加藤シヅエの発言 (本会議)

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○加藤シヅエ君 ただいま議題となつております追加予算に対しまして、私は社会党を代表して一言意見を述べさしていただきます。
 まず第一に申し上げたいことは、われわれは決してこの追加予算に満足していないということであります。このことは、すでに予算委員会におけるわが党からの質疑討論において十分盡してありますので、ここでは簡單にその要点だけを指摘しておきます。
 この追加予算案は、第一に、これはインフレーションに追いかけられてでき上り、しかも、この予算の施行によつてインフレをさらに助長するおそれのあることであります。第二に、支出の目的が著しく資本救済の臭味の強いことであります。第三に、その当然の結果として、社会党の政策が隅の方に小さくちじこまつていることであります。第四に、いわゆる形式的な健全財政の犠牲として、勤労大衆に過重な負担を求める傾向の強いことであります。また手続の上からはいろいろの事情もありましようが、会期ぎりぎりのところで提出されたので、國民の納得のいくように十分審議する余裕を與えられなかつたことであります。もし時間にゆとりがあれば、徹底的にこれを修正したいところであります。しかし御承知の通り、現下の非常事態におきましては、一日の愉安はたちまち全國民の経済の崩壊を招來し、勤労大衆の生活は危機に追い込まれるような事情にあります。この瞬間におきまして、われわれに與えられた任務は、いかにしてこの当面の危機を切り抜けるかにあります。
 予算の内容を見ればおわかりのように、この追加予算は、敗戰國の予算としての特質が次のように現われております。第一に、終戰処理費と賠償撤去費が、本予算と追加予算との合計において総支出の三〇%を越えること。第二に、戰爭と敗戰とによつて直接または間接に被害を受けた氣の毒な方々に國家から救援の手をさし伸べる費用として、生活保護法、引揚者関係費、災害扶助費、失業手当及び失業保險費、國立病院等の物件費、それから引揚者を運ぶ船舶に対する船舶運営会補助費等が、六・七%を占めております。第三に、戰爭と敗戰の惨害から起ち上るための復興費用が、公共事業費、義務教育費、住宅復興資材費、農地改革費、農業生産調整費、外國貿易業者來朝費、試驗研究所物件費及び地方分與税分與金等で、本予算と通算して一七%に及んでいること等であります。
 このように、戰爭と敗戰の跡始末と、これから起ち上るための費用は、全体の五四%にも達しているのであります。残りの四六%は、大部分がインフレーションの結果支出せざるを得なくなつた給與改善費とか、特別会計の赤字を埋めるための経費とか、インフレの激化を抑制しようとする價格調整費や政府出資金等でありますが、これがまた、かえつてインフレを上昇せしめる危險を孕んでいるのであります。概観いたしまして、戰爭の惨害を速やかに解消して國民経済の復興をはかる経費がわずか一七%しかないことは、この予算の特色をなしており、まことに遺憾に堪えません。
 この追加予算を通じて見たわが日本の國民生活の現状は、実に暗澹たるものがあります。しかしわれわれは、日本國民の自負心に訴えて、過重な負担であるとはいえ、敗戰日本の責任完遂のための経費、または最低の生活に足りない給與であるとはいえ、解決すべき問題は、勇敢に解決しなければならないと思います。(拍手)すなわち政府は、歴代内閣の失政の後を受けて乱脈の限りを呈している配給機構を整備しなければならないと思います。(拍手)
 政府は配給の確保によつて、家計の赤字を歎く幾千万の主婦にこたえねばなりません。物價の上昇を極力抑圧して、俸給の少きを痛憤する俸給生活者の無言の抗議に報いねばなりません。重税と資金難及び資材難にあえぐ中小商工業者に、減税と融通の途を開いてやらねばなりません。そして、これらの勤労階級の肩にかかつている重荷を一つ一つとり除き、それをやみ利得者と脱税者の頭上にのせてやらねばなりません。(拍手)
 この追加予算は、かかる方策と相まつて初めて実行されるものと信じております。われわれがこの予算に不満足であることを率直に表明しながら、これを容認するゆえんも、ここにあるのであります。しかし、社会主義政策の実現を理想とし、またこうした政策を徐々にでも実現することなくしては危機を突破し得ないと信ずる私どもは、目下編成中の明年度予算については、百パーセントわれわれ勤労階級のための政策を織りこむことを要求するものであります。(拍手)
 ところで自由党からは、七項目の警告及び相当手きびしい御批判がありました。われわれすらも不満をもつている有樣ですから、御意見はごもつともと存じます。しかし、実のところ今度の追加予算は、前内閣の編成されました本予算が手のつけようのないインフレ財政に基くものであつて、(拍手)その跡始末のため非常な犠牲を拂わされたものであることを、國民全体として十分認識していただきたいと存じます。予算委員会の席上、自由党の鈴木委員が、栗栖藏相の苦衷を諒とされたことは、おそらくこの間の経緯を十分御了承の上のことと存じます。
 共産党は、この予算がインフレを激成し、大衆に犠牲を要求するものであるとの理由で、予算の返上を主張されているようであります。しかし、さし迫つた今日の危局におきまして、予算返上を主張して予算の成立を妨げたとしたら、一体いかなる事態が生じるか。(拍手)十二月一日に政府の支拂うべき終戰処理費とか、官公吏の皆さんへの給與の財源をもたない現実を野坂委員は御承知の上で発言されたかどうか、私は疑いたいのであります。(拍手)年末を控えて、多数の官公吏がいかに生活苦にあえいでいるかは、共産党の方々が口を開けば必ず第一に取上げられる問題のように存じております。さればこそわれわれは、少からぬ不満をもちながらも、この追加予算を承認し、片山内閣が組閣後はじめてわが党内閣の予算を編成することになる明年度、すなわち昭和二十三年度予算を通じて、少しでもよいものにすることに力を注ぎたいと存じております。
 何としても、インフレの防止と生産力の回復が基本であります。(発言する者多し)私どもは、社会党政策の実現を眼目とする明年度予算の編成を政府に要求するとともに、とりあえず当面焦眉の急に迫られている勤労階級の生活苦の解決並びにやむを得ざる緊急問題に対処するため、本追加予算に賛成の意を表明するものでございます。(拍手)

発言情報

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発言者: 加藤シヅエ

speaker_id: 4292

日付: 1947-11-23

院: 衆議院

会議名: 本会議