赤澤正道の発言 (本会議)
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○赤澤正道君 討論に入るに先立ちまして、昨日のカナダ太平洋航空機の大事故、さらに引き続きまして、ただいまは、富士山上においてBOAC機の墜落事故がありまして、全員御死亡になりましたことにつきまして、自由民主党を代表して、つつしんで哀悼の意を表します。(拍手)
私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和四十一年度一般会計予算外二案に賛成し、日本社会党提出の組み替え案に反対の意を表明せんとするものであります。(拍手)
いまやわが国は、外は韓国との国交を回復し、その基礎の上に立って、新たな国際的責任を負うとともに、国内的には不況の克服、物価の安定、経済各部門のひずみ是正に全力を尽くさなければならぬときにあります。
明年度政府予算案は、かかる当面の背景を認識しながら、これに対する適切なる施策を準備し、国民諸君の御期待に十分こたえなければならないのであります。しかるに、この予算案に対し、世上誤解と思われるいろいろな批判が行なわれておりますことは、まことに憂慮にたえないところであります。私は、この機会に、これらの点に触れて、二、三の所見を申し述べ、かかる誤解が杞憂にすぎないことを強く主張ぜんとするものであります。(拍手)
第一は、不況克服のためとはいえ、戦後初めて公債の発行に踏み切ったことは、これが将来インフレを招く、あるいは再軍備ないし戦争に通ずる暴挙であるという宣伝であります。
再軍備と戦争に通ずるとの主張については、わが国の憲法が厳存し、わが党に良心の存する限り、あり得べからざる事実であるにかかわらず、誤解を生むような議論を繰り返し、国民を恐怖におとしいれんとするいつもながらの態度は、全く迷惑しごくに存ずるのであります。(拍手)
インフレを招くとの懸念については、一部に重大な誤解もありますので、以下、国民各位にその理由を申し述べて、御理解を願わんとするものであります。
御承知のごとく、現在の不況現象は、景気の循環と設備投資の過剰が複雑にからみ合っているため、その自律的回復は容易に期待し得ないのであります。もしこのまま放置いたしますならば、不況はますます深刻化し、経済は縮小再生産におちいり、国民所得は大幅に減少するのみならず、企業の倒産、失業者の続出など、想像に絶する悲惨な場面が展開せられるであろうことは、何人も是認せざるを得ないところであります。
かくのごとき事態を防止するため、財政が積極的に経済をリードし、有効需要の拡大をはかって、遊休設備に活力を与え、経済を極力押し上げることこそ、賢明な策と印さなければなりません。(拍手)そのゆえに、政府は、昨年来、財政投融資の追加その他財政面から極力需要の喚起につとめ、さらに明年度は公債を発行して財政活動を積極的に拡大しようとしておるのであります。昨今、景気の前途に何がしかの明るさが見られますようになりましたことは、これらの施策が次第に効果をあらわした結果にほかなりません。(拍手)
ただ、インフレの懸念につきましては、当委員会において活発な論戦が展開されたことは事実であります。およそ一国の経済は、需要が供給に見合って拡大していく限り、インフレやデフレの懸念のないことは常識であります。この際、需要と供給のバランスが保たれているかいないかは、国際収支、物価水準、労働力の需給など、経済成長の条件を中心として判断すべきものでありますが、財政の規模がこれら経済成長の条件に相応している限り、その財源の一部がかりに公債でまかなわれたとしても、決してインフレを招くものではありません。(拍手)
明年度予算の規模は、一般会計及び財政投融資とも、前年度よりそれぞれ一八%及び二五%の増加となっております。反面、民間設備投資がおおむね横ばいと見られるおりから、この程度の増加では決してインフレの懸念はないものと判断いたすものであります。(拍手)しかしながら、私は、公債発行がとかく安易に流れがちな財源調達である点に思いをいたすとき、無条件に許容するわけにはまいりません。今回の公債発行について、政府はその歯どめを財政法の許す範囲とし、市中消化の原則を堅持するというきわめて慎重な態度をとられたことは、まことに当然の措置であります。
