澄田智の発言 (大蔵委員会金融及び証券に関する小委員会)

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○澄田参考人 本日は、日本銀行の立場から、当面の金融自由化の課題につきまして申し上げます。
 日本銀行は、金融の自由化、特にその中の金利の自由化につきましては、これは避けて通ることのできない課題である、そういうふうに考えてまいっておりまして、既に数年前からその方向で努めてきたつもりでございます。
 自由化を避けて通れないものにしている背景は、俗に「二つのコクサイ化」と申しておりますが、やはりその点が大きいと思います。
 第一のコクサイ化、これは国債の大量発行に伴う金融市場の変化のことでございます。昭和五十年度以来年々多額の国債発行が継続しておりますことから、今日では幅の広い、そして奥行きの深い国債市場が成立しております。国債が自由な金利で活発に市場で取引される、また国債を利用した新しい金融商品が工夫されて提供されるということになりまして、その結果預金金利を中核とする規制金利に影響が当然に及んできております。そういうことから、やはり従来の規制金利の弾力化あるいは自由化ということが促されている、そういう状況であるわけであります。
 第二のコクサイ化は、いわゆるインターナショナルという意味の国際でございまして、金融のそういった国際的な歩みということでございます。これは資本の取引が原則自由ということになりまして、外国為替管理制度の全面改正が行われ、内外の資本交流がいよいよ深まりまして、金融機関の国際業務が活発化するにつれまして、わが国の金利のあり方や金融慣行あるいは金融制度についてまで修正を求める声が内外ともに強まってきている、こういう状況であると思うわけであります。
 この二つの大きな要因に付随いたしまして、金融業務の機械化いわゆるエレクトロニックバンキングの進展、これも新しい金融商品の開発を技術的な面で可能にしている、そういう要因でございます。これも自由化に大きな影響を与えていると思います。
 また、近ごろ特に高まってまいっております法人、個人の金利選好というものも自由化にインパクトになっている、こういうふうに考えるわけであります。
 以上のような背景のもとで、金融市場におきましては自由金利の分野が拡大しつつあるわけでありますが、自由金利と規制金利とが併存しているということになりますと、金融情勢の変化によりまして、自由金利の分野と規制金利の分野の間でどうしても資金シフトが大量に起こる、こういう問題が起こるわけでございます。資金の不測の移動によって金融市場が大きな攪乱的な影響を受ける、そういうことのないように十分に留意していく必要があるわけでありまして、そのためには実情に応じまして漸進的に規制金利の分野の縮小を進めていく、そして自由化へのソフトランディングを図るということが何よりも望ましい、こういうふうに考えるわけであります。
 また、日本銀行といたしましては、金融政策の有効性を維持していくためにも金利の自由化を進めることが望ましい、かように考えております。
 申すまでもなく、金融政策は、金融市場の需要供給の関係や、そしてまた金利に影響を与えることによって、金融の引き締まりあるいは金融の緩和の度合いを調節していく。そしてそれによって経済活動や物価動向に効果を及ぼそうとする、そういう性格のものでございます。
 戦後、我が国の金融政策は、窓口指導のような政策手段に依存をして運営されてきた傾向がございますが、最近におきましては、今述べましたような環境変化を背景にして、企業や個人の手元の金融資産の蓄積が進み、海外との資金交流も活発化してきていることなどから、これまでのようないわば行政指導的な手段に依存をして政策を運営することが逐次困難になってくるわけでございます。そしてまた、将来においてはこういう傾向が一層強まるということが予想されるわけでございます。したがいまして今後は、金利の変動を通じまして経済活動に影響を及ぼしていくいわゆる金利機能の活用ということが、金融政策の運営にとって一層重要になる、こういうふうに考えるわけであります。金利が、資金の需要供給の関係に応じまして自由に変動するような体制を確立していく意味におきましても、金利の自由化を進めることが肝要である、こういうふうに考えるわけであります。
 以上のような考え方に基づきまして、日本銀行といたしましても、金利の自由化に取り組んできたわけでありますが、今後、当面におきましては、預金金利の自由化と短期金融市場の整備、確立が大きな課題になると思っております。
 預金金利につきましては、欧米諸国と同様に、まず大口預金金利の自由化から始めることが適当であろう、こういうふうに考えております。我が国の場合におきましては、具体的には譲渡性預金の一層の規制緩和、さらに市場金利連動型預金の導入という措置を経まして、大口預金金利全般について自由化を図ることが考えられるわけであります。
 一方、小口の預貯金金利の取り扱いにつきましては、何といたしましても、郵便貯金金利との調整をいかに図るかという問題がそこにございます。
