山口六郎次の発言 (鉱工業委員会)

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○山口(六)委員 私はこの委員會の調査班派遣に關しまして、常磐を擔當したのでありますが、他の會派からも御同行願える豫定であつたのでありますが、どなたも支障がありまして、參議院の方からは委員長初め四名が参加いたしましたが、衆議院からは私一人であつたのであります。しかも常磐班四日の行程の中で、私はあいにく二日間の行動を共にしたに過ぎませんので、必ずしも十分ではないと存じますが、一應簡單に報告申し上げます。
 三千トン生産の隘路の究明につきましては、一應三段階にこれを見ることができるのではないかと思うのであります。第一は一般的の問題としての隘路、第二は一般的の問題ではあるが、特に關心を寄すべき問題、さらにそれぞれの炭田地帶を構成しておりますその地區の特殊事情の面、かように分類してみたわけであります。そして一般論としての隘路でなしに、今日ではほとんど常識化されております資材の問題であるとか、あるいは資金、食糧、勞務ないしはこれに關連いたしますところの職場規律といつたような諸問題につきましては、おおむね北海道、九州各班と大同少異であろうと思いますので省略させていただきまして、ただ特に指摘して注意を御喚起願いたいと思います調査内容は、資金の面に關しまする部分であります。石炭の生産が、こうした諸般の面におきまして、強い國家の制約統制などを受けているときにおきまして、この資金の枯渇している事實が非常に生産に影響している、殊にそれがためにたとえば坑木を買うとかいうような場合におきましても、その資金のまわりが惡いために、それの入手が非常に遲れ、從つて生産に影響するというように、支障の面が非常に少くないのであります。坑木のごときは、普通常識的には一箇月ないし二箇月、三箇月くらいの保有があるのが通常だそうでありますが、私の見ました常盤地區におきましては、はなはだしきにおきましては三、四日の保有量しか貯えがない。非常に條件のよいところさえも、一箇月くらいである。かような事實を、今日のごとく輸送の非常に困難なときにおきまして、このような事態に放置いたしますことは、生産の上に大きな支障を來してくることは當然であり、かつまたそれによつて起る不慮の災害等も考えなければならない。從つて特にこの資金の面につきましては、特段の注意をすべきものではないかと考えるのであります。
 それから一般的な問題であるけれども、特に關心をもつて調査し、また現地の聲として聽いてまいりました問題は、バーターの停止の問題であります。これもすでに論議し盡され、かつまたやむを得ざる結果であつたことは、各位御承知の通りでありますけれども、しかし今日の生産面に、このバーターの停止がいかの廣汎なる影響を來しておるかということは、現地の勞務者、職員、業者も聲高く叫んでおるのであります。從いましてこれは安定本部その他の強い方針でありますものの、現在のような國内の産業状態の中におきましては、これはたとえば同炭鑛において十萬トンの生産計畫をした場合に、さらにこれが十一萬トンの生産をする。すなわち一萬トンの餘剰制産を強行する場合には、これに對してはバーターに似た何らかの方法があり得るのではないかというようなことは、これは安定本部なり、ないしはその他の方面に、こうした實情、及び生産がそれだけ増加するという嚴然たる事實を強く主張して、政治力を發揮したならば、必ずしもそれはだめだといつてあきらめずに、將來に勘考していい問題として取上げるべきではないかといつた感じを強くしたわけであります。
 それから石炭國管問題の論議が、現在の生産面に非常な影響を與えておると言われると思うのであります。これまたすでに御案内のごとく、この石炭國管につきましては、本委員會におきましても、また政府としましても、未だ正式な案を出したのではないのでありまして、現在論議せられておりますところの各黨の案等も、まちまちな案が論議されておるのでありますが、そうした事實が、そのまま現地生産業者、職員、勞務者に反映しております。從つた現地における石炭國管問題が非常にばらばらな内容において想像せられ、認識せられ、またそれぞれの立場から希望的観測を加えられて論議せられてあるのが事實であります。從いまして、こうした問題が論議せられておるそれ自身のために、それらの勞務者、業者、職員がその方に相當精神を奪われて、生産を阻害しておることも、隘路の一つの理由としてあげて差支えないと考えるのであります。もちろんこの國管に關します取扱内容等の全體につきましては、いずれ申し上げる機會があろうと思うのであります。現在生産に從事しておる平和なうちに、こうした論議それ自體が、生産に非常に影響しておるという事實だけを御報告いたしまして、生産隘路の一つの事實として申上げておきたいと思います。