また、国が借金をする以上、経費の節減につとめ、官庁機構の拡大、公庫、公団等の増設を一切押えるとともに、また定員増加に対しきわめてきびしい態度をとったことは、行政費の増高が憂慮される今日、最も高く評価しなければならないところであります。(拍手)今後ともこのようなき然たる態度を継続せられ、行政機構の簡素化と能率化をはかり、租税を負担する国民のために、徹底的に冗費を節約するよう強く要望いたしたいのであります。(拍手)
また、当今経済の実態にかんがみ、今後数年は公債発行もやむを得ないと存じますが、この際、安易に流れず、常に経済成長に見合った財政規模の保持につとめ、かりそめにも成長条件に不安の発生するおそれがあると認められるときは、たとえ年度途中においても、発行の調整を行なう決意とその断行を要求するものであります。(拍手)
第二は、消費者物価上昇の過程の中で公債を発行することは、物価上昇に拍車をかけるとの懸念であります。
なるほど、最近における消費者物価の異常な高騰は、家庭を預かる主婦の悩みの種となっていることは事実であります。しかして、消費者物価上昇の内容を見ますると、その原因の八割程度は、農水畜産物、中小企業製品及びサービス料金となっております。これらの部門の価格や料金が大幅に上昇を見たという事実は、流通過程における隘路もさることながら、これら職域に従事する労働者の待遇改善が重要な要素となっていることを否定することはできません。(拍手)二重構造といわれるわが国産業の中にあって、賃金格差が急速に縮まりつつあることは、一面喜ぶべき現象であるが、このことが消費者物価を押し上げているということも事実であります。したがって、その影響が消費者へ転嫁されるのを避けるために、生鮮食料品供給の安定的拡大をはかりますほか、農業、中小企業、サービス業、商業などの近代化と生産性向上に政策を集中して、これがため明年度約二千億円の予算を計上しておるのであります。しかるに、社会党は、このような因果関係にある消費者物価の上昇をとらえて、その一切の原因は政府にあるごとく宣伝につとめ、その原因の究明を避けるがごとき態度は、全くひきょうというほかはない。(拍手)
およそ物価問題を考える場合、国民の全部は一応消費者であり、他面において、大部分は生産者として、物価構成の要因をなしておる因果関係を否定することはできません。この点に着目するならば、自由経済のもとにおける物価の安定は、全国民的課題として、政府、国民一体となってその解決に努力することが、最も望ましい姿であります。(拍手)生産性の向上を無視した賃上げのスケジュール闘争に狂奔して、物価騰貴は政府の責任と叫ぶがごときは、天に向かってつばをするのにひとしく、また、社会主義者が言うがごとく、権力を背景とする物価統制で生活が向上するとは断じて考えられないのであります。
第三は、この予算ではたして景気は立ち直るかという点であります。不況を本格的に克服するには、もっと予算規模を拡大する必要があるのではないかというのであります。
御承知のとおり、明年度予算は、不況克服と大きく取り組み、七千三百億円の公債発行に踏み切り、財政活動の規模を大幅に拡充し、特に歳出の重点を需要効果の高い公共事業に向けておるのであります。また他方、所得税を主とした、平年度三千六百億円の減税を行なうこととし、公債政策と減税政策とを適切に組み合わせることによりまして、不況のすみやかな回復を目ざしているのであります。しこうして、注意しなければならないことは、二重構造を含む経済体質にあって、もし急速に景気の回復をはかろうとすれば、ひずみもまたいよいよ拡大するに相違ないのであります。したがって、この際、予算は、まず経済を安定路線に乗せることを第一義として編成することが、最も時宜を得たものであることは言うまでもありません。
