大原亨の発言 (本会議)
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○大原亨君 討論に先立ちまして、私は、日本社会党を代表して、昨日のカナダ航空の事故に引き続き、本日のBOAC機の事故に対し衷心より哀悼の意を表するとともに、被災者の家族、関係者に心からなる弔意を表したいと存じます。(拍手)この際、われわれは、引き続き三回にわたる事故の原因を徹底的に究明をして、このあやまちを四たび繰り返すことのないよう、政府に強く要望いたすものであります。(拍手)
私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっておりまする昭和四十一年度一般会計、同特別会計、同政府関係各予算について、社会党提出の政府案を撤回し編成替えを求める動議に賛成し、政府原案に反対を表明せんとするものであります。(拍手)
政府案に反対する最大の理由は何か。この予算案が、政治の最大の目標たる国民生活の安定と向上を犠牲にし、不況対策の名によって、大企業、一部特権階級に奉仕する予算であるからであります。
以下、そのおもな理由について申し述べたいと存じます。
まず第一の理由とするととろは、政府予算案はインフレを助長し、物価高にいよいよ拍車をかける予算であるということについてであります。
去る二月二十五日発表されました総理府統計の示すところは、予算審議の過程でわが党が指摘したことが事実となってあらわれております。すなわち、人口五万以上の都市勤労者世帯の生計費調査の結果は、昨年一年間の実収入が前年比〇・三%低下したこと、消費支出も調査を開始以来初めて十年ぶりに〇・三%下落したこと、また、エンゲル係数、すなわち生計費の中に占める食費の比率が前年比〇・六%上昇いたしていることであります。昭和三十九年一カ年間よりも昭和四十年一カ年間の生活が逆に苦しくなり、消費購買力が下がったというこの事実は、国民不在の政治、戦後二十年来いまだかつてなかった悪政であって、この佐藤内閣の一年間の政治こそ、まさしく戦後最悪の政治であると断じて決してはばからないところでございます。(拍手)
そればかりではありません。二月の東京都の消費者物価指数は、前月に比べて一・二%と、一月の一%に引き続いて大幅に上昇を示しているではありませんか。これら一連の厳粛にして冷酷なる事実は、人間尊重などという口ざわりのよい公約を掲げた佐藤内閣の政治が一体だれのために行なわれてきたものであるか、また、四兆三千億円の本年度予算がだれのために行なわれようとする予算であるか、この事実を物語っているというべきであります。
消費支出が下がれば、消費物資をつくったりこれを売りさばく中小企業は行き詰まるのであります。エンゲル係数が上昇するということは、収入の大部分を食費に振り当て、ぎりぎりの生活をしている国民の半数以上を占める低所程階層を死活の線上に突き落とすものであって、特に老人、身体障害者をかかえる家庭や、母子世帯を底知れぬ先行き不安におとしいれることは明白であります。(拍手)
物価は、雨やあらし、地震、雷のような自然現象でもなければ、避けることのできない運命でもない。また、佐藤総理の答えた、経済の中の一部の現象でも断じてありません。物価上昇こそは人のなせるわざであり、大企業と政治が結託した反大衆的な腐敗政治の結果であり、歴代保守党内閣の政策失敗の総合的帰結にほかならないのであります。(拍手)われわれは、予算審議を通じて、物価つり上げの犯人を徹底的に追及いたしまして、これを国民の前に明らかにいたしたのであります。
わが党が明らかにしたとおり、物価上界は、佐藤内閣が発足以来強行してきた無責任な公共料金引き上げのはね返りであること、大企業と自民党・高級官僚のくされ縁の上にでき上がったカルテル価格、管理価格による物価つり上げにあること、中小企業と農業に対する近代化をサボり、大企業中心の弱肉強食の政策を推し進めてきた結果であること、すなわち、借金政策による過剰設備、過剰生産に引き続いて行なわれている赤字公債発行による信用膨張、これに伴う貨幣価値の下落に伴う当然の帰結であって、その真犯人はまさしく政府・自民党と大資本家にあることは、明々白々たる事実といわねばなりません。
