敲貞治の発言 (商工委員会)
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○敲参考人 私はただいま御紹介いただきました敲貞治でございます。
実は綿スフ連合会といたしましては会長の藤原さんが御出席の予定でございましたが、どうしてもやむを得ない用件がございまして、一昨日私に代理として出るようにということで、私が本日出席をしたわけでございます。私は連合会の理事をやっております。そうして愛知県の西三河の三州織物工業協同組合の理事長をやっておりまして、東海六県並びに愛知県の織物組合のお世話をさせていただいておるものでございます。
昨年来私たち中小企業の専業者の実情が非常に困っておるという観点から、また今後これを育成強化するという立場で議会並びに政府の御当局がいろいろな観点からわれわれのために御配慮、御高配をいただきましたことをまずこの席上から厚く御礼を申し上げます。
ただいま大日本紡の原さんから綿業界の総体の問題についてお話がございましたので、私は一中小企業者の立場から専業者の大体の状態と希望を簡単に述べさせていただきたいと思います。
現在私たちの関係しておりまする業界で綿スフ織物織機として登録されております織機台数は、力織機、それから小幅織機あるいは足踏み織機等を含めまして、最近で、大体の数字でございますが、四十三万台になっておるわけであります、そのうちで紡績関係が現在大体八万台というように考えております。この数字の変遷につきまして、四十三万台のうちで紡績の大体の八万台を除きました三十五万台の織機をば全国で一万七千軒の工場がやっておるのであります。力織機並びに小幅、足踏みというような設備を入れて平均二十台のきわめて零細な業者の集団であるということをまず御承知を願いたいと思うのでございます。私たちが織物業者の組合長といたしまして、いろいろ組合を指導して参りまして感じますことは、先ほども原さんからお話がありましたが、結果的に見て設備過剰による経営の困難という問題と、それから設備が老朽化しておるという問題、それともう一つ、根本的に大事なことは、これは中小企業者の宿命と申しますか、正しいベースに乗った経営をやり得ずにせつな的な経営をしておる、しかもそれが協同歩調で立ち上ることができない、こういう状態がからみまして、今日の設備の過剰になったというふうに考えるのであります。大体昭和九年から十二年までの、あの日本の好況時代の織物の生産高並びに紡績の錘数、それから織機総台数が、その後、戦争前後を通じましてだんだん減って参りました。また昭和二十九年から三十年にわたりまして、特に化繊方面の進出も多く伸びておりますが、生産高と紡績の台数におきましては、生産の総数の減った割合と、それから紡機が減った割合は、ほぼ同じような歩調で減少しておるのでございます。しかしながら織機の面について考えますと、先ほども申しげました昭和九年から十二年までは大体一切の織機を含めまして三十五万台のものが、現在約四十三万台、こういう数字になっております。もちろん紡績の方は当時九万九千台ののものが現在大体八万台というように同じような歩調で減っておりますが、専業者の方は不幸にして九年から十二年までに二十九万一千台のものが、今日三十五万台を持っておる、こういうような実情でございます。なぜこういうふうに台数が伸びてきたのかということを私たちが静かに綿業者の立場からして反省して参りますと、先ほども申し上げました通り、中小企業者は大体零細企業者が多いのでございまして、大きな資本を持って、そうして十分に経済力を持って、ほんとうの自由の立場から経済というものの運営を合理的に推進していくという力がないのでございます。お互いに共食いをして、そうして安売り競争をする、できなければやむを得ず時間延長までやって、そうしてまたあるいは出糸、出ヤードというようなものに経営を依存する、最悪の場合は多少素質の悪いものを作っても出さなければならない、これは決していいことじゃないのでございますが、中小企業の立場というものはそういうようなせつな的な考え方で、正しい経営に立ち戻ろうという意欲といいますか団結というものができないのでございます。そういうようなぐあいで勢い拡張生産一本やりというのが専業者のお題目であったのであります。