中田吉雄の発言 (本会議)

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○中田吉雄君 私は、ただいま行なわれました藤山外務大臣の安全保障条約改定に関する中間報告に対しまして、日本社会党を代表しまして、岸総理、藤山外相並びに関係各大臣に質問せんとするものであります。
 安全保障条約の改定は、わが国の平和と独立にとって重大な問題であります。従って政府は、わが党の要求を待つまでもなく、政府の行なわんとするところを国会を通じ堂々と国民に訴え、また国民の一半を代表する社会党の主張に対しましても、これに謙虚に耳を傾け、野党と国民の理解と協力のもとに、誤りなき外交の推進を期すべきだと思う次第であります。しかるに岸内閣は、安保改定に関する日米の交渉は、ただいまの報告の通り、今やほとんど終わりまして、条章や字句の整理段階になって、社会党の要求に屈しまして、やっと中間報告をするというごときは、秘密独善、近代外交の何ものかを知らないものであって、国民とともに、わが党の深く遺憾とするところであります。
 現行安保条約の片務性を改め、これを対等のものにしたいという政府かねがねの主張は、新条約第五条の相互防衛にすりかえられ、その第三条には、新たに防衛力漸増の義務を負わされ、第六条には、占領時代の遺物であり最も重大な問題であります米軍の駐留を無制限に許しています。しかも第十条では、アメリカは今後十年、日本をその戦略体制の中に置き、その期限の弾力性についても耳をかさず、アメリカは日本に対しまして本質的な譲歩はいささかもいたしておりません。米国が防衛上の義務を負ったというようなことは、戦略上から見れば、きわめて意味の小さいことと言わなければなりません。昨年からの交渉の経過を見ましても、岸総理は、党内調整が難航し、藤山外相が四苦八苦されている際に、あたかも、どこの内閣の問題であるかというように、藤山外相にほとんどまかせきりであり、また藤山外相に至っては、国民的な要望をひっさげて強くアメリカに当たるの気魄なく、はなはだしきは、アメリカの意をそんたくし、国内向けの放送に終始されました。これでは日本の外務大臣ではなく、アメリカの代理大使であるといっても過言でないと思うわけであります。(拍手)たとえば、新条約は、日米相互防衛条約ないしは日米安全保障条約というべきものを、「日本とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障に関する条約」というような長たらしい表現でもって、軍事同盟の本質から国民を欺瞞せんとする点は、断じてわが党の容認しないところであります。政府は、この間、日本側としては自主性を確保し、国民の要望を最大限に取り入れるように努力されたと礼賛されていますが、これではむしろ外交上の無力を国民に深く陳謝すべきであります。この際、過去の行きがかりにとらわれず出直すべきだと思うが、総理の所見を伺いたいと思う次第であります。
 またこの交渉で、政府が最も強く主張し、アメリカの譲歩をかち得た点はどこであるか、またアメリカ側が最も固執して譲歩しなかった点はどの点であるか、具体的にその内容を明らかにされたいと思う次第であります。
 元来、アメリカの対ソ政策、その一環である日米安保体制は、アメリカの原爆独占、戦略爆撃機の圧倒的な優位及び周辺基地綱を前提として成り立つものであります。しかるに、今や原爆の一千倍の威力のある水爆を米ソ両勢力が持ち、戦略爆撃機はミサイルに急速に取りかえられ、周辺基地の価値は著しく減殺しています。従って、アメリカでさえ、すでに三千億ドルという膨大な軍事支出をもっても、その世界政策の展開が行き詰まっております。かえってアメリカ経済の国際競争力を弱め、おびただしい金の流出となり、内外両面から政策の転換が迫られております。このようなとき、わが国の戦略的な地位を過大に評価し、安保体制を強化することは、共同防衛の美名のもとに、アメリカの極東政策の危険と軍事費の転嫁を受けることが関の山であります。国際情勢に逆行し、有害無益の改定と言わなくてはなりません。
