野坂參三の発言 (本会議)

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○野坂参三君 私は日本共産党を代表して、総理と外務大臣の演説に対する質問を行ないたいと思います。
 私の割当時間が不当に短いので、私としては、ただ安保条約の問題についてだけ申し上げます。その場合、総理に申し上げたいことは、
   〔議長退席、副議長着席]野坂君とは世界観が違うのだからということで答えを逃げないようにしていただきたい。違うから逃げるというならみんな違います。
 一九六〇年初頭にあたって、アジアで二つの国際条約が結ばれました。一つは新しい日米安全保障条約であり、もう一つは中国とビルマの友好不可侵条約であります。この二つの条約は、今後のアジアと世界の情勢に重大な影響を与えるとともに、これらの国々の全く相反した進路を示すものであります。すなわち、中国・ビルマ条約は、平和五原則を基礎にした不可侵条約であります。この条約は、岸総理が一昨日から国会の壇上でいろいろ申されておりますが、それとは違って、平和共存と緊張緩和が、現実に、ただ希望だけでなしに、現実に力強く発展している一つの証拠です。他方、新日米安保条約は、緊張の激化と力の政策を基礎とした侵略的な軍事同盟であります。平和と繁栄の世界の大勢に逆行してわが国を破滅の方向に導くものであります。そこでわが国民は、二つの条約の示すどちらの方向に進むことを願っているか。言うまでもなく友好不可侵の方向であって、軍事同盟の方向では断じてありません。ところが岸内閣と自民党は、軍事同盟を目ざす新安保条約の批准を、今、国会に求めようとしております。私は国民の名において、政府の企図に断固反対しなければならない。次に、質問として特に指摘したい第一点は、それは、新安保条約は現行安保条約と同じく、依然として日本全土にわたってアメリカの軍事基地と軍隊の駐留を許しております。日本が放棄していない小笠原、沖縄が、実質的に日本から奪い取られております。こうしてわが国の主権は重大な侵害を受け、独立は失われております。この事実を何人も否定することはできません。わが国民の悲願は、このような屈辱的な状態から一日も早く脱却して、ほんとうの、真実の独立国になりたいということです。日本人であるならば、だれでもそう考えるべきです。自由民主党の諸君もそうです。ところがこの国民の強い要望をごまかすために、首相や外相は、新条約は日米対等の立場で結ばれたのだと自画自賛されておりますが、日本がアメリカに半ば占領されていて、どこに一体対等がありますか。だからごらんなさい、自由民主党の議員のある人は、安保改定は対等に向かっての一ミリメートルの前進でもないということを、皆さん方の同僚か書いております。もし日本の独立と対等の立場を真に念願するならば、何よりもまず、この屈辱的な不平等な状態の打開に全力をあげるべきです。ところが、政府は全く逆に、今回の改定にあたって、この点に対しては指一本も触れなかっただけでなく、この状態を、いわゆる自主的意思によってあらためて確認し、その基礎の上に、軍事同盟を柱にして、政治的にも経済的にも対米従属を一そう固めようとしているのであります。これが第一点。
 第二点として、この新条約の不当な性格を最もよく現わしているのは、吉田・アチソン交換公文をそのまま引き継いだことであります。この交換公文は、御承知のように、朝鮮戦争当時、アメリカがその軍事行動を国連軍という名称で合理化して、わが国に協力させるために義務を押しつけたのであります。この交換公文は“一九五〇年七月の安保理事会と翌年二月の国連総会の決議に基づいたものであります。その決議は、国連軍の行動範囲を朝鮮地域だけに限定しております。しかるにこの吉田・アチソン交換公文では、この行動の範囲を勝手に朝鮮から極東全域にまで拡大しております。これは明らかに、国連と世界人民を欺いて、アメリカと日本政府が共謀して行なった不法不信の行為であります。その目的は、アメリカの軍事行動の地域を、朝鮮からさらにアジア諸国に、特に台湾海峡にまで拡大し、中国、ソビエトを攻撃する軍事行動に日本を協力させるたくらみでありました。岸政府は、このたびの安保改定にあたって、この九年前の交換公文をそっくりそのまま引き継いだのであります。つまり国連軍の名によって、アメリカが極東全域、国連の決定によっては極東とは言っておりません。朝鮮だけと言っている。ところが、この交換公文は極東にまでこの行動を広げている。特に中ソ両国に対する侵略行動が自由に行なわれ得る根拠を依然として残そうというのが、今度の交換公文の引き継ぎであります。岸総理と藤山外相は、このような不法行為を一体認めておられるのかどうか、また、この交換公文を引き継ぐことにどのような理由があるのか、明確な答弁を求めます。中国やソビエトの政府やアジア諸国の人民が、新安保条約に深刻な不安を感じ、これに抗議しているのは、この点からも当然のことといわなければなりません。
