加賀山之雄の発言 (本会議)

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○加賀山之雄君 私は、政府に対し、外交、国防、教育等に関する問題の二、三について、この際、政府の見解をただしておきたいと思います。
 言うまでもなく、本院におきましては解散もなく、あくまでも冷静に国本となる諸問題と取り組み、国家国民の将来に誤りなからしむる重大な責任を持つものであります。総理大臣並びに外務大臣が相次いで外遊され、自由世界の三本の柱という、わが国の新しい地歩について、実感を深めて帰られまして、これを過日の所信表明の冒頭に述べられました。わが国が自由国家群の一員として、いな、総理の所信によれば、すでに今日は一本の柱ということで、特にアメリカ合衆国との提携を密にしつつ、その責任を果たしていくという外交の基調は、政府しばしばの言明にもあるとおり、不変のものであると考えるものでありますが、総理はこれをあらためて強く意識されると同時に、あわせて国民の自信と自覚を促されたものと思うのであります。
 そこで、私は第一に総理大臣に伺いたいことは、日米両国間の相互協力及び安全保障条約について、今後政府はいかなる考えを持って、いかに処していこうとするかということであります。
  〔議長退席、副議長着席〕
同条約第十条第二項によれば、同条約が効力を発生してから十年を経過すれば、すなわち一九七〇年六月二十三日以降は、締約国のいずれもが相手方に対して条約の終了を通告することができ、そうしてその後一年を経過すれば同条約は効力を失うということになっている。国内では、条約修正論もあれば、左翼陣営には廃棄通告運動の形勢さえあらわれております。端的にいって、国民一般は、この条約の重要性や効能について深い関心を欠くのが実情ではなかろうかと思うであります。大平外相が地方で、国民が国防について関心が薄いということばを漏らされましたが、まさにそのとおり、広く国際情勢や国防について正しい認識を欠いているのが現状と言わねばなりません。総理はこれをいわれなき批判と軽く片づけておられますが、現下の国際情勢下で、軍備を持たぬわが国の安全を保持する上において、ほとんど唯一のよりどころとも考えられる、重大な意義を有するのが本条約であることから考えまして、今日においてすでに数年後に迫った本条約の将来について論ずることは、まだその時期が早過ぎるということになりましょうか。今後の国際情勢待ちということで、うやむやにしておけますか。政府はもちろん十年後の廃棄通告などは考えていないと思いますが、この際、総理大臣の御所信のほどを確かめておきたいと思います。
 また、政府は何ゆえにもっとこれを広く正しく啓蒙し、今次予想される総選挙の重大な争点とする等のことを考えないのか、あわせて御答弁願いたいと思います。
 次に、原子力潜水艦の寄港問題について。同条約に基づく基地協定第五条で、日本政府として寄港を認める条約上の義務を負っているのではないかと思いますが、いかがでありますか。すでにじんぜん半歳余、慎重に調査中ということでありますが、万一、国土や国民に災害の危険があるものならば、なぜ早くお断わりにならぬのか。もし、しからざる場合は、何ゆえに条約上の義務として相手国に応諾の通告をなさらないのか。アメリカの有力な新聞の特派員が、「アメリカの国民の間には、日本人は汽車賃を払わずに、あるいは子供の半額切符で自由世界を乗り回そうとしているのではないかという印象さえ出ている、」と報道しておりますが、もちろん、こうした言説をわれわれはそれほど意にとめようと思いませんが、冒頭の、三本の柱とか、日本はもっとおのれの実力を知るべきだ、ということばは、裏を返せば、もっと自由陣営のために自信を持ってぴしぴしやってくれ、という要望とも受け取られるのであって、その信頼と期待を総理がみずから体験して来られたものと思うのでありまし七、その信頼や期待にこたえなかった場合、相手方に与える失望や、ひいては軽侮の念は、一段と強いものがあることを覚悟せねばならぬと思います。一体いつになったら国民の納得のいく調査ができますか。これは大平外務大臣からお答えいただきたいと思います。
