本多市郎の発言 (本会議)

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○本多市郎君(続) かつて、社会党内閣当時、副総理の地位にあつた西尾末廣君に対し疑獄事件によつて不信任案が上程されたとき、社会党代表の矢尾喜三郎君は何と言つたか。社会党の諸君はよもやこの言葉をお忘れはないことと思うのであります。(拍手)当日の速記録によれば、矢尾君が、西尾君に関し、それがまだ起訴にもなつていない、不起訴にもなつておらない、私たちは、こういう未定なものをもつてして、いやしくも国会において不信任案を上程するがごときは、日本の国会を汚毒し、日本の政界を汚毒するものであると考えざるを得ない、矢尾君はさらに続けて、今日提案された不信任案は、りつぱなりくつは並べておるけれども、その目標は、今日の時代において正攻法によつて日本の政権を獲得するところの手段を知らない一連の政権亡者が考えたことであると申されて反対されたのであります。(拍手)私は、ただいまの社会党代表の言葉をそのまま社会党の諸君にお返しする次第であります。すなわち、社会党代表の言葉をもつてすれば、今回のこの不信任案こそ、正攻法たる総選挙によつては政権獲得のできない政権亡者の謀略にほかならないと断言してはばからないのであります。(拍手)申すまでもなく、政権は総選挙によつて国民より与えられたものであります。この国民より付託せられた政権は、民主政治の本義にのつとり、解散、総選挙によつて移動するのが原則でありまして、断じて謀略によつて移動すべきものではありません。
 また、野党諸君は、今回の疑獄事件に関し、政府が検察当局に対し政治的圧迫を加えたるがごとく宣伝されるのでありますが、何らその事実は認められないのであつて、犬養法務大臣が、検察行政の責任者として、みずからの職責において慎重に検討を加え、国会の会期も切迫した今日、国政の審議に支障ありとして、大政党運営の中枢たる幹事長の地位にある議員に関し逮捕許諾請求延期を指示したことは、検察庁法十四条に規定する法務大臣の権限に基く公平なる行政措置である、合法妥当なる措置と確信して疑わないのであります。これを検察行政に対する政治的圧迫あるいは職権の濫用などと言うがごときは、国会みずからがその権威と重要性を忘れ、法務大臣の法律上の責任と権限を空文化せんとする危険きわまる暴論と言わなければなりません。(拍手)わが自由党は、この国家の難局に処し、議会政治をあくまでも擁護する意味において、政界の自粛刷新を期するとともに、真相の明らかでない、捜査中の、しかも閣外の刑事事件によつて軽々に内閣が進退を決すべきでないことを、かたく信じて疑わないのであります。(拍手)
 また、社会党の諸君は、口を開けば、再軍備反対、平和憲法擁護と言う、しかしてMSA協定や自衛隊を憲法違反とか再軍備とか言つて攻撃し、これをもつて吉田内閣不信任の理由の一つとしているのであります。一体、独立国として自衛力を持たない国がどこにあるか。わが国の憲法は、戦力の保持は禁止しているが、自衛のための武力を否定するものでないことは、独立国として当然のことでありまして、何ら憲法に抵触するものではありません。わが党はつとに、自衛力の漸増ということを最大の公約として、国民の圧倒的支持を受けているのであります。(拍手)
 また、MSA援助の受入れがわが国の独立を束縛するというこの議論も、社会党の諸君が好んで吹聴するところであります。今日、世界の自由主義諸国のほとんどすべてが、この援助によつて防衛の増強をはかりながら、何ら独立を侵された事実はなく、民主主義国の団結と防衛力の増強が世界平和の維持に大きく貢献している事実を見るとき、わが国だけが独立を束縛されるなどという議論は、まつたく国際常識を知らざる書生論と言うほかはありません。(拍手)