それは決して好ましい姿でなかったのでありまするが、人が三十台で五時間でやれば、自分のところは四十台に伸ばす、そうしてわずかな工費をそこにとりまして、しかもそれは経営学上の立場から、これでは宗全に出血受注なんでございますが、そういうことをやむを得ずやる、もし断わるならばほかに仕事が持っていかれるというような意味で、共同戦線を張って立ち上がるということができないのが現在の中小企業者の立場でございます。こういった関係から、勢いわれわれの専業者が現在輸出関係で織っておりまする全体の量は輸出の約六割を占めておるのでございますが、そういったいろいろな内面的な問題から、いわゆるソーシャル・ダンピングのそしりもあるいはそういう事情に一つの原因があるのではないか、こういうふうに私は考えておるのでございます。いつですか外国の本の翻訳物を読んだときに、英国のある繊維関係の人が、この日本の繊維工業の隘路は中小企業者にあるのだ、それは設備が老朽であってそうしてきわめて安い仕事をしておる、そういうために安売りと粗悪品を作るのはそこに原因があるのだということを書いたものを読んだことがあったのでありますが、まさにそういう状態ありまして、設備の更新をはかるというよりは、たとい老朽織機でも、ふやして、せつな的なかせぎでその日を暮らしていくというのがわれわれの現在の状況でございます。そういった意味で私たちといたしましては、何とかこの苦境をば打開しなければいけない。それにはわれわれが立ち上って、この業者を正しい経営の姿に直すこと、そうして公正な時間の中で公正な工費をかち得るようにするにはどうしたらいいかということでいろいろ議論して参ってきておるのでございます。しかしながら現在のいろいろな法律の建前上、強制ということはいろいろ憲法違反とかむずかしいことがありまして、自由をいうことが強く尊重されておるのでありますが、私たち組合を指導しておる者の立場から考えますと、非常に浅学であり微力のためだとは思いまするが、中小企業者にはいわゆる普通に考えられる自由というようなものは決してその業者を立ち直らせることにならないのであります。自由とかいろいろなものはやはり経済力があって力のある者がやれることなんでありまして、力のない弱い業者はどうしてもその自由のために放任状態に陥るというのが、現状でございます。私はそういう意味で常にお役所の方にお会いするときには、中小企業者を助けるためには、やはりある程度法的に強制力を持ってもらわなければ実際はできないのだ。しかしそれは一方的な官僚的な主観でやってもらっては困る。業界の意見をやはり十分に聞いて、そこに意見が一致したならば、かりに法律で強制ができないような場合には、強力な行政指導をしてくれ、うしろだてになってくれ、そうしなければ中小企業者というものは正しい方向に向うことができないのだということをるる申し上げておるわけでございます。昨年来いろいろな見地から検討いたしまして、私たちは現在組合員を指導して、同一歩調で正しい経営の姿に戻していくという努力はしております。また設備の近代化に対します努力をしておりまするが、しかしこれは非常な困苦と努力が要る問題でございまして、一朝一夕にして効果を期待することはできないのでございます。かかる見地から昨年われわれの意向も政府でおくみとりくださいまして、繊維産業の総合対策審議会をお設け下さいまして、私も当時綿工連の関係で、紡績さんの方と一緒に過剰設備の処理という問題について共同委員会の委員としていろいろ運動して参ったのでございまするが、幸いに各方面の御了解を得まして、本年の二月にこの審議会の総会決定事項といたしまして、広幅織機で六万九千台、小幅織機で四万七千台、合計十一万六千台が昭和三十五年度を目標としての繊維需給の見通しから見て、この程度は過剰であるという結論をいただきまして、これが買い上げあるいはこの処分についての方途が講ぜられるようになったことは、まことに私たち心強く感謝しておるわけでございます。しかしながらこの買い上げの問題になるのでございまするが、やはり私たちはこの織機過剰をどうするかというときに、綿工連といたしましてはどうしても零細工場でやるのであるから、この過剰織機をば買い上げるためには何とか法律に根拠を置いて、そうして法律の力でこれを買い上げるようにしていただきたいということを切にお願いしたわけでございます。