前尾繁三郎の発言 (本会議)
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○前尾繁三郎君 私は、自由民主党を代表して、過般の総理の所信の表明に関連しまして、今臨時国会召集の眼目であります地方財政の再建について、鳩山総理、太田自治庁長官、一萬田大蔵大臣並びに各関係閣僚に対し若干の質問を試みんとするものであります。
現在の地方財政が極度に窮迫し、いわゆる崩壊の寸前に立ち至っておりますことは、今さら多言を要しないと思うのであります。すでに二十九年度までの赤字の累積額は六百四十八億円の巨額に達し、さらに、本年度もこのまま放置するとすれば二百億円の赤字が予想せられ、今や地方団体の理事者は借金の元利支払いに追われ、給与の金繰りに狂奔している状況でありまして、そのことは諸君の十分御承知のことであります。
この臨時国会は、地方財政の再建促進のために召集されたものであります。従って、前国会において継続審査となりました地方財政再建促進特別措置法を成立せしむることは焦眉の急ではありますが、過去の赤字対策は当然現在の赤字対策並びに将来の赤字対策を伴わなければなりません。これなくしては、過去の赤字処理は望むべくもないのであります。しかるに、将来の根本的対策は別としましても、現在の赤字対策がようやく昨今になって問題とされるに至りましたことを、私ははなはだ潰憾と思うのであります。現在の赤字問題は、すでに本年度の当初の地方財政計画にその端を発しているのであります。すなわち、本年度の地方財政計画は、自治庁の諮問機関であります地方財政審議会が百四十四億円の赤字の生ずべきことを警告したにもかかわらず、また、国税三税の減税に伴う地方交付税の減収や警察費の平年度化に伴う増加額等は、地方交付税制度の性質上、当然税率の引き上げによって補填せらるべきものであったにもかかわらず、これをすべて地方団体の節約にしわ寄せして糊塗しようとしたことに原因するのであります。従って、このことは前国会においてもずいぶん論議せられ、前自治庁長官もこれが善処方を言明せられたところでありますから、国会終了後直ちに着手せらるべきものであったのであります。もとより、その後において新党の結成という大きな政治上の変化があり、これが対策の最終的決定は現在まで延引せられたのもやむを得ないところではありますが、問題の解決はもっと早くから検討され準備されてしかるべきものであったのであります。しかるに、今になって政府の問題となり、急速いわゆるとりあえずの措置のみが提案されることになりましたことは、政府が地方財政の窮迫に対する認識と理解とを欠いているのではないかとの疑いさえ抱く者が多いのであります。(拍手)私は、かかる誤解を解くことは鳩山総理の重要なる責務と考えるものでありますが、これに対し総理の御所見をお伺いいたしたいのであります。(拍手)
さらに、地方団体の赤字の原因については、私は、過去においては、地方団体理事者のいわゆる人気取り政策や地方団体職員の行き過ぎた労働運動に帰すべきことが多かったことを認めるものであります。(拍手)しかし、現在においては、地方団体の理事者は、好むと好まざるとを問わず、真剣に赤字問題と取り組まざるを得なくなり、いかにしてこの難局を切り抜けるかについて日夜心を砕いている状況であります。しかるに、なお政府の一部においては、地方団体を放蕩児のごとく考えて、これが対策をなおざりにしているかのごとき感を与えておるのでありまして、かくては、せっかく燃え上っている自治体側の地方財政確立の熱意を喪失せしめるおそれなしとしないのであります。私は、この際こそ、政府も地方団体も一丸となって本問題の抜本的解決に当るべき絶好の機会であると信ずるものでありますが、この点についても、あわせて総理の熱意ある御所見を伺いたいのであります。
