永末英一の発言 (本会議)

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○永末英一君 私は、池田首相の所信に対し、民主社会党を代表いたしまして、今国会最後の代表質問、また、私の本院における最後の質問をいたしたいと存じます。
 池田内閣の一枚看板であります所得倍増政策の三年間に、国民総生産、貿易総額、国民一人当たりの平均所得は、いずれも増加をいたしました。池田首相は、この結果を見て大いに満足のようでありますが、しかし、もっと重要なことが忘れられているのであります。それは、政治であります。経済の高度成長に当然伴う産業構造の変化、社会の変動に対して、調整を行なうのが、政治の固有の役割りであります。繁栄の中の貧困という現象を来たさないように、最初から対策を持つのが政治の役目です。経済に目を奪われ、政治を忘れた池田首相の施政に、反省することはないか、まずお伺いをいたしたい。
 池田式高度成長政策は、格差の是正というラッパを鳴らしておりまするが、中小企業や農業は、先行き不安のまま二の次にされております。特にその欠陥は物価にあらわれているのであります。首相は、消費者物価の上昇についてあれやこれやの原因をあげておりますが、それは現象を並べるだけでありまして、事の本質に触れない皮相な見解と言わなければなりません。池田式所得倍増政策は、財政投資、信用創造を中軸とする金融刺激政策を本質といたしております。したがって、貨幣量の増大はきわめて著しいものがあります。酒を大いに飲ませておいて、血圧が上がったのは、どこか身体におかしい点があるからだという説明では、一体だれが納得するでありましょう。首相は、物価上昇の原因が自分の政策にあることを、この際、国民の前に認めるべきであると思いますが、どうですか。
 この物価上昇が庶民生活に与えた影響はまことに残酷であります。わが国人口の一割以上をカバーする月収二万円以下の低所得世帯は、消費物価の値上がりによって生活破壊にさらされております。現に、生活必需品である野菜に対してすら、実質購入量が減少してきているほどであります。貯金引き出し、売り食い、借金、内職、これらの国民に対して、もう一両年待てというのでありますが、そんなに待てるものかどうか、お考えをお聞かせ願いたい。
 税金を払える階層におきましても、池田施政はむざんであります。池田内閣の成立時には、給与所得者を中心として一千三百万でありました所得税納税者は、三十九年度には二千万をこえるありさまであります。納税者がふえたことは国民の暮らしが楽になったからだと、よもや首相はお考えになりますまい。課税最低限が国民の標準生計費を下回り、国民に赤字生活をさせてまで収奪しているのが現行税制であります。企業減税だの所得減税だのと言っているときではございません。大幅に諸控除を引き上げ、課税人員を圧縮すべきであると考えますが、首相のお考えはいかがでありますか。
 所得倍増計画を推進する「てこ」として、政府は財政投融資計画を使ってまいりました。財政支出と財政投資との比率を見ましても、わが国は、米英独仏と比べまして二倍から四倍に達しております。いかにわが国の財政が大資本本位に組み立てられているかということが明瞭であります。この際、私は、財政投融資計画は、まず国民生活の基盤を培養強化することを中心に組みかえを行なうべきであると考えます。特に、資金運用部資金や簡保資金は、零細な大衆資金である性格からいたしましても、右の目的に使用を限定すべきであります。さらに、一般会計から産投会計に繰り入れたり、国債は発行しないといいながら、政府機関などに政府保証債の発行を許したり、また、ここに野方図に出資したりするやり方をやめて、予算の責任を明確化し、潜在的インフレ要因を多くる手段を中止すべきであります。首相は、こうした方法をとる御意思があるかどうか、伺いたい。
 私は、最近、社会主義インター大会におきまして、各国の民主社会主義政党の指導者たちや、また、アメリカでケネディ司法長官をはじめ、ケネディ政権のブレーンと、意見の交換を行なって参りましたが、これらを通して次のような印象を得ました。中ソの決裂、さらに部分核停条約の成立という、第二次世界大戦後における画期的事件は、世界情勢を大きく変容しようといたしております。ソ連の融和的態度によって、全面的核戦争の脅威は著しく緩和されたと各国は判断をいたしておりまするが、共産中国に対しては、どう対処すべきかについては、まだ固まった状態ではございません。この時期にこそ、アジアに位置する日本は、経済の成長をほめられたからといって、大国日本だなどと、うぬぼれないで、自主独立の外交路線をはっきりさせることが、アジアの、ひいては世界平和のために特に必要であると思います。この観点から、政府の外交のやり方について、自主性喪失の六点について首相の所信をお伺いしたい。