 預貯金金利の自由化を図る場合、金融機関がそれぞれの経営責任のもとで市場原理に従って行動する結果、預金金利が市場メカニズムを通じて決まっていくことを期待するわけでございますが、郵便貯金は建前といたしまして非営利の官業でございまして、そうした機関が独自の立場で決める金利というものは、市場の実勢とは言いがたいものではないかと思います。しかも、現在郵便貯金は個人預貯金の中で著しく高いシェアを占めているわけでありまして、この郵便貯金が独自の立場で金利を決めるということになりますと、どうしてもそのマーケットにおきましては郵便貯金がプライスリーダーということになりまして、力関係からしても民間はその金利水準に従わなければならない、こういう作用が働くわけでございます。
 このような問題がありますために、預貯金金利の自由化を図っていくためには、郵便貯金の金利が民間の預金金利を基準として、それと均衡を保ち、整合性を保って決定されるという意味合いにおける金利の一元的な決定のルール、そういうものを確立することが何よりも肝要であると思います。そうしたルールがしっかりと踏まえられない限り、小口預貯金金利の自由化は当面極めて難しい、こう言わざるを得ないと思います。
 次に、金融市場の自由化が進む中で、諸金利がそのときどきの金融政策の基本的なスタンスを的確に反映して動いていくというためには、日本銀行が必要に応じていつでもオペレーションを行うことができ、そこで形成された金利が他の市場に波及、伝播をしていくような中核的なマーケット、中核的な市場が生まれることが望ましいわけでありまして、こうした金融市場全体の中で中心となるようなオープンマーケットは、やはり政府短期証券の市場が最も望ましい、こういうふうに考えております。
 現在は、政府短期証券の恒常的な流通市場は存在しないわけでありますが、しかし、日本銀行は五十六年から、市中の資金の余剰を吸収する目的で、日本銀行手持ちの短期証券を売却するオペレーションを随時実施してきております。私どもは、今後とも金融市場の状況に応じて、このようなTB、短期証券のオペを活用していきたい、かように考えているわけでございます。
 最後に、円の国際化を図るという観点から、我が国の金融・資本市場の開放と申しますか、自由化問題について議論が高まっておりますので、この点につきまして私どもの考えを申し述べたいと思います。
 円の国際化の内容には、円が貿易取引に使われる、すなわち貿易が円建て化して行われるということ、それから第二には、海外諸国の外貨準備として円が保有されるということ、第三には、資本取引に円が使われるということ、こういう幾つかの側面がございますが、このうち当面最も重要であり、そして進めていかなければならないのは、資本取引における円の使用、換言すれば、居住者、非居住者を問わず円を自由に調達、運用できるようになるということではないかと思います。この意味では、やはり国内の金融あるいは資本市場の整備、自由化を進めていくことが円の国際化ということの中心的な課題であろう、こういうふうに思います。
 この点に関しまして、最近、海外における円の取引、すなわち、いわゆるユーロ円の取引を自由化することによって円の国際化を進めようという考え方が提起されております。私どもといたしましても、貿易取引の円建て化が進み、そして内外資本交流が活発化するにつれましてユーロ円が自然にふえていくということは、これは避けられない現象であろうと思います。
 ただ、海外で保有されております円というものは、これは円だけでなくて、ユーロドルでもユーロマルクでも同じでございますが、それぞれ自国の中央銀行の影響が及びにくいものでございまして、やはりこれが国内との取引関係を通じまして自国の流動性調節上も問題が生ずるという場合はあるわけでございます。このような観点から、日本銀行といたしましては、ユーロ円取引の自由化あるいはユーロ円市場の拡大ということを政策的に推進する、エンカレッジする、そういった性質のものではないのではないかというふうに考えているわけであります。いわば、自然に発展をしていくものというようなことになるかと思います。
 また、国内において、現実の問題としてはある程度の規制が残っている、そういうような状態のときに、ユーロ円取引だけが先行して、あるいは突出して自由化されていくということになりますと、どうしても金融取引がユーロ円市場の方に移っていく、いわば逃避をしていく、そういう傾向が生ずるのは、これは当然でございます。したがいまして私どもとしては、まず国内の金融・資本市場の自由化を推進することによりまして、非居住者による円の使用が自然に高まっていくということになることが本筋であると思いまして、そういう状況と調和のとれた、つり合いのとれた形でユーロ円取引も自由化をしていく、これが適当であろうか、こういうふうに考えるわけであります。
 以上のような考え方が主要な我々の考え方でございまして、日本銀行といたしましては、以上のような考え方に基づきまして、金融あるいは金利の自由化に前向きに取り組んでいく、そういう所存でございます。
 以上でございます。(拍手)

発言情報

speech_id: 110104640X00119840410_002

発言者: 澄田智

speaker_id: 30983

日付: 1984-04-10

院: 衆議院

会議名: 大蔵委員会金融及び証券に関する小委員会