増谷達之輔の発言 (地方行政委員会)

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○参考人(増谷達之輔君) 私は、青少年問題研究会を主宰しております増谷達之輔でございます。私の平素の関係の仕事に関連しまして、ここでは主として青少年対策、青少年の非行防止という点に限って私の意見を述べさしていただきたいと思います。
 このたび、風営法が改正になるということでありまして、その改正個所を私拝見したのでございますが、その中で、私どもが特に関心を持つ点が三つございます。
 一つは、第四条の三にあります十八歳未満の者の入場を禁止するということでございますが、これはこの法案が出るまでもなく、施行地方条例におきましても、たとえば東京都あるいは広島県というような地方条例におきましても、もうすでに十八歳未満の者の入場は禁止するという規定がございます。それからまた、各府県に、ここ数年間青少年の保護育成条例というのが設けられております。これは全国、全府県に設けられてはございませんで、大体いまのところ二十一、二道府県かと思いますが、その青少年保護育成条例の中にも、青少年の深夜外出の禁止——八時以後のところもありますが、また十時以後という規定のところもございます。そしてまた、深夜外出の禁止と同時に、そういった風俗営業に青少年を立ち寄らしてはいけない、こういうことになっております。この場合に、その責任は保護者と業者に負わされておりまして、青少年がそこに立ち入るということについても、青少年に対する責任は、これは負わされていないようでございますが、とにかくそういう措置がとられている。そういうような状況でございまして、この際これが法律の中にはっきりと明示されましたことは、おそらく今後この問題について徹底した措置がとられるようになるのじゃないかというように思います。
 それから第二点は、酒類の提供の禁止ということが特にうたってございますが、これは、もうすでに大正十一年に未成年者禁酒法というのが出ておりまして、われわれはもう二十歳未満の青少年は酒を飲んじゃいかぬものだと、こういうふうに考えておりましたですが、今度の法案の中に特にそれがうたわれているということについては、私、法律のほうはあまり詳しくございませんので、ちょっと理解に苦しむところでございますけれども、しかし、とにかく、この風俗営業法の中に特にそれをうたった。そうして酒類を提供した者に対して何らかの罰則を設けているということは、私はさらにこの趣旨を徹底する意味においていいのじゃないか、こういうふうに考えます。
 それから第三番目は、いわゆる深夜営業の許可の問題でございますが、これは十一時以後の深夜営業を許可するについて、いままでは比較的簡単な条文で、地方の施行条例をつくるときに適当な裁量が加えられるという余地が残してございましたが、今度の条文によりますというと、場所、時間、それから営業行為あるいは構造設備というふうな点を明確にうたってありますので、おそらくこれは今後の地方の施行条例をつくる上に非常にはっきりした形をとってあらわれるのじゃないか、こういうふうに考えておるのでございます。
 この深夜営業の問題、深夜喫茶の問題につきましては、もうすでに私が関係しております中央青少年問題協議会でも昭和三十三年の八月十一日に意見具申として、深夜営業が青少年の非行あるいは健全育成に非常に大きな関係があるから、これに対して政府として善処してもらいたい、という意見具申を総理大臣に提出してございます。それからまた、毎年青少年問題協議会の各ブロック会議が各ブロックごとに開かれているのでございますが、私は、なるべくその会議には出席することにして出席しておりますが、その際に必ずこの深夜喫茶の問題というものがこのブロックの人々の間に議論されるのでございます。それからもう一つ、先ほど申しました青少年の保護育成条例の中にも、やはり深夜喫茶に対して青少年を近寄らしてはいけないということがうたわれておるのでございまして、もうすでに一般のこの方面の関係者の間には、深夜喫茶というものに青少年を近づけてはいけない、青少年は深夜喫茶に近づいてはいけないという世論が固まっておるのでございまして、それが今回この法律の中にはっきりとうたわれてきたということには、私ども非常にうれしい気持ちがいたします。