物価と賃金について、この際誤った考え方につきまして私どもの見解を明らかにいたします。
昭和三十五年から四十年にかけて物価は実に三五%も上昇しており、労働者の賃金はこの間実質二一%しか上昇いたしておりません。労働分配率も欧米諸国よりもはるかに低いのであって、逆に、賃金の低さと社会保障の劣悪さが、自主的な景気調整機能を麻痺させ、不景気の中の物価高という行き詰まりと矛盾を露呈したのであって、資本主義を信奉する諸君といえども、資本主義の罪の深さに心の目を開くべきであると信ずるのであります。(拍手)
そこで、われわれは予算審議の過程において、昭和四十一年中の物価上昇は五・五%に押えるという政府答弁の根拠を示すことを要求したことは当然のことであります。政府はこれに対して何と答えたか。何ら具体的な政策と根拠を示すことができず、五・五%は努力目標でございますという一点ばりであったことは御承知のとおりであります。五・五%を祈るという、その心のいじらしさよ。藤山長官おとめの祈りの一節であります。(拍手)何と無能にして無責任なことか。いな、無責任はここにきわまれりといわなければなりません。世の人々は言っております。昨年は四・五%と言ったのであるが、七・五%上昇した。本年の見込み五・五%というのであるならば、おそらく八%から一〇%は上がるであろうというのが、大衆の実感を持った物価政策に対する批判であるのであります。(拍手)私はこの討論で、怒りを込めて、全国民とともに、佐藤自民党内閣に宣言をしたいと思います。もしそれ、本年物価が五・五%以上上昇したときは、責任をもって直ちに辞職すべきものである。(拍手)それは佐藤内閣がうそをつき、無能であったというだけではなく、議会政治に対する信頼を失墜せしめた責任を明らかにすべきものと考えるからであります。(拍手)
わが党の組み替え動議は、物価安定を財政政策の第一の任務とし、公債発行を取りやめ、勤労所得税を中心とした大幅減税を行ない、租税特別措置の大部分をやめて公平に税金を取り、社会保障の充実、勤労大衆の購買力増大、かくして国民生活の安定向上の一点に政治の目標を集中して、病める瀕死の経済を生き生きとした健康な国民経済に転換させんとするものであって、これこそ国民の要求と信頼にこたえる予算であるというふうに確信をいたすものであります。(拍手)
次に、第二の理由とするところは、政府予算案が農民や中小企業の近代化と発展のため無策であるばかりか、逆に、大企業との格差を拡大する反国民的なる予算案であるということであります。
一年前、佐藤総理は、政権の座につくや、高度成長に対して安定成長を唱え、ひずみの是正、大企業と中小企業、農業との格差の是正を天下に公約したのであります。しかしながら、この一年間、事態は全く逆に、中小企業の倒産は、昨年一カ年だけで借金一千万円以上のものが六千百四十一件、前年比五割の激増を示しておるではありませんか。(拍手)本年も悲劇的中小企業の倒産は、その激しさを加え、とどまるところを知らないのであります。わが党が二、三年来追及してきた中小企業に対する歩積み・両建てなどの拘束預金をやめよという課題は、いまだに解決されていないではありませんか。(拍手)たとえば、一千万円借りようとすれば、一千万円以上の担保と五〇%、五百万円をこえる拘束預金をしなければならないのが実情であります。
一方、大企業はどうか、山一証券危うしというや、取引先の三菱、富士、興銀の三銀行は、税法上の保護を受けている貸し倒れ準備金があるにもかかわらず、日本銀行法を無視して、ストレートに二百八十億円を二十億円足らずのインチキ担保で貸し出すように命じたではありませんか。さらに、この借金をたな上げして新山一証券を画策するに至っては、盗人たけだけしいといわなければなりません。(拍手)日銀のこのような行為は、日銀の権威と中立性を失墜せしめるものであります。全国の中小企業の怨嗟の的となっておることを知らなければなりません。(拍手)
