志場喜徳郎の発言 (大蔵委員会金融及び証券に関する小委員会)

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○志場説明員 それではお求めによりまして、証券行政の現状についておもな点、簡単に申し上げたいと思います。
 まず、最近の株式市況及びこれに関連する問題という点について申し上げたいと思います。
 御承知のとおり、株式価格は四月の下旬に相当の値下がりをいたしました。本年に入りましてからの最高の株価水準に対しまして、五月にいわゆるボトム的なところまで落ち込んだわけですが、約二〇%の下落率を示したわけであります。ごく最近では一四%程度の下落率というところまで回復しております。この間、主要諸外国におきましても異常な下落を示しておりまして、たとえばアメリカでございますと二二%程度の下落、イギリスで二五%程度の下落、西独で二七%程度の下落、フランスで一七%程度の下落、イタリアで一四%程度の下落というふうに、かなりの下落を示しておるわけでございます。いずれもその後、現在若干の持ち直しと申しますか、上昇を見ておりますけれども、今日でも二〇%程度から一三%程度というような、本年の高値に対しましての下落を示した段階におるわけでございます。
 その原因につきましてはいろいろといわれておりますし、分析もできるかと思いますが、ただいま申し上げました主要諸外国の下落でもおわかりになりますように、その大きな要因は、やはりアメリカの経済を中心としまして、インフレと企業収益との関係ということから、株価の基本的な基礎でありますところの個々の企業の収益の動向につきまして、収益減退の現実ないしはそのおそれというようなところから、投資者間あるいは機関投資家に危惧の念を生じまして、これが一部の国際的な投資信託の解約ないしはそれに基づく換金売りというような気配が出てまいりましたことと相まちまして、大きな心理的動揺を来たしたということがやはり大きな比重を持っているのではないかと思われます。その後、各国その点についていろいろと関心を持たれまして、国際的な投信の健全化等につきましても関係者間でいろいろと協議なり交渉が行なわれている段階でございますし、漸次そういう心理上の不安も除去されつつある段階でございまして、それに伴って先ほど申したような回復過程をたどっておるということでございます。
 わが国の場合は、外人投資が一昨年及び昨年の二年間だけでも売り買い差し引き十億ドルに達する買い越しということになっておりまして、その外人投資の売買の動向というものがかなりの影響をもたらすところから、その行き先に対する、あるいはビヘービアに対する心理的な不安なり予想というものがかなりの影響を及ぼしたということはいなめないと思うのでありますが、ほかに、これも外人買いにも関係しますが、昨年の秋以降いわゆる値がさ株という問題が生じたというふうに、それに関連して信用取引の膨張もあったというようなところから、その株価が、まあ結果論になる面もございましょうけれども、若干行き過ぎと見られる程度まで過熱ぎみではなかったか。それが今回、各国に比較いたしましても、わが国の企業収益の動向だけから見た場合よりも、それを上回る下落をもたらしたのではなかろうかというふうに分析されるわけでございます。しかし、そういうふうに海外の動揺というようなものが現に静まってまいりますると、今後はわが国の経済、各企業の収益の動向という、この基本的な点に目を向けました投資判断、価値判断というものが漸次回復してまいると思うわけでございまして、すでにその萌芽も見えつつあるわけでございます。今後はそれらを中心にして、しかし、国際化しております証券取引の段階におきましては、あるいは今後におきましては海外要因も決して無視できませんが、今回の経験を貴重な経験といたしまして、今後冷静な判断なりそういうものが望まれると思うわけでございます。
 これらの状況にかんがみまして、今後の問題といたしましてまず考えられますることは、何と申しましても外人投資というものが、現在ストックで申しますと約二十億ドルに達していやしないか、邦貨で七、八千億円と思いますけれども、わが国のような、企業ごとに見ました場合に株式資本の割合が総資産のうちの八%程度である、内部留保を含めましていわゆる自己資本の割合が一六、七%である、こういう、いわゆる過小資本、過小株式という中におきまして、一銘柄をとりましても二〇%あるいは三〇%に及ぶというような部分を外人によって取得される、こういうことになりますると、やはり外国関係というものが大きな問題でございまして、しかし、この要因をできるだけモダレートなものにしますためには、根本的にはただいま申しましたわが国の企業の株式資本の過小性というもの、これの是正という問題が基本的な問題でございます。