 そういうようなわけで、大体、新しい発見はこの法案の中に私どもは見ませんけれども、しかしながら、もう世論が固まっておる、世論がそういう方向に向いている、その世論を法文の上に明確に出したということは、これは今後の地方条例をつくるときに非常に大きな勇気を持たせるのじゃないかということと、もう一つは、社会全体が、政府がこの問題について真剣に乗り出してきた、国がこの問題について真剣に乗り出してきたという印象を与える、そのプラスの面が非常にあるのじゃないか、こういうように私は考えます。
 それから、法文のことにつきましては、そのくらいにいたしまして、私はこの風営法が改正され、これが施行されるにあたりましても、なお、そこにいろいろな問題があるのじゃないか。その一つ、二つを考えてみたいのでございますが、その第一は、この風営法によって十八満未満の青少年は、そういった喫茶店からも、また料理屋からも、パチンコ屋からも、マージャン屋からも、みんな締め出されるということが徹底するわけでございますが、心配するのは、先ほど五島参考人も申されましたように、そこから締め出された子供たちは一体どこへ行くかということなんでございます。特にそこへ集まる子供は、一応何らかの複雑な問題をかかえている子供たちでございます。これがただ、おとなしく、そういうところへ行けないから自分の家に帰ろうというような、そういうような子供ではないのでありまして、そこへ行くことを締め出されれば、どこかへ行ってその不満を発散させなければならぬ、そういう傾向のある子供でございますので、この子供をどうするかということを、ひとつこの際考えていただきたいと思うのでございます。
 それから第二番目といたしましては、主として青少年の集まる深夜喫茶というのは、全国で、この統計によりますというと約七千ございます。この七千という数は、全体の風俗営業が約十五万ございますが、これは昭和三十七年の統計だと思いますけれども、十五万のうち、わずか六千や七千の深夜喫茶を閉鎖して、一体どれだけの効果があるかと、そういう疑問が一応持たれるのでございます。それは、その理由としては、深夜喫茶に行く子供というのは、先ほど相当多数の数字をあげられましたけれども、しかしながら、その数字も警察庁で発表しております犯罪少年あるいは虞犯少年、この数は全体で、昭和三十八年の七月現在で約百二十万近くなっておるのでございます。この百二十万近くの犯罪少年が深夜喫茶に行く。深夜喫茶があるために、ただそこから犯行をしているというように簡単に考えるわけにはいかないのでございます。なるほど深夜喫茶は、青少年の非行の温床にはなっておりますけれども、しかし、もっと私はその背後に深い原因があるのじゃないか、青少年非行の原因があるのじゃないかというようなことを考えるのでございまして、その点を、深夜喫茶を閉鎖したから、青少年の非行がなくなるというように簡単に考えないで、それと同時に、ほかにもっと原因がありはしないかということも、この際ひとつお考え願いたい、こういうふうに希望いたすのでございます。
 それからもう一つは、それに関連いたしますけれども、かりに深夜喫茶とか青少年の群がるところを閉鎖いたしましても、先ほど申しましたように、犯行は減らない。その犯行の背後にはもっと深いものがあるということを申しましたが、それは私は結局このおとなの世界、おとなの行動というものを規制しなければどうにもならないのじゃないかということについて申し上げたいと思うのでございます。風営法が子供は締め出した、しかしおとなに関する限りはこれはノータッチになっております、現在のところ。時間が十一時とか、いろいろなこまかい制限はあるにいたしましても、一応おとなに対しては、風営法は今回の改正においてはノータッチになっておる。そういたしますというと、おとなはやはりいままでどおり自由に、夜になれば料理屋に行く、あるいはパチンコをやる、マージャンをやる、あるいはキャバレーに行く、ダンスホールに行くといったような自由な行動をとるのでございますが、そういうおとなの行動というものが、そしてそのおとなの行動からかもし出されてくる社会的な雰囲気というものが、私は子供たちにどういう影響を与えるかということを考えるのでございまして、そういう風俗環境を正さなければ、私は、青少年の非行というものは根本的には直らないということを考えておる者の一人でございまして、そういう点についても、ひとつこの際何らかの方法をお考え願いたい。