八木一男の発言 (本会議)
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○八木一男君 私は、日本社会党を代表いたしまして、社会保障、労働、農林関係の重要諸問題に関し、内閣総理大臣臨時代理並びに関係閣僚に対し質問を行わんとするものであります。(拍手)
〔議長退席、副議長着席〕
まず最初に、社会保障に関して伺います。社会保障の急速な拡充が必要でありますることは、今さら私が申し上げるまでもない、明らかなことでございます。この問題は、わが日本社会党が早くから熱心に主張して参ったことは周知の通りでございます。保守党においても、おくればせながら、この問題を取り上げられ、最近の衆参両院の選挙において明らかに公約をされているのであり、特に鳩山内閣は社会保障の拡充を大きな看板としておられたのでありますが、この間、その公約が完全に裏切られたばかりでなく、健康保険料率の引き上げ、生活保護の締めつけ、失業保険の改悪等々、その逆行さえ行われていたことは明らかな事実でありまして、国民のため憤激にたえないところであります。(拍手)石橋総理大臣は、年頭の公約で、社会保障の推進をさらに高めた福祉国家建設を唱えられており、また、時まさに自然増収の財源をもちまして、この問題に大きく取り組むことができる状態にありまするので、国民の中には今度こそ石橋内閣が自民党の公約不履行を償ってくれるのではないかと期待をしておった人もあったのであります。ところが、でき上りました予算案は、あけてびっくり玉手箱でございました。全く、これでは、一体公約というものをどう考えるか、まことに理解に苦しむものでありまして、私は、これから漸次各項目にわたってお伺い申し上げ、問題を明らかにいたしたいと考えるものでございます。(拍手)
まず第一に、国民皆保険について伺います。
政府は、約二千七百万の社会保障の未適用者に対し国民健康保険を適用せしめるために、昭和三十五年度までに国保を全国各市町村に完成させる御方針のようであります。その言やよしというべきであり、われわれも大賛成でございます。しかし、方針はよくても、それを実行するための有効な方法がとられておらなくては何にもならないのでございます。適当な実行方法を用意せずに、かけ声だけかけたのでは、国民を欺瞞したことになるわけでございます。国保の普及しない理由、さらに、一たんでき上ったところでもつぶれたところがある理由は何かと申しますると、まず第一に、その給付が劣悪、不十分であるということであります。医療給付に対し平均五割の給付では、重病の場合、裕福でない人は、残り半額の自己負担にたえることができないで、医療を断念する場合が多いのであります。そうして、その場合、その人の納めた保険料はかけ捨てになるのでありまして、そのことが、国保に対する関心を高めることの障害になり、国保普及や維持をはばんでおるのであります。第二に、さらに大きな理由は、各保険組合の財政状態が非常に悪いということであります。第一の点で申し上げました、かけ捨てというようなことがありながらも、近年、医療の進歩により、支出が増大し、収入これに伴わず、赤字で動けなくなっている組合が相当にあるのでありまして、このことが、まだできていない市町村への普及を妨げておるのでございます。この状態において国民皆保険をほんとうに推進しようとすれば、被保険者層の家計から考えて、どうしても相当の国費をつぎ込んで、保険財政を確立し、給付率や給付の内容をよくして、被保険者が実際に満足して医療を受けられるように、また、医療担当者が責任ある診療行為を行いやすいようにしなければなりません。国民皆保険をほんとうに推進できるかどうかは、政府が本腰で資金を投入するかどうかにかかっているのであります。奨励、勧奨等の口頭禅では、それをなし得るものではございません。しかるに、政府の皆保険に対する予算はわずかに三十億、そのうち大部分が、国保の普及が増大した部分に対し従来通りの国庫負担を行うための費用でありまして、何ら国保推進の新しい条件を作る性質のものではございません。