次に、私は、なぜに今回の措置をすべて暫定的なものとされたのか、やや理解に苦しむものであります。交付税の税率三%引き上げについては認めたかのようであります。また認めないかのようでもあります。また、特別会計の補正予算はお出しにはなりますが、肝心の財源措置である一般会計の補正予算は通常国会に御提出になるかのようであります。このことは、税率の引き上げを行えば漫然給与の引き上げ等の財源に使われる心配から税率の引き上げを行わないのであるか、あるいはまた、将来交付税率をそこまで引き上げる必要なしとの考えに基き、その既得権化することをおそれるがゆえんであるのか、あるいはその他の理由によるものか、はなはだ明確を欠くのであります。また、財源措置についても、ここで補正予算を出されないのは、ただ単に時間的に間に合わないのか、それとも不用額が不明なためであるのか、さらに、自然増収があった場合は、これによって補てんする余地を残すためであるのか、その間政府の所信の変更もはかりがたいので、地方団体をしていたずらに迷わしめ、揣摩憶測のみによって事が運ばれることをおそれるものであります。私は、もとより、地方財政の健全化をこいねがうとともに、国の健全財政を破壊するがごときことがあってはならぬと思うものでありますし、何はともあれ三%の引き上げに相当する財源措置をされたことについては、その苦心を多とするものではありますが、なぜこの際大胆率直に交付税率の引き上げを行わなかったか、また、何ゆえ財源についても確固たる措置をとらなかったかをはっきりしていただき、(拍手)地方団体に十分な見通しを与えていただきたいと思うのでありまして、それについて自治庁長官と大蔵大臣の明確な御答弁を伺いたいのであります。
次に、現在非常な問題となっている今回の財源措置についてお伺いいたしたいのであります。百八十八億円の財源措置のうち、賠償費の不用や一般経費の節約等については、問題はあるとしましても、さして論議の対象とはならないと思いまするが、公共事業費の不用額については重大な問題を含んでいると思うのであります。
その問題点を要約しますと、公共事業は地方団体の生命とするところであります。そうして、公共事業がやりたいからこそ財源の賦与を熱望してきたのであります。従って、財源を公共事業費以外の経費の節約額かまたは不用額でまかなうことができないのか、たとえば、俗論とは思いまするが、毎年繰り越しとなる防衛庁費の不用領をなぜ使わないのかということが疑問の第一点であります。(拍手)次に、だれしも要望している公共事業費に果して相当巨額の不用額があるのであろうか、これを返上するような地方団体がそんなにあるのであろうか、または、それによって貧弱団体のみが返上することとなり、非常に不公平なものにたりはしないかということが疑問の第二点であります。また、不用額を立てるにしましても、これは全くの見込みでありまするから、もし実際にそれだけの不用額がなかったとしたら、いかなる措置をとられようとするのか、これが疑問の第三点であります。そうして、もし、事業はすでに行なったが、予算がないので、実際には支払いだけを遅延する結果となったら、地方団体のみならず、一般の国民にまで迷惑を及ぼし、支払い遅延の弊風を除去しようとして従来努力してきた政府の方針とも逆行するのであります。また、私は、地方団体の財政紊乱の一つの大きな原因は、繰り越しや財源の繰り上げ充用や支払い遅延によって年度区分を不明確ならしめていることにあると思いますが、国がかかる弊風を助長するようなことになっては、将来に非常な禍根を残すものと憂慮にたえないのであります。これが疑問の第四点であります。
いずれにしましても、一般には、公共事業をやるために運動して、かえって公共事業費を削られた、いわゆるミイラ取りがミイラになったような措置は一昨日の取りきめで変えられたようでもありまするが、なぜ変ったか。表現方法がまずかったのか。現実にはどう違う結果となるのか。公共事業費の一律削減はなくなったので安心はしたものの、まだ一抹の不安を感じているのであります。私は、健全財政を守り抜こうとする政府の熱意には敬意を表するものであり、さらに、公共事業費の地方負担分の不用額をできるだけ少額にとどめようとする苦心についても感謝をしているのでありまするが、国民のだれしもが疑問としている点について、大蔵大臣並びに自治庁長官の明快なる御答弁をお願いいたしたいのであります。また、公共事業費の不用額の可能性や、直轄事業などの不用ということは、どういうふうに認定されるのかを、農林大臣と建設大臣に御答弁願いたいのであります。
