楢橋渡の発言 (本会議)
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○楢橋渡君 ただいま議題となりました昭和三十四年度一般会計予算外二案につきまして、予算委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本予算三案は、去る一月二十三日予算委員会に付託せられ、三十一日より審議を開始したのでありますが、その間、非核武装決議案及び最低賃金法案等の問題により審議が若干停滞いたしましたが、この数日を除くほか、連日にわたって委員各位の熱心な審議が行われ、本日討論、採決をいたしたのであります。審議の途中、二日間の公聴会を開き、各界八名の公述人の意見を徴し、審議を一そう慎重にいたした次第であります。
予算案の概略につきましては、先般本会議において佐藤大蔵大臣より詳細なる御説明がありまして、十分御承知になっておられますので、ここでは重複を避け、主として予算三案をめぐって展開せられました質疑を中心として御報告申し上げます。
さて、最初に財政の規模と経済政策について申し上げます。
三十四年度一般会計は、歳入歳出とも一兆四千百九十二億円で、第一次補正を含む三十三年度予算に比べ九百八十億円を増加いたしております。しこうして、右歳入の増加は、明年度においては、所得税、物品税等、一般会計において四百十三億円の減税を予定しておりますが、一方に、租税収入の自然増収、租税特別措置の整理、合理化等による増収、揮発油税の税率引き上げによる増収等があり、また、三十三年度において特定の目的に充てる条件で保留されました経済基盤強化資金の受け入れ二百二十一億円の増加があるためであります。
特別会計は、新たに特定港湾施設工事特別会計の設置を見ましたが、他方、特別鉱害復旧特別会計が廃止されましたので、その数は本年度と同じく四十を数えており、一般会計、特別会計を合せた純計は、歳入において三兆一千二百二十七億円、歳出は二兆九千四百八十五億円となるのであります。
政府関係機関は、総数十二でありまして収入一兆三千五百億円、支出一兆七百四十一億円となっております。
また、財政投融資は、総額五千百九十八億円で、前年度の当初計画に比べ千二百三億円、改訂計画に比べ八百四十五億円の増加となっているのであります。
政府は、この予算編成方針として、長期にわたり通貨価値の安定を確保することを第一の目標とし、財政の健全性を堅持して、一般会計の規模は、租税収入その他の普通歳入と経済基盤強化資金の使用によって支弁する範囲にとどめるとともに、財政投融資においても、新規原資及び繰越資金のほか、民間資金を適度に活用することによって経済の安定的成長に資するとともに、経済基盤を強化し、経済の体質改善をはかることを基本といたしておるのであります。他方、経済計画においては、国民総生産を、前年度に比して六・一%、実質五・五%の成長を見込んでおりますが、この成長率は、長期経済計画における三十四年度の成長率と、ほぼ見合っております。
そこで、まず、過去における経済情勢に対する財政政策の食い違いと明年度予算との関係が問題となったのであります。
すなわち、第一点は、「政府は、過去三カ年間において、神武景気といわれる好況に際しては、一千億施策、一千億減税という積極政策を推進し、国際収支の破綻を招来した。また、急角度の政策転換による不況に際しては、これが対策を講ずることなく、このため経済に大きな波動を生ぜしめる結果となったが、このことは、政府の財政経済政策が経済の諸条件に適応しないことに基因しており、特に経済の変動を余儀なくせしめた主たる原因は、民間設備投資及び在庫投資等、いわゆる民間資本形成の面における政府の適切なる指導の欠除にあると思われる。また、明年度予算は、一般会計、財政投融資とも、その規模は相当増大し、かつ、二千四百億円の散布超過が見込まれ、かなり積極的、刺戟的な予算であるといわざるを得ないが、政府は、過去の財政経済政策に対して、いかなる反省の上に立って本予算を編成したのであるか。また、多額の散布超過が見込まれる際、最も重要なことは、資金を単に民間の自主的運営にまかせるべきではなく、政府による有効適切な指導がなされることを必要と考えるが、政府は資金を計画的に運用するための機構を確立する意思はないか」というのであります。