では、一体どうして推進するのかと、ウの目タカの目で予算書を探してみますと、わずか、口先だけで勧奨する費用が、普及促進補助費という名前で二千三百万円計上されているのにすぎないのでございます。このようなわずかな費用で国民皆保険を唱えるのは、大ぼらも大ぼら、まことに鬼面人を欺くものといわなければなりません。(拍手)政府は、このようなやり方で実施市町村を急速に増大できると思っているのかどうか、また、かりに口先だけで作られた国民健康保険組合があったとしても、その運営が健全に維持できると思っているのかどうか、さらに、被保険者が満足すると思っているのかどうか、総理大臣並びに厚生、大蔵両大臣から明確に御答弁を願いたいのでございます。
われわれは、国保の発達のため、国保に対する国庫負担率を増大し、さらに、支出の多くの部分を占める結核治療費負担を、抜本的な結核対策の樹立により、これからはずすことによりまして、国保財政を根本的に確立し、給付率を高めて国民が国保に満足する状態を作り、全国の国保創設を強制化して、国民皆保険を完全に実現すべきものであると主張するものでありまするが、政府は、虚心たんかい、われわれの主張を取り入れ、今からでも本腰で皆保険に推進する熱意があるかどうか、(拍手)また、それだけの勇気がない場合でも、少くとも三割国庫負担だけでもすみやかに実施して、ごくわずかでも公約の裏づけをなす誠意があるかどうか、あわせて伺いたいのであります。(拍手)
次に、五人未満の事業所の労働者に健康保険の適用の意思があるかどうかについてお伺いいたします。政府のやり方を見ますると、国民健康保険適用を考えておられるようでありまするが、これは間違った考え方であります。零細企業の労働者も、中以上の企業の労働者も、労働者であることは何ら変りはないばかりでなく、零細企業の貧困な労働者こそ健康保険の必要性はさらに大であります。(拍手)その人たちを雇用主半額負担という条件からはずして、本人の場合でも半額給付であり、傷病手当金のない国保の対象として考えることで足れりとすることは、まことに当を得ておりません。貧しい労働者が重い病気にかかったときに、傷病手当金がなければ生活ができません。まして、半額自己負担分を用意することはきわめて困難でございます。このことはもちろん国保の被保険者にも言えることでありますが、特に労働者の場合顕著でございます。田畑や店舗を持たない、蓄積を持たない妻子がいかに努力しても、生活費と半額の医療費を作り出すことは至難というべきでありましょう。以上の考え方からして、健康保険の対象を五人未満の事業所の労働者に急速に拡大する必要があると思うが、政府のお考えはいかがでありましょうか。事務的に捕捉が困難でございますというような根底のない言いのがれでなしに、明らかな御答弁を願いたいのであります。さらにまた、同様の見地のもとに、日雇労働者健康保険法に本年度なぜ傷病手当金を新設しようとなさらなかったか。また、今後急速に給付を向上すべきであると思うが、それに対するお考えをあわせて伺いたいのであります。
次に、政府提出の健康保険改正案、ほんとうの意味では改悪案を直ちに撤回されるべきであると思うが、そのお考えを伺いたいのであります。(拍手)一部負担、標準報酬額の引き上げ、扶養家族の締めつけ、継続給付要件の強化、二重指定、審査、監査の官僚統制の強化等々、多くの改悪点を含んだ、いわくつきの悪法を、なぜ撤回しないのか。ただ一つの政府側の実質的な論拠であった健康保険の赤字も、昨年度の政府案当時の見積りよりも、三十一年度は二十億も減少しております。かような今日において、まだ改悪のせんぶりつき法案に固執していることは、理解に苦しむのであります。意地っぱりの強い官僚の意見に押されないで、改悪の解消をこいねがう国民の切実な声を率直に聞き、改悪点を全部変えた、国庫負担のみ確立する法案にして出し直すべきであります。これこそ、現内閣が、官僚の政府でなく国民の政府であろうとするならば、当然とるべき道であると考えまするが、いかがでございましょうか。(拍手)総理代理、厚生、大蔵の両大臣より御答弁願います。
