中尾辰義の発言 (本会議)
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○中尾辰義君 私は、ただいま議題となりました公職選挙法等の一部を改正する法律案外一件に対しまして、無所属クラブを代表いたしまして、反対の意思を表明せんとするものであります。
いかなる法律を改正するにも、その改正の目的がございます。今回の選挙法改正の主たる目的は一体いずこにあったのか。それは、言うまでもなく、過去何回となく繰り返してきた選挙の経験から、目にあまる買収供応等の悪質違反を追放して、明るくきれいな公明選挙の実をあげ、健全なる民主主義の基盤を建設せんとすることが全国民の切なる要望であったのであります。しかるに、昨年の十二月、選挙制度審議会の答申が提出されるや、この答申案の柱ともいわれる政治資金の規正、後援会の寄付、ないし供応接待等の禁止、連座制の拡大、当選者の自然失格、高級公務員等の立候補制限等の至っては、政府の手により全くの骨抜きの修正を加えられ、また、衆議院審議の過程において、自民党により四つの改悪修正が加えられ、しかも、本国会の会期をあと一週間に控えて、性急に本院地方行政委員会に送付され、この重要法案の審議促進を強要されたことは、全く参議院の存在価値を軽視せるものと考えざるを得ないのであります。およそ参議院は、衆議院の行き過ぎを是正することこそ、参議院本来の使命であります。したがって、審議の経過中に、野党四派は慎重なる協議の上に自民党改悪修正案の再修正を要求したにもかかわらず、四派の意見には何ら考慮しなかったことは、民主政治の基本法ともいうべき選挙法改正の特殊性にかんがみ、まことに遺憾とするところであります。(拍手)
過日、大野副総裁は、答申案の取り扱いに対して、「選挙をやったことのないしろうとの理想案だから困る」と発言をいたしておりますが、まことに聞き捨てならぬ暴言ではありませんか。また、大平官房長官は、「あの改正案では、評論家のような偉い先生ならいざ知らず、われわれ凡俗は選挙に出られないよ」、このような人を食った放言をいたしておるのであります。この発言こそ、言えかえるならば、選挙法の改正等はやってもらいたくないんだ、買収、汚職のきく現行制度が一番よいんだ、こういうような考え方が自民党の議員諸君の中に底流していると言われても仕方がないのではなかろうか。この考え方が衆議院自民党改悪修正案となって現われてきたのではないか。かように考えられるのであります。
およそ選挙は、主権を持つ一人一人の国民が、議会政治の運営に当たる人と政党とを選ぶ一つのルールであります。したがって、その委任とする人と機構とをいかなる方式で選ぶかについては、国民の意思を第一に尊重してきめられるべき筋合いのものであり、したがって、選挙法は、むしろ国民のためのものでなくてはならないと思うのであります。かかる観点に立つならば、このたびの改正法案は、全く政治家の自己本位にのみ考えた改正ではないか、そこに、抜本的な改正案である答申案を尊重して、これが成立を断行するだけの勇気が、政府自民党に欠除している原因がひそんでいるものと断ぜざるを得ないのであります。池田総理は、かつて、「経済のことはこの池田におまかせ下さい」とおっしゃった。その経済政策の批判は別といたしまして、何ゆえにあのくらいの大確信と勇気をもってこの選挙法に当たり、自民党総裁として献身的な党内指導ができ得なかったか。総理のために、はなはだ遺憾に思うのであります。
以下、反対の主要な点について簡単に申し上げます。
第一は、政治資金の規正であります。政治献金は、政治悪に連なる源泉であるといわれております。国から補助金、交付金等を受けている法人は、選挙に関しても政治活動に関しても一切寄付をしてはならないという答申の線は、結局、その禁止を選挙資金だけに限ったことであります。これでは、選挙資金と政治資金を識別しにくいため、政治資金の名において金権選挙を助長する結果を生ずることとなり、これ第一の骨抜きであります。
第二は、後援団体が選挙区内に対してする寄付、あるいは総会その他の集会、行事における供応接待等については、当該選挙期日前三カ月以内はこれを禁止することとしたことでありますが、しからば、四カ月以前は許されることとなり、今日の選挙運動の現状から見て、買収行為の未然防止は全く期待されないものである。これが骨抜きの第二点であります。
第三は、連座の対象となる、いわゆる地域主宰者については、答申案の数個以上とあるのに対して、政府案は、選挙区の三分の一以上の地域における選挙運動を主宰した者に限るものとしたことは、選挙区を四分割以上にして選挙運動を主宰すれば、何ら連座の対象にはならないことになり、また、当選者の自然失格は、総括責任者や出納責任者が悪質違反を起こし、刑事判決があり、直ちに検事が訴訟を起こしても、その判決があるまで、六、七年から十年もかかり、その間に当選者は任期満了することになり、議席に関しては何ら痛痒を感じないのであります。よしんば一歩譲って自然失格を違憲としても、裁判の迅速化という点には何らの対策も考えられておらない。これ第三の骨抜きであります。
以上、要するに、この選挙法改正案は、現行法より枝葉の点においては一歩前進を認めるのでありますが、その目的である買収供応等を防止する何らのきめ手もなく、売春法、独禁法、食管法とともに、全くの「ざる」法と化したことであります。真に政府が腐敗選挙を一掃する決意があれば、少々荒療治でも、この際、答申案のとおりこれを尊重し、その成立に踏み切るべきではなかったかと思うのであります。
よって私は、政府の猛反省を促す意味におきまして、二法案及び附帯決議に対し反対をいたします。
以上をもって私の反対討論を終わります。(拍手)