前田栄雄の発言 (商工委員会)

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○前田参考人 私は輸出向絹人絹織物調整組合連合会理事長をしております前田でございます。今度の繊維工業設備臨時措置法案につきましては、私どもの業界といたしましては一日もすみやかに法制化されますようお願い申し上げる次第でございます。
 私ども絹人絹織物業者といたしましては、朝鮮動乱直後の暴落以来、長期の不況に悩んでおりまして、それがために、原糸高製品安の状態が非常に長く続きました。われわれはこれを一日もすみやかに克服したい、そして安定した操業に持っていきたいということをいろいろ業界内で研究いたしました結果、何としましても、この原糸の供給量と設備のあり高というもののアンバランス、つまり過剰設備ということが、われわれ業界の持っておる最も大きなウイーク・ポイントである、これを克服しなければいけないというので、当時不況対策といたしまして、政府並びに国会に対しましてこの過剰設備の処理につきまして、再三にわたりまして、しかも長期に陳情いたしたのでございますが、当時の状態といたしましては、とうていこれを取り上げるような状況でない、憲法上いろいろの問題もあるということから今日に至ったのであります。幸いに昭和二十七年にそういうふうなわれわれの業界の要望をいれられまして、中小企業安定法を制定していただきました。私どもはその法律によりまして、数量制限を自主的に行い、しかも一方におきましては議員各位の非常な御協力によりまして、二十九条の命令を発動さしていただきました。それがために織機の新造設が制限され、これで今日まで、われわれはやって参ったような次第でございます。それでその法律に従いまして、われわれ絹人絹業界といたしましては、さっそく調整組合を作り、あるいは中央に連合会を作りまして、今日におきましては輸出向けの調整組合連合会の登録台数が全国で十三万八十二台、それから内地向けの絹人絹調整組合連合会の登録台数が十五万六千五百九十一台でございますが、両方合せまして二十八万六千六百七十三台という工合になっておりまして、当初心配いたしましたいわゆるアウトサイダーというものも、輸出向けにおきましてはインサイダーが九八%、内地向けにおきましては九六%、ですからアウトサイダーはそれぞれ二%あるいは四%にすぎない。ほとんどこの調整組合の趣旨に賛同いたしまして、現在ほとんどがインサイダーとなっておるような状況でございます。しかしながら何といたしましても中小企業の寄り合いでございまして、少しでも前途に光明を見出し、あるいは好調のような状態が見えますと、すぐに織機をふやすというのが従来のやりくりでございましたけれども、幸いに先ほど申しましたように、織機の新増設の制限がございますので、新規にはふえません。けれども過剰設備をわれわれ業界で非常にたくさんかかえております関係上、操業が非常に不安定な状況にあることはいなめないのでございます。昭和三十五年度を週期といたしましての原糸の需給状況からにらみ合せますと、われわれ絹人絹業界としては約六万数千台の過剰設備が三十五年度においてある。従ってそのうちの三万七千台を買い上げの対象にいたしまして、何とかここ四、五年の計画でそれを整備いたしたいということを政府に向っても再三陳情しておったような次第でございます。幸いに昨年の秋通産省におきまして繊維産業総合対策審議会をお作りになりまして、ここの答申案によりまして現在繊維業界としての過剰設備を何とか処理しなければならないというふうな趣旨から本法案を御制定になり、今度ここへ出すことに相なりましたことにつきましては、われわれ業界といたしましては一日もすみやかな法案の成立をこいねがっておるような次第でございます。
 ところがわれわれの方では買い上げと申しましても、実際輸出入絹織物と絹織物をわれわれは作っておりますが、できております人絹織物のうち輸出が四五形、また絹織物におきましては総出来高の三五%が輸出でございます。われわれは綿糸布とは違いまして、絹、人絹におきましてはその全部のものが中小企業である私どもの手で作られております。紡績のような大きな企業がわれわれにはございません。従って昨年度においても絹、人絹が輸出において非常に大きなウエートを占めておりますが、その全部がわれわれの手で作られ、人絹織物の方で先ほど申しましたように四五%、絹織物に三五%の輸出を誇っておるのでございますが、残念ながらわれわれの力では弱小企業、零細企業であります関係上、その持っております設備は十五年の耐用命数を過ぎてしまったような織機が大部分でございます。昭和十七年の戦力増強企業整備の規制におきまして、われわれ部門におきます鉄製織機はほとんど全部整理されました。