 いま一つ、社会党の諸君が言うことは、民生の犠牲における再軍備というのでありますが、この言葉ほど事実を歪曲し国民を欺瞞するに都合のよい言葉はありません。わが党内閣が常に民生の安定充実を第一義とし、そのために国民の生活水準が年々著しく向上したことは、すでに述べたところでありますが、二十九年度の予算におきましても、自衛力の増強よりも民生の安定に重きを置いていることは、数字が明らかに示しているところであります。(拍手)わが国の国防関係費は総予算の一四%にすぎません。諸外国の例を見ても、社会党の諸君が中立勢力として最も尊敬するインドが国家予算の五割近くを、また永世中立国といわれるスイスが四割近くを国防費に支出している事実を見ても、わが国の防衛費がいかに僅少なるものかがわかることと思います。(拍手)この厳然たる事実にはことさらに目をおおい、民生を犠牲にする再軍備予算などと、虚構の逆宣伝にこれ努める社会党諸君の良心を疑わざるを得ません。(拍手)
 この際私が特に強調したいことは、自衛力の否定といい、MSA援助の拒否といい、社会党の政策は、究極において、わが国をまる裸にしておいて、内外の共産帝国主義者がいつでも欲するときに無血侵略をなし得る状態に置くということにほかならないということであります。(拍手)
 次に、社会党の諸君は吉田内閣の政策の行き詰まりなどと言うのでありますが、わが党は、過失における吉田内閣の輝かしい功績の上に、さらに現在の情勢に応じた政策の発展をはかりつつあり、しかもその効果は、物価面においても、貿易の面においても、すでに着々として現われつつあるのであります。変転せる国際情勢の中において、国際貿易その価国内の経済事情がときにより消長変遷のあることは自然の現象でありまして、将来の見通しを誤らず、情勢の推移に応じ適宜の政策を講ずることが、経済財政政策の要諦と信ずるのであります。(拍手)わが党が今回従来の政策を転換し、緊縮財政と物価引下げ政策を強力に推進せんとするのも、この理にほかならないのであります。(拍手)これをしも政策の行き詰まりと言うならば、それは政治の要諦を解せざる議論と言うほかはありません。(拍手)
 最初にも申し上げた通り、内閣不信任案はみずから政権を担当し得る能力のある政党が提案してこそ意義があるのであるが、その能力なき小政党が年中行事的に提案することは不信任案をもてあそぶものであります。(拍手)政権担当の能力なき野党の不信任案が、いかに国家国民に損害と迷惑を及ぼし、無意義なものに終つたかは、前回の不信任議決の結果がいかなるものであつたかということを反省したならば、その害悪は何人にも明白なところであります。(拍手)
 一体、両派社会党は、はたしてみずから政局を担当し時局を収拾し得る自信ありやいなや。一方は容共親ソの労働組合の——であり、共産党と本質において——ずる左派社会党と、(拍手)一方は、再軍備をも辞せない、右翼をも含む右派社会党とが、かりに共同して政権を担当するとしても、氷炭相いれざる主義主張が相衝突して、何らなすところなく、たちまちにして崩壊し去ることは、明らかに予想されるところであります。(拍手)
 また、単独で政権担当の力なき保守政党の改進党が今次社会党の不信任案に同調するといたしましたならば、今後両派社会党と協力して政局を担当せんとする考え方に基くものと思うのであるが、かつて主義主張の異なる社会党と連立内閣をつくつたとき、あの二次にわたる連立内閣のために、しかも終戦後の重要な時期に、政局はいたずらに空転空白、無為無策、国運の進展をいかばかり阻害したかは、両党の諸君に一片の良心があるならば、慚愧にたえないものがあるはずである。しかるに、またまた、改進党の諸君は、政権欲のために、あの憲法改正、再軍備、MSA協定等、重大なる党の基本政策を投げ捨てて、かくのごとき愚を繰返さんとするのか。しからずんば、昨年あの無謀なる不信任の議決、総選挙の結果、みずから政権担当の能力なく、左右両派との取引に醜を天下にさらした失態を再び繰返そうというのか。国家国民の災いこれよりはなはだしきはないのであつて、強くその反省を要望する次第であります。(拍手)
