鈴木一弘の発言 (予算委員会)

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○鈴木一弘君 第四分科会における審査の経過を御報告申し上げます。
 本分科会の担当は、昭和三十九年度予算三案中、労働、文部、厚生及び自治の各省所管に属する予算でありまして、二十五、二十六、二十七日の三日間にわたり、関係各大臣並びに政府委員からそれぞれ説明を聞き、質疑を重ね、慎重に審議を行ないました。以下、質疑のおもなるものについて御報告申し上げます。
 まず、自治省所管予算について申し上げますと、現在、地方公営企業は、いずれも赤字に悩んでいるが、その最大の原因は、各都市で経営している電車、バス等交通機関の行き詰まりから来ている。大都市の交通機関は、根本的には地下鉄なり、高架電鉄に移行するほかないと思うが、その資金調達がまた悩みの種になっている。これに対する自治省の対策はどうか。さらに当面の問題として、公共料金のストップ措置にからんで、六大都市から赤字解消のための四十八億円の補償が要請されているが、これは当然政府において見てやるべきだと思うがどうか、こういう質疑がありました。これに対し、金子政務次官並びに政府委員から、都市交通の赤字原因には、路面電車、バスの効率が悪くなったこと。経営合理化の不徹底、料金安などいろいろ原因が重なっているが、要は独立採算制をとっている以上、脆弱な経営基盤ではだめである。やはり都市交通全体の広い視野から、公営交通のあり方なり、経営形態、資本構成というものを再検討する必要があり、この点地方制度調査会の意見も聞いて善処したい。なお、赤字運賃の措置については、いろいろむずかしい問題があり、目下、関係各省の事務次官の間で鋭意折衝中である、との答弁がありました。
 さらに、交通事故の問題に関し、死者、負傷者数、事故件数とも年々増加しているが、その根本原因はどこにあると思うか。また、いかほど事故取り締まりを厳重にしても、運転者自身に交通倫理、人命尊重の精神が欠けていては、事故、発生も防げぬ道理である。したがって、事故防止には、運転者の給与、労働条件の改善もさることながら、交通道徳の涵養、運転免許制度の手直し等も必要で、関係当局はこれらの問題をどう考えているか、との質疑がありました。
 これに対しては、自治、運輸の両省並びに警察庁の政府委員から、事故多発の原因には、自動車台数の増加、道路標識の不備もあるが、道路が改善されても逆に事故がふえている事実もあり、結局は運転者の不注意、過失が最大の原因になっている。そのため現在、運輸省、警察庁及び運送業者の三者間で、運転者対策協議会を設け、技能運転者の養成、待遇改善等の問題につき研究しており、近く労働省にも加わってもらうことにしている。なお、運転者の精神面の問題は特に重要と思うので、自動車教習所の管理者、指導員に対する監督指導の強化、教習所における教授内容の改善、無事故者の表彰等を行なうほか、免許行政の充実という面からも各般の工夫をこらしている旨の答弁がありました。
 次に、文部省所管予算でありますが、定時制高校卒業生の就職差別問題につきまして、同じ高校の卒業生でありながら、定時制と全日制の間に、給与その他、待遇上の取り扱いに差などのあるのはどういうわけか。学力の点で差があるというなら、そのデータを示せ。勤務のかたわら勉学にいそしむ彼らに、教師も雇用主も、もっと理解があってしかるべきだと思うが、文部大臣の所見並びに対策はどうか、との質疑があったのに対し、灘尾文部大臣からは、定時制の学生にこそ、私はりっぱな青年が多いと信じている。それが社会へ出て差別扱いされるというのはまことに遺憾で、その点、文部省として産業界などに対し差別撤廃方を要請したこともあるが、現実には入社試験等の際に、全日制の卒業生に比べ、若干劣る点があることも事実のように聞いている。これらに対しては定時制校の環境、設備等をよくするために、われわれとしてさらに援護すべき面もあろうかと思うわけで、今後とも差別是正につとめる所存である、との答弁がございました。
 また、公立大学に対する国の補助費として、三十九年度予算に、理科設備助成費若干が計上されているが、伝統を誇る大阪市立大学でさえ、一時は大阪市で手放そうかという話が出たほどに、みな経営には困っているようだが、公立大学といえどもひとしく国家に貢献しているのだから、国としてもいま少し何らかの援助をすべきものと思うがどうか、との質疑がありましたが、これに対しては、文部大臣並びに政府委員から、公立大学はもともと県、市の自前でやるのがたてまえゆえ、従来は国から補助は出ていなかったが、科学技術者を望む現下の国家的要請にかんがみ、三十八年度から、わずかながら理工系設備の助成費として出すことになったものである。公立大学の財政力が十分でないことも承知しているが、地方財政との関係もあって、これ以上の一般的援助をすることには問題もある。しかし、将来は、この開かれた道を通じて拡大するようにしたい、との答弁がありました。