次に、私は、将来の赤字に対する対策についてお伺いしたいと思うのであります。政府は、しばしば、来三十一年度より根本的に地方財政の確立をはかることを約束しておられるのであります。過去の赤字対策は、現在の赤字対策とともに、将来の赤字の出ない保証がなければなりません。従って、将来の根本的な赤字対策についても、一日も早くこれを確立しなければならないのであります。地方財政の一赤字の根本原因は、まず地方財政の実態と地方財政計画とが全く遊離していることによるのであり、しかもその差の大部分は給与であって、二十八年度の決算による人件費の食い違いが四百四十億円にも達しているのであります。従って、政府は、従来しばしば、今秋に判明すべき給与の実態調査の結果を待って根本対策を講ずべきことを言明せられたのでありますが、給与の実態調査はすでに完了したのでありまするか、また、その結果はどうなっているのでありまするか、さらに、もし地方公務員の給与が国家公務員に比して相当高い場合は、いかなる方法によってこれを是正せられるのでありまするか、お聞きしたいのであります。
また、現在の地方団体の赤字原因の一つは、現在の補助金政策にあるといわれております。すなわち、国が補助金によって地方団体に過重な事業を半ば強制したり、また補助金があまりに希薄であって地方の負担を重からしめていることは、早急に取り上げるべき問題であるにかかわらず、今もって実行せられていないところであります。また、私は、現段階における地方財政の危機は地方債費の累増にあることを憂慮しているものであります。そうして、これは現在審議中の再建促進特別措置法の処理のみをもって足れりとは考えられないのであります。従来起債を一般財源と同一視したところに大きな誤まりがあり、また公募債等については相当高利のものもあるので、現在の地方財政は全く利子負担に脅かされていると言っても過言ではありません。従って、今後は、起債方式や利子負担について相当根本的な方策を講ずる必要があると考えるものであります。さらに、現在の地方の行政制度が財政膨張の原因をなしていることも、私は認めるにやぶさかではありません。しかし、前国会において提出されたよらな自治法の一部改正のごときものをもって重要な赤字対策と考えられては、はなはだ遺憾に思うものであります。行政制度の改革はもとより重要でありまするが、角をためて牛を殺すようなものであってはならないのであります。また、現在の地方税は、ともすれば都市に偏在し、貧弱町村はますます貧窮の度を加えていることを考えなければなりません。地方交付税率やタバコ消費税の引き上げ等、一般財源の増強についても、一段と御配意を願わなければなりません。これら赤字の根本対策について、自治庁長官、大蔵大臣の具体的な構想をお伺いしたいのであります。
最後に、われわれの銘記すべきことは、国の財政と地方の財政は、そのいずれもが健全でなければ、いずれも健全でないということであります。(拍手)しかるに、従来、ともすれば、国の財政だけは健全で、そのしわを地方財政に寄せたり、また地方財政の健全化は国の財政に破綻を来たすがごときこととなり、常に利害相対立するかのごとき感を与えているのであります。政府部内において大蔵省と自治庁が犬猿もただならぬようなことになりましては、国の財政も地方の財政も健全を期することができないのであります。(拍手)国と地方が一体となって、健全化の大きな一線を画して予算全体が編成せられなければならないのであります。従来はこのことに遺憾な点が多々あると思うのであります。私は、三十一年度の予算の編成において、特にこの点を御留意願いたいと思うのでありまするが、当面の責任者である総理及び大蔵大臣、自治庁長官の御所見をお伺いいたしたいのであります。
なお、一昨日のニュースによりますと、奄美大島の名瀬市に大火があり、九百戸を焼失したとのことで、御同情にたえません。これが復興については特段の御考慮を願わなければならないと思いますので、この際あわせて建設大臣の御答弁をお願いいたしまして、私の質問を終りたいと存じます。(拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