矢野酉雄の発言 (在外同胞引揚問題に関する特別委員会)
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○委員長(矢野酉雄君) ちよつと委員長から大藏省の管理局長を通して、大藏省の主として財務行政の樞要な地位に立たれた方にお願いをして置きたいと存じます。最前岡元委員並びに穗積委員から実に赤裸々な意見が出ましたが、岡元委員は引揚者関係者約一千万と計算しておりますが、私は五百五十万が今引揚げておると思います。大体今年中に六百万としますと、日本の一世帶の平均数が五人でありますが故に、三千万人に垂んとする実に我が國民の殆んど半数を占めるというような莫大な國民の数でございます。これらの諸君は動乱のさ中に外に在つて祖國を眺めている諸君であり、又動乱前にはより以上祖國を愛し、民族を愛して出て行つた諸君が大多数である。そうして命を賭けて何十回か何百回か生死巌頭に立つてそれを乗り切つて來ているところの、これは黄金を以て購うことのできない一つの偉大なる生命力の所有者ばかりであります。この諸君が若しそれ政府の親心によつて眞に民主日本建設のために、我れ立ち上らんという信念に燃えたとき、日本の將來を考えましたならば、私は実にそこに明るいものを画くことができると思うのであります。併しながら帰つて來て冷い眼、冷い言葉、角の立つた待遇、何一つ生業への資金さへも恵まれないという境遇に置かれたとき、よしんばそうした生死巌頭に立つ体験を持つた人であろうとも、逆轉して恐るべき一つの、祖國を呪い、民族を怨むところの人間に轉換することの可能を私は信ずるものであります。そういう点に著眼されまして、二ヶ年間に十七億にも足りない、而もその生業資金たる庶民金庫の取扱つた金は全部引揚者に與えられたのでなくて、戰災者であり、その他の生活困窮者等にもこれは当然貸付けらるべき金でありまするから、実質的に引揚者のみに與えられたる生業資金というものは、もつと割引しなければならんと思うのであります。十一月まで三億一千万円残つておるものを、直ちに放出するためにも、最も財務当局として実務の実力をお持ちになつておる管理局長は、是非御同僚の方々に私たちのこの衷情をお傳え頂きまして、更にこれを三倍、五倍に増額して頂いて、本当に一人も志を得ざる者のないように、この財務が難局に立てば立つほど、そのない算盤のところに、最も國家百年の大計と緊急一分間も忽せにできない処置というものを、私はここに確立すべきだと思うのでありますから、委員長は委員諸君即ち三千万の我が兄弟の赤誠をここに披瀝いたしまして、政治的折衝だけでなく、その財務の実務に立つておられる方々のお考えとお氣持というものを、更に我々の生活の中にお寄せ頂きますように、この機会に特にお願いをする次第であります。そうして今日はいろいろまだありますから、若しも皆様のお許しが出ましたならば、大体あと五、六分間で会議を閉じたいと思いますから、どうぞそういうおつもりで……。