瀬戸山孝一の発言 (大蔵委員会金融及び証券に関する小委員会)
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○瀬戸山参考人 全国地方銀行協会副会長の瀬戸山でございます。諸先生方には、私ども地方銀行六十三行の会員が常日ごろ各地で何かと御厄介になっておることに対しまして、本席をかりまして厚く御礼を申し上げます。
また、本日は金融・資本の自由化と直面する諸問題につきまして、私どもの考え方を申し述べさせていただく機会を賜りまして、まことに光栄に存じます。本来でございますと協会長の吉國が伺って申し述べるべきところでございますが、あいにく都合がつきませず、私から地方銀行の立場で申し述べさせていただきますことをお許しを願いたいと存じます。
まず初めに、金融自由化につきまして私どもの基本的な考え方を述べさせていただきます。
金融自由化につきましては、立場立場によって考えている内容は異なっているところじゃないかと存じますが、要しますところは、経済社会の変化に対応して金融制度、慣行、規制を見直し、必要に応じて規制等を撤廃していくことだろうと私どもは理解をしております。
御高承のとおり、我が国経済社会の成熟化、国際化に伴いまして、今後の金融のあり方につきましては、一昨年来金融制度調査会におきまして審議が行われてまいりましたが、昨年四月「金融自由化の現状と今後のあり方」と題する中間報告が行われました。この中間報告におきまして、我が国における今後の金融自由化についての基本的方向が示されておりますが、私どもといたしましても、この基本的方向にのっとりまして金融自由化が進展していくことが望ましいと考えております。すなわち、我が国の産業・金融構造の特質と、それに対応して形成されてまいりました我が国固有の金融システムを生かしていく方向で進めていく必要があると存じます。
このような考え方に立ちまして金融自由化の現状を眺めますと、三つの大きな問題に直面しているのではないかと存じます。
第一の問題は、金融自由化への環境整備が進んでいないことでございます。
自由化への環境整備として重要な問題は、さきの調査会御報告にもございましたように、一つは通貨価値の安定等経済の環境、二つは国債発行額の抑制、三つ目は郵便貯金等の公的金融の見直し、肥大化防止、この三つになろうかと存じます。幸い通貨価値は安定しておりますが、他の二点、すなわち国債発行額の抑制と郵便貯金等の公的金融の見直しは余り進んでおりません。これが金融自由化の大きな障害となっておると思うのでございます。
国債につきましては、今後も大量発行が継続されると予想されております。情勢いかんによっては金利水準全般を押し上げたり、あるいはまた資金の流れをゆがめたりすることが懸念されるのでございます。
郵便貯金につきましては、三年前の郵貯懇報告に始まり、臨時行政調査会の答申に至る過程で、問題の所在と改善の方向が明らかにされております。政府におかれましては、これを受けまして、昨年五月、「政府部内において引き続き具体的検討を進める。」との閣議決定が行われたにもかかわりませず、具体的な改善は一向に進んでいない状況にございます。郵便貯金の残高は、本年三月末には既に八十五兆円を超え、私ども地方銀行六十三行の預金残高七十九兆を追い越す存在となっております。しかも、個人預貯金に占めるシェアは引き続き拡大しておりまして、昨年十二月末には三一%を突破いたしております。
このような郵便貯金の拡大は、金融自由化の目指しております市場メカニズムの活用、なかんずく民間金融機関の活力を阻害するものでございまして、業務拡大の抑制、貯金業務の見直し、金利決定の一元比等、早急にその是正策が講じられることを願うものでございます。
第二の問題は、規制されない分野と規制されている分野との摩擦の顕現化と申しましょうか、その問題でございます。すなわち、一方では規制金利市場から自由金利市場への資金流出、金融取引のシフトが進んでおります。また、一方では規制されていないノンバンク、ニアバンクの金融業務への接近が活発化しております。こうした中で銀行は、銀行法や行政指導によって規制される部分が大きいために、自由化への対応が制約され、競争上不利な立場に置かれていると考えられます。
第三は、こうした現状にさらに部分的、なし崩し的自由化が行われることへの危惧でございます。
ただいま申しましたとおり、金融自由化への大前提とも言うべき環境整備が進んでいない反面、金融市場の自由化が進み、規制分野とそうでない分野との摩擦が大きくなっている中で、海外からの自由化への要請も強まってきております。我が国経済、金融の国際化の進展との兼ね合いで国内市場の開放、金融自由化を考えていくことも必要かと存じますが、我が国には我が国の経済特質があり、また確固たる金融制度が定着しておりますので、国内制度の自由化を通じて、自然な形で我が国金融・資本市場が開放されていくことが望ましいと考えております。