 政府は、口を開けば、中立政策は非現実的であると言っています。しかし、安保体制を強化し、米国とともに核兵器とミサイルを持つソ連や中国を仮想敵国にすることが、どうしてわが国の平和になりましょう。原爆戦には防衛なく、水爆戦には勝利者がないといわれる今日において、政府の政策こそ最も非現実的だと言わねばなりません。(拍手)本来、安全保障は相対的であって、絶対的な安全保障はあり得ません。米ソの原水爆とミサイルの間にあるわが国は、そのいずれにも偏せず、米ソの軍事力をわが国から引き離し、その衝突を防ぎ、万一の際にはその渦中に入らないという、社会党の積極的中立の外交政策こそ国民の願望であります。より危険の少ない、最も現実的な政策と言わなければなりません。また、政府は、中立外交は中国やソ連を利するものであると反対しております。しかし、ソ連が日本に求めるものは、日本の侵略ではなく、敵性のない中立日本であります。またアメリカが日本に求めるものは、中ソの陣営に入らない日本であります。戦略的に見て、ソ連が日本を無傷で占領することは不可能であります。またアメリカも、米ソ戦争が起きました際に日本を防衛することもできません。ここにおいて米ソの日本に対する戦略的な要求が一致し、日本の中立政策の成立する前提があるわけであります。従って、中立政策はアメリカの政策と矛盾するものでもなく、何ら反米政策でもないわけであります。アメリカは、独立戦争以来今世紀まで八十年、モンロー主義をとって参りました。モンロー主義こそ疑いもなく中立政策であります。中立政策は容共でないことはこれをもっても明白であります。実に、中立外交は、強国の間にはさまれ、その支配に悩む小国が、自国の発展のためとるべき最良の外交政策であります。原爆とミサイルの発展、米ソ交換訪問は、中立政策の可能性を一段と増して参りました。中立政策は非現実的で容共的であるというようなことを言って、アメリカの政策を是認するようなことはとるべきでありません。政府は、せめてアメリカ寄りの中立政策について真剣な考慮を払うべきだと思うが、所見を伺いたいと思うわけであります。
 申すまでもなく、施設、区域の使用と駐兵権は、講和の代償としましてアメリカが得た占領の継続とも称すべき一大特権であります。当時、サンフランシスコ会議で吉田総理ただ一人署名されたにすぎません。イギリスのアスター女史のごときは、講和、安保の両条約を押しつけて、日本にアメリカが駐留を継続することは、原爆を落としたことに比すべき罪悪だと言っております。従って、この日米間における最も困難なこの問題を、安保条約の改定ではぜひ解決しなくてはなりません。最近、カリフォルニア大学の政治学教授ダグラス・H・メンデル博士の調査によると、米軍の駐留に対する日本人の反対は年とともにふえ、五八年二月に東京で行なった調査では、反対者の比率は、賛成八に対して五八%であり、同教授はこの報告の中で、私は日本において米軍駐留に対する広範な民衆の敵意を見出したと言っております。これが反対は単に社会党や共産党の一手販売ではありません。日米の紛争の根源はここにあるわけであります。しかるに、ただいま拝聴いたしました藤山外相の報告、伝えられる新安保条約草案、行政協定では、現行の駐兵権をそのまま認めておりますが、これでは一年もかかって何のための安保交渉であったか、その外交交渉を疑わざるを得ません。(拍手)占領中と通算し、合計二十五年、四分の一世紀も外国軍隊が駐留しなくては日本が守れないというごときは、もはや安全保障の名に値しません。むしろ外国軍隊の駐留による日本支配の形態と言ってもいいと思うわけであります。
 新条約草案第六条によると、日本国における合衆国軍隊の地位及び区域の使用については別に合意することといたしていますが、これでは、アメリカか必要といえば、原則としてどこでも提供しなくてはなりません。いわゆる全土基地であります。フィリピンですら、今年八月十四日、在比米軍基地縮小覚書に調印いたしました。クラーク・フィールド空軍基地等、たった四カ所に限定しました。他の基地の管理権と一切放棄することになったのであります。これでは、長い間アメリカの植民地であったフィリピンの基地協定以下と言わなくてはなりません。現在米軍に貸与せる基地の種類、面積、駐留軍の数、並びに新条約によってこれがどのような変化を来たすか、その点について日米交渉の経過をはっきりされたいと思う次第であります。
 また政府は、なぜこれを有事駐留とせずに常時駐留とされたかという点であります。外電は、これでもってアメリカはまた十年間日本に駐留することができる、アメリカ外交の勝利であると伝えています。講和、安保、両条約締結当時、国務省は、当初、有事駐留で日本が防衛できるという立場をとりました。国防省の主張で現在の状態になったことは御案内の通りであります。藤山外相も当初この点を主張されたということですが、アメリカ当局から拒否されたと承っていますが、その事実についてお伺いしたいと思うわけであります。ウォルター・リップマン、ハンソン・ボールドウィン、ジョージ・ケナン等、アメリカ一流の外交・軍事専門家は、米軍の日本からの撤退を主張いたしています。そうしてハワイ、サイパン等に駐留することによって十分日本の安全が保障されるといたしております。