次に、結核対策についてお伺いをいたします。政府は、結核対策の推進を唱え、予防費の国庫支出を計画されております。われわれもこれに賛成するものでありますが、たった二億円の支出増では、ほんとうに効果的に実施できるのか、危ぶむのでございます。予防はさておきまして、最も大切な治療面についてどうして積極的な政策を打ち出されなかったかについて責任を追及いたさなければなりません。即時入院を要する者百七十三万人、療養を要する者二百九十万人、家族を合せれば千数百万人にも及ぶ多数の人々の苦しみを考えるとき、この国民病の治療対策を考えなくて、どこに結核対策があるかといわなければなりません。政府は、結核予防法の中で三剤併用等を認めて二億円出したと答えられるでありましょう。しかし、それは、問題の大きさに比べて、あまりにも微々たるものであります。現在の結核予防法自体が、財政の裏づけがはなはだしい不足で、半身不随の状態であることは、周知の事実でございます。結核撲滅のためには、社会保障制度審議会の勧告では、年間三百億円の金が絶対に必要とされております。それだけの費用が必要である治療面の施策を立てないで、比較的お金の要らない予防面だけで問題を糊塗するのは、財政的にはいかにも楽でございましょう。しかし、それでは結核をなおすことはできず、国民は助かりません。現在苦しんでいる患者や家族のことを考えないで予防面だけを考えることは、社会保障の精神からいえば、さか立ちをしていることになるのでありまして、政府のやり方は冷やかな衛生行政上のみの立場をとったとしかいえないのでございます。(拍手)しかも、衛生行政上の立場から考えても、現在の患者の治療をあわせて実行しなければ、底抜けのコップに水を注ぐようなものであります。(拍手)
国民病である結核をなおす方法は、現在医学的には完成をいたしております。問題は金であります。この長期療養や大きな手術を要する病気をなおすことは、個人の経済を越えた問題であり、また、各社会保険経済でもむずかしい問題であります。国家が強い決心を持って、国費をもってこれに当ることがどうしても必要でございます。(拍手)三百億は大きな金と思われるかもしれませんが、一般会計予算のわずか三%であります。千数百万人の国民の言うに言われない苦しみのこと、さらに、全国民が伝染の危険性から免れることを考えるならば、そしてまた、わが国全体が結核による莫大な労働上、経済上の損失を断ち切ることができることを考え合せれば、断じてやり抜かなければならないことでございます。(拍手)財政の面から考えましても、この支出はいつまでも続くものではございません。五年も過ぎれば減少に入る。十年も経過すればほとんど不要に相なるでありましょう。財政的に苦しいときでも、ぜひ考えなければならないことであるのに、本年のような余裕のあるときに、この施策を推進しようとしておられないことは、まさに政府の重大な責任と考えるものでございます。(拍手)政府の御所見をお伺いいたしたいと存じます。
次に、生活保護についてお伺いをいたします。生活保護費の増は、わずかに二億円余でございます。この総予算が大きく拡大をしているときに、実に驚き入ったことでございます、基準を六%余引き上げたと言われるでございましょうが、前々からもっと大きく引き上げなければならないところを、今になってごくわずか引き上げただけでありまして、予測される物価の値上りによりまして、前よりも生活が苦しくなるおそれが多分にあることを考えますると、さらに基準の増加が必要でございます。
ここでけしからぬことは、生活保護の対象者の人数を削減していることでございます。昨年秋から減ってきていると言っておられるようでありますが、昭和三十二年度に予測されまする物価高の影響で、生活保護層に転落する気の毒な人々のおることを考えに入れておかなくてはなりません。さらに、基準引上げによって新しく保護階層に入るボーダー・ラインの人々の数を考えれば、対象数の減少などはとんでもないことであります。いかなる理由でこのような予算を組まれたか、厚生大臣の責任ある御答弁を要求するものであります。(拍手)