 第二に、北方領土問題に関して、ソ連との平和条約締結の可能性について総理大臣のお考えを伺いたいと思います。キューバ問題から核実験停止条約の成立と、米ソの間には緊張緩和が見られ、世界平和への希望もうっすらと感ぜられるのでありますが、この問を縫って、逆に中ソの間には、ただならぬ雲行きが現われ、このためにわが国を初め、アジアの諸国においては、外交運営上かえって複雑さを増してきたことは事実でありましょう。わが国とソ連との間ではまだ平和条約の締結もなく、領土問題が片づいておりません。故鳩山首相とブルガーニン・ソ連首相との共同宣言においては、「両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結に関する交渉を継続することに同意する」ということが明記されております。すでに七年の星霜をけみしました。池田首相は、一九六一年十二月八日付、フルシチョフ首相あての書簡で、固有の領土に対する正当な主張を堂々と開陳しておられるのでありますが、その後、経過はいかが相なっておるでありましょうか。漁夫の送還、貝殻島周辺のコンブ採取に関する取りきめ等、ソ連の態度に著しい変化が見られ、国交正常化に一歩を進めてきていると思うのでありますが、この際、領土問題を解決して、日ソ両国間のわだかまりを一掃し、国民全部の悲願を達成する好機とは考えられないでありましょうか。政府はこの際、強固な意思をもってこの問題の解決に当たる意思はないか、御所信を聞きたいと思います。
 外交問題の最後に、中ソの対立激化以来、中国大陸からわが国への働きかけも無視することはできません。アメリカがソ連邦に小麦の輸出を承認するようになった今日の情勢下、わが国が中国大陸にビニロン・プラントを民間ベースで輸出することをとやかくいうことはないと思いますが、ただ考えなければならないことは、自由陣営中においても隣国中の隣国、戦争終局時以来、特に相互の友好と信頼を高めて参っておる国民政府との関係であります。大陸反攻云々という、国民政府の心臓に響くような総理の言説が伝わっておりますが、この微妙な外交場裏において、自由世界の指導的立場をもって任ずるからには、その場その場の思いつきでなく、それぞれの国々に与える心理的影響を十二分に考慮されて、わが国の外交を誤りなく処理していっていただきたい。これは私のお願いであります。
 次に、内政に関しまして私が第一に取り上げたいことは、青少年対策に関する問題であります。いわゆる所得倍増計画が異常な速度で経済の伸展をもたらした反面、こまかい配慮の欠除や手順の誤りから、国民経済ないし生活の中にひずみや欠陥を生じたことはいなみ得ないことであります。農業や中小企業の立ちおくれ、金融政策のとまどい、消費者物価の予想外の急騰を招来したことなどは、これであります。これら経済面における欠陥は、誠意をもって収拾するという政府の言明に一応信頼をおくとしても、ここで看過できないのは、国民の精神生活面におけるひずみであります。現下、極端な利己主義や一時的享楽を追う風潮が国内に横溢して、これがきわめて悪い影響を青年子女に与えておることは、何人もこれを否定できません。しかもこの風潮は、おもむくところ、青少年の犯罪増加となり、それがさらに低年齢化、悪質化へと、急ピッチで進んでおります。数字から見ても、戦前四万人台だった刑法犯少年が、触法少年を含めれば、今日は約二十二万人と称せられ、犯罪率から見ましても一〇・八と、成人の犯罪率をはるかに凌駕したのである。おそるべきことと言わねばなりません。青少年対策については、政府所管の協議会もあれば、岸内閣当時の「青年に夢を」から始まって、施政演説ごとに取り上げられなかったことはありません。こうした、たび重なる所信表明にもかかわらず、今日まで一向にこれといった施策が実現されていないのであります。かろうじてユースホステルとか青年の家等がわずかに増設された程度である。これは一体どういうことでありますか。今回、池田総理大臣が述べられたところも、依然として具体性を欠くうらみがあります。この際、総理のみならず、各閣僚は力を合わせてこの問題と取り組み、政府の施策を集中して最善を尽くすべき問題であると思いますが、総理の所信はいかがでありますか。この問題の根源はまことに深く、多岐にわたります。日教組や社会党の諸君は、これをきわめてあっさりと、「資本主義文化に内在する腐敗性にある」と片づけておる。しかく簡単なものでありましょうか。あいにく共産圏には適当な資料が公にされていないのですが、ソ連においても犯罪少年もおれば、フリガーンと称するいわゆる与太者がいることは、周知のことである。何も自由主義や資本主義の特産物ではありません。しいて言えば、国が豊かになればなるほど、経済が成長すればするほど、この傾向は助長され、したがってその対策は重大性を増すと言えるでありましょう。したがって、政府は、経済成長に力を注ぐことに比例して、いな、それ以上強力な政策を打ち立てて、この問題に対処せねばならぬと思うのであります。池田首相にこの問題についての御決意について重ねて御所信を承りたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 104415254X00619631023_019

発言者: 加賀山之雄

speaker_id: 32571

日付: 1963-10-23

院: 参議院

会議名: 本会議