忙しいのか、どういう仕事をしてどう忙しいのかということについての実態を十分に従来把握しておりませんので、ただいまそういった裁判官の執務自体についての実態の調査をいたしております。これは大体全国の裁判所に行なうのも容易でございませんので、いろんな大きさによりまして代表的な裁判所を十カ所足らず選びまして調査をいたしているわけでございます。これがことし中にはその調査を終わりまして、裁判官の忙しさの実態が判明いたしますし、その過重な負担の内容が明らかになると存じます。そういった調査の結果を待ちまして、裁判官の執務内容の再検討、あるいはそれに基づくところの増員の要求ということが具体的に出てくると存ずるわけでございます。もう一面私どもが考えなければならないのは、その足りない裁判官で一体どうしたら事件を最も能率的に処理し得るかということでございまして、それにはやはり審理の充実、すなわち最も能率的な法廷における審理という方式を考えなければなりません。さらに公訴制度、上告制度も十分に考えまして、最も少ない裁判官で最も能率的に合理的に事件が処理され、国民の信頼を得るような手続というものを考えなければならないと存じております。この点につきましても、御承知のようにまず第一審の充実、集中審理あるいは審理の充実ということを年来考えているわけで、これも順次軌道に乗っているわけでございます。そういった不足に対する面の対策を講じながら、一方やはりこれは増員を考えなければならないわけでございます。これにつきましては、終戦までは御承知のように司法官試補という制度がございまして、判事、検事に任官する希望者は高等文官の司法試験をパスいたしますと、司法官試補を命じられたわけでございます。この司法官試補は相当の希望者がございまして、その中から選ばれて司法官試補を命ぜられる、毎年おそらく百人ぐらいと存じますが命ぜられる、それが裁判所、検察庁におきまして一年半の修習を経まして、判事あるいは検事に任命されたわけでございます。ところが終戦後憲法が変わり、裁判所の制度が変わりまして、この司法官試補の制度も廃止されました。御承知のように今日は司法修習生の制度をとっているわけでございます。この司法修習生と申しますのは、これも御承知でございましょうが、従来の司法官試補、同時にやはり弁護士試補というものを一つにいたしまして修習の制度を立てたわけでございます。そこで裁判官になる希望の者、検察官になる希望の者、弁護士になる希望の者も一緒に司法修習生として二年間の修習をいたすことになったわけでございます。結局これは二年の修習を終わりましたときに裁判官を希望し、検察官を希望しあるいは弁護士を希望するということが具体的にきまりまして、そうしてその中から判事補に任命される、あるいは検事に任命される、あるいは弁護士になるということになったわけでございます。こういった制度になりました関係上、修習を終わりますまで、自分が弁護士になろうか、裁判官になろうか、検察官になろうかということは全くその人たちの自由にまかされているわけでございます。したがいまして、そのときのと申しますか、今日のいろいろの状況や若い人たちの考え方によってそれが決定されているわけでございまして、まあ私どもが裁判所におりまして期待するほどの希望者が判事補に得られないということが実情でございます。もう一方裁判官の制度が変わりまして、判事補の上に、——判事補を十年いたしますと判事になります。この判事になるためには判事補十年のほかに、あるいは弁護士、検察官十年の経験を経た人を任命することになっておりますが、一体それではこの判事に弁護士や検察官から希望者があるかと申しますと、これがやはりなかなか得られない現状でございます。
こういった現状でございますけれども、今日の法制のもとにおきましては、何といたしましても判事はやはり弁護士から、あるいは検察官から得るという道を開かなければなりません。また判事補も先ほど申し上げましたような制度のもとにおける司法修習生の中から得なければならないわけでございます。これにつきましては、やはり裁判官の待遇、——待遇ばかりではございません、いろいろ条件がございますけれども、待遇であるとか、あるいは裁判官の執務の環境であるとか、あるいはそういうような面についての手当を必要とするわけでございまして、これにつきましては私どももいろいろ検討いたしております。ことに法務省あるいは弁護士会の方々とも機会があればそういう問題について検討を重ねている次第でございますけれども、なかなかこれが一挙に解決し得ない、そのために今日は裁判官不足の現状にあるわけでございます。これは私ども何としてもそういった方向において解決しなければならぬ問題だと考えている次第でございます。