五藤齊三の発言 (逓信委員会)
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○参考人(五藤齊三君) 五藤でございます。私は商工会議所におります立場から、この郵政問題につきましては全くのしろうとでございますので、一般の社会人といたしまして感じましたところを、雑駁な点ではございますけれども申し述べてみたいと思います。でございますので、大局的から考えまして、今回の郵便法一部改正によって料金値上げ、改定が主として行なわれました結果、はたしてそれに対比するだけのサービス改善ができるだろうか、こういうことに対しての疑問について申し述べてみたいと存じます。
今回の要綱を拝見いたしてみますと、制度の改正と料金の改正とまあ二つになっておるように思われますが、この制度の改正に関しましては、私はおおむね賛成を表するものでございます。で、ことに高層建築物に郵便受箱を設置するということを法制化するという問題については、これは非常にけっこうであると私は存じます。いな、むしろ諸外国に例を見ますように、二階建でも一階建でも、道路に面したその家の入口に郵便箱を設置すべきであるというふうに改められまして、まあそういうことを急速に実現するためには、国の一般の大衆に対する援助が必要でございましょうけれども、そういうことによって郵便受箱というものを道路に面した家の入口に設置いたしまして、これによって配達人の労苦を軽減し、配達能率の向上をはかるべきであると深く感じるわけでございます。で、まあいろいろのテクニックをお聞きいたしてみますというと、日本の町名、番地等が非常に複雑であって、配達が非常に非能率になるのだといったようなことを承りますが、まあアメリカ等で行なわれておりますようなPOボックス・ナンバーといったようなものが家の番地にかわりまして、これがきわめて整然とつけられるといったようなことになりますならば、今日の配達能率が一段と向上をいたしまして、配達遅延の解消に多くの成果を上げる結果になるのではないかと考えられる次第でございます。
次に、料金改正の問題でありますが、これは全国民残りなく影響をこうむるものでございますので、何といたしましても、物価値上りのムードを形成するという観点から、これは軽々に看過することのできない問題ではなかろうかと存ずるわけでありまして、十分慎重を期しておやりを願わなければならぬのではないかと、こう思うのであります。で、案を拝見いたしますと、一種、二種の一般家庭に関係のありますものは、こういうことを考慮をせられまして据え置きにせられておるようでございますけれども、この方はどうかといたしますと、一般家庭からの利用の数というものは比較的少ないのではないかと思うのであります。で、今回値上げの対象になっておりまする三種、五種、ことに市内特別郵便物、ダイレクトメールといったようなもの、並びに一般家庭にもある程度の影響のございます小包料金の大幅の引き上げといったようなことから、間接的には国民経済に相当の影響があることはいなめないと思いますけれども、こういう観点から総合的な物価対策を確立して、一般物価の値上がりの不安を解消していただくような対策がぜひとも望ましい、こういうふうに考える次第でございます。
まあしかし、一面から拝見をしてみますというと、過去十年の長きにわたりまして、わが国戦後経済の緩慢なインフレーション的進行の中におきまして、諸物価がことごとく高騰を続けております中で、郵便料金が長い間据え置かれておった。その結果、今回値上げを必要とせられております種類のものでは、はなはだしいコスト割りになっているという現状から考えますというと、独立採算制の仕事でありますところから、前述のような国民経済に及ぼしますところの影響を最低限度に食いとめるという考慮が払われての料金改定でありますならば、これは賛成せざるを得ないと私どもは考えますところでございます。ただ問題は、この料金改定によって増収せられました収入によりまして郵便事業の設備の機械化を推進し、あるいはサービスの改善を確約することができるであろうかどうかということが問題点ではなかろうかと思うのでございます。周知の通り、現在の郵便物の遅配——配達遅延は全く慢性化しておるように思われるのでございますが、各方面にその結果いろいろの被害を及ぼしておることは隠れなき事実であると思うのであります。
その一例を私は一つ聞いて参りましたから申し上げますならば、ある輸出貿易をやっている商社がLCを封入せられた外国郵便、しかもスペシャル・デリバリーという特別速達の外国郵便が羽田に到着して以来十三日日に東京都内に配達せられた、こういう事実があることを聞いたのであります。その結果、注文品の積み出し時期がおくれまして、多額の違約金を取られた、これは直接の大きな被害だと言ってぼやいておったのであります。これはもとよりストに際会をして異常な遅延をいたしました特別の事例ではあろうかと思いますけれども、一般的にも配達遅延がもう全く普遍化しまして、普通の業務用の書類というものはほとんど速達を使わなければ、もう郵便の目的が達せられないのが今日の常識のように考えられるのであります。私どもの属しております商工会議所からすぐ向かいのビルに手紙を出したら、その手紙が三日かかって向かいのビルに着いた、こういったような事例もあるようでありまして、全く普通の業務用の書類は速達でなければ用をなさぬと、こういうふうになっているのが現状であろうかと思うのであります。