渡邊省吾の発言 (大蔵委員会金融及び証券に関する小委員会)
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○渡邊参考人 日本証券業協会会長の渡邊でございます。
平素、先生方におかれましては、証券市場の健全な運営、またその発展のため、何かと御配慮をいただきましてまことにありがとうございます。まずもって厚く御礼申し上げます。
本日は金融・資本の自由化と直面する諸問題について意見を申し述べよとのことでございますので、証券界の立場から意見を申し上げ、御審議の御参考に供したいと存じます。
御高承のとおり、近年、金融・資本市場は大きく変貌し、自由化の進展には著しいものがございます。その要因について私どもの立場から申しますと、まず第一に、証券市場の国際化が進展していること、第二に、国債の大量発行を背景として国民の金利選好が高まり、また、企業の資金調達が多様化していることの二点が挙げられます。この点につきましては、冒頭澄田日銀副総裁からお話がございましたとおりで、「二つのコクサイ化」と言われたとおりでございます。
まず、証券市場の国際化の進展状況を申し上げますと、外国投資家による対日証券投資は昭和二十年代後半からスタートしましたが、当初は投資額もごく微々たるものでございました。しかし、昭和三十年代後半からは、我が国経済の高度成長に伴い、その投資額は漸次拡大の傾向を示してまいりました。
その後、石油危機の時期に一時減少しましたものの、我が国経済が二次にわたる石油危機を克服し、先進主要国の中で最も良好なパフォーマンスを示し、また、政治も安定しているというようなことから、昭和五十一年から再び増加に転じ、さらに五十五年十二月から新外為法が施行され、資本取引について原則自由とされたこともございまして、最近では、欧米の年金基金等を中心にその投資額は急速な拡大を示しておるのでございます。
一方、我が国の投資家による——これは外へのですが、外国証券投資は、昭和四十五年に証券投資信託に対して外国証券の組み入れが認められたのが最初でございますが、翌四十六年には生損保、一般投資家も外国証券投資が行えるようになりまして、この規模は着実に拡大してまいりました。
その後、四十八年以降は、石油ショックによる外貨事情の急変から、一時停滞を余儀なくされましたものの、五十二年からは再び増加傾向に転じまして、最近では、内外金利差の拡大等によりまして、外国債券を中心として外国証券投資は急増しております。
次に、発行市場でございますが、外国政府、国際機関等の東京市場における円建て外債の発行につきましては、昭和五十二年以降我が国の国際収支の黒字基調が定着し、同時に市場の整備が図られたことから順調に増大してきておりまして、最近では銘柄数も起債額も着実な拡大を示しておるのでございます。
また、東京証券取引所の上場外国株式につきましては、この数年、種々の事情から上場を廃止するものが見られましたが、先般、上場外国企業に対する開示手続の弾力化が図られるなど、外国株式の上場を促進するための措置が講じられまして、今後次第に発行株式を東証に上場する外国企業がふえてくるものと期待されております。
さらに、我が国企業の海外証券市場での資金調達につきましては、後ほど改めて申し述べたいと存じますが、近年、ユーロ市場を中心として海外市場での資金調達が年々急速に拡大してきております。
このような証券市場を通ずる国際的資本交流の拡大によりまして、我が国証券会社の現地法人等海外店舗も着実に増加する一方、外国証券会社の我が国への進出も増加しております。また、我が国の証券市場が国際的な資本市場の重要な一環として成長を遂げてきた過程において、我が国証券市場の諸制度、慣行は順次改善されまして、今日における市場の規模は、欧米主要国に比べ何ら遜色のないものとなっておると存じます。
次に、国債の大量発行下において、国民の金利選好の高まり、企業の資金調達の多様化が金融・資本市場の自由化を促進させる大きな要因となっていることについて申し上げたいと存じます。
近年、国民の金融資産は急速に増加しております。個人金融資産について見ますと、昭和五十年の年末には百八十兆円でございましたが、五十七年末には四百二十九兆円と七年間に約二・四倍の伸びを示しております。申すまでもございませんが、金融資産が増加すれば国民の金利選好は高まり、国民の資産選択はより有利な投資対象へと変化し、間接金融から直接金融へとそのウエートが高まってまいります。これは、欧米先進諸国の例を見ても同じでございます。特に、国債の大量発行を契機として国債の個人消化が促進され、また、国債の発行条件の弾力化、種類の多様化等が図られることにより、国債が国民の好個の投資対象として定着してまいりましたことも、国民の金利に対する関心を一層高めることになったものと存じます。
