土田正顕の発言 (大蔵委員会金融及び証券に関する小委員会)

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○土田政府委員 本日の小委員会では、金融機関、ノンバンク等の融資動向とか、金融制度改革とかについて御討議があるものと承知しておりますので、これらの点につきまして銀行局から全般の情勢を御説明申し上げます。
 まず、現在、金融機関の経営をめぐり、御承知のようにさまざまな問題が生じておりますが、ここで、その背景及び私どもの考え方について申し上げたいと存じます。
 昭和六十年九月のプラザ合意以降急速に円高が進展する中で、それによる不況色を緩和し、国際的な政策協調を図りつつ内需主導型の経済構造への転換を図るため、一層の金融緩和政策がとられることになりました。その結果、日本経済は、物価の安定のもとで、六十二年度以降内需中心に実質五%程度の成長を達成し、対外不均衡是正の面でも着実に前進を見ました。
 こうした実体経済の動きは、金融機関の経営にも大きな影響を与えました。すなわち、もともと金融緩和期においては、借り手有利の状況になりますが、今回の緩和局面では、我が国の経済構造の転換に伴って、金融機関にとっての主な資金需要先が、輸出関連の製造業から内需関連の非製造業、サービス産業に移行するという変化が見られました。また、資金使途としては、従来型の設備投資資金などに加え、資産取引絡み、いわゆる不動産、財テク関連の資金需要がふえてまいりました。
 さらに、この間、預金金利の自由化を初めとする金融の自由化が本格化してきております。
 預金金利の自由化は、昭和六十年十月に十億円以上の大口定期預金について開始され、以来着実に進められております。また、内外資本市場の整備の結果、株価の上昇と相まって、企業の株式、社債などでの資金調達が活発化する一方、企業の短期資金調達手段として昭和六十二年にコマーシャルペーパーがスタートするなど、企業の資金調達手段の一層の多様化が図られてきております。
 こうした金融の自由化は、金融機関の資金調達コストの上昇や貸出先の縮小を通じて、金融機関の経営環境を構造的に厳しくする側面を有しております。このため、大手の金融機関は、国際業務の拡大といった業務の多様化とあわせ、本来業務である貸出分野においては、中堅、中小企業及び個人といったいわゆるリテール業務の強化を図り、その結果、中小金融機関を含めた貸出市場での競合が一層激化いたしました。
 そうした貸し出し競争激化の中で、金融機関の資金は、特に資金需要の強い分野、すなわち、先ほど申し上げた非製造業などに、また、資金使途としては不動産、財テクなどに向かいやすい状況にありました。また、こうした分野は、従来からいわゆるノンバンクたる貸金業者が得意としていた分野であり、ノンバンクを通じた資金の流れも拡大していった事実があります。
 ただ、それらの過程で、金融機関の公共性を問われるようなケースが幾つか発生したわけであります。
 すなわち、このような金融環境のもとにおきまして、金融機関の融資構造が急速に変化いたしましたため、金融機関が安定的な営業体制を立て直すいとまがないまま、安易に業容拡大、収益第一主義に向かいやすい状況にあったことも事実と思われます。
 このような背景のもとで、組織管理に欠陥があった一部の金融機関では、例えば住友銀行の元青葉台支店長の出資法違反容疑事件にも見られますように、不祥事件の発生を見るに至りました。また、営業姿勢の面につきましても、土地、株式、あるいは最近特にマスコミで取り上げられている特定商社に対する銀行融資などについて種々の社会的批判を生じましたことは、銀行局としても承知しているところでありまして、大変遺憾に思っているところでございます。
 当局といたしましては、金融機関の基本的な業務運営のあり方や不祥事件の未然防止などに関して従来から指導に努め、また、不幸にして不祥事件など社会的批判を受けるような事態が生じた場合には、厳しい態度で臨んできたところでありますが、今後とも、金融機関が公共性の適切な発揮の実を上げて社会の期待にこたえ得るよう、引き続き厳正な指導及び深度ある検査に努めてまいる所存であります。
 ところで、こうした金融機関の経営環境につきましては、平成元年五月の公定歩合の第一次引き上げを契機に、金融政策が緩和から引き締めへと転換されるに及んでさらに一変しております。金利自由化後の引き締めということで、資金調達コストの急上昇に伴う利ざやの縮小により収益が圧迫されますとともに、昨年初来の株価の大幅な下落により、保有株式の評価損の発生あるいは含み益の減少、また、これに関連して、自己資本比率に関する国際統一基準、いわゆるBIS規制の自己資本比率が低下するという問題が生じております。
 もっとも、我が国の金融機関は、総体としては、なお過去の蓄積と豊かな経営資源に支えられており、国際金融上の混乱要因となるかのような懸念は全く無用であると考えておりますが、いずれにしても、このように経営環境がさらに厳しくなる中で、金融機関は、従来の経営姿勢を改め、劣後ローンの取り入れ等による自己資本の充実にあわせて、利ざや、信用リスクといった観点からの融資の選別化を図るなど、いわば量から質への経営の転換に今懸命に取り組んでいるところでありまして、当局としても、このような金融機関の前向きな努力を可能な限り支援したいと考えております。