 それに関連しまして、浮動株の割合というものがかなり低い。東京証券取引所第一部でも約二〇%でございまして、ほかは金融機関あるいは関係先の企業にいわゆる持ち合い株あるいは安定株主ということで持たれておるわけでありますが、そういう浮動株の割合を、もう少しやはり株主の層を広くし厚くするということでありませんと、乱高下的な現象はある程度避けられないという気もいたすわけでございまして、この辺の二面の是正ということが基本的な問題でございますが、しかしこれは従来からいわれておりますことあるいは危惧されておりましたことが今日の現象面で出ましたということであります。この是正につきましてはなかなか日時を要する。しかし、今後はこの問題にいよいよ本格的に取り組んで、あらゆる施策をもってこれを是正するということが、かかる暴騰、暴落とでも言うべきような乱高下に対処する基本的なあり方ではなかろうか、かように思っておるわけでございます。
 同時に証券取引の内部の問題といたしまして、そういうふうに現物というものが海外の投資家によって多く持たれるというようなことを考えますと、流通の範囲を広くする、そうして公正な、なだらかな価格形成にするという見地から、やはりわが国の現状におきましてはある程度の信用取引の量というものが存在しなければならないというふうにも思うわけでございますが、同時に、信用取引はえてして過当に過熱ぎみになる、ないしはその反動として萎縮し過ぎるという要素を絶えず持っておるわけでございまして、信用取引にはそういう投機的ないしは思惑的要素のからむことは避けられませんが、あまりにも過熱化しあるいは鎮静化し過ぎるということをどういうふうにすればなだらかな程度でとどめることができるであろうかという、つまり信用取引に関連する諸制度につきまして、ただいま申しましたような観点から改善を加える必要があるのではあるまいかという問題意識が出てきておる次第でございます。
 それから同時に、今日でもそうでございますが、外人が売ってくるといいます場合に、たとえばわが国の証券会社が在外の子会社ないしは支店におきましてドルその他の外貨を適宜保持しているということがあると仮定いたしますと、海外の投資家が日本の株を換金のためその他、売りたい買いたいといったような場合に、その現地におきまして外貨による売買取引が行なわれるという可能性も出てまいるわけでございます。今日その事態がございませんので、ダイレクトに日本の市場に対して売買の注文を発してくる。会員といたしましてはそれを市場集中いたさなければなりませんので、もろに売買として出てくる。それがやはり、いろいろな海外の情勢というものは一般投資家その他におきまして十分な情報というものがございませんので、心理的な要因として非常に過大な期待を持ったりあるいは過大な不安を持ったりということにつながりやすいわけでございまして、その点から証券会社が海外におきましてしかるべき外貨を保有するというようなことも必要ではあるまいかということで、それぞれ折衝してまいりたいと思っておる次第でございます。
 と同時に、これにも関連いたしますけれども、本邦証券会社の在外の営業所、子会社等を通ずる活動につきまして、漸次その拡大とか充実ということをはかっておりますけれども、いよいよその必要性が強いのではないかというふうに考えまして、そういった意味で証券会社に対し、海外要員の養成というような面につきましても鋭意努力をするように指導してまいりたいと思っておるわけでございます。
 それから、ただいま申しましたように証券取引は次第に国際化しつつあり、そのわが国の市場にもたらす影響も無視できないほどになりつつある重要な問題でございますが、同時に、証券業務の資本自由化という問題も起こってまいっておるわけでございまして、いずれこの問題は避けて通ることができない、こういうふうに感ずるわけでございますので、これに対処いたしまして、わが国の市場の秩序というものを適正に保持しながら、前向きに健全に業務の自由化がこなされてまいりますように、今後の証券会社の免許の与え方の問題、ないしは外国の証券会社が今日ではわが国に支店を持つ、開設するということは現行法では許されておりませんが、やはりこれにつきましても所要の立法を準備いたしまして、支店がわが国及び外国の投資家ないしは発行会社等の需要に適切に呼応できますような立法準備をしなければなるまい。同時に免許の方針も考えていかなければなるまいかという問題も考えておる次第でございます。
 同時に、かような証券業務の自由化、資本自由化ないしは証券取引の内外における交流の活発化ということになってまいりますと、産業界のほうで、例の企業経営の乗っ取りという観点から、その乗っ取り防止について何らかの措置が必要ではないかという問題が提起されておるわけでございます。
 この問題につきましては、すでに昭和四十二年五月に、第一次の資本自由化のおり行なわれました外資審議会の専門委員会におきまして若干の報告がなされてございまして、これは単に証券部門に限りませず、その他の法律の分野に広く及んでおるわけでございますが、その中から乗っ取り防止ということで提案されている自由化対策として三つばかり掲げられておるわけでございます。
