野坂參三の発言 (本会議)
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○野坂參三君 私は、日本共産党を代表しまして、今日上程された補正予算、これに対する反対の意見及びこの予算を政府に返上してもう一度やり直してもろう、こういう意見を申し述べたいと思います。
まず第一に私たちの反対する理由は、今委員長からも報告がありましたように、公聽会におけるほとんど大多数の公述人諸君及び委員会における各種の党の代表者の発言の中でも、また政府から提供されました資料とかあるいは政府責任者の若干の答弁の中にも、一致して認められていることは、結局、この補正予算というものはインフレを助長するものであるということ。大藏大臣は健全財政と申されますが、しかし、この大藏大臣の声は、大衆の中のただ一人にすぎない。大多数の者は、これは不健全な——ある責任ある、また日本でも有数な財政学者といわれている人の言葉によれば、日本の財政史の上でこれほど不健全な財政はないということがいわれている。なぜ一体こういうことが起るかと申せば、私は二、三この点について申し述べたいと思います。
第一に、政府の方では今度の予算をつくる上において、それの基礎としては國民所得を九千億円、こういうふうに見積つておられます。これは一つの私たちの見方から見れば、大きなインチキであります。どうしてこの基準が出たかと申しますと、これは昭和十年のその時の國民所得を百五十六億円、こう見積もつて、これの六〇%、これが今年度の実質的國民所得ということになつております。九十四億円、これが今年度の実質的國民所得ということになつておるのであります。
さて、この六〇%、これが問題である。(「倍じやないか」「いや生産だ」と呼び、その他発言する者あり)生産が六〇%である。そうしますと、この六〇%はどこから出るかといえば、たとえば鉱工業の生産を見ましても、この期間には、わずかに三〇%ないし四〇%にすぎない。ところが、ここでは六〇%である。そうしますと、鉱工業以外の、たとえば商業方面その他におけるものを、八〇、九〇、こういうふうに大きく見積もつている。こういうことはあり得ない。こういうふうに大きな水が盛られている。これがすなわち九十四億。
ところが、この九十四億の実質國民所得というものが、政府の計算によりますと、突然九千億に上つている。これは何かといえば、その期間における物價の騰貴ということであります。しかし経済白書には、明らかにこの期間における物價の騰貴は六十五倍ということになつている。なぜ一体百倍になつているのか。この問題について、私は委員会において政府当局者に聽きましたが、政府当局者は遂に答えることができなかつた。なぜ百倍にしたか、これを答えることができない。これはすなわち、九千億というものはでたらめである、いいかげんにつくられている、これを証明している。
ところが、この九千億、これを土台にして今度の予算をつくつて、これが健全財政、健全財政と言つている。私たちの計算では大体において日本の今日の國民所得を一千数百億円超過するような大きな予算が組まれておる。これは私だけの意見ではありません。大内教授も、公聽会において同樣なことを申されておる。ただこれを否定するのは政府だけです。
そのほか、この委員会におきましては、たとえば今税金の問題で、未納金が厖大なものに上つておることは皆さん御承知のこと、そこで、これをどうして埋めるかと質問した。結局大藏証券にもつていく。この大藏証券は、今委員長の御報告もありましたように、四百億に上る。これはどういう結末をつけるかということを、私は委員会で質問しました。結局これは日銀の背負いこみだと言つておる。これがすなわち、日本銀行の紙幣を発行しなければならないことになる。
さらに復金債の問題があります。これが五百五十億ありますが、しかしこの中で、大藏大臣の御意見では、これを今まではほとんど大多数日銀の負担でやつておつたが、今後は市中銀行にこれを消化させる方法をとる。それがために利回りも考慮する。で私は、政府の当局者に聽きました。市中銀行で一体いくら消化できるかというと、大体一割程度、前に一割、今度も一割、そうすると大体二割が市中銀行において消化できる。あとの八割は、やはり日本銀行へもつてこなければならない。政府の当局者は、やはりこれは日本銀行の負担になると言つておる。ここからやはりインフレが出てきます。