 さらに学校給食の問題に関連して、政府はアメリカで余った脱脂粉乳を輸入して、学童の給食用に供しているが、なぜ国内産のなま牛乳をもっと使おうとしないのか。現在なま牛乳は、毎年百万石ないし百五十万石の増産になっており、これを脱脂粉乳にかえて学童の給食用に向けるのに、供給上何ら心配はない。しかも輸入脱脂粉乳は、アメリカでは豚に食わせているもので、学童の体位向上の面からも、また食品衛生の立場からも、まことに好ましからざるものである。酪農振興が叫ばれている今日、何を好んでわざわざまずいものを輸入するのか。価格の点で開きがあるというなら、それこそ高度成長を自慢する政府として農家安定のためにも、部内の意見を統一して、もっと予算を出したらいい。それならわれわれも、なま牛乳の使用が父兄の負担にならぬよう、大いに協力するし、別に学校給食法の改正案も用意している。政府の所見はどうか、との質疑がありました。
 これに対し、文部大臣並びに政府委員からは、輸入脱脂粉乳はこれまで子供の体質改善にかなり役立ってきたと思うし、これがアメリカで豚用に云々と言われるのは間違いで、大部分は食用になっていると承知している。といって、何も脱脂粉乳に限るとしているのではなく、なま牛乳と脱脂粉乳とを比較すれば、それはなま牛乳のほうがよいと思うし、現にできるだけなま牛乳を使うように努力もしている。ただ、供給がはたしてうまくいくかという点でいまだ不安がある。その心配はないと言われるが、ことしはこれだけ出したが、来年は減ったというのでは困るわけで、学校給食に取り入れるには、間違いない供給ということが先決問題になる。それと、山村地には出回るが、都会地には配給がうまくいかないといった心配もあり、一面には予算に限界もあることだし、むろん畜産振興の趣旨、それに殺菌方法をどうするか等等考えねばならぬ問題も多い。文部省としては、どうしたら脱脂粉乳にまさるなま牛乳を子供たちに飲ますことができるかという気持ちで、関係各省の意向もくみつつ、検討を進めている次第であるが、学校給食法をいま直ちに改正する考えはない旨の答弁がありました。
 次は、厚生省関係でありますが、原爆被害者の援護問題について質疑応答がかわされました。すなわち、昨年十一月に東京地裁から原爆訴訟の判決があったが、厚生大臣はこの判決をどう読んだか。また、被爆者の生活実態を把握しているか。また、一方で旧地主に対する補償を考える政府として、被爆者にもっと生活面にわたる援護措置をする気はないか、との質疑がありました。
 これに対し、小林厚生大臣並びに政府委員から、判決文の趣意については、ああいう意見もあろうかと思う。原爆によって障害を受けられた方々に対しては、一般の戦傷病者の場合以上に肉体的にも精神的にも、後々まで影響するところがはなはだしいという点で、これが医療並びに健康管理の面で、できるだけの援護措置を講じているつもりであるが、生活面の援護までは、財政上、また一般戦争犠牲者との振り合い上、できかねている。原爆障害者は全国で約二十六万人と承知しているが、その方々の生活の実態まではわかっていない。しかし、昨年来、国会で調査会をつくれといった御議論もあったことだし、お話の調査は進めてみたいと思う、との答弁がありました。
 また、今国会に提案されている母子福祉法案に関連して、いわゆる交通地獄や高度成長の陰で、父親が死んだり、または遠く出かせぎに行って留守といったことのために、新しい母子家庭がふえている中で、母子福祉のための独立した法案が出されたことはけっこうだが、特に要望の強かった入学支度資金がはずされたのは残念である。母子家庭の実情からいえば、母親は子供を社会に出す望み一つで生きている。そうした母親の切なる願いが、育英会で扱う就学資金と同じ性質のものだという理由で、この法案から除外されたとすれば納得しがたいが、大臣の考えはどうか。また、こうした母親の中には、最近は若い婦人も多いのだが、そうした若い母親たちの就労の問題、また、以前から課題にのぼっている母子相談員の常勤化の問題はどうなっているか、などの質疑がありました。
 これに対しては、厚生大臣並びに政府委員から、入学支度資金については、やはり育英資金的なものとの理由で実現を見なかったが、母子家庭の特殊事情から見て、育英資金とは別個に考えるほうが、きめこまかく行き届くと思うので、今後とも努力する。また、母子家庭の母親の就労問題については、身体障害者に雇用促進法があるように、法律はなくとも、いま少し前向きでありたいと考え、職業安定所の中に専門の係官を置くように努力したが、実現しなかった。しかし、厚生省としては、引き続き労働省とも連絡の上、雇用者に働きかけるとともに、職業訓練などにも力を入れることによって、母親の就労問題を推進したいと思う。