夏ごろ景気はよくなるぞ、政府のだれかが言っております。しかし、七千三百億円の公債は、政府保証債と激増する地方債にプラスして発行されるのでありますから、市中金融を圧迫し、そのしわ寄せがみずからの身に振りかかることを知っている中小企業者は、そのようなごまかしの御託宣に乗るはずがないではありませんか。国際収支の先行き不安も増大しているではありませんか。昭和四十一年度予算は、中小企業の窮状を解決することができないばかりか、露骨な差別による選別融資の強化、歩積み・両建てはもちろん、手形の引き延ばし、下請代金遅延など、中小企業の生き血を吸う次から次へと過酷なる政策、金融資本の上からの締めつけは、中小企業をして、あたかも飢えたる虎狼の群れの中に放たれた小羊のごとき状態に放置しているのであって、われわれは、このようなる事態に対して、断じて許容することができないのであります。(拍手)
では、自民党の粟田といわれる農村はどうか、農民はどうかということであります。かつて池田さんは、農村は苗しろだと言って農村を持ち上げたのでございますが、しかし、帯しろで育った子供たちは、農村に見切りをつけて都会に出てしまう。苗を抜き取られた苦しろあとは、荒れほうだいに荒れているのが現実であります。この池田農政に輪をかけたものが、無策の一語に尽きる佐藤内閣の農業政策であります。(拍手)
農産物自由化と中身のない構造改善の中で、農民のつくり出す農産物価格は保障されず、農民の売る物は安く不安定で、買う物は商いというきびしい現実は、その深刻さを増すばかりではありませんか。すなわち、大企業がつくり出す農機具や農薬、肥料、飼料等は、管理価格で一方的につり上げられて、ひどい農民収奪が権力的、組織的に行なわれており、格差の拡大は必然の帰結といわなければなりません。
特に、われわれが審議を通じて明らかにしたことは、出かせぎ農民の問題であります。出かせぎ農民の諸君が、インフレに踊る暴力団まがいの土建業者の手で、タコ部屋同様の無権利、かつ非人間的な処遇を受けている事実を明らかにしたところでございます。今日、出かせぎ農民は、みずからの意思に反してちりぢりに引き裂かれ、その妻や子が、父を返せ、夫を返せと血の叫びをあげているのであります。特に、百工十万に達するであろうといわれておる出かせぎ農民の四五%が専業農家であるという事実こそ、農業の危機と歴代保守党農政の失敗を如実に物語るものと断定できるのであります。(拍手)また、われわれは、米、肉、魚、乳、野菜などの生産が、農業政策の面からも、国民食糧の面からも、破局に直面しつつあることを明らかにいたしたのであります。政府・自民党の考えは、足りなくなれば、不作ならば、外国から安い農産物を輸入すればよいという安易かつ無責任な方針で貫かれております。政府・自民党のこのさか立ちをいたしました方針は、根本的に改めねばならぬと思うのであります。
わが党の組み替え案は、農林漁業の生産力を国の責任で高め、その所得水準を引き上げ、食糧自給度を向上させる基本的立場を堅持し、農産物に対しては、生産費所得補償方式による価格政策の確立、肥料、農薬、飼料などは、国の管理のもとに置き、農家経営の近代化、健全化に寄与しようとするものであって、まじめな農民の声を反映し、その期待にこたえるものであると確信をいたすものであります。(拍手)
第三の問題点として指摘する点は、本予算が、減税や社会保障はもちろん、民主主義の支柱ともいうべき地方自治、地方財政の危機を招く行き当たりばったりの予算案であるということであります。
国会において、佐藤内閣は、やれ大幅減税であるの、やれ三千億減税であるのと、減税の押し売り宣伝、薬の誇大宣伝以上の宣伝をいたしたことは、御承知のとおりであります。しかし皆さん、初年度の減税分を見てみれば、二千万人の国民が支払う個人所得税の減税は、わずかに一千二百八十九億円足らずであります。一握りの大企業には、企業減税として四百三十一億円を実施しようといたしておるではありませんか。一方、国民から巻き上げる間接税同様の公共料金を見れば、消費者米価の値上げ分は六百億円、国鉄運賃、私鉄、バスの値上げ分は二千五百億円以上、各種健康保険の保険料値上げ分は五百億円をこえることは明確であって、これだけでも三千六百億円を超過するではありませんか。(拍手)さらに加えて、郵便料金引き上げ、水道料金などの地方公営企業の料金、教育費の値上げを含めば、減税の数倍に及ぶ悪らつな大衆収奪が強行されようといたしているのであります。(拍手)
七千三百億円の国債は、道路や住宅に使うという政府の強弁にもかかわらず、その住宅について見れば、一千億円の増額のほとんどが宅地と建築単価の値上がり分に食われて、肝心の宅地政策に至っては全くの無策であり、とどまることなき家賃、宅地の値上がりとともに、住宅の絶対的不足の解消は全くお先まっ暗といわねばなりません。(拍手)