ちょうどこの青少年の非行というのは、たとえて申しますというと、カビのようなものでございまして、一つのもちにはえたカビ——そのもちの種類によって青いカビもはえれば、赤いカビもはえる、あるいは黄色いカビもはえれば、黒いカビもはえるということなんでございまして、このカビのはえる、これを私ども培養基と申しておりますが、培養基を第一に正さなければならぬ。この培養基は、これは私は社会のあり方というものを考えてみますときに、社会というものの構造とか、社会のあり方というものが非常に大事だ。それから、それに与える——カビは、温度とか湿度とかいうものがカビをはやさせるためには必要なんでございますが、その温度、湿度の高低によって青いカビがはえたり、黒いカビがはえたりということになるのでございまして、その温度、湿度に相当するのは、私は社会の風俗環境というように考えております。ですから、カビをはやさないためには、そういった温度、湿度である社会環境、社会の風俗環境というものを改めなければ、私はそのカビを根本的に取り除くわけにはいかない。警察力によってもちの上にはえたカビをぬぐうことはできます。しかしながら、またそのカビははえてくる。結局、追っかけっこになるのじゃないかということで、近ごろ青少年対策ブームでありまして、だれでもかれでも青少年対策——こうあれということを申しておりますけれども、しかし一つとしてそれが実行に移されていない。政府としてもその必要は感じておられると思いますけれども、私は政府の青少年非行対策というものは非常になまぬるいような気がいたしておるのでございますが、とにかくブーム、ブームで騒ぎ立てないで、一つ一つを、その原因をとらえてよくするような方法をひとつ講じていただきたいと、こういうように私は考えます。警察の非行少年の補導ということがございますが、これはたとえれば火事を消すようなものでございまして、その場にその必要はあるのでございますが、ただ先ほども申しましたように、そういうようなことだけでなく、その根本的な対策というものをこの際考える必要があるのじゃないか、こういうように思います。
 で、環境の浄化とか、教育の適正化とか、あるいは家庭教育の強化というようなものによって、そういった対策が私は立つのずゃないかと思うのでございますが、青少年の生活態度を正すということは、やはり教育の適正化とか、あるいは家庭教育を強化するとか、あるいはおとなのつくり上げている環境を浄化するということによって、初めて青少年の生活というものは正せるのじゃないかと思いますので、私いつも感ずるのでございますが、朝からおとながゴルフバッグをかついで勤務日に、ウイークデーに出かけていくとか、あるいは電車に乗っていますと、朝から競馬や競輪に出かける人を見かけるとか、そういった空気が私は子供たちにとって非常に悪い環境的な影響を与えておるのじゃないか、この点何とか考慮することはできないかということを私は常に考えているのでございます。
 それから最後に、私申し上げたいと思いますけれども、そういうように青少年を、風俗営業と申しましても彼らはただ喫茶店でお茶を飲むという程度にしか考えていないかもしれませんが、そういった風俗営業から締め出すということと同時に、青少年のためにもっと健康な施設を私は与えていただきたいと思うのであります。現在でも青年の家とか、勤労青少年の家とか、あるいはユースホステル、スポーツセンター、スキー場、スケート場、ハイキングコース、キャンプ場といったようなものは公共の機関として設けられておるところはございますけれども、しかし、なお私は、数が足りない。なかなかそこへ出かけていっても非常に人が混雑しておって思うように遊べないというようなことでございまして、それだけでなく、とにかく青少年がレクリエーション——を余暇を有効に利用し得るような施設を一方に考えてやらなければ、私は角をためて牛を殺すようなことになってしまいはしないかということを感じます。
 以上、私この法案の改正にあたりまして感じましたことを簡単に申し上げて御参考にいたします。

発言情報

speech_id: 104614720X00919640225_019

発言者: 増谷達之輔

speaker_id: 11802

日付: 1964-02-25

院: 参議院

会議名: 地方行政委員会