山岸章の発言 (逓信委員会公聴会)
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○山岸公述人 全電通労働組合の中央執行委員長の山岸でございます。
私は、電電の当該の企業で働く労働者の立場から、この際、御意見を申し上げたいと思います。
結論から先に申し上げますと、出されております法案は、原案のままであるならば賛成いたしかねるということでございます。したがって、国会で十分御審議をいただきまして、前進的な修正をぜひ加えていただきたい、こう考えるものでございます。
まず第一のポイントとしまして、しからばおまえたちは、原案のどこに問題点を感ずるかということが問われます。この点、いっぱいございますけれども、私は特に六点だけ申し上げておきたいと思います。
まず第一は、政府は、この法案は行革法案の目玉だとおっしゃっておるやに聞いております。しかし私は、これは本来は行革とは本質的には異質のものである、二十一世紀を展望した高度情報社会へ向けて、情報通信の新しいシステムとルールをどうつくるかという観点の法体系の抜本的な見直しだ、こう受けとめております。ぜひそういう観点で国会でも御討議いただきたいと思います。
第二は、競争原理の導入ということが強調されております。私たちは、競争原理そのものについて全面的に否定するほど硬直した考えは持っておりません。しかし、競争原理と公共性の調和ということが非常に大切ではないか、こう考えるわけでございます。原案を拝見いたしますと、どうも競争原理が最大限重視をされて、公共性、国民の利益というものが軽視をされている嫌いがある、こう思います。
先ほども二人の公述人からお話がございましたが、新規参入の問題を我々は否定いたしません。しかし、無原則的な秩序なき新規参入というものが行われた場合には、そのしわが利用者に料金値上げとかあるいはサービスの低下ということで寄せられるおそれがございます。この点は、アメリカ、イギリスの現状を見ても明らかでございます。競争原理と公共性の調和をどう求めるかという観点でぜひもう少しメスを振るっていただかなければ、問題があるのじゃないかと思うわけでございます。
それから第三は、国益が損なわれるおそれがあるのじゃないか、こう思っております。当初の郵政省の原案では、第二種業については外資規制という発想がございましたが、最終的な政府案ではこれが消えております。外資規制がない、これは下手をすると、独立国としての通信主権を侵されるおそれがあるのではないか、このことを憂えるものでございます。
それから第四は、新電電に対する官僚統制が強化される危惧を私は非常に強く感じます。とりわけ当事者能力の制限、これは従来よりもきつくなるんじゃないかというように私たち当事者としては受けとめております。また一説によれば、法律では電電は第二種業を手がけることも認められておりますけれども、政府高官のお話では、電電が第二種業に進出をするのであれば、端末機も含めて料金については郵政大臣認可で、新電電に関する限りは料金はがんじがらめに縛り上げるというお話もあるやに聞いております。もしそういうようなことをやられたのでは逆に、公正競争条件というものが損なわれるのではないか、このことを憂えております。
それから第五の問題としては、スト権でございます。これは今度の法律では、労調法の附則を改正して、労働大臣の職権による中労委に対する調停中は、十五日間に限りストライキを禁止するという内容になっております。私は、近代的な労使関係、その中における労使の信頼関係というものを維持しなければ、企業体としての、公益事業としての活力ある運営はできない、こう思っております。労使関係安定のためには、このスト権の問題について法律で禁止という形で規制をするというのは、どうしても納得いたしかねるという気持ちでございます。
そして第六としましては、所有形態の問題でございます。原案では、実質民営化ということを志向しております。しかし私たちは、株式罪悪論はとりませんけれども、国民の共有財産である電電事業が、投資対象になったり金もうけの対象になったり、下手をすれば利権追求の対象になるということは、その事業の特質からして問題がある、こう考えておるわけでございます。
その他にもたくさん問題点はございますけれども、ポイントだけ申し上げると我々はそういうような見解を持っておりまして、したがって、この原案のままで無傷で国会を通されるということについては、当該の企業に働く労働者としては物すごく抵抗感を持っているということを申し上げておきたいと思います。
しからば、第二のポイントとしまして、原案に対しておまえたちはどういう注文があるか、こういうことが問われると存じます。この点で、多くは申しませんが、五点だけお願いをいたしておきたい、こう考えます。