もし安保解消の前提といたしまして、新条約が有事駐留となりまするならば、今日のわが国の不幸である革新と保守との外交上におけるところの大きなギャップは次第に調整され、ここに大きな外交の前進が開けると思うわけであります。北大西洋条約でも、加盟十四カ国のうち、オランダ、デンマーク、ベルギー、ギリシャ、ポルトガル、イタリア等には平時は駐留いたしていません。米軍の平時撤退こそ安保改定の核心であり、極東の平和と日米友好の大きなきっかけだと思いますが、政府の所見をお伺いしたいと思うわけであります。過般出ましたコンロン報告も、日本から撤退し、有事駐留に切りかえることを主張いたしています。政府は真剣にこの問題を考慮さるべきではないかと思う次第であります。
 藤山外務大臣は、米軍の日本領域外の作戦行動や核兵器持ち込みに対する事前協議は、ただいまの御報告のように、拒否権を含むものであることをしばしば言明されております。しかるに、最近の毎日新聞が伝えました外電によっても、事前協議は何ら拒否権を含むものではない。承諾や同意でないことは、米議会に提出されない交換公文に譲ったことでも明白だと報じていますが、事実と非常に違うではありませんか。これでは政府は、アメリカと日本で二枚鑑札を使って国民を欺くもので、重要なる自主性の回復は全く空文であると言わなくてはなりません。今年九月二十九日、フィリピンの政府の同意なしにはアメリカはフィリピンに長距離弾道ミサイルを持ち込まないという米比協定を取りきめました。これは重大だというので、たしか本日、防衛庁の林統合幕僚会議議長はこの視察のためにフィリピンに行かれたはずであります。米国がフィリピンに与えた拒否権がなぜ日本に与えられず、米国の信義にたよるほか仕方がないというようなことでは、安保改定の資格はないと言わなくてはなりません。交換公文でなしに本文に拒否権を明確に規定するように再交渉すべきだと思うが、政府の所見を承りたいと思うものであります。(拍手)
 藤山外相は、安全保障における安定性の重要性を力説されました。これは条約の内容によることであって、特にそれは条約によって広大な外交特権を持つアメリカについて言うことであります。わが国にとっては、条約期間をきめる重点は、むしろ選択の自由が一そう重大であると言わなくてはなりません。特に軍事同盟から、ともすれば起こりがちな大国の横暴や行き過ぎをいつでもチェックできるように、期限内でも破棄できるようにするということは、これは外交上の常識であります。藤山外相は、期限内でも協議で終わらせることができるということをあちこちの安保のPRで申されております。それができるなら、なぜ一体それを明記しないのであるか。特に、もうそう長くもないといわれる岸内閣が、今後十年も、あとあと国民に迷惑をかけるようなことは、深く慎んでもらいたいと思うわけであります。(拍手)
 アメリカでは、私も昨年国会議員団の一人としてアメリカを見せていただきましたが、軍用機生産は非常な不況で、斜陽産業と称されております。軍用機からミサイルへの当然の結果であります。軍用機生産は、アメリカでは一九五五年に八千でありましたものが、昨年は四千に半減をいたしております。アメリカ政府の武器購入予算の中で、ミサイルは五五年に五・五%であったものが、五九年には二三・六%とふえております。ロッキードにきめました源田空幕長も認めていますように、もう軍事評論家の間では、有人機の将来はせいぜい十年だといわれております。防衛庁が当初三百機と予定したものを二百機に減らしましてミサイルに切りかえましたのは、這般の消息を物語るものであります。五年後に国産化が完了し、パイロットが養成できたころには、ちょうどロッキードは博物館行きであります。(拍手)これでは、ロッキードの製造会社、三菱重工業や川崎航空等のメーカーの救済や安全にはなっても、わが国の安全にはならぬことは明白であります。もはやロッキードかグラマンか以前の重要な問題であります。なぜ根本的な問題を解決せずこのようなことをいたしたか。一説によれば、安保条約調印のため渡米する岸総理が、日本の防衛決意を示すための手みやげに、ロッキードを急いできめたといわれております。その真相を承りたいと思うわけであります。
 また、主力戦闘機の決定は、防衛計画の一環としてなされたものであると思うが、これに参画された佐藤大蔵大臣は、防衛六カ年計画を財政上認めたことにならないかどうか。また、明年度の防衛庁費は、六カ年計画の初年度分として組むのであるか、そういう点を承りたいと思うわけであります。さらに防衛六カ年計画は、これは安保改定と重大な関係があるのですが、アメリカの軍事援助、国民所得の見通し等、非常に不確定な要素が多く、ずさんきわまりないもので、再検討すべきだと思うのですが、いかがでありましょう。
