吉江勝保の発言 (予算委員会)

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○吉江勝保君 第一班の視察報告を申し上げます。
 第一班は、鈴木強委員と私とで、去る一月十六日から五日間の日程で、山梨、長野両県を視察して参りました。その間、両県当局並びに関係政府出先機関から、それぞれ管内の一般経済情勢、財政状況及び公共事業の進捗状況等につき説明を聴取したほか、昨年八月九月と二回にわたり、両県下を襲った台風第七号及び第十五号による災害の復旧状況につき、特に被害のひどかった地区の現地調査を行なうとともに、これが被害の当該市町村財政に及ぼした影響等について詳細な調査もいたしたのであります。
 以下、右調査の結果を御報告申し上げるのでありますが、何分調査は各般にわたり、かっこまかい数字等も伴いますので、ここでは簡単にその概要と並びに重要と思われる二、三の点について申し上げるにとどめ、詳細は別に報告書をもって委員長のもとに提出いたしたいと存じますから、御了承願います。
 まず、山梨県下における一般経済概況でありますが、同県は、両度の台風により、きわめて大きな被害を受けたにかかわらず、一般に景気はすこぶる上々で、生産実績も全企業にわたり急速な伸びを見せておりました。中でも、地元産業の活況がめざましく、同県の主要産業であります郡内機業等におきましては、滞貨に苦しみ、多数の倒産者を出しました一昨年の不況とは打って変わり、品目によっては生産が間に合わぬというほどの繁忙ぶりでありました。もっとも農業関係におきましては、やはり台風による稲作、果樹等の災害で、相当の減収があったわけでありますが、これとて、果実、繭等の価格が比較的高水準に維持されたため、全般的には収入面にさほどの減少はなかったようであります。ただ問題は、耕地の流失、農林道の決壊、水路の埋没等による損害が三十八億円にも上っており、これが復旧には多額の経費と相当の歳月を要することでありますので、今後この負担が、県の農業にどう響くかという点が、一つの問題だと見て参りました。
 次に、長野県の一般経済概況でありますが、かつて戦前全国第一の生糸生産高を誇り、また果樹、酪農、農産加工等の多角的農業経営をもって知られた同県も、戦後は製糸業の衰退と共に、近代工業への転換を求めて除々にその産業構造を変えようとしていることが、まず指摘されます。すなわち、生糸にかわる岡谷、諏訪地区を中心とする精密機械、伊那地区の電子工業及び上田、長野地区の金属機械工業などは、今やその生産高において、カメラ、レンズの光学機械では全国第二位、オルゴールは全国生産高の七割を占めて第一位、時計は第三位という躍進ぶりを示し、昭和二十五年当時ほぼ均衡状態にあった農業対工業の生産額も、三十三年には工業の方が六〇%方、上回わる状況となっております。しかし、こうした工業化への進展も、企業内容から見ますと、なおまだ脆弱な点がございまして、たとえば県内総事業所数の九九・六%が中小企業であって、しかも、その総数の五二%が従業員三人以下の零細企業であったり、また、これら工場のほとんどが、いわゆる下請企業を主体とする中央大企業の分工場であること、さらには、管内金融機関の預金貸出状況から見た場合、銀行の占める割合が他県にくらべて低く、零細企業や農業関係を、おもな相手とする信用組合、農業協同組合などの金融機関の地位が比較的高い比率を示しておりますことなど、これらを考え合わせますと、ある程度の工業化は進んでいるにせよ、工業的にはまだまだ後進県であり、むしろ農業に優位性があるというふうにも感じたことであります。
 次に、山梨、長野両県の財政状況のあらましを申し上げます。
 山梨県の財政は、昭和三十一年度までは赤字財政でありましたが、三十三年度の決算では一億五千万円の黒字を出しております。すなわち、昭和三十三年度普通会計の決算額は、歳入総額八十九億六千万円に対し、歳出総額八十八億一千万円でありまして、他方、長野県の場合は、同じ昭和三十三年度普通会計決算額において、歳入二百二十一億四千万円、歳出二百十八億二千万円、差し引き三億二千万円と相なっております。つまり、予算規模においても、当年度黒字額にしても、長野県は山梨県のほぼ三倍ということに相なるわけでありますが、実質収支で見ますると、山梨が一億六千万、長野は一億三千万と、逆に山梨県の方が優位に立っております。
