池田勇人の発言 (本会議)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○国務大臣(池田勇人君) お答え申します。
 御質問の第一点は、昨日私あてのフルシチョフ氏からの返書に関して、その内容の領土の問題でございます。私は、択捉、国後、歯舞、色丹は、日本の固有の領土であることを、今まで常に主張しておったのであります。しこうして、われわれの受諾いたしましたポツダム宣言のもとであるカイロ宣言には、固有の領土は侵害しないという原則が立てられておるのであります。したがいまして、私は、ポツダム宣言を無条件受諾したからというても、そのカイロ宣言の趣旨を四カ国は守るべきべきものであると考えます。フルシチョフの考え方には反対でございます。ことに、択捉、国後につきましては、歯舞、色丹はもちろん、一八五五年の日魯通好条約で、はっきり幕府時代から日本の固有の領土と認めておるのであります。しこうして一八七五年すなわち明治八年の千島樺太の交換の場合におきましては、千島とはウルップ島以北の島を千島といっていることは、はっきりいたしております。この点は講和会議におきましても吉田全権より主張いたしております。しこうして、ヤルタ協定なるものは三国の秘密協約でございまして、われわれはこれを認めません。アメリカにおきましても、ヤルタ協定につきましては議論があることを聞いております。しこうして、私は、講和条約の場合において、今のグロムイコ外務大臣は次官として、そして首席全権として来ておられました。講和条約の草案ができまする前までには、私の記憶するところでは、南樺太はソ連にリターンする、返還する、千島はソ連にハンド・オーバーする、譲渡すると、草案には書いてあったと思います。それが九月六日の講和会議におきましては、日本は南樺太、千島の権利、権原及びあらゆる請求権を放棄すると変わっておるのであります。このことは、グロムイコもはっきり知っておるわけであります。彼は非常に憤慨いたしまして、結局は講和会議から出ていったのであります。以前の草案には、ソ連に譲渡あるいは返還という言葉が、われわれの調印した講和条約には、日本は権利、権原及び請求権を放棄するといっている。だれに放棄するということは、調印した国に放棄したと私は心得ております。調印しないソ連が権利を主張するということは誤りでございます。これは、はっきり申し上げておきます。また、ポツダム宣言あるいはわれわれの認めておりませんヤルタ協定に参加したアメリカ政府も、択捉、国後は日本のものであろうという考えを持っておると私は考えております。こう考えて参りますると、私はフルシチョフに対して、当然、択捉、国後は――歯舞、色丹はもちろんであります――日本の国有の領土であって、これを侵害することを許し得ないと考えるのであります。ことにお話のとおりに、松本全権がソ連との共同宣言以前のときの交渉におきまして、領土問題は平和条約のとぎに審議する、こういうことに相なっておることはお話のとおりであります。こういう意味から申しまして、私は領土問題につきましては一歩も譲らないことを、ここにはっきり申し上げておきます。(拍手)
 次に、欧州経済共同体の問題でございます。これは御承知のとおり、一朝一夕にできたものではございません。ベネルックス三国がまず共同体のもとを作り、そうしてフランスのシューマン外相が、ドイツ、フランス、ルクセンブルグの、あの地理的に、そうして産業的に似通った国が戦争をやめて共同体になろうということを、シューマン外務大臣が言い出して、十年このかた、たっていったのであります。その間における各国の経済事情はいろいろ違っておりましたが、これが六カ国がうまくいくようにその間に調整ができて、今はわれわれの予想した以上の発展を遂げていることはお話のとおりであります。しこうして、最近、英国、英連邦がこれに参加しようとしておりまするが、なかなか今の貿易連合全部が入るか、イギリスだけが入るか、なかなか問題がありましょうが、少なくとも英帝国が加入したいということを強く希望し、宣言する程度にまで経済共同体が進んでいっておることは、われわれうらやましいことと思っております。しこうして、わわれれが今後貿易拡大にあたりましては、もちろんアメリカとの貿易の増進は考えなければなりませんが、アメリカ以上といわれるほどの経済力、人口を持っておるこのヨーロッパ共同体、あるいは貿易連合、これをわれわれは十分見直して、こういう先進工業国に向かっての輸出増進をアメリカ以上に努めなければならぬ段階に私はきておると思います。私は、今回アメリカに参りましても、この点はアメリカに強く主張して、われわれは日米関係と同様な、日英あるいは日独、日仏関係を作り上げたいということを私が言ったのも、この経済共同体並びに貿易連合体との関係をよりょくしようという気持で進んでおるのであります。
 次にガットの問題でございます。すでに御承知と思いまするが、ガットの問題につきましては、日本に対する三十五条の援用の可否について、ガットにおきましては特別作業部会を設けて、そうして今後問題を解決しようとしております。中間報告的には、ガット三十五条を援用したり、あるいは新規ガット加入国が従来援用している国と同様に援用しようとすることは、世界の貿易、ことに日本の貿易の進展に害ありという意向が示されております。私はこの秋にはぜひともこの援用をやめてもらうよう強力に外交施策を持っていきたいと思います。
 次に、カナダを加え、豪州、ニュージーランド、日本が、太平洋の経済圏を確立したらどうかというお話でございまするが、私は、アメリカでも有名な人からこういう意向を聞かれましたが、そのときに答えました。「経済共同体ということは一朝一夕になるものではありません。お互いの国々が大体経済程度が同じで、完全に有無相通ずる程度の状況にならなければ、共同体というものはできない。もしそれ、カナダ、豪州、、ニュージーランドと日本が経済共同体を結びましたならば、農産物は完全な自由ということになってきた場合のことを考えますと、なかなか共同体というものは、いいようでございますが、それができるための措置がなかなか困難である。」ということを、私はアメリカの有名な人に答えましたら、「それはそうだろうな」ということでございまして、私はここでも、こういうことは理想としては考えたいけれども、現状としては、そこへ行くまでのよほど地ならしが必要であるということを申し上げて、お答えといたしたいと思います。
 なお、輸入の制限と為替貿易の自由化は矛盾するじゃないか、こういうお話でございますが、矛盾ではない。貿易為替の自由化は、日本の産業経済の発展のためにぜひとらなければならぬ基本の方策でございます。ただその場合に、輸入が非常に多くなったときに、為替資金等の関係上、しかも行き過ぎの経済拡大を防止するということは、これは一つの経済安定の一時的な措置でございます。しかし、貿易の自由化というものは、国が伸びていくための基本でございます。世界の経済に進んで協力する経済の基本原則であるのであります。われわれはその基本原則を守りつつ、日本の状況に応じての特定の場合の特定の措置をとろうというのが輸入制限でございまして、実際にはなかなかむずかしい。矛盾ではございませんが、むずかしいことではございまするが、これは日本の将来のために、また、今の経済をよりょくするために、越えなければならない関所であると私は考え、これに向かって努力を進めておるのであります。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍
  手〕

発言情報

speech_id: 103915254X00519610930_028

発言者: 池田勇人

speaker_id: 8420

日付: 1961-09-30

院: 参議院

会議名: 本会議