奥村鉄三の発言 (商工委員会)
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○奥村参考人 本国会におきまして、日本の三つの重大要素であります衣食住の、衣料に関する重要な法案の提出に当りまして、参考にお呼びをいただきまして、お聞き取りをいただきますことを深く感謝をいたす次第であります。
今回のこの法案が、機械を製造せんと欲するもの、あるいは機械を設置せんと欲するものに対する制限をなすことは、職業の選択の自由を制限することであります。憲法第二十二条には、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」と規定されておるのであります。この法案はまさに憲法違反である、かように私は断言をいたしておるものであります。もしそれ、これが憲法違反でないとするならば、公共の福祉にどこが反するのか、国民大衆の、世界人類の衣料の大政策を進めていくものの設備の制限をするというようなことは、どこが公共の福祉に反するかということをわれわれは立法府に問いたいのであります。なお憲法第二十五条には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」とあります。今回の法案を実施されますことによって、付帯的にはあるいは最低限度の生活に追い込まれ、もしくはそれ以下に追い込まれる者もでき得ることを想像いたしますと、この二十五条のねらいはこの法案とは直接の関係がありませんけれども、関連いたしましてこの二十五条にも適用せられて判断されるものと思考されるのであります。
第二には、本法案はいわゆる独占禁止法に抵触をいたしております。政府といえどもこれは否定ができませんので、その条文中に独占禁止法の公正取引に関することは除外すると明記しておる。法治国のわが国は、もしこの法案が必要欠くべからざるものであるならば、まず独占禁止法を改正して、独占禁止法にこの繊維工業臨時措置法が触れないようになさることが適正な方法であろうと思うのにかかわりませず、この法案の中に共同行為等々についての独占禁止法に触れるところを除外するということは、私ども国民の納得のいかないところでございます。これが本法案に対する前提に反対するゆえんのものでございます。
第三には、この法案を御提出になります動機の沿革を顧みますと、相当の長き経過を要したとは存じますけれども、少くとも急速にこれが実現の過程をたどって、参りましたのは、さきにタオルの織機を制限し——一昨年の十一月二日には織機を制限をいたしまして、当時、この後に来たるものは紡績機械であると流布されておったことは御承知の通りでございまして、昨年の五月、緊糸に換算して滞貨は五十万五千六百十一コリであった。三十単糸にして百八十二円五十銭に低落しておるのであるから、この辺で設備を制限しなければ共食いになり、あるいはまた維維界の恐慌がくるであろうということをしきりに業界の方々がお述べになって、本法案が促進せられてきたと思考されるのでありますが、参考に私は謄写をいたして参りましたから、後に御高覧に供しようと存じております。本年の四月の納会において綿糸の滞貨は三十二万コリの平常時をむしろ下回っておる、価格においては二百七十三円八十銭に暴騰しております。どこが不安定であるか。いろいろな方々がお述べになりましたが、繊維業界が現在、品がすれであって、先物と当限がさや寄せをしておって、どこが不安定であるかを私どもが判断をいたすに苦しんでおりまして、諸般の統計を調査、研究をいたして参りましても、現段階における繊維業界の国内需要においても、国外の輸出の振興においても不安定と判断すべきものは何らございません。もしありとするならば、言いにくい話でありますが、十大紡の独占企業を確立することならあるかもしれません。
そこでなお参考に申し上げておきたいと思いますのは、十大紡の倉敷紡の会長の塚田公太君が、「実業之日本」の五月一日号に掲載をいたしておりまする一節をとってみますと、日本綿紡の将来——むずかしいところは時間がありませんから避けます。生産が今のところ少しも過剰にはなっていない。高級綿製品を作れば欧米にもどんどん輸出される。現在の八百万錘の設備では昭和三十五年になったら足りなくなるので産業で発展の余地は十分ある。こういうように堂々と「実業之日本」に論陣を張っておいでになる。また名古屋通産局の「動態月報」四月号におきましても、繊維工業部門において綿糸、綿スフ、毛糸、人絹、絹織物、そういうようなもののいろいろな統計をあげて、その報告には、在庫は減少しておる、安定はますます高度化しておる。堅調の一途をたどっておると報告をいたしております。しかしてここで日本の紡績界を論じますときは、大体十大紡がおおむね中心になりますから、あえてこれを一つの目途といたしまして判断いたしますと、昨年下期の十月の決算は、十六紡の利益は三十七億七千八百万円の利益を上げております。まだ決算はいたしておりませんが、「ダイヤモンド」の報ずるところを引例いたしますと、四月の利益金はおよそ六十億を算するであろうといっております。ことしの下半期の十月の決算は、もうほとんど十月まで売り尽しておるところが多いのでありますから、その推定は九十億円を下らずと称しておるのであります。そうしますと、新紡におきましても、新々紡におきましてもおおむねこれに準じております。名前ははばかりますが、私が直接に調査いたしたところによりますと、ことしの上半期は昨年の下半期に比較して、大体倍の利益を上げておる、下半期は三倍の利益を上げる、かように言っております。そうして滞貨があるのか、あるいは売れ行きが悪いのかというと、品がすれである。もし不安定であるというならば、その業界から私に資料を提供していただきたいと思うほど不可解に感じておるのであります。