 母子相談員の件については、戦後この制度が発足を見た当時、未亡人の人たちの中から随意任命したという沿革もあって、非常勤になっているわけだが、現在では、その人たちはいずれも中高年齢に達しているため、常勤の公務員になっても、停年退職の問題もあり、はたして有利かどうか疑問の余地がないでもない。しかし、せっかくの希望であることゆえ、常勤化に努力したが、省内の他の非常勤職員との均衡の関係で今回は見送りになった、との答弁がありました。
 さらに、ライシャワー大使刺傷事件の犯人が、精神異常の少年であったことから、精神病者や精薄児の問題を所管する厚生大臣として、この事件をやはり不可抗力と見るか。予算が足らぬ、予算が足らぬということで、こうした精神異常者がほかに多数、野放しの状態に置かれていることについてどう考えるか、との質疑がありました。
 これに対し小林厚生大臣は、こうした精神異常者が、現在ほとんど野放し状態のまま全国に二十七、八万人もいることは遺憾ながら事実である。この問題に対して、何らの責任も感じないかという趣旨のお尋ねに対しては、一言もないが、ただ事実を事実として申し上げると、いわゆる精神病患者については、精神衛生法によって保健所が管理する定めになっている。現行の精神衛生法によれば、ここに精神分裂症の少年がいるといって報告する義務のあるのは警察官と検察官だけで、ほかは家族にも教師にも医師にも、通報の義務が課せられていない。さらにこの法律のたてまえからすれば、その病人が、現に他人に対し脅威を与えるようなことのない限り、強制入院させることもできない。しかも、精神異常者を発見しやすい立場にある家族、学校、医療機関には、いま申したように、通報する義務も負わされていない。これまでの日本の社会通念として、精神病といえば何か恥ずかしいもの、忌まわしいものと感ずるだけで、これを社会のために、進んで病院に入れるなどして、なおそうという観念に乏しい。たまたま家にそうした精神病者がおれば、親も兄弟もただひた隠しに隠し、医者はあいまいな診断書を書くのが遺憾ながら実情であり、現行の精神衛生法もそのような背景のもとに制定されたように思う。法律そのものがきわめて不備である。といって厚生行政をつかさどるものとして、この事態に対して何ら責任を感じないというのではなく、現状を率直に申し述べたわけで、私としては予算的に、立法的に改むべきは改めていきたいと真剣に考えている旨の答弁がありました。
 最後に、労働省所管予算についてでありますが、働く青少年にとって、夜間定時制高校はほとんど唯一の勉学の場であるが、これがどのように利用され、かつ労働省としてどのような指導を行なっているか。また、一たん就職した青少年が、近ごろどうも職場に定着せず、中には非行青少年に転落する者も少なくないと聞くが、その実態並びにその対策はどうか。また、被使用者である青少年が、定時制高校に通学するとすれば、使用者は何らかの意味で犠牲を払うことになるが、そのことに対する配慮があるかとの質疑がありました。
 これに対し、大橋労働大臣並びに政府委員からは、勤労青少年が定時制高校に通学するとなると、労働時間、健康及び生活環境の点で、使用者の深い理解が必要になる。労働省としては、年少労働者福祉員を通じて、使用者の啓発宣伝につとめているが、今後も続けるつもりである。中学卒業後、就職.した者の数は、昨年三月の卒業生二百四十九万人のうち六十七万人で、そのうち就職の上、学校へ入った者は七万人となっており、この七万人が大体、定時制高校に通学したものと見ていい。せっかく就職しながら、その職場に定着しないきらいのあるのは事実で、その原因は住み込みの施設の無いことにあるように思う。労働省としては、この点で来年度予算にさしあたり千人分収容できる寄宿舎の建築費を計上し、この方針を将来伸ばしていこうと考えておる。また、勤労青少年を定時制高校に通わす使用者に対しては、文部省、大蔵省とも相談して税金負除等の恩典を考えたいとの答弁がありました。
 以上のほか、各省所管においてあらゆる問題にわたり、全般にわたって熱心な質疑が行われたのでありますが、詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
 以上をもちまして、当分科会担当予算の全部の審査を終了した次第であります。
 右御報告申し上げます。(拍手)

発言情報

speech_id: 104615261X01919640327_009

発言者: 鈴木一弘

speaker_id: 33756

日付: 1964-03-27

院: 参議院

会議名: 予算委員会