志場喜徳郎の発言 (大蔵委員会)

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○説明員(志場喜徳郎君) まず、所得税法の一部を改正する法律案と法人税法の一部を改正する法律案の二法律案につきまして、簡単に補足説明を申し上げます。
 今回の国税の改正は、規模におきまして、租税特別措置法等の改正を含めまして、初年度約四百四十二億円、平年度で五百四十億円と相なるわけでございますが、そのうち、ただいま提案されておりまする二法律案におきまする減税額は、初年度で二百九十六億円、平年度で三百五十億円という規模でございます。そのうち、さらに分けて見ますと、所得税の改正におきましては、諸控除の引き上げによりまする減税額が、初年度で二百七十七億円、平年度で三百二十億円でございまして、法人税の改正の点につきましては、初年度十九億円、平年度約三十億円、大体こういうような規模に相なっております。
 まず、所得税法の改正案でございますが、先ほど提案理由で申し述べられておりますとおり、主要な点は三点でございまして、第一点は、基礎控除、配偶者控除、扶養控除及び専従者控除の諸控除の引き上げでございます。第二点は、少額貯蓄免税制度の導入でございます。第三点は、外国税額控除制度の改善でございます。
 第一点の基礎控除の引き上げでございますが、これは昨年来消費者物価、ことに食糧費等の値段の高騰によりまする生計費が高まってくるということにかんがみまして、負担の軽減をはかりますために課税最低限の引き上げを行なおうというものであります。所得税におきます課税最低限、すなわち所得税がかからない限度をいかなる金額を目安として定めるかということにつきましては、いろいろと議論の立て方があろうかと存じますが、従来から所得税法におきましては、もちろん歳入の必要性等との関係もございまするが、主としまして、その趣旨は、いわゆる最低生活費と申しますか、基準的な生活費と申しますか、そういう部門に所得税の負担を及ぼさないことが適当であろうということを中心に考えまして定めておるわけでございます。具体的にしからばどういうふうな計算を基礎にして求めているのかということでございますが、やり方といたしましては、基準的な生計費を世帯構成員別にはじいてみようということをいたしております。つまり、マーケット・バスケット方式による食糧費を基準にして、基準者な生計費を求めるということをやっております。
 若干専門的になりますけれども、マーケット・バスケット方式による食糧費と申しますのは、わが国の成年男子一日所要カロリー二千五百カロリー。ある程度の勤労なりいたしながら健康な生活を続けていくためには、成年男子におきまして二千五百カロリーのカロリーを要するということになっております。それはまあ年齢別によりましてそのカロリー数が変わるわけでございまするが、それを構成世帯の各構成員別の年齢を平均的なものを求めまして、その年齢に応ずる所要カロリーをはじきまして、これをとるためにはいかなる内容の食事をとる必要があるかということを考えまして、そのためにはどういうふうな献立であればよかろうか、献立を必要とするか、私どもも専門家でございませんので、これにつきましては従来から国立栄養研究所に依頼いたしまして、春夏秋冬に応じた献立を作っていただく、それぞれ三食分の献立を何種類か作っていただく、それによりまして、この算定の基礎になっております食物ごとにそれぞれの単価をかけまして食費を求める、こういうことでございます。
 で、その場合もちろんぜいたくな献立は考えませんで、通常のといいますか、最も簡素な献立でございますけれども、そういうものをはじきまして、まず食費を求めまして、あとそれを生計費に直すわけでございますが、これにつきましては別途の家計調査——総理府でいたしております家計調査がございまするけれども、これは勤労世帯でございまするが、その家計調査におきましてそれぞれの世帯別に出ておりますから、ただいま算出したマーケット・バスケットによる食糧費の金額の上に世帯ごとに最も近い食糧費の支出金額が現われておるという、そういう世帯におけるエンゲル係数を求めまして、そのエンゲル係数で先ほどの標準的な食糧費を割り戻していきまして、基準的な生計費を求める、こういう方式をやっておったのでありますが、その同じ方式を使い、昨年——昨年といいますか、ただいまの現行法の課税最低限を定めるのに用いました当時に比べまして、昨年の中ごろないしは下期にかげての物価の状態を考えながら同じ計算をいたして参りますと、そこに上昇が見られるわけでございます。その上昇をそのままにしておきますことは、所得税の負担がその分だけ過酷に及んでいくだろうということが考えられますので、その上昇分を最低カバーしようじゃないか、相殺しようじゃないかということを目安に、今回の課税最低限の金額が求められまして、それを各種控除に割り振ったものでございます。これによりまして現行の課税最低限をきめる際の目安としました程度のものにつきましては、今回の改正案によりまして、物価上昇にかかわらず、大体それをカバーしておるというふうに考えるものでございます。これが課税最低限に関係する各種控除の引き上げでございます。あとはその金額だけでございますので、別段法律的にむずかしい点はないと思います。