社会保障に至っては、佐藤内閣の一枚看板であったはずであったにもかかわらず、それは停滞と混迷の一語に尽きると言っても過言ではありません。
佐藤内閣は、昨年、健康保険法を改悪して薬代の半額負担と保険料値上げを画策いたしましたが、わが党と国民の総反撃を受けて、これを撤回してきたところであります。しかるに、本年もまた、社会保険審議会の答申を無視して、保険料値上げ案を提出いたしてきました。
また、政府は、国民年金を一万円年金に引き上げると、大々的に宣伝これつとめているのでありまするが、しかし、これも全く誇大宣伝であります。第一に、一万円というのは、六十五歳以上、夫婦そろっておるときのことであります。第二には、二十五年先の話であって、物価上昇年三%としても、二十五年先にはゼロになるのであります。(拍手)第三には、掛け金が倍増し、一年間に千二百円の一人についての負担が加重されるのであります。このような事実を隠蔽する誇大宣伝を鈴木厚生大臣はいたしておるわけでございまするけれども、これは薬の科学技術庁長官の上原さんと一緒に独禁法違反です。誇大宣伝です。(拍手)独禁法によって処分されなければならぬと私は思うのであります。
最後の問題点として、私は、公債発行のもとにおける防衛費増大の危険な傾向、特に第三次防衛計画の背後にある危険なその背景について明らかにいたしたいと思います。
政府予算案が、バッジ・システムの整備、新ミサイルの増設、自衛隊の海外派遣、日韓台の軍事協力体制の強化、アメリカの極東核戦略体制への協力などの危険な背景を持つ第三次防衛計画の正体について、国民は知る権利があると考えるものであります。このことは、必然に核基地である沖繩が半永久的な日本本土よりの切り離しとなることは必至といわなければなりません。特に、この第三次防衛計画の最終年度の防衛予算は、国民総所得の三%にするという国会答弁は、きわめて重要であると思うのであります。防衛費の総額は、いまの三千億円台より一躍八千億円から一兆円の年間支出となるという推定の数字が出るわけであります。この軍事予算の増大こそ、七千三百億円の赤字公債発行の正体を暴露するものでなくて何でありましょうか。(拍手)われわれが償還計画なき赤字公債を追及し、平和憲法とともに生まれた財政法第四条に違反する軍事公債の危険性を究明するゆえんもまたここにあることを明らかにしなければなりません。われわれの判断によれば、昨年七月まで公債不発行を一枚看板としてやってきたところの自民党が、このような百八十度の政策を転換してきたことは、経済的要求とともに、客観的に見て軍事的要請と結合する可能性を見のがすことはできないのであります。
われわれがこれらの問題を、紀元節復活や国防省実現、小選挙区制と憲法改悪と結びつけて考えるならば、自民党内閣の衣の下にちらつくよろいの正体をはっきり見ることができるのであります。(拍手)雪だるまのように膨張する公債を使うものは大企業であっても、これを償還するものは国民の税金によってまかなわれるものであります。赤字公債発行は、中小企業やあるいは市中金融を圧迫して、地方自治を通ずる収奪を促進し、税負担の増加、国際収支の逆調をもたらして、国民を塗炭の苦しみに突き落とすことは明らかであります。特に戦争拡大、公債増発、過酷なインフレの苦い歴史的経験を持つわれわれは、かつての大東亜戦争の未帰還機にひとしいような赤字公債が、ベトナム戦争を発火点とするアジアの戦争に日本を巻き込む経済的、軍事的導火線となるであろう危険性なしと、だれが断言できるでありましょうか。われわれは、あくまでも日本の安全と世界の平和に責任を持つがゆえに、平和憲法を守り、戦争への一切の危険な政策を断ち切り、平和中立の外交方針を基調として、国民生活の安定と向上に一切の施策を集中するという方針を貫かなければならぬと信ずるものであります。
わが党の政府予算撤回、そして編成替え動議によるやり直しを要求する立場こそ、国民生活の向上、日本の安全、アジアの平和という国民共通の要求に立ったものであり、党派を越えた議員各位の圧倒的御賛同を得るものと確信いたすものであります。(拍手)
以上をもちまして、私の討論を終わります。(拍手)