一方、資金を調達する企業の側から見ますと、昭和四十四年から行われるようになりました株式の時価発行公募増資による資金調達は、逐年増加の傾向を示しまして、今日では、これが株式による資金調達の中心となっております。昭和五十七年中には、株式による資金調達額のうち時価発行公募増資によるものが八〇%を占めるに至っております。また、近年、時価転換社債の発行が投資家のニーズに適したものとして急速に普及しており、さらに、昭和五十六年の商法改正により新株引受権付社債の発行についての法制整備も図られまして、企業の資金調達の多様化は一層進展しております。
我が国民間企業の資金調達に関して特に申し上げたいことは、転換社債の発行を含めて海外市場での社債発行が急増し、海外証券市場への依存度が近年急速に高まってきていることでございます。具体的に申し上げてみますと、昭和四十九年度には企業の海外市場での資金調達比率はわずか六%でございましたものが、五十年には一五%、五十五年二六%、さらに五十八年には四七%にまで増大しており、海外証券市場での資金調達の拡大が、今後の我が国の社債発行等の仕組みに少なからず影響を及ぼすことが考えられるのでございます。
以上申し上げましたとおり、国民の金利選好の高まり、企業の資金調達の多様化等は、一つの潮流として、金融・資本市場の自由化を促進させる大きな要因となるのでございます。
証券界といたしましては、新しい情勢に対処して、投資家のニーズにこたえ得るように工夫を凝らして新商品の開発に努めるとともに、資金調達を行う企業の要請にこたえ、内外の資本市場で資金の使用目的にマッチした証券の発行に努めているところでございます。また、投資の効率を高めるために、証券業務の機械化を推進することによりまして、投資家に対し正確、迅速な投資情報の提供、投資に関する事務処理の円滑化、迅速化を図るように努力を重ねているところでございます。
以上、証券市場の国際化、投資家及び企業のニーズの変化を中心とした金融・資本市場の国際化、自由化の経緯について申し上げましたが、御高承のとおり、昨年秋のレーガン米大統領の訪日を契機といたしまして、海外からの我が国金融・資本市場に対する自由化の要請が急速に高まり、二月、三月と日米円ドル委員会で個別的、具体的な自由化の方策について協議が行われたと伺っております。これが金融・資本市場の自由化の問題についての一般の関心を大きく高めているものと存じます。
しかしながら、こうした問題の対処に当たりましては、外国での制度、慣行をそのまま我が国に持ち込むという、いわゆる相互主義の考え方を基本とすることではなく、我が国の法律制度を前提とし、海外の金融機関等が我が国に進出する場合にはこれに従うという、内国民待遇という基本線は尊重していくべきではないかと存じます。
私どもが海外で証券業務を行う場合には、当該国の制度、慣行を十分尊重し、当該国で許される範囲内での活動を行っておるわけであります。これは、国際的な資本交流を円滑に促進していくための基本的な要件であると存じます。
もちろん、我が国の制度、慣行の中で、諸外国に比べて不合理な点があれば、これを改善していかなければならないことを否定するものではございませんが、我が国の金融・資本市場の自由化を進めていくに当たっては、海外からの自由化の要請に対しましても、金融・資本市場の健全な発展を図るという見地に立脚し、あくまでも自主的な立場を貫くべきであると存じます。
なお、我が国の証券界について見ますと、昭和四十三年の免許制への移行後は、当局の御指導もありまして、証券会社の財務体質、経営基盤は著しく改善されておると存じますが、御承知のように、証券界は業況の変動が著しいという性格を持っておりますので、中小証券会社ですとか地方証券会社の中には、さらに一層経営基盤の充実を図る必要のあるところがございます。今後の自由化の検討に当たりましては、こういう点についても十分御配慮をお願いしたいのでございます。
最後に、我が国金融・資本市場の自由化に関連いたしまして、短期金融市場の整備拡充について申し上げたいと存じます。
御高承のように、国債の残高は逐年累積しておりますし、昭和五十八年度末には約百十兆円に達しております。また、昭和六十年度からは国債の大量借りかえが見込まれております。
このような情勢から、短期金融市場の整備拡充を図ることが喫緊の課題となっております。
今後、国債の大量借りかえを円滑に処理するほか、長短両市場の裁定取引を通じて金融・資本市場の一層の効率化を図る観点から、短期市場商品の多様化を進め、短期金融市場の整備拡充を図ることが強く望まれるのでございます。
以上、所感の一端を申し述べた次第でございますが、委員の皆様方におかれましては、どうぞこの間の事情を御理解いただきまして、御協力を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。
どうもありがとうございました。(拍手)