安田敏雄の発言 (風水害対策特別委員会)
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○安田敏雄君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案されました災害関係二十七法案について賛成の討論を行なうものであります。
本年は七月及び八月の水害、八月及び九月の風水害が連続して発生し、特に伊勢湾台風は記録的台風でありまして、その物的損害は五千八百億円に達し、さらに人的損害においては、死者、行方不明五千三百余人、負傷者三万七千余人を算し、五十年来かってない大惨害であります。
この打ち続く災害にあたって、岸総理初め関係閣僚は、災害地を見舞い、その惨状にこたえて、「心配するな、対策には幾らでも金を出す」と言い、また、国会においては「二十八年災を下回らない対策を講ずる」と約束されましたのも、この激甚な災害のためにほかなりません。しかるに、本国会に際し、政府の提出いたしました補正予算案及び災害関係各種法律案の内答を検討いたしますと、確かに二十八年災を上回るものもありますが、その中にはそれには及ばないものも多々ありまして、抜本的対策に欠けており、不満足のものであります。ことに国際情勢が冷戦の雪解けにありますとき、不急と思われる防衛費関係の削減にはいささかも考慮が払われていないということはまことに遺憾とするものであります。
わが党は、このような事態に対処して、でき得る限りの対策を推進するために、衆議院において組みかえ予算案を提出し、万全の対策をはかったのでありますが、不幸否決されましたことは、被災民の立場に立ってもまことに遺憾なことでありました。また、法律案については、政府提出二十六法案、衆議院提出一法案に対して、修正されたもの六法案、付帯決議となったもの三法案を含めて、わが党独自の被災者援護法案等、合計十五法案を提出いたした次第であります。
去る二十六日、本院において、わが党が補正予算案に賛成いたしました理由は、政府予算案が執行の過程で、不十分な場合が生ずるならば、引き続いて第二次補正、あるいはまた、三十五度年予算において必要な予算措置を講ずるとの政府の意向が明らかにされましたことと、いま一つは、寒さを迎えて今なお水没地帯にある被災民の窮状を察するからであったのであります。
さて、ただいま討論の議題となっております二十七の法律案は、さきに衆議院を通過したものでありまして、補正予算執行のための手続を規定するものであります。法律案の内容は、政府提出案に対して、わが党の修正要求が部分的には修正されているものもありますが、今回の災害が激甚をきわめている状況から判断するならば、昭和二十八年災害に比較して不十分なものであります。
数項の事例を申し上げますれば、一、被災者及び被災世帯に対する生活保障や立ち上がりの生活資金、死亡者への弔慰金、病人の治療費等に対して考慮が払われていないことでありまして、全般的に見て公共災害に比較いたしまして、個人災害に対する救助に欠けている点が指摘されるのであります。
二、災害地における、国庫負担による失業対策事業の推進、災害による一時離職者に対する失業保険の適用及び交通途絶のため通勤不能による場合の休業の補償等も措置されていないことであります。
三、天災による資金の融通は、農林水産、中小企業、個人住宅等すべて融資額を拡大する必要がありまして、それぞれ公庫の窓口をはるかに簡素化することが肝要であります。
四、農林水産業施設の復旧事業にあたっては、共同利用の施設を国庫補助の対象にすべきであり、干拓地、開拓地の復旧は全国、国庫補助が必要とされているのであります。
五、さらに、災害による不振農業協同組合の救済、生活協同組合への貸付金のワクの拡大、国家並びに地方公務員等共済組合への給付の増額等一そうの対策をはからなければならないことであります。
六、近年、果樹生産者は激増しているため、これが災害救助にあたっては、共済制度を設ける必要があります。
七、その他、医療施設の復旧、施設の拡充、公私立学校の復興及び授業料の免除等万全を期すべきものがあります。
以上の通りでありまして、政府の提出法案には、多くの欠けた点が見られるのであります。また、各種の政令による激甚地指定についても、まことに繁雑でありまして、現在地方財政の窮迫の実情から見て、その基準を一そう引き下げねば十分とはいいがたいのであります。
さらに、十一月二十七日本委員会における総括質問の審議に際して、わが党委員の質問に答えて、総理の説明は、災害対策と健全財政との関係については明確を欠き、災害予算が多過ぎると健全財政に影響があるというような印象を受けまして、納得のできる解明をしておりませんでしたが、経済や財政の健全性をゆがめるものは、年を追って累増する軍事費にその根本的要因があることを総理は率直に認めるべきであると思うのであります。
また、今回の災害が人災によって被害を大きくしたものであることは、学識経験者によっても指摘されております通り、従来保守党政府のもとでは、治山治水と高潮対策の施策が全く欠除していたことも施政の誤まりとして、政府みずから反省しなければならないことでありましょう。災害があったから治山治水の対策をする、高潮防止の方途を講ずるというがごときは、明らかに場当たり的な政治と言われても、政府は弁解の余地はないのであります。はたして、政府は、三十五年度以降、これらの対策を具体化するとの意向を明らかにいたしましたが、従来の政府施策によるところの諸般の五カ年計画は、その中途において往々にしてくずれ去っている事例があります。今度こそ政府は本腰を入れて、常に台風圏内にありますわが国土の実態に照らして、国土の保全と国民生活の安全に思いをいたし、周到な計画と大幅な財政支出の措置を講ずべきであることを切望するものであります。
師走も明日に迫り、冬を迎え、寒さもきびしくなるおりから、被災地の住民は寒空のもとで救援と復旧の措置が一日も早く実行されんことを持ち望んでいるのであります。もはや事態はこれ以上に遷延することは許されないのであります。
そこで、わが党といたしましては、委員会の審議を通じて、問題点となった諸懸案に対しては、数項目の附帯決議を付して、一日も早く被災民の切望にこたえる立場から、これら提出諸法律案全体について賛成をいたすものであります。
政府は各派共同の附帯決議を尊重し、法律の運用にあたっては、迅速かつ適切な執行をいたすよう強く要望いたしまして、私の賛成の討論とする次第であります。