 それからさらに炭價政策の問題であります。炭價政策につきましては、新しい物價體系によりまして、石炭價格も決定いたしましたので、一應生産業者といたしましても、同時にまたそれによる職員、勞務者に對する賃金も、一應の態勢が整つたので、從つてそれによつて生産意欲が生じているということは言い得るのでありますが、しかし過去の長い間の炭價政策のあとを顧みますと、戰爭前の石炭業界のあり方、戰爭中の石炭生産業界のあり方、現在の石炭生産業界のあり方、かように三段階に分解してみまするとき、私どもは非常に教えられ、反省する點を感ずるのであります。戰爭前におきまして、石炭産業がきわめて自由企業として、同時にしかしながらこれに携わつている勞働力のごときは、まつたく捨てられた民、そうした人たちによつて大部分の勞働力が充足されていた。ないしは朝鮮、中華民國の勞務者によつて充足されていた。いわゆる監獄部屋というようなものが傳えられていたあり方によつて生産され、その間において生産業者の搾取的な經營のあり方、そうしたあり方においてあつたのであります。それが戰爭中になりまして、ともかくも五千六百萬トンという相當厖大な生産ができたのは、これはまつたく當時の國民及び勞務者の必勝の信念に基くものであつた。そうした精神力によります國民の奉仕勞働、ないしは報奬物資によつてこうした結果を見たのでありますが、そうした過程を辿りまして、今日の石炭の價格につきましては、戰爭中のそうした補給金制度によるような方法の價格が、そのまま戰後に引繼がれているというところに、非常な誤謬があることを指摘せざるを得ないのでありまして、そうした聲を強く聞き及んだのであります。從いまして、過般ようやく一應の炭價が決定したのでありますが、この炭價が現在の價格政策上適正であるかどうかは別として、ただそれだけの事實によりまして、職員、業者、勞務者の生産意欲が上昇してまいつたことは顯著な事實であります。しかしそれと同時に發表されました他の重要物資の新しい價格、及びそれによりまして相次いで諸物價が必然的に高騰してまいりましたために、この價格がはたして今後相當期間適正價格として勞務者を支えていき得る價格であるかということにつきましては、相當な疑問と心配を、業者も職員も勞務者もしておるようであります。從いましてこの炭價の政策につきましては相當關心を拂うベき必要が今後もあると思うのであります。
 それからこれもほとんど今日におきましては社會通念にひとしいのでありますが、業者も職員も勞務者も、現在の社會情勢、すなわち敗戰後のまだ混亂した精神力が奮い立つておらない、一方におきましては、復興會議等において諸般の運動が著々進められておりまして、それによりまして多少の效率は發揮しつつあるのでありますが、まだそうした面においてそれぞれの職場における精神が完全に立ち上つておらない。この實情も現在の生産の隘路として指摘し得ると思うのであります。從いまして、こうした面における特段の處置が考えられる、かようになるのであります。
 そうして特に私どもの行きました常磐の特異性の面に關しまする經過を御報告申し上げまするならば、常磐地區は御承知のように、茨城、福島の海岸に大小六十有餘の炭坑があるのであります。そうして昨年度の目標は二百十七萬トン強の目標に對しまして、實績が二百三十一萬トン強という數字が上つておるのであります。今年度の二十二年度におきましては、五十九萬五千七百二十トンの目標に對しまして、六十萬トン強の生産をいたしまして、百パーセントを超過しておるのであります。そうしてしかもこうした内容をもつておる常磐炭田のその特異性といたしましては、これまた御承知のごとく温泉湧出という特異な面をもつておるのであります。