平井義一の発言 (本会議)
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○平井義一君 防衛庁設置法案及び自衛隊法案の二法案について、自由党を代表いたしまして賛成の意見を表明せんとするものであります。(拍手)
御承知の通り、この二法案は現行の保安庁法を改正したもので、まず防衛庁設置法案は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つことを目的とし、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊を管理運営し、これに関する事務を行うことを任務とする防衛庁を総理府の外局として設けようとするもので、従来の通り国務大臣をもつてその長といたしております。なお、三自衛隊を総合した見地から、長官を補佐するため統合幕僚会議を新たに設けて、自衛隊の総合的かつ有効なる運営に資せしめているものであります。また、自衛隊法案は、右の三自衛隊の部隊の組織及び編成、行動及び権限、隊員の身分の取扱い等に関し、おおかね現在の保安庁法の内容を基礎とし丁規定したものであります。すなわち、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接及び間接の侵略に対してわが国を防衛することを主たる任務とし、かつ必要に応じ公共の秩序の維持に当るものであることを規定いたしております。また、国防に関する重要事項を審議する機関として国防会議を内閣に置くことといたしておりますが、これは別に法律で定めることといたしております。これが二法案のおもなる内容であります。
思うに、自衛ということは、国家民族存立の根本原理であり、生物の鉄則であります。森羅万象ことごとくが自衛のための処置を講じておることは言をまたないところであります。(拍手)防衛ということがまつたく必要のない理想世界が実現すれば別といたしまして、現在の段階、ことに最近におけるわが国の周辺における諸外国の軍備の状況並びにわが国が置かれている立地条件等を考えれば、理想世界の実現は遠く、むしろ侵略の可能性は多分にあると言わなければなりません。(拍手)このような現実に処して、国家及び民族においてみずからの生命を維持し、その安全を保つて行くということは当然な任務でありまして、祖国の防衛ということは、民主主義国、共産主義国との区別なく、国民が負うべき神聖な義務と言わなければなりません。(拍手)人類の共栄、世界の平和はまさしく民族の自立と国家間の平和の上に築かれるものでありまして、これなくして世界の平和はあり得ないのであります。しかも、平和はわれわれが努力を傾けて築き上げるべきものであつて、いやしくも他人のあわれみにすがり、他の慈悲にたよつて喪家の犬のごとく投げ与えられるのを待つべきではなく、自衛こそは国家存立の根本原理であります。まことにこれは、今日自立の精神を有し、わが国を愛する者のひとしく抱く考え方であると信ずるのであります。(拍手)この意味において、わが国が、みずからの力を結集して、直接間接の侵略に対し祖国防衛のため陸海空にわたる三百衛隊を設けようということは、自主独立国家として当然の措置と言わなければなりません。(拍手)しかも、この自衛隊の指揮運営について、政治優位の原則を明白にし、国防会議を設ける等、昔日の弊を再び繰返さざるよう配慮が加えられており、この点も妥当と申さなければならぬのであります。これ二法案を可とする第一点であります。
さらに、原子あるいは水素爆弾の今日、おもちやのような武器をもつては役に立つものではなく、従つて自衛隊の創設は無意味であり、その必要はないという意見が両社会党に出ておるのでありますが、これはまつたく戦いの実態を知らざる者の議論であつて、たとい原子並びに水素爆弾といえども、これを運搬する過程があるべきものであります。これをその途中において阻止することこそ今日の防衛の最大の目標でありまして、人類は全知能をしぼつて研究しており、それは必ずしも不可能ではございません。加するに、今日の戦争方法は、敵の手足はほうつておいて、まず頭脳あるいは心臓にとどめの一撃を加え、一気に勝利を獲得するというのが近代戦の予想でありまして、容易につくり得ない数少い貴重な原子爆弾や水素爆弾をたやすく日本列島に使用し得るかどうかは、軍事専門家によつて疑問とされておるところであります。わが国に対する侵略は原爆以外の方法による公算が大であり、この点からも、前述のごとき議論は、多分に外国の簡単な攻撃をさえ可能ならしむる危険千万な所論と言わざるを得ないのであります。(拍手)しこうして、現実の様相は局所的な侵略がないとは断じがたいのでありまして、特にわが日本列島を考えますれば、このことに対処することの必要性は多言を要しないところであります。原子兵器ができたからといつて国防を放棄しておる国はありません。むしろその逆であるのが今日の世界の実情であると申さねばなりません。もしそれ原水爆を恐れるの余りまつたく国家防衛の要なしと言うのは、あたかも死を恐怖する余り、医者もいらぬ、薬もいらぬという議論にひとしいのであります。(拍手)今日における真の国際緊張の実態を解せざる愚論と言おざるを得ないのであります。これ二法案を可とする理由の第二点であります。(拍手)