第一は、公共性の問題でございます。これは先ほども申しましたように、競争原理と公共性の調和というものをぜひひとつ国民の目にわかるように明らかにしていただきたいと考える次第でございます。
それは競争といいましても、例えば東京-大阪間だとか、鉄道で言いますと新幹線区間は民間も参入してこられます。しかし、過疎地域その他のローカル、山間僻地、離島、これは競争関係なんか成り立たないわけなんでございます。これは新電電が泣いてもほえても、この原案でも示されておりますように、安定的なサービス提供を利用者である国民に対して行わなければいけない、こう義務づけられておるわけでございます。
したがって、そういうような要素についてどうするのか。先ほど内部補助はやめろという公述人の御指摘もございましたが、内部補助をやめれば、競争区間は値下げする、その他のところは、内部補助をやらないということになりますと、ローカルの地域の電話の加入者、山村僻地、離島の電話の加入者に対して、料金値上げというような事態が起こらないという保証はないわけでございます。この点など含めまして、ぜひ公共性と競争原理の関係の調和を御検討いただきたい、こう考えるわけでございます。
それから第二の問題としましては、消費者である利用者国民の利益を守る、今回の新しい法改正によって、国民の福祉に寄与するような体制をつくっていくということを、私は真剣に御検討いただきたいと思います。利用者国民との関係では、やり方を間違えますと、アメリカで起きておりますような料金の値上げあるいはプライバシーの侵害の問題、そういったものが起こりかねない、こう考えておるわけでございます。こういったものに対する対応策をぜひ確立を願いたいと存じます。
また、所有形態につきましても、電電事業は国民の共有財産であることは、歴史的経過を見て明らかでございます。したがって、共有財産にふさわしいような所有形態をぜひお考えいただきたい。私たちはオール・オア・ナッシングの棒をのんだような発想には立っておりません。先ほども申し上げたように、株式罪悪論というようなアメーバ的単細胞発想ですべてを考えようなどという気持ちはございません。仮に株式方式をとるとしても、その中でより国民の共有財産という電電事業の特質に近いような選択はあるはずである、政府原案だけが絶対的ではない、こう考えますので、そういう点、ぜひひとつ御検討を賜れば幸いだと思います。
第三は、国益を守るということでございます。この観点から第二種業に対しては、私は外資規制を加えるべきではないか、こう考えております。もうすでに巨大な国際的多国籍企業である、アメリカのビッグビジネスであるATT、IBM、これは日本の第二種業への参入を決めて体制を国内的にもつくっております。先ほどもお話がございましたが、果たしてそういう巨大なアメリカ資本が第二種業の分野に参入してきたときに、日本のどれだけの企業がこれに対抗し得るのか、極めて疑問であると私は思うわけでございます。
また、通信主権の関係もございます。そういったことを考えますと、ぜひ国益を守るという観点で外資規制を加えていただきたいというのが、我我の要望でございます。
第四は、日本の国内の情報通信産業のそれぞれの企業及びその企業で働く労働者の共存競争体制を、ぜひ確立するような対応を御検討いただきたいと思います。そのことをもって、二十一世紀を展望した我が国の高度情報社会の発展へ向けて国内の関係者が総力を挙げて寄与する、こういう体制がとれるような御考慮を賜れば幸いだと思います。
時間もございませんので、くどくど言いませんが、そのためには、ぜひ国内情報通信産業内における公正競争条件、これを確立できるように御検討を賜れば幸いだと存じます。民業圧迫になってもいけない、さりとてまた、新電電が第二の国鉄になりまして、けさのような順法闘争をやるような羽目になっても大変な問題でございます。したがいまして、ぜひこの点につきましては、国会において大所高所から御検討いただきたいと思います。
最後に第五として、そこで働く情報通信産業労働者、これは電機労連その他者関係しますが、この雇用の安定、それから働きがいのある事業の創出、このことについても御配慮をいただきたいと思うわけでございます。そういう観点からいきますと、私たちは当事者能力というものについては、経営形態を変更するのですから最大限認めてもらいたい。
それからまた、当事者能力と裏腹の関係にございますスト権の問題については、全電通は日本の官公労働組合の中で一番優等生の組合でございます。そうして我々は、ストライキをやって国民生活に御迷惑をかけないように、そういう問題については労働協約において自主的に労使で協定しよう、これは労使でも意見が一致しておるわけですから。したがって、私たちの実績を見ていただきまして、法律で労働基本権を規制するという原案についてはぜひ再検討をお願いしたい、こう思うわけでございます。
以上、非常に雑駁でございますが、全電通労働組合としての意見でございます。どうもありがとうございました。(拍手)