そのほか土木工事費の問題、あるいは千八百円ベースは必ず破綻しなければならない、こういうようなところからも、必ずインフレーションが起つてくる。第二次、第三次の追加予算は必至である。今日の新聞を見ましても、もう政府当局としては第二の追加予算を今考慮されておるという。たとえば、官公吏の給與の問題とか、あるいは災害復旧の問題とか、六・三制の問題、これについて五十億ないし百億の新しい追加予算を準備されておるということである。これ自体すなわち追加予算の第一歩にすぎない。そうして今年、來年にかけては必ず第三、第四の追加予算は必然だと思う。
また和田安本長官の方でも、この年末には千九百二十億の日銀の紙幣は出るだろう、これ以上は多分出ないだろうということを強調されましたが、しかし、数日前参議院の公聽会で川北日銀副総裁が申されたのは、そうでない。二千億をはるかに突破するに違いない、二千九十一億になるだろうということを、日銀の責任者が申されておる。ただ和田安本長官だけが千九百二十億円を過ぎないと言つておる。しかし、現実はそうじやない。どんどん紙幣は増加してくる。これが來年三月になれば、あるいは二千数百億、あるいはある人の意見によれば三千億に達するかもしれない。すなわちインフレはどんどん進んでおる。
私は皆樣に御注意を喚起したいことは、今年の春ごろまでは、日本のインフレの状態は、たとえば日本銀行の紙幣の増加額は、物價の増加額に大体において並行していましたが、しかし、春ごろから異状を來して、日銀の紙幣の増加と物價とは、物價の方がはるかに上まわつてきておる。これはすなわち惡性インフレ、すなわち第一次世界大戰後のあのドイツのような惡性インフレが、われわれの目の前にあることを示しておると思うのです。私はこの問題を考えますときに、今度の予算は明らかに日本の経済を破綻させる性格をもつた予算であると思う。この意味におきまして、私はこの予算に反対するのであります。
第二の問題としましては、これは先ほど鈴木委員長からも申されましたが、今度の予算は大衆に負担を非常にかけるものである。たとえば間接税を見ましても、これが税收の半分以上を占めておる。これはみな大衆課税である。ところが、直接税の中にはどうかと申しますと、たとえば勤労所得税、事業所得税、そのほかずつと大衆課税に類するものを計算してみますと、直接税の中で六〇%位は大衆的な性格をもつておる。ここでもやはり大衆の負担になつてくる。しかも問題になるのは、この直接税の中で源泉課税的なもの、たとえば勤労所得税、ああしたものは嚴重にとることができるが、そのほかのものにおいては、常に脱税がやられておる。そこで、結局結論としては、この税制の中において間接税が大多数を占め、直接税の中でもやはり大衆課税が大多数を占めておる。ここを見ましても、いかに今度の予算というものが大衆課税的な性格をもつておるかということを明瞭に示しておると思うのであります。これが第二の理由。
第三の理由としましては、この予算全体、これを見た場合において、資本家擁護の性格が非常に強いこと。また現実にインフレがどんどん進む。この予算においてインフレがますます進んでくる。これ自体から日本の資本家はもうけることができる。実質賃金は下る。物價は上る。從つて、ここに利潤が上つてくる。これすなわち資本家擁護の財政といわざるを得ない。
さらに歳入を見ましても、一方では、先ほど申しましたように大衆課税の性格がありますが、資本家に対して課税的な性格をもつている、たとえば法人税、こういうものは、わずかに四十二億。價格差益金、これは全財の代表者の言はれるところによると、價格差益金は、日本で今とろうと思えば三百億あるだろうといわれている。しかし、政府はわずかに六十億しかとつていない。その他脱税の追徴金とか隠匿物資処理費とか、こういうものが、ほとんど計算されていない。すなわち、やみ利得者はちやんと保護するようにでき上つておる。