 今、両県の昭和三十三年度普通会計決算額調によってその財政内容を概観してみますると、まず、県税収入の構成比でありますが、山梨は一一%、長野は一五・五%で、山梨県の低率が目立ちます。これに対し、地方交付税は山梨一二%、長野二三%、国庫支出金は山梨三五%、長野三四%となっておりまして、両県とも依存財源の占める割合がきわめて大きいことを示しております。
 さらに、歳出面の構成について見ますと、まず、人件費でありますが、長野の四一・九%に対し山梨は四四%となっており、山梨県のこの面での経費高が気になります。また、人件費を主とする消費的経費では、長野五九・五%、山梨六一%となっておりますが、これはいずれも全国平均の六〇・三%にほぼ近い数字であります。
 問題は、行政水準の向上に必要な投資的経費が、山梨は二九%、長野が三一・五%となっておりまして、特に山梨県のそれが全国平均の二九・一%に対し、やや低いという点であります。このことは、公債費における山梨の九%、長野の七%が、ともに全国平均の六%を相当上回っている事実と合わせ、今後ともこれが改善に一段の努力を払うべきものと存じた次第であります。
 引き続き第七号及び第十五号台風によってもたらされた災害の復旧状況について申し上げます。
 山梨県の受けた被害は、一口に、第七号で三百億、第十五号で百億、合わせて四百億に上がっております。もちろん同県の歴史始まって以来の大災害でありまして、一時は、どうなることやら、かいもく見当もつかなかったが、今日では被害地の査定もほとんど全部終わり、公共災害については、国庫の高率補助と特別交付税の追加で復旧工事のめどもついたし、小災害その他、一般民間被害や営農資金等についても、つなぎ融資で、なんとか見通しがつき、県費の持ち出しにしても、やりくりのできる程度でおさまる予定で、県財政への影響等も、あまり大したことはないはずだと、これは県当局が私どもに語ったところであります。
 事実公共土木災害では、被害総額百二十二億に対し、すでに緊急を要する約六割については、いち早く緊急査定を受け、直ちに一部着工するとともに、十一月本査定を受けた結果、申請額の九一%という好成績で百十億九千万円の国庫負担を受けることに決定しております。うち二十二億が本年度分で、これに予算外義務負担二十三億を合わせ、計四十五億をもって目下復旧工事の促進に当たっておりまして、五、六月ごろまでには所定の工事を完了する見込みとのことでありました。さらに農地、農業施設の災害復旧でありますが、この方は総額三十一億六千万の査定を受け、うち本年度実施額は十二億二千万と決定しておりまして、本年一月十日現在、その大部分が着工中という状況でありましたが、部分的には本年度植付期に間に合わないところが出てくるのではないかと憂慮される面もありました。
 そのほか、いろいろと各般の説明も聞いたのでありますが、要するに、災害復旧に関する限り、大体うまくいっているということでありました。しかし、私どもが実際に被害地の市町村を訪れて、現地の実情を調査いたしましたところでは、必ずしも万事うまくいっているとは申せない点もあったわけでありますが、詳しいことは報告書に譲りたいと存じます。
 ついで長野県に参り、つぶさに災害復旧状況を調査いたしたのでありますが、ここでも事情は山梨県の場合とほぼ同じでありまして、問題点にも共通なものがございました。簡単に概略だけを申し上げます。
 長野県では、昨年の十二月三日をもって、公共土木関係の災害復旧事業は現地の査定を完了しておりまして、その査定総額は九十八億九千万でありました。これは山梨県と同様、申請額の九一%に当たっておりまして、うち八十八億が県工事分、十億が町村工事分となっており、昭和三十四年度実施要望額は、事務費を含め、査定額の約三〇%の三十一億九千万でありました。