次に、現在のごとき自衛隊の程度ではとうでい防衛に役立つものではないという議論があります。しかし、強力な防備力は一朝一夕にしてなるものではなく、年々物心両面にわたつて絶えず練り上げられて行くべきものであつて、それらの努力が結集して初めて力強い防衛力となるのであります。ことに対抗兵器の考案こそは絶対的なもので、原子戦に入つたからとて、戦いの原理はかわるものではありません。これこそは今後における防衛力を決定するもので、これにはたゆみなき努力と研究が必要とされるゆえんであります。一日早ければそれだけ防衛力は増加するのであります。しかも、日米相互防衛援助協定第八条が自国の政治及び経済と矛盾しない範囲においてと規定するように、わが国力に応じて防衛力の増強をはかろうとするもので、他の一切を犠牲にして一挙に膨大なものをこしらえようとするものではございません。その措置はきわめて妥当と申し得るのであります。これ二法案を可とする第三の理由であります。
次は、この自衛隊は戦力を持つことを禁ずる憲法に違反するものであるとする議論についてであります。元来、憲法第九条は、ニクソンアメリカ副大統領も誤りだと言つておるのでありまして、わが国が真にその独立を保持するためには将来改正さるべき規定であると考えるものでありますけれども、今回のごとき自衛のための部隊を持つことは、何ら憲法に違反するものではございません。(拍手)また、政府においてもあえてこれを侵そうとするものでないことは、日米相互防衛援助協定においても、また今回の措置においても明らかにされておるところであります。すなわち、日米相互防衛援助協定におきましては、諸外国の場合と異なつて、いわゆる軍隊にあらざる自衛隊というわが国特殊の防衛力の現実を認め、その増強の実施についても、同条約第九条は憲法上の規定に従うものであることを明記しておるのであります。かつ、憲法にいう戦力とは、近代戦を遂行するに有効かつ適切な編成装備を備えた総合的実力をさすものでありまして、自衛のための措置を否定するものでないことは明白であります。この自衛隊設置が憲法第九条に違反するものでなく、また政府が憲法抵触を不在でているものでないことは言うまでもないところであります。元来、二法案は、自衛権の範囲内にあるものとして、自由党、改進党並びに日本自由党の三党による慎重なる協定の上にでき上つたものでありまして、憲法違反の議論は、憲法の規定をあまりに形式的に解釈してこれを死文化するものであり、またあえて違反を求めるための議論でありまして、国家の本質をわきまえざる者の言という以外にはないのであります。(拍手)自衛は生物の本能でありまして、この日本民族絶対の要請を無視して、実体を離れた形式的議論を重ねることは、象牙の塔にこもる者の意見といたしましても、あまりにも非現実的と言わざるを得ないのであります。(拍手)いわんや、政治を議する者の意見といたしましては、何をか言わんやと申すほかはないのであります。政府は不必要に憲法違反の声に拘泥し過ぎており、何ゆえ堂々と防衛のための必要措置を講ぜざるやと言いたいのであります。これ二法案を可とする第四点であります。
最後に、国際信義と防衛力の問題であります。今や世界は相対立する二つの陣営にわかれ、はげしい冷戦または熱戦のざ中にあるにもかかわらず、わが国の防衛は必要なく、国際連合の集団安全保障にたよればよいではないかという議論がありますけれども、国際連合の集団安全保障は、これをになうへき各独立国家の信義、誠実の上に基礎づけられるべきものでありまして、みずからの努力を尽さずして、ひとり他に要求することは、国際信義にもとるものであつて、とうてい他国の信頼と協力を期待することはできないのであります。(拍手)この意味においても、真に有効な集団安全保障を期待するためには、まずみずからがみずからを守る力を養うことは当然の義務と言わなければならないのであります。(拍手)国際信義と友好の立場からしても、自衛力の酒養は絶対に必要であります。これ二法案を可とする第五の理由であります。
以上申し述べましたことく、二法案について議論された反対理由には何ら根拠を見出すことができないのであります。もとより、自由、共産の二大陣営の相対立する世界の現況において、切に恒久平和と人類の幸福、さらにわが国民の安寧と福祉を念願することにおいて、われわれは決して人後に落ちるものではありません。そのためにこそわれわれは努力をいたしておるのでありまして、自衛を固め、しこうして信と決意を中外に示すことによつて初めて集団安全保障は期待できるとともに、戦争の危険を回避し得るのであります。その意味において、一に国民各層の協力を期待してやまないゆえんもここにあるのでございます。
以上賛成の意見を述べまして、私の討論を終ります。(拍手)