第二点は、予算の編成と関連して、昭和三十五年度予算及び財政投融資の財源が問題となったのであります。すなわち、「三十四年度予算及び財政投融資は、積極性を打ち出したため、その財源として、三十三年度においてたな上げされた経済基盤強化資金、その他繰り越し及び蓄積資金等、あらゆる財源を使い尽している。三十五年度においては、一般会計歳入の面において、いわゆるたな上げ資金もなく、さらに剰余金の減少、減税の平年度化による減収等により大幅な減少が予想されるとともに、反面、歳出の面においては、旧軍人恩給、国民年金、社会保険等の当然増一千億円以上の歳出の増加が見込まれる。また、財政投融資についても、産投及び資金運用部の原資において多額の減少が推定される。政府は、三十五年度の財源について、いかに対処する方針であるか」という質疑が行われました。
これに対しまして、政府は、第一点、「財政経済政策は、経済の波を小さくし、安定した基礎の上に成長をはかることを根本とするものであり、予算もまた、この線に没うて編成さるべきはもちろんであるが、過去において景気の見通しを十分に把握し得なかったこともあるので、景気の動向については格段の注意を払っている。三十三年度予算は、三十二年度の予算を実施に移した後の経済情勢の変動を念頭に置いて編成したので、本予算を忠実に実行することが経済に対応するものであり、かつ、財政が経済に対して特に刺激を与えるような措置は望ましくないとの観点に立ち、公共事業等の繰り上げ実施を行い、特に不況対策としての補正予算措置は講じなかったのである。これによって、いわゆる経済の調整過程を終え、最近は上昇に向っておるのであるが、三十四年度予算及び財政投融資計画は、明年度における日本経済のあり方、その成長の度合いにふさわしいものであると考える。散布超過については、政府としても大きな関心を払っているところであり、過去における苦い経験を繰り返さないように、財政と金融との一体的運用により、特に通貨価値の安定をはかることを第一義として、金融の正常化に効果を奏するように指導していきたい。金融に対する指導は、民間の創意と工夫による活動を建前としているので、特別強い指導をすることは好ましくないから、現行法の認める範囲内において適切な指導監督をしていきたい。従って、金融に対して特に統制をする機構を確立することは考えていない」との答弁がありました。
また、第二点の、三十五年度の財源については、「過去の蓄積資金を使用したことは、現在直面している経済状態から将来の安定した経済べの発展をはかるために必要な経費として計上したものであり、これによって将来の財政の基礎をも作っていくことに思いをいたしている。従って、三十五年度財源については、例年のごとく、税収その他税外収入により一応まかない得ると考えるから、一般会計も、財政投融資も、現在のところ、特に新たな工夫をする必要はないものと考える」との答弁がありました。
次に、政府が特に重点施策として実施しようとする事項は、一、減税を中心とする税制の改正、二、国民年金制度の創設等、社会保障制度の充実、三、道路及び港湾等の整備、四、農林漁業の振興、五、文教及び科学技術の振興、六、地方財政の健全合理化、七、中小企業対策、八、貿易の振興及び経済協力の強化等であります。これらの施策に対して、特に論議の焦点となりました点を要約して申し上げます。
第一は、税制改正についてであります。政府は、三十四年度国税、地方税を通じて五百三十三億円、平年度において七百十七億円の減税を行うほか、租税特別措置について整理合理化をはかるとともに、道路整備の財源に充てるための揮発油税の引き上げを行う等、諸般の改正をすることにいたしております。
質疑は、すなわち、「今回の減税案中、所得税については、扶養控除の引き上げに重点を置き、基礎控除について何ら措置がなされていないが、その理由いかん。また、租税特別措置は、戦後復興期の一時的措置であるべきにかかわらず、今や長期化し、既得権化している。しかも、この措置による恩典は、収益の多い大企業に二重、三重に与えられている。かかる措置は、税負担の公平を欠くから廃止すべきではないか。政策上必要な産業に対しては、補助金もしくは財政投融資等の手段を講ずべきものと考えるが、政府の見解いかん」というのであります。