 なお、金融機関、ノンバンク等によるいわゆる土地融資の問題についても御説明申し上げるべきところでありますが、時間の関係もあり、後刻に譲らせていただきます。
 ここで、金融自由化のもとにおける今後の金融行政に関し、銀行局として考えておりますところを申し述べさせていただきます。
 銀行は、銀行法第一条の目的規定に示されておりますように、経済活動の中枢を占める資金仲介機能の発揮という高い公共性と、私企業形態で経営され、創意工夫を発揮しつつ自己責任の原則のもとに営業活動を行うという私企業としての性格とをあわせ有しております。
 したがいまして、銀行行政に当たっての基本的考え方は、銀行の公共性と私企業としての自主性の尊重という二つの性格を調和させていくことであり、これは金融自由化のもとにおいても何ら変わるものではないと考えております。
 もっとも、金融機関も私企業である以上、収益の基盤が著しく損なわれる状況のもとでは、その業務の適正さを確保することは困難であります。経営基盤の維持を通じた金融機関の健全経営の確保は、信用秩序の維持、預金者保護といった観点からも求められるところであります。
 小口預金金利の自由化の進展に備えて、当局によるモニタリングの強化や金融機関の経営困難への対応策の整備といった、いわば自由化の環境整備を図ってまいりますが、それにとどまらず、金融経済構造の変化に伴う収益基盤の変化に合わせて、その器、すなわち、金融制度面についても見直していくことが必要ではないかと思います。
 ちなみに、米国において、現在金融システムの脆弱性が非常に問題となっております。最近の米国の金融機関破綻の直接の原因は、個々の金融機関における経営のずさんさにあると言われておりますが、企業の資金調達がコマーシャルペーパーや社債に移る中で、銀行の貸出先としては、債務累積国向けが困難な中で、LBOや不動産関連といったハイリスク分野に入り込まざるを得なかったという事情があるとも言われており、アメリカの財務省は、先般公表した金融制度改革に関するレポートの中で、「技術の進歩が金融業務に大きな進歩をもたらしているが、銀行は時代おくれの法制度に縛られている」として、銀行の安全性と競争力を高めるよう金融制度を改革することを提言しております。
 米国と我が国で事情は異なりますが、こうした基本的な考え方には大いに参考にし得るものがあると思われます。
 ここで、その金融制度見直しの問題について、やや個人的な意見をも交えながら付言したいと存じます。
 近年の経済構造の変化の中で、金融は今や資金余剰がその基調をなすに至っております。このような時代においては、金融機関の業務範囲を縦割りに厳しく区分けすることの意義は薄れてきたと言わざるを得ないと考えております。
 また、金融の証券化、機械化が進展する中で、各業態において種々の新規業務や新商品の開発がなされておりますが、銀行業務や証券業務などが法律上分離されている現行制度のもとでは、その都度、担い手をめぐり銀行、証券会社などの間の調整に多くの時間と労力を要しているのが現状であります。
 この結果、金融界がいわゆる業際問題のみに明け暮れしているかのような印象を世上に持たれているとすれば、それは大変残念なことでありまして、戦後四十年余の経験と変化の跡を顧みつつ、銀行業務、信託業務、証券業務等各種金融業務間の相互参入を基本とする早急な制度改革を行い、このような問題の解決を図る必要があると考えております。
 一方、欧米におきましても、米国では逐次、銀行の業務範囲の緩和が行われてきております。これに加え、先般、財務省より現行の銀行、証券分離制度の見直しを含む金融制度改革案が発表されるなど、金融制度改革論議が活発化してきております。
 また、EC諸国においては、一九九三年一月に発効するEC第二次銀行指令に基づき、ユニバーサルバンキングを前提とした広範な業務範囲の設定が行われるものと思われます。
 このように金融の自由化は世界的な潮流となっており、我が国の金融制度を考えるに当たっても、国際性の観点から、これら諸外国の動向に合わせて、諸外国と整合性のとれた制度とする必要があります。
 我が国の金融制度の今後のあり方については、昭和六十年以降金融制度調査会において審議が続けられており、最近では、平成二年七月に設置された制度問題専門委員会におきまして、相互参入の具体的範囲と形態に関する基本的考え方についての審議が行われているところであります。ここでは、各金融機関が、原則として他業態の業務に幅広く参入すること、各業態への参入は原則として業態別子会社のような別組織によることなどについて御審議いただいているところであります。
 私どもの過去の経験に顧みましても、また、諸外国の状況を見ましても、制度改革には個別の利害が錯綜いたしますため、意見を集約することは容易なことではありませんが、私どもとしましては、金融制度調査会などの審議会の御審議を踏まえつつ、機会を見て、事務当局としての草案の取りまとめに入りたいと考えております。
 以上をもちまして、御説明を一たん終わらせていただきます。

発言情報

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発言者: 土田正顕

speaker_id: 17599

日付: 1991-03-01

院: 衆議院

会議名: 大蔵委員会金融及び証券に関する小委員会