英国の話を申し上げて恐縮でありますが、英国も以前過剰設備のために非常な苦慮をされたときに、やはり国をあげて法律によって設備の制限、要するに買い上げとか廃棄というその処理問題を法律によってやったということを聞いております。戦争のためにこの問題がある程度徹底を欠いたために、現在英国が同じような状態で苦しんでおるということを聞いておるのでありますが、特にこのわれわれ織り布部門のように、中小業者が大多数を占めております分野においては、どうしても法律の力によってある程度強制的にこれを処理していただくことが、ほんとうに慈悲のこもった愛のある行政である、こういうふうに私は考えるのでございます。今度の繊維工業設備臨時措置法案を拝見いたしますと、この過剰設備の買い上げにつきましては、通産大臣から共同行為によってこれを行うことができるというふうになっておりまするが、この法案を拝見いたしますと、過剰設備の処理というものは、やはり一切個々の業者の自由意思ということが建前になっておるのでございます。この点、私たちは先ほど申し上げましたように、せっかく作っていただいて、何か画龍点睛を欠くうらみがある、中小企業者の実態というものが、もっと深刻なものを要求しておるのだということを申し述べたいのであります。過剰設備の処理ということに対しては、業界あげて、これを望んでおるのであります。しかしながら個々の業者にお会いいたしますと強制でなければだめなんだ、自由でやられたら正直者はばかを見るのだからできないのだ、こういうような思想が強いのであります。そうして設備が過剰であってこれを処理するということに対して反対するものがないのでございます。ただそれが自由に取り扱われる、自由な意思によってというような言葉のために、それが何となくあいまいとしている点に業者としては非常な不安を持っておるわけでございまして、強制的にやってもらいたいというのはわれわれ綿スフ織物業者の一般の声でございます。その建前からいたしまして、私は今度の法案に対しましては、われわれの連合会の規定あるいは調整組合の規定に、生産調整規定と同じように、設備の処理規定を設けていただきまして、過剰設備の処理が行えるようにしていただきたい。また必要に応じましては、この設備の処理規定に対し、中小企業安定法第二十九条のような大臣命令が出るように本案を修正していただきたいということを、強くお願いするわけでございます。織機の処理の問題につきましては、以上のように私は要望いたします。
なお、織機の老朽設備に対しましては、これは私たち真剣に考えておるのでございます。特にこの点につきましては、綿工連といたしましては、昨年来この運動を強く展開いたしまして、業者がようやくその必要性を感じたのでございます。御承知の通り、今日いろいろな製品を見ましても、いわゆるカナダであるとか、アメリカであるとか、オランダ、ベルギーあるいは英国のような、所得の高い国の日本に対する要求品は、高級品でございます。この大勢というものは、絶対に将来の見通しとしてわれわれは関心を払わなければならないのでございまして、業界といたしましても、従来のあの生産拡張一本やりの考え方から、質の同上へ強く転換しようという意欲が、ほうはいとして起っておるのでございます。愛知県におきましても、この方針のもとに、昨年すでにかなりの織機の計画をやったのでありまするが、ことしはこれを個々の組合あるいは業者の意欲にまかせずに、愛知県全体をあげて一つの近代化促進委員会というものを結成したわけでございます。そしてこれに基きまして、五カ年計画を立てたわけでございます。もちろんこれは単なる思いつきではございません。ことしの一月の初めから四月の終りまでにわたりまして、通産局並びに愛知県の商工部の関係官と業界組合長が寄りまして、数十回の会合をしてりっぱな成案に達したものでございます。近々のうちにこの成案ができまして、これは中小企業庁並びに繊維局の方に補助金等のお願いで陳情するつもりでございます。非常な真摯な努力で、愛知県におきましては、大体五カ年計画で一万一千台という計画を立てたわけであります。