これに対し、政府は、「過去における所得税の減税は基礎控除を中心に減税したから、今回は家族構成に重点を置き、バランスをとった。また、租税特別措置は、個々の企業につきそれぞれの理由に基いて措置が講ぜられているもので、従来とも機会あるごとに整理をしてきたが、今後とも経済情勢の変化に応じて整理していきたい。また、恩典を受ける法人は、大法人のみではなく、中小企業も相当恩典を受けている。なお、根本的な問題については、政府が新たに設ける税制調査会で検討したい」というのでありました。
第二は、社会保障についてであります。昭和三十四年度社会保障関係費は、前年度より二百二十一億円を増加し、一千四百七十九億円となっております。新たに老齢、障害、母子の三つの年金の制度を創設し、三十四年度より無拠出の援護年金の支給を開始することとし、また、国民皆保険計画の推進、生活保護、児童保護等の充実を期しております。なお、国民年金制度創設を機会に、社会保険の国庫負担割合の総合調整がはかられておるのであります。
これらの施策に対する質疑は、「政府の社会保障政策は、どれもみな不徹底である。特に、低所得層に対して、生活保障にしても、結核対策にしても、はたまた失業対策や年金制にしても、いずれもその一つの政策だけで生活を保障することはできない。このために、人件費、事務費等においても莫大なむだがある。低所得層に対する対策は総合的に検討すべきではないか。また、社会保障制度における国庫負担の総合調整をはかるといって、保険料率や国庫負担等を増減しているが、調整をはかる必要があるのは、国民年金と厚生年金との調整ではないか」というのであります。
これに対する政府の答弁は、「現行の社会保障制度は、それぞれの必要があって発達してきたものであり、すべて窓口を一本にするということはできない。従って限られた予算の中で、それぞれの制度を充実するように努力している。各種社会保険制度における国庫負担の総合調整は、全体を見直して、経理面のよいものには保険料率を引き下げ、あるいは国庫負担の軽減をはかり、また、悪いものに対しては、事業効果が上るように国庫負担の率を引き上げたのである。国民年金と厚生年金との通算措置は、三十六年度から拠出制度が発足するので、それまでには調整する目途で検討中である」というのであります。
第三は、道路整備についてであります。道路整備事業については、特に経済の体質改善の一環として、構想を新たにして、三十三年度以降五カ年間に一兆円の資金を投入することとし、さしあたり三十四年度は、経済基盤強化資金の引き当て及び揮発油税等の増徴により、一般会計において二百九十五億円を増額しているのであります。
質疑のおもなものは、「国土開発縦貫自動車道建設法に基く道路建設の進捗がおくれている理由及び今後の実施の見通しいかん。また、道路整備計画の財源を主として揮発油税の引き上げによっているが、かかる措置は運輸業者、石油業者の負担能力を越えるものであるから、他の適当な方法、たとえば、公債発行等の措置によるべきではないか」というのであります。
これに対して、政府は、「国土開発縦貫自動車道建設法に基く名古屋—神戸間の高速道路は、用地買収が予定通り進まなかったこと等により、工事は若干おくれているが、明年度から急速に進み、三十六年末までには一応完成し、全体としては三十七年より供用を開始し得る見通しである。東京—小牧間は、三十二年度以来、地質、気象、交通量、経済状況等、諸般にわたって鋭意実地調査を進めている。また、道路整備を目的とする揮発油税の引き上げについては、石油業者、運送業者の営業収益率は年々上昇の傾向にあって、全企業の平均収益率はかなり上回る実情にある。さらに、自動車に対する揮発油税以外の公課も諸外国に比して低い状況等を考慮するならば、この程度の税の増徴は業者の負担能力を越えるものとは考えられない。道路整備のための公債発行は、現段階においては、通貨価値の安定という観点から賛成しかねるとの答弁がありました。
第四は、農林漁業の振興についてであります。質疑は、主として農漁民の生活安定の確保という点に集中いたしました。すなわち、「戦後、政府の農業政策は食糧増産に重点が指向せられ、現在その成果を上げつつあるが、他面、農漁家の生活は相対的にはなはだしいおくれを生じている。政府は、農漁家の生活の安定と向上につき、いかに対処せんとしているか。また、従来の生産者米価の決定方法を所得補償方式に改める意思はないか。沿岸漁業者は、資本漁業者の圧迫を受け、その生産性はきわめて低く、その生活は悲惨なものがある。沿岸漁業者専用の漁場を設ける等の措置を講じ、これらを救済する必要ありと考えるが、政府の見解いかん」等の質疑が行われました。