そして残された半木製の老朽織機が今日現存しておるのでございますが、先ほど申しましたように全国の絹、人絹の登録台数二十八万数千台のうち四〇%が耐用命数の十五年を経過したような織機でございます。従いまして今のような老朽織機で欧米の各国と世界の競争場裏において角逐し、しかも、十分に輸出品として競争力を持つということは、われわれの現在の状況においてはその設備において非常にウイーク・ポイントがある。従って先般来政府の方にお願い申し上げまして、ようやく一昨年来から若干の設備近代化資金が盛られまして、そして昨年からやや本格化いたしたのでございますが、絹、人絹部門で昨年と一昨年とで設備近代化をやりました数字が四千百五、六十台でございます。そういうふうな状況で、二十八万台対四千台ではほとんど微弱なものでございますが、本年度におきましてもやや昨年度より多く近代化資金が盛られましたことにつきましては、業界は非常に喜んでおるような次第でございますが、今度この法案が通過した暁におきましては、一方においてそういう最も老朽化いたしました織機を整備いたしまして、その資金でもってまた近代化の方にも金を回し、そしてより多くの織機を近代化して、国際競争力を蓄積いたしたいというふうな気分でおるような次第でございます。ところが先ほど綿、スフの方からもお話がありましたように、われわれの業者団体というものは、何といたしましても中小企業の団体でありまして、大企業の集団のようになかなか計数的に、あるいは計画的に行き得ないのが悩みでございます。今度の法案によりまして、これはどこまでも自発的な供出によって設備整理、処理をやっていくということでございますけれども、そうありたいのは当然でございますが、ともすれば人が整備されて自分があとまで残りたいというのがわれわれ人間の最も弱点でございますが、それがわれわれ中小企業の団体においてはあからさまに出てくる状態でございまして、自由供出というふうな行き方においては、何といたしましても、その主義、主張、あるいはいいことは業界全部がわかっておっても、それは達成しにくいというのが業界の実情でございますので、なるべくならば、この法案に政府のお力もお借りいたしまして、そして適正に業者が中心になり、政府のバックアップによりまして処理が一日もすみやかに、また円滑に実施に移されるように相なりまして、そしてわれわれが輸出産業としてりっぱに一日も早く立ち上るように御措置を願いたいと思うのであります。
 なお最後にお願い申し上げたいことは、これは本法案とはちょっと離れるかもしれませんが、議員の各位に切にこの機会を利用してお願い申し上げたいのでありますが、合成繊維関係あるいは酢酸人絹と申します新興繊維関係は、われわれの中小企業安定法の綿、スフあるいは毛あるいは絹、人絹の部門からはずされておるのでございます。合成繊維の育成五カ年計画というものもございまして、国策繊維として将来増産を企図するという面から、政府がこれの育成に力を入れられておることは当然でありますけれども、われわれの設備制限の対象からこれが除外されております関係上、ともすれば綿、スフあるいは絹、人絹の連中は、われわれはナイロンを織るのだ、われわれはビニロンを織るのだからといえば、当然設備については制限を受けずに、自由に増設できるということになっております。そうしますれば、一方において本法案に準じまして綿スフ、絹、人絹が一万二千台くらいの整備を初年度においてやる。一方においてはナイロンを織るのだから、おれは織機増設は自由だということになりますと、政府の貴重な国費でもって整備をし、一方に無計画な増設ができるということがありましては、まことに国に対し、政府に対して、また国民に対して申しわけないと思いますので、これについての善後措置につきましては、先般来私どもは政府にもよくお願いし、また関連業界とも話し合いを続けておるような次第でございます。
 もちろん合成繊維は、将来五カ年計画によって育成、増産を企図されております関係上、これを絶対的に制限するという行き方は、私どもはとりたくないのであります。しかしながら計画的にその増産のピッチに合せまして、適正に制限して、それに見合った増設をやっていく。ただナイロンを織るのだ、ビニロンを織るのだ、合成繊維を織るのだということに籍口して、無計画な、無方針な増設をこの際抑制しなければこの穴が大きくなって、せっかくの本案の趣旨も骨なしになるきらいがあるということをお願い申し上げまして、私どもも今後政府当局ともよく御相談申し上げるつもりでございますが、議員各位におかれましても、適当の御配慮を切にお願い申し上げる次第でございます。一日もすみやかに本案が通過いたしますよう最後にお願い申し上げます。

発言情報

speech_id: 102404461X04419560508_014

発言者: 前田栄雄

speaker_id: 442

日付: 1956-05-08

院: 衆議院

会議名: 商工委員会