それらのことから、郵政省としましては、低料金の書籍、雑誌、印刷物等の郵便物が激増しました今日、これらの面から多くの赤字を出していることは容易に了解ができるわけでありますが、また一方におきましては、今申し上げましたような配達の遅延の結果、多くの業務用書類が速達でなければ用をなさぬということで、もう速達を多く利用するということで、郵政省の配付せられておりますグラフを拝見いたしましても、この非常な赤字種類でありますところの書籍、新聞、雑誌等の印刷物の激増とほとんど程度を同じくして速達というもののふえ方が異常な上昇を続けていることも事実のようであります。この面では私はおそらく郵政省が大きな黒字を出しているのではないかと思うのでありまして、この赤字と黒字とどっちがどうだろうということの疑問を私ども持っておる次第であります。とにかく速達利用者は今回の——現行料金でもすでに郵便料金の値上げをせられておるという、被害を受けておるという事実を考えなければならぬと、こういうふうに思われるのであります。事実郵政省の出しておられますグラフを拝見いたしましても、戦前と現在と比較いたしますというと、郵便物の集配サービスというものは、全く半分以下にサービスが低下しているということは、郵政省自身がこれを公表しておられるのであります。これをいかにして戦前並みに引き戻すかということが、国民生活の上に大きな期待を与えるものでなければならぬというころではなかろうかと思います。今回の料金改定によりまして、平年度八、九十億円の増収となるということを承りますが、一方におきましては、今回の従業員の給与ベースのベースアップによりまして、やはり平年度四、五十億円の人件費支出増が見られるというふうに思われますが、これにもしも現在まだ人手が足らぬといったようなことで定員増加でもありますならば、せっかく今度の料金改定による増収はほとんど人件費に食われてしまう、こういう結果になりまして、サービスの改善というものは一向事実上経済的にできないのではないか、こういうような心配を私どもはいたすものでございます。
で、郵政省のグラフを拝見いたしましても、アメリカでも日本でも、郵政事業の総合経費中に占める人件費の割合がわずかに七〇%程度であって、彼我の間に大差はない、こういったようなことを公表せられておりますが、御承知の通り、日本とアメリカとの経済基盤の違いから給与ベースを考えてみますと、ほとんどアメリカが九であり、日本が一である。九対一のような差でありますことは、もう皆さん御承知の通りでありまして、これから逆算いたしますというと、人数の比率ではこれが逆に一対九、アメリカが一で日本が九といったふうに非常に非能率な操作が行なわれているのじゃないかということをこのグラフの中からも感じ取る次第でございます。こういうことから考えますれば、何といたしましても郵政省がこのグラフで将来を期待しておられます一段の機械化の推進と、そうして勤労意欲の上昇ということを考えませんならば、サービスの改善は期して待つべきではないと、こういうふうに私どもは考えるのでありまして、この点に多くの問題点がひそんでおるのではないかと、私はそういうふうに考えるのでありますが、聞くところによりますと、東京の区内の郵便局はおおむね配達の区域を四十ないし八十くらいに区分をいたしまして、その一区に一人の配達人を使っておるということでございます。やはり休日等がございますので、人員配置は大体一区に対して一・三人というふうな配置になっておるそうでありますが、この配達人も勤務を続けておりますことによりまして、年功序列によりまして、五人に一人を二級職に登用をして、主任の称号を与えておるそうでありますけれども、これは全く機械的だそうでありまして、ほとんどこれに責任を持たしていない、こういうところに問題があるように聞いております。でありますので、この一つの区を担任している配達人が休暇をとりますというと、その区の郵便物はその日は全く配達をせられないというのが現状だそうでありまして、ストの場合等に、あるいはどこそこの配達区は休めというような指令が出ますというと、そこの郵便物が山積をする、こういうことが実情として起こっているそうでありますが、これはよろしく二級職に登用いたしました主任という者を、もう少し責任を持たせまして、この配達区を四区ぐらいを一まとめにして主任に責任を持たす。そうしてその四区の中で欠勤があり、あるいはストで休んだ者があれば、その四区の中にいる約五人の中で責任を持ってその日その日の配達は必ず完了するというような責任体制をとらすことが必要ではないか、これは郵便局の局長自身がそういうことを考えておるようであります。
こういったような点からも一つ人的な面の制度の改善等にも十分留意をしていただきまして、今回の改正を機に郵政の運営というものがほんとうに軌道に乗って、料金は上がったが、サービスは一向改善せられないといったようなことになりませんように、料金改定による増収が人件費にみな食われてしまったというようなことになりませんように十分御注意をいただくことによって、私は今回の改正は、料金改定もやむを得ないことであり、また制度の改正につきましては一部むしろ賛成である、こういうことを申し述べたいと存ずる次第でございます。