池田勇人の発言 (本会議)
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○国務大臣(池田勇人君) 太田さんの御質問にお答えいたします。
まず第一、租税の自然増収でございます。私は、昨日財政演説で申しましたごとく、世界の景気はなお高水準を続けていくものという前提に立っております。従いまして、貿易におきましても年々増加の道をたどっておりまするが、来年度、三十二年度におきましても、輸出を二十八億ドル、輸入を三十二億ドルと計算し、輸出におきましては三億ドル余の増加を見込んでおるのであります。
次に、豊作の問題でございまするが、もちろん天候に支配されることは大きいのでございまするが、最近のこの米の増産は、農民各位の非常な御努力によることはもちろんでございまするけれども、農薬、あるいは肥料、あるいは耕作技術の進歩、あるいは品種の改良等に基くものも相当あるのでございまして、私は過去二年間の実績を続けていかれると強い期待を持っておるのであります。
次に、設備の拡張についてでございまするが、昨年春以来、急速な設備の拡張が行われております。私は、この設備の拡張による産業の合理化、近代化にマッチいたしまして、積極財政によってそのネックを埋めようとしておるのでございまするから、生産の増強あるいは品質の向上は期待し得るものと考えております。(拍手)従いまして、では二千億円の自然増収を見たのはどういう根拠かというお話でございます。昨年、経済企画庁におきましては、当初鉱工業生産は前年に比べて七分一厘の増加を見込んでおったのであります。七分一厘の増加で、三十一年度当初予算は八千二百六十七億円と予定いたしました。しかるに、七分二厘の生産の増強が二割一分にまでふえてきております。この結果が、本年度におきまして九百数十億円の自然増収が出るのでございます。しこうして、経済企画庁の調査によりますと、昭和三十二年は、今年度に比べまして、鉱工業生産は一割二分五厘の増加を見ておりまするので、現行税法でいくならば、本年度に対しまして九百九十億円の増収を見込み得るのでございます。従いまして、減税せずとせば来年度は一兆百八十七億円の租税収入を期待し得るところを、九千四百六十九億円といたしております。だから、日本の生産が、ことに鉱工業生産が、三十年度に比べまして三十一年が二割一分も増加をしており、また、三十一年度に対しまして三十二年が一割二分五厘その上に増加するというので、こういうふうに相なってくるのでございます。これは私は決して見そこないではないという強い確信を抱いておるのでございます。(拍手)もちろん、物価、賃金その他につきましてもある程度の移動を見ておりまするが、これを常に勘案いたしております。また、直接税につきましてはそうでございまするが、間接税におきましても、最も大きい酒類につきましては、清酒は昨年の三百万石に対しまして三百三十万石を予定いたしております。ビールは今年度の二百三十万石に対しまして四十五万石の増加の二百七十五万石を予定いたしております。合成清酒は今年通り、しょうちゅうは百六十万石を百四十万石と見込んでおるのでございます。また、砂糖におきましても、揮発油におきましても、最近の消費状況を見まして、適当な、確実な見方をいたしておる次第でございます。
なお、次に、インフレに陥る懸念はないかということでございます。財政規模が昨年に比べて一千二十五億円増加したので驚いておられるかもわかりませんが、日本の経済は、想像以上に、何と申しまするか、発展拡大いたしたのでございます。私は、昭和二十八年のあの国際収支の赤字を見まして、一兆円予算ということを主張いたしました。しかし、三年間の努力によりまして、先ほど申し上げまするように、非常に拡大いたしたのでございます。当初の見込み、すなわち今年度の予算一兆一千三百七十四億は、国民所得の八兆二千億に対しまして、一三・九%でございます。昭和三十一年度の予算は、国民所得に対しまして一四・八%というワクに相なっておるのであります。一千二十五億円ふえましても、国民所得の増加に比べれば、まだまだワクは低いと言い得ると思います。(拍手)また、インフレに陥ることを防止いたしまする根本の問題は、先般お話し申し上げましたごとく、財政が中立性であること、均衡であることが第一でございます。また、財政が均衡であるがごとく経済金融も均衡でなければなりません。財政が均衡であっても、経済金融が不均衡であったならば、インフレは必至でございます。従いまして、私は、一方におきましては、国民各位の強力なる貯蓄増加をお願いいたしますると同時に、貯蓄せられた預金の範囲内、資本の蓄積の範囲内で設備投資をやるべきだと思います。ことに、最近のごとく設備投資が拡大いたしまして、電力その他の運輸交通関係がおくれておる場合におきましては、民間におきましても、まず第一、このネックに貸し出しをやっていただき、それから後に一般の投資をお願いいたしたいのであります。財政が均衡であり、経済金融が健全であったならば、これは鬼に金棒でございます。(拍手)決してインフレは起りません。ただ、問題は、生産が伸びるか伸びないかでございます。財政が生産拡大に意を用い、また、金融がネックを解消し、設備の合理化をすれば、生産が増強されることは理の当然でございます。今までの歴史を見ましても、鉱工業生産その他は急速に増強いたしまして、昨日お話し申し上げましたごとく、昭和二十八年に比べて三七%と、世界にドイツ以外には例を見ないほどの生産増強でございます。従いまして、私は、この三つがそろえば、物価も安定いたしまして、自然増収が確実に現われてくると確信しておるのであります。(拍手)
次に、租税の問題につきまして、滞納あるいは徴収状況はどうかとおっしゃいました。戦後におきましては相当滞納件数も滞納税額もございましたが、最近では滞納税額は非常に年々少くなって参りまして、一昨年の十一月三百二万件ありましたのが、昨年の十一月は二百三十六万件と、六十六万件件数が減っております。また、滞納税額は五百五十二億円あったのが一年間に四百二十七億円と、百二十五億円減っております。しこうして、終戦当時のごとく税務行政が非常にむちゃくちゃであった時代を脱却いたしまして、最近では苛斂誅求の声を聞くことが非常に少くなったことは喜ばしい状態と思っております。(拍手)
次に、地方税に関する問題でございまするが、地方税につきましては、経済界の好況に原因いたしまして、地方税自体の自然増収が七百億円近くを見込まれるのでございます。また、交付税率の引き上げは一%といたしましたが、前年の交付税額に比べまして二百四十億円の交付税額増額でございます。しこうして、また、補正予算で御審議願っておりまするがごとく、当面百億円を見込み、今後におきましても数十億円の交付税増額を見込み得るのでございます。従いまして、よほど以前よりは財政状況もよくなって参りました。従いまして、公共事業の事業費の増加あるいは行政水準の向上のために、単独事業におきましても二百億以上の前年に対しての増加を見込み得る状況に相なったのであります。もちろん十分ではございません。地方財政の重荷である地方債の問題、今後の税収入の問題、交付税の問題もございまするが、十分検討の上、今後恒久的な政策を来年度中に考えたい所存でおるのであります。(拍手)