 なお、この際あわせて、この安保条約の改定は、アメリカの軍事援助と深い関係にあるのですが、今後もアメリカから軍事援助を受けることになると思うのですが、ガリオア、イロアの件であります。アメリカはこれが返済を求めているようでありますが、その交渉の経過と見通しはどうであるか。アメリカの下院歳出委員会における一九五一年度ガリオア予算公聴会におきましては、ヴォルヒーズは、日本が負担する終戦処理費は、ガリオア、イロアの対日援助費と相殺しても、なおアメリカが二〇%得な勘定となると言って、対日援助費と終戦処理費が相関関係にあることをうたっているわけであります。そういう点で、どのように政府はこれと対処されるか伺いたいと思うわけであります。
 わが国は、終戦以来今日まで十五年、安保条約を結んでからすでに七年、安保体制に従属して参りました。しかしながら、外では日ソ、日中、日韓、国内では政情不安等、何一つ内外の重要な問題が解決いたしません。これは中ソ両国を仮想敵国としたアメリカの戦略体制、安保体制が生んだ必然の結果であります。わが国が侵略されなかったのは、藤山外相の言われるように決して安保条約があったからではありません。ソ連と陸続きで、同盟条約に入らないフィンランドやスエーデンが侵略されなかったことをもって見ても明らかであります。しかもミサイルと核兵器の時代、なおさらソ連を仮想敵国とする安保体制を強化するよりなことは断じてすべきではありません。歴史的に見ましても、日英同盟、日独伊等の同盟の時代は、軍事同盟のない時代よりかもはるかに短いものであります。安保体制なしには夜も日も明けないという日本人のこの安保根性の打破こそ重要と言わなければなりません。
 吉田総理は講和条約、鳩山総理は日ソ友好を実現されました。わが国は中国問題で国の運命を誤りましたが、私たちが再びあやまちを犯さないためにも、中国問題こそわが国運の将来に関する重要な問題であります。わが国は中国に対して一千万の人を殺し五百億ドルの損害を与えたと言われます。アメリカに気がねをしてこの中国と講和をしないことは、道義的にも許されないと思うわけであります。政治体制をこえた問題であります。また、安保体制の強化より、日中友好の促進、両国親善こそが、日本の平和と安全のためにけっこうだと思う次第であります。このような際、岸総理が日中問題は静観と言われることは、実はアメリカ外交への追随であります。日中関係の打開ができない岸内閣は、日本の安全と平和のためにやがて退陣が迫られるでしょう。安保改定の藤山外相は、次期総裁の資格を喪失されたと言っても過言ではありますまい。
 このような際、コンロン報告が出ましてセンセーションを巻き起こしております。これはあたかも日本社会党の政策の剽窃ではないかと思われるほど、わが党の重要政策の多くを盛っています。中国は承認すべきであると申しております。池田通産大臣は、かつて国務大臣当時、中国を承認し、同時に台湾の独立と安全を国際的に保障するという、ダレスの最高の法律顧問であったセリグマンの見解を支持されたことがあります。後継総裁を目ざす池田大臣は一体どういうお考えであるか。すでに政治的な信念を放棄されたのであるか、伺いたいと思うわけであります。
 最後に、政府の弁明にもかかわりませず、予防駐留は国連憲章の精神に違反します。また、憲法のワク内と称することによって再軍備と共同防衛の違法性を阻却することはできません。平和憲法を実質的にじゅうりんする岸内閣に平和を求めることは断じてできないと思うわけであります。ドイツは「十八才以上の青年は兵役の義務を有す」という憲法が改正されるまでは再軍備もいたしませんでした。NATO条約にも加盟いたしませんでした。現在、憲法改正ができない際に、何よりもこの憲法を重要視し、もっと厳粛な態度で憲法に臨むべきだと思うわけであります。国運の消長に関しまする再軍備並びに安保改定については、国民の世論を聞いてもおそくはないと思うわけであります。日本の長きにわたる将来に関することを、国際信義に藉口してしゃにむに行なうべきではないと思うわけであります。
 以上私の質問を終わりまして、政府の責任のある答弁を求めるものであります。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 103315254X00719591111_005

発言者: 中田吉雄

speaker_id: 23580

日付: 1959-11-11

院: 参議院

会議名: 本会議