そうしてこの熱度も高い、しかもこれが湧出の状況におきましても、一分間に非常な大量の湧出があり石炭一トンに對しまして六十トンの湧水を汲み上げるという状態にある特殊な地帶であり、しかもそうした事情でありまして、八百尺ないし千尺の水位において現在維持いたしまして採掘しておるのでありますが、このまま水位の低下に努力をいたしません場合におきましては、現在の豫定でありまするところの目標量ないしは將來こうした數字は當然維持することは困難になるのであります。これがために、現地の業者といたしましては、約五億圓程度の水位の低下をはかる施設經營を行うベきであるという計畫を立てておるようでありますが、それによりまして、すなわち千五百尺くらいまでの水位の低下に努力いたしましたならば、この常磐炭田、特に平を中心といたしましたこの地帶に、その水位以下に埋藏せられておるところの二十億トンとも稱し、二十五億トンとも稱するところの石炭が、現在の生産を維持し、またそれ以上の増産ができるということも考えられるのであります。從いまして、その點に關する特段の考慮を拂う必要を特に感ずるのであります。それから常磐炭田は都市に近い、すなわち東京に近いという事實が、思想の面におきましても、經濟の面におきましても、非常に敏感に影響するのであります。物價も勞銀も、思想も文化も、厚生も、あらゆる面におきまして、ただちにそうした影響が敏感であります關係上、これらも現在の經濟界の様相、國内の諸様相が影響いたしまして、生産の隘路として算え上げたらどうかと思いますが、一應そういう點に對する對策を講ずる必要があるという意味におきまして考えられるのであります。さように考えまして、常磐地區に關しましては、特に今日石炭輸送難とか、やはり、消費關係に直接の大きな隘路缺陥と見られる場合におきましては、消費地區に直結しておるという事柄、すなわち東京にあまり遠くないという地帶において生産いたしまするところに常磐炭田につきましては、そうした輸送がきわめて簡便にできるという事實にも思いをいたしまして、それぞれの施策があつてしかるベきではないか、かように考えるのであります。
 それからこの機械化の問題につきまして、常磐地區におきましては、特に古川、好間は全國におきましても著名な機械化の炭鑛であるのでありますが、この機械化によるところの生産原價というものも、從つて安くできる、そうしてまた高能率であるという顯著な事柄に思いをいたし、さらに今日、戰爭中に荒廢いたしました機械などの不十分な實情に思いをいたしまして、そうした點の急速なる修理補足による機械化に對しまして、特段の努力が必要であるということを強く申し上げておきたいと思うのであります。なおここに附け加えておきたいことは、古川、好間の一つの例でありますが、從來の補給金の價額に關するきめ方につきましては、古川、好間の機械化による生産コストが安いという事柄が、補給金の給せられる額に關連をもつてくるのであります。從つて古川、好間がそうした面に多分の犠牲と努力を拂いましても、それがただちにそうした面に現われてこない。消費者といたしまして、そうした犠牲と努力とが何ら補給金の價額の面に見込まれておらないという事柄を考えたいのであります。先般きまりました炭價につきましても、この點については考えが深く及んでおらないのではないかということを現地でも申し、私どももさように認識せざるを得ないのであります。
 大體以上簡單でありまするが、一應の經過を御報告したわけであります。以上は單にところどころ多少の所見を加えてありますけれども、調査いたしました隘路を指摘したにすぎないのであります。しからばこれをどうするか、こうした面においてはどうするかといつたような個々の建設的な意見、ないしは國管案に對しましても、相當關心をもつた大きな論議が交わされたのであります。その問題に對する取扱い方、ないしはそれが内容等につきましては、必ずしも本日調査報告いたすベき内容ではないかと思いますので、いづれ機會を見て御報告したいと思います。

発言情報

speech_id: 100104283X00419470806_002

発言者: 山口六郎次

speaker_id: 8927

日付: 1947-08-06

院: 衆議院

会議名: 鉱工業委員会