五島貞次の発言 (地方行政委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(五島貞次君) 私、五島でございます。私は一介の新聞人でございまして、ただ、平素から青少年問題に非常に関心を持っております。きょうここへ私が呼ばれました趣旨は、今度の風俗営業等取締法の改正についての意見ということでございますが、私は、すでに御発言になった方もあるかとは思いますけれども、焦点を、いまの日本の青少年問題と、それと深夜喫茶を、はじめといたしまして深夜におけるいろいろな遊興的なものあるいは飲食関係、娯楽的な業態、そういったものと青少年非行との間に一体現実にどういう関連があるのかという問題につきまして、私のいままでにいろいろものを読みましたり、実地に見ました範囲内におきまして考え方を申し述べたいと思うのであります。
 最初に、やや問題の焦点をはずれるかもわかりませんけれども、私、平素青少年の非行という問題を考えます場合に、このごろの世の中の一種の風潮といたしまして、青少年が何か非行をやりますと、これは政治や社会が悪いのである、自分には結局責任がないといったようなことを申す青少年もおりますし、おとなの中にも、青少年を責める前に、まず社会あるいは全体のおとなが反省すべきであるというようなことを、おっしゃる方も少なくないわけであります。しかしながら、たとえ少年にいたしましても、一定の年齢以上に達した場合には、やはりその本人がみずから犯した非行に対しては、これに責任を持って、世の中に与えた罪に対してはみずからこれを償うという、そういうこと々教育する必要があるというふうに考えるのであります。そういたしませんと、青少年の自律自制の精神をそこなうことになるわけでありますし、同時に少年たちの基本的な人格を否定することになるのではないかと、そのように考えるわけであります。しかしながら問題は、これは青少年に対しておとなが対抗する場合のことでありまして、おとな自身が一体いまの青少年問題にどう対処していけばいいかということを考えます場合には、やはりあくまでもおとなが一体何をやるべきか、おとなの責任において一体われわれは何をすべきかということを考える必要があると思うのであります。そういう観点からいまの青少年問題を考えますと、いまのいわゆる非行少年とかあるいは非行に走るおそれのある少年たちは、自分の内側とそれから同時に外側の両方からいわば攻撃を受けているのではないかと思うのであります。内側からの攻撃と申しますのは、いわゆる少年たちが持っておる劣等感とか、あるいは欲求不満とか疎外感とか無力感とかいった、そういう精神状況であります。こういう精神状況に少年たちがなぜ置かれるかということを考えますと、これは要するにいまのいろいろな消費ムードとか、あるいは教育制度の欠陥にあると言えるのでありますけれども、これと同時に、少年たちはいまのこの消費ムードの中において外側から非常に強い攻撃を受けているというふうに私は診断しているのであります。その外側からの攻撃は何かと申しますと、御承知のようにそれは、いわゆるテレビとかあるいは出版物、映画、広告といった、そういったマスコミの中の少年に好ましくない影響を与えると思われるいわゆる有害な文化財の問題であります。第二はいわゆる暴力団でありまして、これが常に少年に魔手を伸ばすような態勢をとっておるわけであります。第三は、いわゆるきょうここで問題になりますところの深夜喫茶とかあるいは深夜の遊興的な娯楽とか、そういうものがあげられると思うのであります。
 で、深夜喫茶の問題を最初に取り上げますと、これは具体的に警視庁でこの深夜喫茶の補導——深夜喫茶における少年たちの補導された数字が出ておりますけれども、これは新聞の記事で私は読んだのでありますが、一昨年警視庁で補導された約二十六万人の少年の中で、六割に達する十五万人が、いわゆる深夜喫茶の常連であったというふうに出ておるわけであります。そういう深夜喫茶に出入りいたしまするところの少年は、大体、家の金を持って家出をしまして、そこで深夜喫茶を根城に、金に困ると盗みとかおどしとか、そういう悪事をやっているというわけであります。で、これもある新聞記事に出ておった深夜喫茶のルポでありますけれども、ある深夜喫茶で、少年の手の甲の上にアズキぐらいの大きさの水ぶくれが五つあったわけであります。それは何かと言いますと、そこで、たばこの火を手の甲の上に落としまして、そのがまん比べをして、それに負けた者がお茶代を払うという、そういう一つのゲームであります。で、その深夜喫茶の中には、夜中になりますと百五十円から三百円にお茶代を上げるといったところもあるということであります。また東京のある少年補導連絡会長は、昨年の警察庁の非行少年対策懇話会におきまして、銀座の深夜喫茶の中で、未成年者を入れて酒を出しているところがあって、それが不良のたまり場になっているということを発言しておられるわけであります。また、これは警視庁で最近お調べになったことでありますけれども、深夜喫茶を調べたところが、三十名の少年のうちで、十九名が無断で外泊をしておったというわけであります。しかもその中で、十五名が、十五歳から十七歳の少女であったということであります。大体こういう若い十代の少女が外へ出ているのに、これに全然無関心でおったという、そういう親のあり方自体がすでに異常ではありますけれども、こういうこの深夜喫茶の中における風景というものは、確かにわれわれの常識から考えまして、異常であるというふうに感じるわけであります。