 第一、アメリカは中共なしでもやっていけるかもしれません。しかし、わが国は、五千年来中国とは切っても切れない仲であります。アメリカが封じ込め政策を是としても、日本がそのワク内だけに跼蹐していたのでは、一体どうなりますか。対中国態度にもっと自主性を持つ必要があると考えます。たとえば、中共がわれわれの反対にもかかわらず核爆発を行なったとすれば、その時期をとらえ七ジュネーブ軍縮会議の一員に加えるとか、国連の代表権を与えるとか、中共が国際社会の表舞台に上れるようアメリカに政策転換を要請する意思は、政府にないか、お伺いしたい。
 第二に、政府はこれまで国連中心の外交を大きな柱だといってまいりました。われわれは、国連の究極的目標を世界政府的機能を果たすところに置いておりまするが、現在は、日本の主張点を明らかにするフォーラムとしてこれを活用すべきであると考えております。ところが、政府にはこのような積極的な姿勢が見られません。たとえば、池田内閣の成立以来、国連において成立した三百九十四件の決議案件中、日本が提案いたしましたものは、共同の形でわずか十八件にすぎません。決議案への意欲に関する限り、全く受動的であったといわざるを得ません。国連は、オリンピックとは異なり、参加するだけでは意味がないのです。政府の国連中心外交とは、よそさまの発意に従うだけのものか、明らかにしていただきたい。
 第三、核兵器という反人間的なものの絶滅は全人類の共通の願いであります。特に被爆国であるわれわれ日本人といたしましては、常にその主張の先頭に立つべきです。ところが、政府は、部分核停条約が八月五日に成立したにもかかわらず、やっと八月十四日に、五十番目を過ぎて署名いたしました。イの一番に署名して日本のこれまでの主張を裏書きせよと、われわれが政府にすすめましたが、十日もおくれたことによって、世界の人々からも日本の熱意について疑われるような結果を招いたことは、何としても了承できない。首相は、この点について国民に何と釈明をされるか、お尋ねをいたしたい。
 第四、アメリカのドル防衛政策は、アメリカ経済を守るためには必至のものであり、特に、経済力のある国に対しては、無償軍事援助を打ち切る方針は不動のものであります。したがって、日本経済に対するアメリカからの期待はきわめて大きいのです。しかし、これは日本国民にとってまことに重大な問題であります。敵地に近接した軍事基地の意義は大きく変化したことをアメリカ国防省でも認めておりますが、このような情勢の変化の中で、池田首相は相変わらず、安保条約のもと、国力国情に応じた防衛力の漸増を行なうと言っております。しかも、政府部内では自主防衛が語られているのが現状であります。安保体制下の自主というのは形容矛盾もはなはだしいと国民は疑っております。自主を言うためには、まず安保体制そのものの方向転換を行なわなければならないと、われわれは考えておりまするが、池田首相にいたしましても、この際、自主の名で何を一体、国民に要求するかを明らかにする義務があると思いますが、どうですか。
 最後に、政府は安保条約のもと、アメリカ原子力潜水艦の寄港は当然だと言っております。しかしながら、政府はまず核爆発に対する国民の感情を的確に把握すべきであります。いたずらにこの問題を原子力エンジンの安全性の調査に名をかりて遷延いたしておりますることは、かえって日米友好にも大きな阻害の原因となっております。アメリカの国防省筋も日本の自主的決定を求めているのでありまして、外交における自主性とは、何よりもまず国民の立場に立って初めて生まれてくるものであるとわれわれは考えますが、首相は、すみやかにアメリカ政府に対し、日本国民の感情を説明して、寄港問題を打ち切る意思はないか伺いたい。
 池田首相は世論に従って解散をきめると言っております。解散、総選挙は、民主政治にとって最も重要な問題であります。したがって、それが何を争点にして争われるかは明確にされなくてはなりません。池田政権の延命策として世論の名が用いられるならば、とんでもない話であります。国民の立場に立ってわれわれのあげた争点に対し、首相の明確な答弁を要求して、質問を終わります。(拍手)

発言情報

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発言者: 永末英一

speaker_id: 33587

日付: 1963-10-23

院: 参議院

会議名: 本会議