中居英太郎の発言 (本会議)
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○中居英太郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、今次東北地方における水害につきまして緊急質問を行い、政府にその所信をたださんとするものであります。去る六月二十四日東北一帯を襲いました豪雨は、その雨量百ミリから三百ミリにも達するほどのものでありまして、翌二十五日から二十六日未明にかけまして、岩手、秋田、山形の三県を中心とする東北一帯に大水害をもたらしたことは、御承知の通りであります。
この水害によりまして、相当数の死傷、行方不明者を出したのみか、家屋被害は一万九千八百戸に及び、水田、畑地の冠水、流失、埋没は実に五万六千余町歩に及んでおるのでありまして、そのほかにも、山林、河川、橋梁等、直接損失のみでも約百億円に達すると推定せられておるのであります。しかも、その後調査が進むに従いまして、判明いたしまする被害額は増加の一途をたどる傾向にあるのでありまして、計数上算定の困難な各種産業や住民の直接間接の被害を計算いたしますると、その惨状まさにりつ然たるものを感ぜざるを得ないのであります。(拍手)畑作地帯の農民は、年間収入の最も大きな麦を失いました。水田農家は、秋の収穫を、すでにその出発において挫折せしめられてしもうたのであります。また、赤字財政に悩む地方団体は、打ち続く災害復旧に、その財源の確保の方途すらもなく、今や重大な岐路に立たされておるのであります。もしも、これほどの災害が近県かあるいはまた関西方面に起ったと仮定いたしますならば、その実相は瞬時にして中央に反映せられまして、また世論もほうはいとしてこれを論ずるでありましょう。しかしながら、これと反対に、僻陬地の東北の農民は、その性格もさることながら、襲い来たる大自然の猛威の前に、ただぼう然自失、そのなすところを知らないと申し上げても過言ではないと思うのであります。
由来、東北地帯は常に四季の災害に悩まされ、ことに、終戦後、十指にも余る風水害に災いされ続けて参ったのでありますが、今回程度の降雨量でこのような甚大な損害をこうむったということは、まことにその例を見ないところであります。このことは、とりもなおさす、前回の災害復旧がいまだ完成していないという事実を物語る以外の何ものでもないのでありまして、復旧前にまたまた水魔に襲われるという悪循環がもたらした現象と言わざるを得ないのであります。(拍手)
こうした傾向は、ひとり東北のみの状態でなく、全国各地に言い得られるところの、治水行政の抜くべからざる欠陥と思うのであります。すなわち、一朝災害が発生するや、土木関係予算はその大部分を復旧事業のために投下せられましてせっかくの新規改良工事や防災工事は極端な圧縮を受け、危険な個所がいつまでたっても危険なままに放置せられておるのが、偽わりない実情であります。この弱点を追い打ちでもするかのように、水魔が季節的に来襲いたしまして、さらに数倍するところの損害復旧のための支出を余儀なくせしめておると思うのであります。国家経済の上から見ましてもまことに拙劣なことであり、このような悪循環を繰り返しておる限り、とうていわが国の治山治水の成果は期し得られないと思うのであります。従いまして今回の被害も台風シーズンの秋までには是が非でも復旧を完了しないときは、一たび豪雨の来襲にあえば、今回以上の災害を招くことは必定であります。
政府は、おそらく、この災害調査に目下大わらわでありましょう。そして、この調査の結果に基く計画が完了いたしまして工事に着手するまでには、少くとも数ヵ月を要するというのが今日までの実情であります。加えて、予算もいまだ決定を見るに至っておりません。暫定予算の小刻みのワク内で、果してこれらの迅速な復旧にいかなる確信を持っておられるのか、まことに暗たんたる感じを禁じ得ないのでありまして、これが応急処置と、災害のあとに起るところの幾多の派生的な厄害防止のための処置につきまして政府はいかなる方針をお持ちであるか、担当大臣からそれぞれ御答弁を願いたいと思うのであります。
いつの場合でもそうでありますが、大きな災害がありますと、政府は、あわてて対策本部を作ったり、あるいはまた調査団を派遣いたしまして、形式的な処置をとることにはきわめて敏速であります。しかし、この結果は、常に、空前の豪雨であるとか、あるいはまた予算のワク内でとかいうような一片の釈明で、その対策が放任せられておるということが、遺憾ながら今日までの事実であったのであります。予算がどうありましょうとも、災害の善後策は講じなければなりません。にもかかわらず、昨年末におきましては、いまだ災害未復旧の予算が三千億円以上も渋滞しておると私は聞いておるのであります。
財源難を口実にされておるところの大蔵当局に申し上げたいのでありますが、財源は初めから特定の目的を持っておるものではありません。また、わが国の財政規模は、当初からおのずとその限度というものが明らかにせられておるはずであります。しかも、わが国の占めるところの地理的な条件が、台風の通過と梅雨の来襲を避け得られない事情下に置かれておるということも、これまた事実であります。この対策につきましては、すでに、つぶさに鮮明せられておるはずであります。にもかかわらず、季節々々の災害を、性こりもなく、年中行事のように繰り返しておるというこの事実は、一体何を物語るものでありましょうか。人類の持つ力がいまだこれに抗し切れなかった古い時代はともかくといたしまして、科学が地球の様相を変革するまでに発達、究明せられておる現在、近代科学とこれに伴う技術の力をもって、連年見舞われるところの災害を未然に防ぎ得る方策を講じ得ないということは、まことに貧しき国の治水行政のうらぶれ果てた姿と言わざるを得ないのであります。政治の貧困か、国力の貧弱か、当面する者の熱意の欠除によるものでありますか、いずれにいたしましても、その責任を他に転じて不可抗力とは言い得ないところの歴代政府の重大な失態と私は申し上げたいのであります。
鳩山内閣は、国内治安の確保のためと称しまして、限られたる財政規模の中から数千億円の防衛関係を予算支出することにはきわめて大胆であります。私は、今、この場所におきまして、これらの予算編成の方針がわが国にいかなる影響を与えておるかというがごときことを論じようとは思わないのであります。ただ、治安確保ということが、ひとり外国に対する軍事的防衛のみでは達せられるものではなく、むしろ、無抵抗のまま自然の暴威の前にさらされ続けておる国土を災害から守る抜本的対策を講ずることが一番重要な国土治安の道であると信ずる次第であります。(拍手)これらの点につきまして、鳩山総理大臣の率直なる御意見を伺いたいと思うのであります。
私はきわめて抽象的な根本論を申し上げたのでありますが、私に与えられた時間が参りましたから、具体的なことは委員会における論議に譲ることにいたしまして、これをもって質問を終りたいと思います。(拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