 ここで、ソ連との関係について一言します。政府はソ連政府の最近の覚書を非難して、それは日ソ共同宣言に違反するものであり、また内政干渉であると抗議しております。これは全く白を黒と言いくるめようとする態度であります。共同宣言では、日ソ両国間の国交の回復は、「極東の平和と安全に役立つ両国間の相互理解と協力に貢献するもの」と、こうはっきり書いてあります。ところが岸内閣は、この共同宣言の精神を今日までことごとく踏みにじったではありませんか。たとえば平和条約を締結しようというソビエト側からの再三の申し入れに対して岸内閣は領土問題にかこつけて交渉を始めることさえも拒否し続けております。またアメリカをも含めた日本の平和と安全を保障し得る集団安全保障条約の締結を、頭から受けつけまいとしております。さらには、最近のソ連政府の日本政府にあてた軍縮に関するメッセージを全く黙殺しております。これら一連の事実は、岸内閣こそが、事実上共同宣言を踏みにじり、ソ連の日本に対する友好的態度を無視し、国際信義にもとる行為といわなければなりません。
 第三に、総理と外相は、施政演説の中で、新安保条約を正当づけるために、盛んに国連憲章をかつぎ出しております。ところが、新安保条約の第四条、第六条を見ますと、これでは国連憲章を事実上踏みにじっておる。これは重大な問題です。この点にこそ新条約の本質が最もよく現われているのであります。
 まず国連憲章第五十一条は、「国連加盟国に対して実際に武力攻撃が発生した場合にのみ、自衛権を発動する権利がある」ことを認めております。ところが、新安保条約第四条、第六条は、実際に武力攻撃が発生しない場合でも、「極東における平和と安全の脅威が生じたとき」には、武力の発動ができるように拡大し、改ざんしております。このようにして、日米両政府が、極東の平和と安全を守るという理由で、自衛権の名のもとに侵略的な行動を起こし得るようにしております。これは、まさに国連憲章の明白なじゅうりんであります。
 次に、それでは政府のいわゆる平和に対する脅威を決定するのは一体だれがやるのか。国連憲章では、安保理事会にあると明白に規定しております。すなわち極東の平和とか世界の平和に対する脅威の有無をアメリカや日本が勝手にきめるのでなくて、それは安保理事会でやるのだという趣旨であります。しかるに、新安保条約第四条、第六条によりますと、「極東における国際の平和及び安全に対する脅威」を日米両国政府だけで決定し、これに対する武力行動をも行ない得ることを規定しております。このように見てくると、政府の一枚看板である国連憲章の尊重とは、実は新条約が自衛のためではなくて侵略的な軍事同盟であるという本質を隠すためのただ隠れみのにすぎないのであります。これは国連及び全加盟国に対する冒涜であり、国民に対する最も卑劣な欺であります。これに対して総理と外相の所見をただしたい。
 最後に、政府が世界の大勢に逆行し、日本国民とアジアの人民の反対を押し切ってあえて新条約を締結したのはなぜであるか、この点に触れなければなりません。これは社会主義陣営の偉大な発展と優位に抗し、世界資本主義体制の弱化と後退を防ぎとめるために、また日本国民の独立、平和、中立、民主主義の力強い戦いを抑圧するために、アメリカ帝国主義の庇護と援助のもとに、日本の反動勢力が、軍国主義、帝国主義の復活強化をはかろうとするものにほかなりません。このことはアメリカと日本の支配者の強さを示すものではない、反対にその弱さとあがきを示すものであります。新安保条約は岸総理の言うような自由と平和のとりでではなくて、保守反動の独裁と侵略のための竹やりです。この竹やりはやがて人民の手によってへし折られるでありましょう。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手]

発言情報

speech_id: 103415254X00519600204_017

発言者: 野坂參三

speaker_id: 22751

日付: 1960-02-04

院: 参議院

会議名: 本会議