次に、失業対策について伺います。政府は賃金のわずかな値上げを得々と述べるでありましょうが、これまた、生活保護と同様、当然もっと早く大幅に引き上げるべきところを、今回やっとわずかな実現をはかろうとするだけであります。物価の値上りによって実際の生活は前よりよくなる見通しは少いといわなければなりません。しかも、経済拡大によって失業者が減少するといたしまして三億七千万円減の予算を組まれているようでありますが、これはもってのほかのことでございます。現在、一世帯に二人以上失業者があった場合、一人しか日雇い労働者としての登録を許しておりません。その他種々の条件をつけて登録を制限しているのであります。このようなことをしておりながら、対象減少を見込んで予算を削減するというようなことは、失業者の状態を全く考慮しないものといわなければなりません。これらの点につきまして労働大臣の明確なる御答弁をお願いしたいのでございます。(拍手)
このほか、福祉対策に微々たる政策しかとっておられない。年金は調査等でごまかしているというような点がございまするが、これは省略をいたしまして、社会保障関係予算総体についてお伺いをいたします。政府は社会保障費が九十一億増加していると呼号しておられますが、昨年度予算に比較いたしまして約八%の増にしか当らないのでございます。ざらに、そのうち二十一億円は恩給局関係のものをただ移しかえただけでございまするので、実質的な増は七十億であり、その比率は六%にすぎないのでございます。特に生活保護費は〇・六%、失業対策費に至っては減少すら示していることは、先ほど申し上げた通りであります。一般会計予算だけの増加率でも九・八%増加をいたしておる今日は、この増加率は不当に低いものでございます。たとい社会保障の拡充という立場をおとりにならなくても、この支出のおもな対象者が、減税の恩恵にあずかることのない人たちであり、また、物価高により生活を特に脅かされる人たちであることを考えれば、少くとも他の項目よりもはるかに多い割合で増加をさせなければならないはずでございます。(拍手)さらにまた、社会保障の拡充をほんとうに実行するつもりでございましたならば、他の部門よりも数倍の増率をはかるべきであります。にもかかわらず、このような予算を組んだことは言語道断であります。その結果、総予算に対する割合は、前年度一〇・九%から実質的に一〇・六%に逆行していることを考えると、この公約違反の責任をどのように考えられるかの明確なる御答弁を、関係閣僚に要求するものであります。(拍手)
国民皆保険の推進を唱えて何ら有効な実行方法をとらず、逆に健康保険の改悪を強行しようとしている政府の態度、結核撲滅対策を放置して病人を見捨て、失業対策や生活保護対策を置き去りにして、恵まれない人たちのことを顧みていない政府のやり方は、まさに公約を裏切り、国民を欺瞞するもはなはだしいと断ぜざるを得ないのであります。予算組みかえをして出直す意思があればよし、もしそれがないのならば、直ちに社会保障拡充の看板を引きおろすことを、国民の名において要求するものでございます。この点について特に総理代理の御答弁をお願い申し上げます。
次に、労働問題に入り、雇用、賃金等の問題についてお伺いをいたしたいと存じます。
石橋総理大臣は、就任早々、かねがね社会党の主張しておりました完全雇用の問題を取り上げて、これを実現したいと言われました。まことによいことでございまして、われわれもこの早期実現を熱望するものでございます。が、しかし、石橋内閣がほんとうに曲りなりにでもやってくれるかということになりますると、全くまゆつばものでございます。われわれは断じて信用することはできないのであります。経済規模の拡大で雇用は相当に増大するでありましょうが、これだけでは完全雇用はできるものではございません。