これに対して、政府は、「農業生産は向上したことは事実であるが、他の産業に比較していまだその生産性が低く、収入の格差が生じている。従って、今後の農政の重点は、生産力を高めていくとともに、所得の増大に指向したい。しかし、日本の農業は、耕地面積の狭小、人口の過剰等の諸条件のため、所得の増大をはかることは、ひとり農業政策のワク内のみで解決のできない面もあるから、日本経済全体との関連において検討したい。このために内閣に農林漁業基本問題調査会を設置し、あらゆる角度から検討する方針である。生産者米価の決定方法については、実情に即しないとの意見等もあるから、決定方法については目下検討中である。沿岸漁業については、海軍類、貝類の取得について、その保護措置が講ぜられているから、増殖に対して一そう助成したい。専用漁業権は、戦前は設定されていたが、戦後はこれを認めない傾向となって廃止している」との答弁がありました。
第五に、地方財政について申し上げます。地方財政については、三十四年度において、中小企業の負担の軽減をはかるため、事業税を中心として減税を予定し、他方、地方交付税の率を二八・五%に引き上げるほか、公共事業を初めとする投資的事業の拡充等に必要な財源を確保し、行政水準の維持向上を期しております。
これらの措置に関し、次のごとき質疑が行われたのであります。すなわち、「一、明年度地方財政は、地方税の減税、公共事業に係る国庫負担等の臨時特例法の適用期限終了による歳入減が見込まれる反面、人件費の膨張、公共事業費の増額等による財政負担は一そう増大するから、地方行政水準の低下を招来するおそれがある。政府の見解いかん。二、また、直轄事業の増加に伴い、交付公債が増加し、これが利子の累増は地方財政のガンになっていると考えられるが、政府においては、交付公債のあり方を再検討し、利子負担の軽減措置を講ずる意思ありゃ。さらに、三、各種公営事業量の増加する趨勢にある折柄、これら公営事業に対する公募債を、地方債発行計画のワク外として発行する措置を講ずる意思はないか」等でありました。
これに対して、政府は、「一、減税による減収は、交付税率の引き上げによりこれを措置し、その配分については、町村よりむしろ府県に重点を置くように考慮する。臨時特例法は、地方財政の好転した実情に基きこれを廃止して、むしろ事業量を拡大していくことが、一般の要請にこたえるゆえんであると考える。公共事業の増大に伴う負担の増加は、道路に関しては、本年度と回廊の国の負担率を据え置く等の措置をとるほか、公立学校施設充実のためには、地方債の増額発行により処理し、一方、物件費、旅費等についても、国の予算に準じて節減をはかる等の措置を講じて財源に支障ないよう取り計らっているから、行政水準が低下することはないものと考える。二、直轄事業に対する負担金を公債の形式で納付することは、地方財政の健全化の面から望ましい姿ではなく、工夫を要することである交付公債の利子を免除する意思はない。三、また、公営事業の公募債は、民間資金の活用という面から、地方債発行計画のワク外に置くことは適当でないが、実際の運用については善処する考えである。要するに、地方財政確立の根本は、国及び地方を通ずる税源の配分の適正化にあると考えるが、これらに関しては、内閣に税制調査会を設け、国税と地方税を通じて根本的に検討することにしたい」との答弁でありました。
このほか、特に議会政治のあり方、安全保障条約改定の問題、防衛の問題、日中及び日韓問題、賠償の問題、欧州の通貨交換性回復に伴うわが国の貿易政策、石炭産業を中心とするエネルギー政策、文教及び科学技術に関する問題、あるいは計画造船に関する問題、行政整理の問題、労働問題等、外交、内政各般にわたって真摯活発なる質疑応答が行われたのであります。これらは、時間の関係上、これを割愛し、これを会議録に譲ることを御了解を賜わりたいのであります。
かくて、三月二日すべての質疑を終了いたし、本日、予算三案を一括討論に付し、採決の結果、予算三案は政府原案の通り可決いたされたのであります。
以上、御報告を申し上げます。(拍手)