 一つは、事業会社の定款におきまして、株式の譲渡について取締役会の承認を要する、いわゆる譲渡制限は商法上できるわけでございますが、この制限がついた株式でも取引所に上場を認めたらどうかという問題がございます。今日ではその上場は認めておりませんが、そういう問題。それから、あらゆる取引は相対取引を許さないですべて市場を経由するという市場集中制度ということはどうかというような問題とか、ないしは企業経営の乗っ取りを意図しましたテークオーバービッドにつきまして所要の規制を設けることはどうかというような、おおよそ三点についての問題提起がなされておるわけでございます。
 しかし私ども考えました場合に、この最初の譲渡制限された株式の上場というものにつきましては、その後取引所関係におきましても検討されましたけれども、適当でないということで、現に諸外国でもそういうことは許しておりませんし、自由な取引ということになりますとこれは適当でないということを私どもも考えております。また市場集中につきましても、フランスにおきまして取引仲買い人は政府の公務員であるという特殊な市場制度もあるぜいもありましてこの集中制度を行なったようでありますが、これは本質的に何ら乗っ取り防止ということに役立たないということでありますのみならず、外国人だけの取引についてかようなことを差別待遇することはできませんので、あらゆる国内取引についてすべて市場に集中すべしという義務を課することになるわけでございまして、これはとうてい立法の実際といたしましてもできない、かように感ずるわけでございます。
 残るところはいわゆるテークオーバービッドの規制の問題でございます。これはすでに主要国でもございますが、これすらも本質的に乗っ取りを禁止するということではございませんで、テークオーバーする場合のその中身というものにつきましていわゆるディスクローズさせるという制度でございます。しかしながらこれもやはり、一つの秩序ある取引という観点から見ますと適当でないという判断もございまして、私どもこの点についての立法化につきましては検討してまいりたい、かように存じておるわけでございます。と同時に、ただいまわが国の企業が国内あるいは国外でいろいろと各種の証券を発行していくということは考えられますが、市場というものが国際化してまいりますと、外国で発行した証券でございましても流通面において日本の市場に舞い戻ってくるというような、相互に交流いたしますので、この発行市場のコントロールの問題、なかんづくディスクローズの問題といたしまして、国外で発行するものについても所要の規制を投資者保護の観点からもする必要があるのではないかということが、今後の証券取引法の国際化に対処する改正の一環として検討せられるべきであるというふうに感じておるわけでございます。
 その他種々ございますが、時間もございませんので、証券会社の現況について若干触れておきますと、一昨年の四月、全面的に免許制度に移行したわけでございます。その後、幸い市況の好転ということもございますが、免許制度につきまして、ぜい肉を取り除いた、資産的にも人的にも一応きれいな、むだのない姿で発足いたしたこともございまして、一昨年の九月、昨年の九月、いずれもそれまでの各年度の収益に比べて新記録をつくるというような高収益に恵まれましたわけでございますが、昨年の十月以降本年の三月までの半年間の仮決算の状況を見ましても、全国の証券会社合計いたしまして、税引き後の利益で四百十六億円の利益をあげておりまして、これは昨年の九月分までの税引き後の利益四百十二億円に匹敵するほどでありまして、いえば、昨年未曽有の高収益でありました年間分の利益を本年度は上半期で得たということでございます。その後、四月の暴落もございまして、取引数量も減ってまいりまして、五月におきましては、月別の決算をいたしますればおそらく若干の赤字ではないかと思いますけれども、現在までのところさような健全な経理、財務内容になっておりまして、内部留保も全国で約二千百三十五億円ばかりになっておりまして、資本金に対する純資産も約二・三三倍というふうに、財務体質的にも強化されてまいっております。今回暴落もありましたけれども、比較的証券業界といたしましては落ちついており、企業経営的にいわゆる取りつけ騒ぎのような不安な状態が起こってないと申しますことも、このような証券会社の個々の財務体質の改善強化ということが根底にあるということであろうと思いまして、今後とも自由化のためにも一そう財務内容の充実、企業経営の健全化、合理化につきまして、極力私どものほうといたしましても指導をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
 はなはだ尽くすべき点を尽くさないおそれもありますが、一応御説明申し上げたわけでございます。
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発言情報

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発言者: 志場喜徳郎

speaker_id: 16902

日付: 1970-06-11

院: 衆議院

会議名: 大蔵委員会金融及び証券に関する小委員会