神武以来の好景気といわれる今日、五十六万の完全失業者がおり、七百万から一千万といわれる潜在失業があることは、これを明らかに立証いたしております。完全雇用は社会主義計画経済のもとにおいて初めて完成することができるものであり、(拍手)利潤追求を目的とした資本家の悪意にまかした投資方法によっては、完全雇用はできるはずはないのでございます。かりに百歩譲って、資本主義体制のもとにおいてそれに近いものができるとしても、それをやるには、やはり雇用増大のための計画経済をやることが絶対に必要でございます。それはルーズヴェルト大統領のとりましたニュー・ディール政策の例をもっても明らかでございましょう。政府はこのような計画をお持ちでないと考えまするが、お持ちであったらお答えを願いたいと思います。もしまだお持ちでない場合には、すみやかに計画を樹立されるべきであります。実現する力を持っておられない企画庁の机上プランのようなものでなしに、ほんとうに実現する裏づけを持った計画を近日中に発表される御意思があるかどうか、はっきりとした御答弁を、総理並びに企画庁長官あるいは労働大臣からお願いしたいのでございます。(拍手)
次に、最低賃金制の問題について伺います。完全雇用とは、量の問題ばかりでなく、質の問題もそこに含まれておらなくてはなりません。すなわち、完全雇用とは、雇用を完全化することをいうべきであって、最低の生産すらできない賃金でも職があればよいというのでは断じてないのでございます。この意味において、石橋総理は、公約を守る気持があれば、即時内容のよい最低賃金制を実施する責任があるわけでございます。(拍手)
最近、政府及び日経連は、賃金較差の拡大を指摘して、賃金闘争を阻止しようと宣伝していますが、これは全くけしからぬことでございまして、賃金較差を縮小しようとすれば、まず最低賃金制の実施をすべきでございます。ニュージーランドが最低賃金制を実施してよりすでに半世紀を過ぎ、労働基準法が最低賃金を規定してより十年の歳月を経ているのに、いまだにその実施を見ないのは、歴代保守党内閣の重大な怠慢でございます。(拍手)石橋内閣は、この保守党の失態を償うため、直ちに最低賃金制を確立する責任があります。しかも、神武以来の好景気といわれる今日、最低賃金制を実施するには最もよい条件にございます。政府は直ちにその推進をなさるべきと考えるのでありますが、総理並びに労働大臣の御所見を承わりたいのでございます。
次に、松浦労働大臣の組合行政につきまして、一点だけお伺いをいたします。本年一月十四日、労働次官通牒として、「団結権、団体交渉権その他の団体行動権について」と題する労働教育指針なるものが出されております。その内容は、簡単に申し上げますと、わが国の組合の産報化を目ざしているものでございます。実に許しがたいことでありまして、われわれは断じてこれを即時取り消さるべきものと考えているのでございますが、労働大臣はいかにお考えか、明らかに御答弁を願いたいのでございます。(拍手)
次に、農林省関係に移り、まず食糧政策についてお尋ねをいたします。
政府は当初消費者米価を引き上げることを閣議決定されたようでありますが、その後に至りまして、世論の反撃にあってこれを取りやめて、調査特別委員会の検討にゆだねることを決定されました。だが、これはきわめて政治的な取扱いでございまして、問題の結論を一時引き延ばしたにすぎないのでございます。政府は食管特別会計の赤字をそのまま持ち越していかれるようでありますが、これは食糧証券が赤字公債として運用されると同様でありまして、それだけインフレ要因になることは申すまでもございません。また、いつまでも赤字を持ち越すことはできないはずでございます。そこで、結局は消費者価格あるいは生産者価格をいじって食管会計の収支を均衡させるか、あるいはまた一般会計から赤字分を補てんするか、そのいずれかの方法にようなければならないわけであります。消費者価格の引き上げは勤労者の生計費の高騰を招き、また一般的物価の上昇を促進することは明瞭でございまして、断じてなすべからざることでございます。