 なお長野県では、災害予算措置といたしまして、すでに昨年十二月までに二十五億三千万の追加計上と、五億七千万の予算外義務負担を議決して、来たる三月までには本年度復旧計画の完遂を期しておりましたが、しかし、現在までのところ、国からの負担金、補助金がまだ二割程度しか来ていないために、これが早期交付と、さらに着工額を下回る国庫負担金が交付されることのないよう、強く私どもに要望するとともに、なお今国会における第三次補正予算で、さらにどのくらい見てもらえるかという点について、深い関心を寄せておりましたことを申し添えておきます。
 なお、中央道の問題でありますが、この件につきましては、両県の当局はもとより、自治団体代表の一致した意見として、この際、政府において、ぜひとも既定方針通り今国会に法案を提出し、すみやかに予定路線の決定をしていただきたいとの強い要望がございましたので、この点も特に申し上げておきたいと存じます。
 最後に、今回の調査を通じて特に感じたことの若干を申し上げます。
 その一つは、昨年のような大災害の場合に、現に山梨県でも長野県でもそうでありましたが、災害査定事務等の処理のために、五十名からの県外職員の応援を求めたわけです。おかげで両県とも大いに助かったということですが、この際この経験を生かして、こうした非常の際に、地方公務員を機動的に動員できるような恒久的制度を考えてみたらどうかという問題であります。台風等による被害は毎年必ずどこかに起こるわけですし、災害が起こればたちまち今申したような必要が生ずることになります。ただ今度の場合、土木関係と農業関係の職員の間に、滞在手当等で待遇上のアンバランスがあり、県当局もその処置には困ったようですから、こうした点の調整も各省間で十分考慮していただきたいと存じます。
 その二は、自衛隊の目的、任務といった点にも関連することですが、災害が起こると同時に、間もなく自衛隊が出動してきて、何かと働いていただくのは大へんありがたかったが、欲を言えば、自衛隊員にいま少し土木関係の知識があって、かつ、つるはしとか、シャベルといった工事に必要な資材を携行してきてくれたなら、さらによかったという現地民の声を聞いたのであります。これもぜひ一考をわずらわしたいものと存じます。
 その三は、災害国庫補助の際の、いわゆる三・五・二の年次別支給原則の問題でありますが、実際には、査定額の三・五・二にならないきらいがあるから、ぜひ規定通りの率で支給されたいということと、さらに地方起債の充当率について、当年度七五%が、次年度から五〇%に落ちるのは困るということ、これは至るところで強い要望がありましたので、特に申し上げておきます。
 次に、これは警察関係の予算を調査してわかったことですが、オートバイ一つ買う予算がないために、相変わらず自転車で飛び回る非能率をあえてしておるという事実であります。しかも、現在使われておりまするのは、オートバイにしろ、モーターバイクにしろ、ジープにしろ、ほとんどすべて自治団体が乏しい予算を割いて買ったものを警察が借用して使っておるという実情を聞いて、このままでは、町村財政への圧迫にもなりかねないと痛感したことであります。
 さらにいま一つ、これは国の出先機関の問題でありますが、いずれも少ない人員のもとに、年ごとに多くなる事業量を抱えて苦労しておるようであります。要するに、仕事の割には職員、特に技術職員が足りないということでありますが、この場合、たまたま定員の増が認められても、実際問題としては、一人当たりの担当事業量が飛躍的に加重されるため、せっかくの人員増が、かえってお互いの迷惑になっておるという実例を見て参りました。ここに一々データをもって申し上げることは省略いたしますが、これらはいずれも単に山梨、長野だけに限られた問題ではないと存じますので、この点、政府も国会もすみやかに十分な検討を加えていただきたいと存ずる次第であります。なお、詳細の報告は、別に文書をもって提出いたしますから、委員長におかれましては、よろしく会議録に掲載の措置をとられるようお願いをいたしまして、口頭報告を終わります。

発言情報

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発言者: 吉江勝保

speaker_id: 20015

日付: 1960-02-09

院: 参議院

会議名: 予算委員会