 今回われわれが最も奇怪とするところは、日ごろ主義主張を異にする左右社会党の諸君が、政権欲のために、その主張を捨てて政策の協定を行い、共同で政権担当の用意ありなどと声明している点であります。由来、革新政党というものは、その主義主張に最も忠実であることがその生命でなくてはならないはずであります。それが、一たび政権の幻想にとらわれるや、たちまち主義主張を捨てて政策の妥協をはかることは、まことにもつて奇怪であると言わざるを得ません。(拍手)これをさらに掘り下げて推測するならば、左派の諸君は、右派を利用し得るだけ利用し、それを踏台にして、やがては容共極左政権の確立を夢み、右派の諸君は逆に左派の換骨奪胎を期待しているのではないかと思うのでありまして、世の中に同床異夢とはまさにこのことと言うべきであります。(拍手)もしも真に社会党の諸君が共同して政権担当を欲するならば、何ゆえに堂々と左右両派が合同して出直さないのか。それができずして政権担当の用意ありなどと広言することは、まことにもつて笑止千万と言わなければなりません。(拍手)まず、わが党の新党構想を誹謗する前に、諸君みずからえりを正して反省せよと言いたいのであります。(拍手)
 さらに、社会党が政権担当の適格性を欠く最大の理由は、その少数党たる点にあるのではなく、実はその政策そのものに存するのであります。左右両派の思想には粗いれざる根本的な相違があるのであるが、かりに両者の共通する政策をとつてみましても、日米安全保障条約に基く防衛支出金の廃止、保安隊の廃止、MSA協定の廃棄という明瞭な反米政策や、公務員給与の大幅引上げ、民間賃金の引上げ、生産者米価の引上げ等のインフレ政策や、重要産業の国営または国家管理、民間経済活動の統制等、経済革命的な政策が掲げられておるのであります。万が一にも、もしこのような政策を思案に実行するとしたならば、日本の経済や国民生活は一体どんなになることでありましようか。(拍手)反米政策は、わが国の自由諸国間における国際信用を失墜するだけにとどまらず、協調協力は破綻を生じ、国際信用は失墜し、ひいては、無防備日本の独立は共産帝国主義の脅威にさらされるのみならず、年間八億ドルに上る特需や六千万ドルの綿花借款等が停止され、わが国の国際収支はたちまちにして均衡を失い、国民経済は困窮、全国的に企業の破産、失業群の続出、インフレ、混乱のどん底に陥らざるを得ないことは、火を見るよりも明らかであります。それに加えて、賃金、米価の引上げ、非能率的な統制経済や重要産業国有化等の施策を実施するということになつたならば、一体わが国はどういうことになるか。それは必ずや、極度の経済混乱と社会不安とによつて、革命前夜のごとき様相を呈するに相違ないということであります。(拍手)社会党の諸君は、はたしてこのような結果を予想してみたことがあるかいなか、あるいは、容共左派の諸君は、むしろこのような情勢を積極的に醸成せんとする意図ではないのか、真意をお伺いいたしたいものであります。私はここではつきり社会党の諸君に申し上げる。それは、諸君らがいま少しく現実に即した政策を掲げて、国民の信頼を得て出直さない限り、永久に政権担当の適格性がないということであります。(拍手)
 現下内外の情勢を見まするに、最も痛感せられることは、わが国の政治経済の安定ということである。今万一にも政局の大混乱を来しますならば、国政は渋滞し、経済は混乱し、社会不安は高まり、国民生活は脅かされ、国運の衰頽を見ることは明瞭であります。わが党は、時局の重大なるにかんがみ、志を同じゆうする同憂の士を結集して政局を安定させ、日本再建上緊要な政策を強力に推進するため、保守新党の結成を決意したのであります。この保守新党の結成による政局の安定こそ国政の発展充実を保障する唯一の道であることを確信するものであります。(拍手)これを要するに、今回両派社会党より提案された内閣不信任案は、両党がわずかに自己満足を満たす以外に何らの意義も理由もないものであります。(拍手)
 五次にわたる吉田内閣が、終戦後の難局を収拾し、ことに社会党内閣失政混乱のあとを受けてよく経済を安定し、財政を立て直し、国民生活を向上し、国家の独立を達成せしめ、今日の国際的地位を築きたる偉大なる功績は、国民のひとしく銘記するところであります。(拍手)今や国際関係の改善と経済自立の達成に着々としてその政策を進めつつある今日、国民大多数の信頼はわが党吉田内閣にあることを確信するものでありまして、わが党はかかる不信任案に対し断固反対するものであります。(拍手)

発言情報

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発言者: 本多市郎

speaker_id: 33102

日付: 1954-04-24

院: 衆議院

会議名: 本会議