他方、生産者価格を引き下げるならば、直ちに農林所得の減少をもたらし、農民をいよいよ苦境に突き落すことになるのでありまして、引き下げどころか、引き上げがぜひ必要な現状でございます。そこで、わが党は、一般会計からの繰り入れによって食管会計の損失を補てんすることが最も適切な方策と考えるのでありまするが、政府の御見解をお伺いをしたいのであります。国民食生活を安定させ、国民経済の基礎を安定させるという食糧政策の観点からいたしますれば、一般会計から食管会計へ一定額の資金を繰り入れるということは、異常なことというよりも、むしろ当然のことと考えるべきであって、過去数年間の前例はこれを証明しているのであります。(拍手)日本に比べて農業の比重の軽いアメリカにおいてさえ、農産物価格支持制度のため多額の財政資金を使っていることを見れば、わが国において食糧政策運用のための財政支出を決して惜しむべきではないのであります。農林大臣、大蔵大臣の御答弁を願いたいと存じます。
次に、食管会計の赤字については、食糧政策上やむを得ざる赤字と、食糧管理の不手ぎわのために生じた赤字とを厳重に区別する必要がございます。(拍手)わが党は食糧政策上必要やむを得ざる赤字は一般会計から繰り入れることを主張するものでございまするが、同時に、食管会計のむだ、不正は徹底的にこれを追及し、その公正にして合理的な運営を要求するものであります。この点について政府の御見解をお伺いしたいと存じます。(拍手)
また、政府は最近麦の払い下げ価格の引き下げをなさったわけでありますが、これに伴なって麦の政府買い入れ価格を引き下げるのかどうか。私どもは断じて引き下げてはならないと思うのでありまするが、この点を明らかにしていただきたいと存じます。
最後に、農林予算の総額についてでありまするが、昭和三十一年度予算に比較いたしまして、三十二年度の予算の総額は九・八%増大しているのに対し、農林予算は二%の増大にしかすぎません。予算総額のうちに占める農林予算の比率は、八・四%から七・九%に減少いたしているのでありまして、昭和二十八年度一六・五%もあったことから見れば、まことに隔世の感を禁じ得ないのであります。保守党の農林政策が年々後退していることの明らかな証明にほかなりません。申すまでもなく、最近国際農業の圧迫はきわめて強いものがありまして、日本農業の将来を非常に脅かしております。このときに当って、わが国農業に対して強力な施策を加え、これに対抗できる力を養うことが絶対に必要でございます。このような施策を放棄して、日本農業を国際的な過剰農産物の攻勢にさらすならば、大部分の農民は国際競争に敗れて没落するに至るでありましょう。日本の人口の半数近くが農村人口であることを思えば、これがわが国社会の安定と秩序を根本的にくつがえすことは火を見るよりも明らかであります。政府の喧伝される減税にしても、これによって利益を受ける農民はごくわずかであり、むしろ、運賃、諸物価の値上りによる不利益は農村にしわ寄せをされることになるでありましょう。私は、ここで、政府の深刻なる反省を要求いたしまして、強力なる農林政策の推進について政府の見解を、総理大臣並びに農林、大蔵の両大臣よりお伺いをいたしたいのでございます。(拍手)
以上が私の質問でありますが、その内容は、お聞き及びの通り、労働者、農民等、働く人々の問題であり、失業者、生活困窮者、病人等、気の毒な人たちの問題でございます。神武以来といわれる好景気を作るために下積みにされ、搾取をされ続けてきた人々の問題、ぜいたくな世相の中で片すみにほったらかしにされた人々の問題でございます。総理大臣初め各閣僚は、これらの人々のために考えることのあまりに少い政策を反省なさいまして、改めるべきものはこの質問に対する答弁で即座に改めるという率直な気持を持たれるべきであると存じます。生活に苦闘しつつ、その向上を心から求めている多くの国民の名におきまして、政府の明確にして責任のある答弁を強く要求いたしまして、私の質問を終る次第であります。(拍手)
〔国務大臣岸信介君登壇〕