また歳出の方面を見ますと、これは歳入とは逆で、たとえば終戰処理費は別個としましても、價格差補給金とか船舶運営の補助金とか、貿易資金とか、復興金庫出資金とか、そのほか、こうした大体において事業家を援助するような歳出が、全歳出の七三%を占めます。これは私たちの計算ですが、さてそれでは、この歳出の面で一体いくら勤労者の方面に出ておるかと申しますと、先ほど委員長は、直接に大衆に出ているようなものはわずかに一〇%にすぎない、こういうふうに申されましたが、私のはそれ以上間接に関係するようなものを計算して見ますと、大体二七%ある。すなわち歳出の方面では、資本家擁護的なものが七三%ある。大衆に多少でも関係のあるようなものは、わずかに二七%。
これを見ましても、今度の予算というものが、歳出歳入を見て、いかにこれが大衆の生活をますます窮迫化し、他方においては、金持の連中にとつてはこれはある援助が與えられる、こういう性格をもつておる予算であるかということがわかる。これが、私がこの予算に反対する第三の論点であります。
第四には、この予算を見まして、半分以上が生産的でない方面に使われています。しかも、この財政政策全体を見ますと、積極的に今日の日本のこの破壊された状態を回復し、また將來に何か見透しのあるような政策が少しでもここでは盛られていない。積極的な面は少しも出されていない。この問題に関して、今日の日本の危機を切り抜けるためには、断固たる政策をとるべきである。今までのような、いい加減な彌縫策でやれば、結局日本はじり貧——じり貧ではない、あるいは亡國の状態になるかもしれない。これは今度の予算を見れば、よくわかります。
私はこの場合において、共産党が今まで主張したこと、これはここでは申し上げません。ただ、今総理大臣を送られている社会党の諸君が、この春の選挙の時に主張されたこと、これだけでも、もし行われるならば、このインフレの状態はこうまでなつてこなかつただろうし、このような予算も出されなかつたはずだと思います。
たとえば、社会党の政策を見ますと、第一に、資本家補給金を廃止しようということを述べておる。われわれも賛成です。ところが、今度の予算はどうであるか。逆ではないか。また第二に、社会党の方面では戰時公債の利子を一年間にたな上げということを主張されたが、今度はどうか。これが少しも盛られていない。また社会党は選挙の時に、一枚看板として新円大口所得者に対する重税を課すると言われたが、一体これがどこにあるのか。少しもない。また社会党としては、第二次財産税ということも主張された。これも、もちろんない。また社会党は、金融機関の國家管理、こういうことを主張された。しかし、これももちろん載つておりません。これは民主党との連立の関係上出されないのだということを、いつも申されます。しかし、私が社会党の総理大臣である片山総理に予算委員会で聽いたところによりますと、結局社会党は、今度のこの内閣では社会主義というものはやらない。もしやるとすれば、ちびりちびりやつていく。そこで私は、一体どういう風におやりになるのかと申しましたところ、今出たところの法律案で、政治的方面におけるいろいろな社会主義の基礎をつくる、こういう意味のことを申された。それはどういうものかと申しますと、これは結局社会党がつくつたのではなく、前から新しい憲法に附属したいろいろな法案があり、これを今出されたのに過ぎない。またここで特に注目すべきは、片山総理は國家公務員法というものを出したではないかと言われたのでありますが、私は、この國家公務員法ほど日本の官公吏が反対した法律はないと思う。この國家公務員法は彼らを縛り付ける惡法であると、彼らが徹底的に反対した。これを社会党は提出したことを誇りとしている。私は時間がありませんので、これ以上申しません。
最後に申し上げると、結局この予算全体を見た場合において、インフレはますます激成される。國民大衆の生活はますます窮迫する。日本の経済的な再建はできない。できないだけではない。私は日本の経済力がさらに弱つてくると思う。特にきよう上程されようとする経済力集中排除法案、これは、私がこの前ここで述べましたように、日本の経済力を分散して、日本の経済力をますます低下させる。その結果はどうかと言えば、結局日本の國の経済が、外國にすべて頼らなければならないことになつてくる。言い換えれば、民族の独立が危くなる。こういう性格をもつた法案である。
この意味におきまして、私は共産党を代表しまして、明かにこの予算に対して反対を述べると同時に、政府側におきましても、この予算を再編成してもろう、こういうことを要求して、私の討論の演説を終りたいと思います。(拍手)