 第二番目の少額貯蓄の免税制度の導入でございますが、これにつきましては、現在国民貯蓄組合法というのがございまして、その中で、その国民貯蓄組合の利子につきましては所得税をかけないという規定が入っておりますが、この法律は戦争中のものでございまするし、むしろこれを所得税法本法に取り入れまして、零細なる預貯金利子についてはこれを非課税にするということが適当ではなかろうかということで、国民貯蓄組合制度にかえまして所得税法で非課税措置を設けよう、こういうことでございまして、その内容は、預金、あるいは合同運用信託、あるいは公社債ないしは公社債投資信託、以上三種類のうちの一種類を選んでいただきまして、しかもある特定のそれを扱う預入先の金融機関を選んでいただきまして、その窓口で元本五十万円までのそれらの預金あるいは公社債、公社債投資信託の有価証券の購入、あるいは合同運用信託の預託というものをやっていただきますと、その利子に対して所得税をかけないことにするというものでございます。
 つまり、簡単に申しますと、一人一店舗一種類の預貯金の元本五十万円までの利子については免税にする、こういうもので、従来の国民貯蓄組合制度も元本が五十万円までということになっておりましたが、これは各営業所ごとに五十万円までの限度というものが守られるという建前に相なっておりますけれども、各店舗に分けて、一人が数店舗にそれぞれ持つた場合に、これを総合してその一人の人について五十万円までであるかどうかの確認につきましては、十分な取り締まりといいますか、規制は行ないにくかったと思うのであります。
 なお、架空名義等によるその制度の乱用というようなことによりまして、大きな貯蓄を持っている人が乱用するというような弊害もいわれておったわけでございます。昨年この制度の改正が行なわれましたけれども、なおその点につきましては十分な改善を加え得なかったのであります。今回はその点にかんがみまして、一人一種類一店舗五十万まででございまして、そのためには納税者の方が、預貯金者の方がその銀行等の店舗を通じまして所轄の税務署に対し少額貯蓄非課税申告書なるものをお出し願う、こういうことにいたしておるのであります。もっとも、その中身は、ただ本人の住所氏名が確認されればいいわけでございまして、したがいまして、お互い同士、彼はだれの子供であるとか、奥さんであるとか、そういう続き柄関係なり、あるいはどれだけの預貯金をするのであるかという元本の金額なり、そういうことは書かないのでありまして、ただ本人の住所氏名が正当であるということさえわかればいいわけでありますが、そういう申告書を出していただきまして、それが銀行の窓口から、銀行がまとめまして税務署に送ってくる。その税務署は税務署ごとに名寄せをいたしておきまして、まあ二つ以上の金融機関においてそういった口座を持っていることがないかどうかということのチェックになるというような仕組みになっておるわけでございます。
 ただ、この場合に、この国民貯蓄組合法がしたがって廃止になりますが、四月一日からにわかにこれを廃止するということは問題でございまするので、従来の国民貯蓄組合の預金利子につきましては、四月及び五月中に支払われるものは、何らの手続を要しないでそのまま従来の貯蓄組合法による非課税規定が働くことにしようとしておるわけであります。六月以降引き続きその貯蓄組合を少額貯蓄免税の対象にしたいというときには、その最初の利払い期までに、先ほど申しました貯蓄非課税申告書をその金融機関にお出し願えればよろしいということで、移り変わりを考えております。
 なお、従来窓口貯蓄組合は一人当たり一店舗でございましたけれども、職域あるいは地域組合につきましては、預金を一口あるいは合同運用信託を一口ということで、合わせて百万円までの元本についての非課税制度があったわけでございます。そういうような人たちは、従来の制度によりますと、一種の期待権と申しますか、二口まで待てるという既得権と申しますか、そういうものを持っておりますので、にわかにこれを奪うこともいかがかと考えまして、なお一年間につきましては、そういう組合員につきましては一人二口まで今度の少額貯蓄を持ち得る、こういうことにいたしております。その組合員は、昨年十二月末現在におきまして、地域組合あるいは職域組合の組合員であったということの証明がなされれば、一人一種類でなくて一人二種類まで、つまり合計で元本百万円まで免税対象になり得る。もっとも、この措置は一年間でございます。