次に、今度の法案は大体通覧をいたしますと、大企業独占を助長する法案の内容が多くて、中小企業に対しては多くは顧みられておらないという法文の内容がしみ込んでおることを遺憾に思うのであります。ただいまも御公述になりましたごとく、紡績界においてただいまは百三十社あると存ずるのでございますが、そのうちの十大紡を除きますと百二十社、この百二十社において十社に対抗することはできない。平均の錘数は五万台くらいになるでありましょう。織布業者は平均十四台以下のものが四割前後を占めておるほど中小企業が多いのであります。さきの第二十九条を発動されましたときも、中小企業のために何としても増設を認めて、コストを高めて採算をとらして、正常なる業務をとらせなければならぬということを主張いたしましたが、その当時は綿業界のほとんどの方が委員でございまして、顧みられなかったのでございます。今回の法案の内容を見ますと、結局こまかい弱小企業というものは整理統合するか、大企業に合併吸収されることになるのでありまして、中小企業の崩壊は日本経済の構造に一大変革をもたらしまして、政治においても経済においても、きわめて重大であるのでありまして、われわれはこの法案のねらいどころに遺憾な点を考えておるのでございます。
それから、これが総合対策審議会でできて非常にりっぱな成案であるということで御賛成の御趣旨も相当ございましたが、これらの方はおおむねその総合対策審議会のメンバーもしくは関連をいたしておいでになる方であって、私ども機械工業者はその対策審議会に一名も加わっておらないのであります。繊維工業の十大紡を初めとして、工業に携わっておられます方が日本の輸出の第一位を占めるほどしし営営と努力健闘せられました長き歴史には、満腔の敬意を表するものでありますが、また織機を作り、紡績機械を作り、その準備機を作った人々は、少くとも豊田翁のごときは今日はございませんけれども、過去においては国定教科書に出るほどの、国家にとってりっぱな功績を上げておる。その織機メーカー、あるいはまた世界の水準を越えるほど今日独力をもって築き上げてきましたこの機械工業界に対して、一言のごあいさつもなく一方的な審議、答申をせられ、それによってとり上げられたということは、私どもはこれは片手落ちな審議会の答申ではないかと思うのでございます。今後におきましては車の両輪のごとく——私の先輩の井上準之助氏は、理論はいかにりっぱであっても、一つのボタンを押してどこに繁栄が行くか、どこに破滅が行くかを知らざる者は政治を語る者ではないと私に青年時代に教訓をしてくれたのでありますが、ただいまの引例を申し上げますと、これは一方にのみ偏したところの答申でございますので、今後こういうことのないように政府当局もお考えをいただきたいということで、この審議会答申の内容について、今日は批判は別といたしまして、納得のいかないことを申すのでございます。その結果といたしまして、機械工業、これに関係する下請工業及び関連工業並びにこれに関係をする労働者に対して、いかなる対策が盛り込まれておるかというと、何らこれについては触れておりません。たまたま議会戦術と申しますか、答弁要旨を作るといいますか、輸出産業をどうしようとか、設備の更新をどうしようとか、耐用年数をどうしようとかというゼスチュアは当局はお使いになりますけれども、一つも確定したきめ手というものはございません。ここに繊維局長もおられますが、何らきめ手がないと私に言明しておる。そうして今日政治は、一方において完全雇用を行い、他面において社会保障政策をするということが最大の目的であるにかかわらず、七十万の完全失業者をいかに救済するかというので、わが国の労働所管の方面においては御研究をいただいておりますが、私はまだ寡聞にして、この繊維工業の波動を受けて失業していく者に対して、労働省と十分な詮議をいたして対策が樹立されておると聞いておらないのでございます。これをどうしていただくか、これが今日きわめて重要な問題であると思うのです。
さらにまた、答申の中で一つ私が敬意を払いますことは、消費者の立場を考慮いたしておる。すなわち価格が高騰いたしますれば、これに対して適当な勧告をするということが答申されておる。ところが今回の臨時措置法案に対しては、通産大臣の勧告の分は抜けておるのであります。私が一番心配しておるのは、私どもの直接の工業にも重大でありますことは申すまでもありませんが、これが消費者大衆の価格の値上りを心配するものでございます。現に……(「今上っておる」と呼び、その他発言する者あり)なるべく早く申しますが……(「ゆっくりやれ」と呼ぶ者あり)ダイヤモンド印のワイシャツは六十双で大体一割五分くらい上げております。昨日の新聞の報道するところによりますると、相当のものは二割近く値上りをするといっております。別に私は利潤追求をせられることを否定はいたしませんけれども、一方において非常な利益を上げつつ、他面物価の高騰をするということは私どもは遺憾に考えるのであります。ことに本年の繊維の消化力というものは、アメリカの昨年の有史以来の経済界の好調につれまして、ことしは非耐久消費財部門が最も旺盛になると言われております。現にそれは現れておる。繊維品、くつ、身の回り品、台所品というものが世界の趨勢であります。また日本もこれに準じておるのでありますから、この消費量はますます本年から上っていくのでありまして、この衣料の消化量の水準が上りますことは、文化生活の向上として私どもは歓迎をいたしておるのでありますが、そういうときにこういう設備制限をするというようなことは、私は時期が間違っていると考えられるのです。昨年の五月ごろは一応こういう問題は取り上げられたかもしれぬが、現在の段階、ことにジュネーヴ精神によって世界の平和招来ということから、消費部門が非常に助長されて参りましたその波動を受けつつあるが日本においても、この点は大いに考えをいただきたいと思うのであります。輸出の正常化についてこの法案が出ております。なるほどアメリカにおいて輸出の問題は、少しは論議されておりますけれども……。