巷間伝うるところによれば、現在のデフレギャップは、およそ三兆円ともいわれております。明年度、財貨サービス購入増加は九千三百億円、所得税の減税千三百億円を見込まれておりますが、かりに需要乗数効果を二倍と見た場合、約二兆円の需要増が期待され、かなりギャップを埋め得るものと考えます。もとより、明年度さらに四兆円程度の生産力が加わるとすれば、財政による景気浮揚力は若干控え目であるとの感じもいたしますが、元来、わが国の経済成長は極端に走りがちで、過去幾たびか苦い経験をなめた経緯にかんがみまして、結論として、この程度の成長率がきわめて妥当なるものと信ずるものであります。(拍手)
以上、本予算に関する批判の三点に触れていささか私見を申し述べた次第でございますが、結論として、政府は、今回、終戦以来二十年にわたって堅持してまいりました均衡財政を積極的に転換し、公債の手段を活用して諸施策の充実をはかり、反面で、あとう限りの減税を行ない、国民の税負担を軽くしながら、経済の安定成長と国民生活の向上とを目途とする基本方針を立てられたことは、今後のわが国経済社会の動向にかんがみ、まことに適切な措置と信ずるものであります。
本予算は、まさにこのように、希望に満ちた明日の社会を建設する第一歩でもありますので、衷心より賛意を表する次第でございます。(拍手)
次に、社会党の組み替え案に一言触れてみたいと存じます。
先ほど予算委員会に提出された民主社会党の組み替え案は、現実的で、内容中傾聴に値する点もありました。しかるに、社会党の組み替え案を拝見すると、歳入歳出の金額の明示がない。歳入歳出の金額が一切明示されておらぬ。政権担当の用意ありと豪語している野党の組み替え案としては、組み替えという名に値しないずさんなる点に全く驚かざるを得ないのであります。(拍手)
財政政策転換要綱として、賃金の大幅引き上げにより、所得の不均衡是正と最終消費需要の拡大をはかると申しておられます。また、公債発行を取りやめるかわりに、租税特別措置の整理、法人税の累進強化等により、企業課税を大幅に増徴する。他方、所得税を主とする大衆減税を行なうほか、歳出面では、防衛関係費、公安調査庁等の経費を削減または削除し、農林漁業、中小企業に歳出の重点を向けるなどと申しておられます。
一見まことに国民を喜ばすような盛りだくさんの事項が羅列はしてありますが、まず第一の賃金の大幅引き上げは、当然に物価の大幅上昇を招き、ひいてはコストインフレを発生せしめ、国民生活を危機に追い込むことはきわめて明瞭であります。また、現在わが国の企業は、規模の大小にかかわらず、多額の借り入れ金を有し、その資本構成による金利負担の重圧に悩み、他方不況低迷の中で多数の余剰人員をかかえておる実情にかんがみ、大企業に対する課税を極端に重くするならば、収益性は急激に悪化して、優良企業といえども倒産のほかはありません。これでは多数の労働者が路頭に迷うのみならず、これと協力関係にある中小企業もまた非運に巻き込まれ、おそるべき結果を招くのみならず、いまやせっかく芽ばえてきた産業の再編成による合理化を妨げ、わが国経済の国際競争力を著しく弱め、輸出の沈滞を生ずることは火を見るよりも明らかであり、とうてい私の容認できないところであります。
以上、理由のほんの一端を申し述べて、私は本組み替え案に反対するものであります。
なお、例年予算委員会で痛感いたしますことは、防衛論議に実に多くの時間を費やしていることであります。今日わが国は、米中ソの核保有国に隣接し、その間にあって、いかにして民族の生命を守るかということはきわめて重大な課題であります。しかるに社会党は、非武装中立のお題目を唱えるのみで、政府の防衛努力に対し攻撃に終始しておるのであります。中共すら核武装をした今日、祖国の防衛についてさらに真剣に検討すべき時期に入ったと思うのであります。(拍手)この際、政府は、わが国の置かれておる危険なる環境について、真相を率直に国民に訴え、また国会は、防衛常任委員会を設置して、党派を越えて審議を尽くす必要を痛感するものであります。この機会をかりて、同僚各位の御賛同を求める次第であります。(拍手)
以上をもちまして、私の討論を終わります。(拍手)