次に、金融自由化の進展する中で、私ども地方銀行の直面する諸問題につきまして御説明申し上げ、御理解を賜りたいと存じます。
金融自由化は、裏を返せば競争の激化を意味しております。それだけに私どもといたしましては、まず第一に経営の効率化を進め、経営体質を強化して、利ざやの縮小、低収益に耐え得る強固な経営基盤を確立すべく努力をいたしております。と同時に、自由化の進展とともに地域社会のニーズが多様化、高度化していくことが予想されますので、これらにこたえられるような業務内容、金融サービスの拡充に努めなければならないと考えております。
ところが、先ほど申し上げましたとおり、銀行業務につきましては、法律や行政指導によりまして各種の規制が行われており、金融自由化や顧客のニーズの多様化等に銀行が対応していきにくい状況が一方に存在しているわけでございます。
具体的業務に即して、まず預貸金業務に関しましては、長期金利の高とまりや国債等を取り入れた商品による高金利商品の出現によりまして、預金吸収力が著しく低下しております。
このような状況の変化に対応すべく、私どもは種々の努力をしております。一例を挙げますと、三年定期の創設問題がございます。長短金利のバランスを見ながら資金吸収力を高める方法の一つとして検討中でございますけれども、長短金融の垣根問題、さらには郵便貯金の存在等がございまして、その取り扱いには慎重な検討を要する問題となっておるわけでございます。
大口預金金利につきましては、譲渡性預金の小口化も進みまして、漸進的な自由化が進んでおります。また、最近では、市場連動型預金の創設につきましての構想が出ておりますが、これにつきましても、譲渡性預金の小口化との関係、小口預金金利への影響等を十分見きわめながら検討していく必要があろうかと存ずる次第でございます。
国債等公共債に関します証券業務につきましては、昨年四月からの長期国債を皮切りに、中期国債、割引国債等の窓販を実施いたしまして、消化層の拡大、安定化の一助を果たしているものと存じております。
本年六月からはディーリング業務の実施が予定されておりまして、私どもといたしましては、ディーリングを希望する地方銀行には全行御認可いただくよう、既に大蔵大臣あてお願いをいたしております用地方銀行のディーリング参入は、一つには地方の投資家、顧客層への公共債投資機会の提供、二つには地方公社債市場の拡充整備、三つ目には今後の公共債の安定的かつ円滑な消化等に寄与するものと確信をいたしておる次第でございます。
また、国際業務、外為業務の拡充も当面の課題でございます。
地方銀行の国際業務につきましては、各種の規制、指導等が行われておりまして、都市銀行等に比べまして業務内容等の面でかなりな立ちおくれがございます。このために、取引先企業等の国際業務ニーズの多様化、高度化に必ずしも対応することができない面がございます。行政御当局におかれましても、こうした実情への理解を深めていただき、漸次弾力化が行われてございますが、地方銀行といたしましても内部体制の充実を図りながら、着実に問題の解決に努め、国際業務を進めていきたいと考えておるところでございます。
以上のような金融自由化の現状と私どもの直面している問題を踏まえまして、今後の金融自由化の進め方につきまして若干申し述べ、締めくくりとさせていただきたいと存じます。
まず第一は、金利と業務に関する自由化のバランスをとりながら、並行的に進めていくことが基本ではないかと存じます。銀行業務が厳しく規制されたまま金利だけが自由化されましても、金融自由化の目指す市場メカニズムの活用はおろか、いたずらに混乱を大きくし、ひいては信用秩序に不安を招くおそれがございます。業務の弾力化を認める形で業務分野の調整が行われ、金融システム全体が徐々に自由化されていくとともに、金利が自由化されていく必要があろうかと存じます。
第二は、業態間格差の是正と銀行の自主性尊重でございます。業務分野の枠の中で、例えば同じ普通銀行である地銀と都銀の間の格差は、例えば国際業務の面に残されております。金融自由化の進展する中で、こうした行政による差別は銀行の自由化対応を困難にさせるものと考えております。
第三は、金融自由化への展望を確立することが必要かと存じます。金融自由化に伴います混乱は絶対に避けなければならないと存じます。そのためには、個別、なし崩し的自由化によらず、自由化措置の効果を事前に十分検討し、金融システムへの影響を予測していくことが必要だと存じます。そうした検討を行うことによってまた環境整備が進み、それぞれの金融業態に応じた自由化への適合努力が行われ、その結果として円滑な金融自由化が進展することを期待しておる次第でございます。
以上で私の陳述を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)