 こういうふうにしておりますのが、少額貯蓄非課税制度でございます。
 第三番目の外国税額の控除制度の改善でございますが、これは非常に技術的な問題でございますけれども、日本の法人あるいは個人が外国で事業をいたしまして所得を得ました場合に、この外国でも所得税ないしは法人税がかかるわけでざいます。その場合には、わが国ではその所得も総合合算いたしまして、わが国の課税を行ないますので、そのままでは二重課税になるわけでございます。したがって、それを緩和するために、わが国の税額から外国の税額を引くということで二重課税を防止しております。
 これについての現在までの問題は、たとえばアメリカで一〇〇の所得を得ました場合に、アメリカの税率が日本よりも高いわけであります。二万五千ドルをこえますと、その分には、法人の場合の例でございますが、五二%の法人税がかかっております。わが国の税率は上のほうで三八でございますので、その差引一四というものが控除不足額、引き切れないというものが出るわけでございます。これは今しょうがないということで飛ばしておるわけでありますが、これを何とかできないかというのが今回のポイントでございます。そのときに、それじゃあ引き切れない分までも全部引いてしまったらどうかという議論もあるかもしれませんが、そうしますと実は補助金のようなことになりまして、わが国の国内で得た所得に対する所得税あるいは法人税までも食い込んでもうけていくということになりますので、これは不公平であるということから、各国ともそういう制度はいたしておりません。まだ国際的にも問題があろうと思います。したがいまして、三八という税率の範囲内における控除をしなければなりませんが、これについてしからばどういう方法があるか。大体アメリカの現行の制度にもならいまして、五年間その控除不足額を繰り越していくということを考えたのが今回の措置でございます。
 たとえば、ある年に控除不足額が出ますと、それを五年間繰り越していくのであります。その五年間のうちには、たとえば税率の安い国において所得を得たということがその法人なら法人で出てくるといたしますと、そこでわが国の三八というものが余ってくる場合もあります。そういうことも期待されます。なお、だんだんと所得が年を追ってふえるということを前提に考えますと、ことし一〇〇であった所得が来年二〇〇になるということになりますと、来年におけるわが国の控除限度額は、二〇〇に三八%をかけますと七六までいくわけであります。一方、外国の所得に対する外国における所得課税が年度おくれるといたしますと、それはまだきまって参りませんので、わが国の限度額だけが先に計算されまして、そこに食い込んで、いわば先引きで控除していくということになりまして、だから、所得が将来ふえるであろうということ、ないしは税率の安い国に企業が進出し、ないしはそこでの所得を得るということを考えました場合に、現在控除不足でありましても、五年間繰り越していけば、そういった引き切れるチャンスが出てくるであろうということがみそであります。非常に技術的でございますけれども、そういうことによりましてできるだけ二重課税を長い目で防除していきたいというのが外国税所得控除の改正でございます。そういう点は所得税、法人税も同じでございます。
 法人税につきましては、残る点は中小企業を主として考えました同族会社の留保所得課税の軽減でございまして、税率は改正いたしませんが、どのくらいの金額留保所得からその課税が行なわれるかという点につきまして、これを引き上げております。現在は課税所得の一割または五十万円のいずれか大きなほうを引きまして、その残りの留保所得に対しまして一割から二割までの課税を行なうということでございますが、今回、同族会社における留保率というものも参考にしたり、あるいは個人の所得税がこの二、三年間次第に軽減されてきておるというようなバランスから考えまして毛、控除額を一割五分または百万円のいずれか大なる金額まで引き上げるいうことにいたしたわけでございます。
 以上、簡単でございますけれども、二法案につきまして補足説明を申し上げました次第であります。

発言情報

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発言者: 志場喜徳郎

speaker_id: 16902

日付: 1963-02-21

院: 参議院

会議名: 大蔵委員会