 もっとも、この深夜喫茶に関しまして、いろいろな弁護論のあることも事実であります。しかも、その弁護論の中には、必ずしも軽々しく看過できないものもあると思われるのであります。たとえば深夜喫茶をなくしても、深夜喫茶をなくすだけでは非行少年はなくならない。おそらく、なくせばまた別の新しいそういう場所を発見して、そこに非行少年が集まるだろうということが、弁護論の一つであります。もう一つは、これはある人から聞いた話でありますけれども、深夜喫茶に行く少年を必ずしも非難できない。たとえばある少年は、夜、自分の家に帰りましても、非常に住宅が狭くて、一つの狭い部屋に家族と一緒になっている。そうして家の中でその少年がちょっと歩こうとしますと、寝ているおやじさんの頭の上をまたいでいかなくちゃいかぬと、そういうような非常に狭隘な住宅に住んでいる少年が、夜外へ出まして、そうして甘い音楽を聞き、しかも深々としたいすの中に身を埋めて、一ときの休息をとるのはどこが悪いのかと、そういう弁護論もあるわけであります。この問題は少し大局的に考えますと、現在の日本の住宅政策の問題にも関連してきますし、あるいは少年が自分の家において、たとえば父親と母親の人間関係が崩壊しているとか、あるいは父親がどこへ行ったかわからないとか、そういう家庭の中の問題にも、一つの原因はあると思うのでありますけれども、ただ、私はこの際は、そういう弁護論は一応別にいたしまして、とにかく現実に弊害が起こっている場所に対しては、やはり手を打たなければならない。そうして、そういう手を打ったあとで、別の新しい弊害が出てきましたならば、それに対してそのときに対処すればいいのではないか。とにかく現実に弊害が出ているのだ、そういう弊害に対しては、やはりわれわれおとなが——少なくとも少年非行に対しまして責任を持つおとなが、少年があやまってもそういう場所に行けないように、そういう場所に対して手を打つ必要があるのではないかというふうに考えるわけであります。
 で、ただし、そういう深夜喫茶の営業時間を何時までにすべきか、あるいはそれに対して、何歳までの少年を入れないようにすべきかという、いろいろな技術的な問題があることは事実であります。たとえば十一時で店を打ち切るとか、あるいは十二時で店を打ち切るというふうに、かりに考えました場合でも、それであれば、一体少年でもその時間までは入れていいようにするのか、あるいは少年と申しましても、二十歳以下を少年と考える考え方もありますし、十八歳以下という考え方もありますけれども、かりに、こういう喫茶店を十二時で店を打ち切るといたしましても、たとえば十五歳の少女が数名連れ立って、十一時半にそういう店に行くと、こういう事態を放置しておいていいのかという問題も出てくると思うのであります。そういう意味におきまして、閉店時間の問題と同時に、ただ一律に二十歳以下とか十八歳以下ということよりも、もう少し年齢的に何かこまかい配慮が必要ではないかというふうに思うわけであります。
 それから深夜喫茶以外の問題といたしまして、ボーリング場の問題があるわけであります。これも現在東京には十数カ所のボーリング場があるわけでありますけれども、まあ、警察当局の行政指導といいますかによりまして、若干ボーリング業界が自粛をされまして、現在は原則として十二時、ただし日曜あるいは祭日の前の日には三時というふうに自粛されておるやに聞いておりますけれども、しかし、私は大体二時、三時までこういうボーリング場をなぜ営業する必要があるのか。しかも、そういうボーリング場へ行っている入場者の中の大体三割は未成年者であるということを聞きますと、やはりこの二時、三時という営業時間は、どう考えても私には納得できないというように思うのであります。
 もちろん、業界の方から見られまして、いろいろこれは生活権の問題もありましょうし、営業上のいろいろな問題もありましょうけれども、私の立場といたしまして、少なくとも青少年とそういう深夜喫茶との関連を考えました場合には、やはり現状をこのまま放置しておくわけにはいかない。やはりそこには時間の制限なり、入場に関しまして適切な処置が必要ではないか、このように考えるわけであります。
 以上をもちまして、私の公述を終わりたいと思います。

発言情報

speech_id: 104614720X00919640225_017

発言者: 五島貞次

speaker_id: 26695

日付: 1964-02-25

院: 参議院

会議名: 地方行政委員会