近江巳記夫の発言 (本会議)
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○近江巳記夫君 私は、公明党を代表いたしまして、今回政府が提出されました中小企業白書並びに本年度施策、さらに中小企業振興事業団法及び特定繊維工業構造改善臨時措置法に関し、特に重要と思われる数点につきまして、総理並びに関係大臣の所信をお伺いしたいと思います。
中小企業がわが国経済に大きなウエートを占めていることは御存じのとおりであります。現在、中小企業にとって最大の課題は、資本自由化の影響と小規模企業の前途に対する問題であります。この点、今回提出された白書の分析及び施策はあまりにも不十分であります。資本の自由化に対しては、中小企業を含めた総合的な構造改善を実施するといっているだけであります。
全国中小企業団体中央会がこのほど発表した資本自由化の中小企業に対する影響等の調査結果によりますと、食料品、機械・金属工業、繊維、小売り業など、数多くの業種が大きな打撃を受けるであろうといっているのであります。そうでなくとも、競争の激しい中小企業の分野に外資が進出すれば、競争は一段と激化し、倒産や下請企業の整理などの起こることは必然であります。大企業さえも資本の自由化をまくらことばに産業再編成を進め、いよいよ寡占化体制を強固にしようとしておるのであります。自動車産業、電子工業、石油化学など、自由化を許せば、外国大企業の膨大な資金力によって産業発展の芽をつまれないとも限らないといわれております。いわんや、中小企業は一体どうなるでありましょう。いまのままでは見殺しにしてしまうのであります。こうした点からいっても、ことしの施策は、資本の自由化と中小企業の関係に焦点を合わすべきであったと思うのであります。
そこで、総理並びに通産大臣にお伺いしたい点は、資本の自由化は時期尚早であると思うのでありますが、今後のスケジュールと中小企業を資本の自由化からどのように保護していくか、具体的にお伺いしたいのであります。
総理は、施政方針演説の中で、「中小企業擁護のため、振興事業団をつくる」と述べているが、この事業団では、ごく一部の限られた優秀企業しか守られないということは定説になっておるのであります。小規模企業がいかに困窮しているかは、倒産件数を見ればはっきりするのであります。本年四月の倒産件数は六百二十一件と、依然高水準であり、このうち九割を小規模企業が占めております。五月に入ってからも、小樽の大東産業、鳥取の青谷機械製造の倒産等と、次第に地方へ移動している様子があらわれているのであります。すでに本年に入ってから二千四百五十八件と昨年の四割をこえ、特徴としては小口化し、さらに小規模特有の飲食料品、木材製品等の増加が目立っておるのであります。今後の見通しとしても、資本の自由化、さらにその防衛のための大企業の寡占化体制整備に伴い、下請企業への圧迫、景気過熱から、もし金融引き締めがなされた場合等考えると、先行きはまっ暗であります。政府はどのような責任を感じ、今後どのような対策を講じていくのか。
昨年の二月二日の本会議で、総理は、「倒産が増加しているのは非常に遺憾である。産業の安定成長目ざして進んでいきたい。そこで倒産問題については、しばらく時間をかしていただけば、必ず政府の政策の効果があがる」ということを述べておられますが、そのしばらく時間をかしてくれとは、一体どのくらいの時間なのか。現在一年三カ月たっておりますけれども、今日倒産の件数が増加しているというのは、これは政府の施策が間違っていたことなのか、それとも時間が不足なのか。さらに通産大臣は、昨年十二月二十三日に経済閣僚懇談会がありましたが、そのあとの記者会見で、「最近の倒産を見ると、倒れるべくして倒れたものが多い。町の金融業者から高利の金を借りたあげく、経営が破綻してほうり出したものに対しては、政策的に手の打ちようがない」と、零細企業を見捨てるような発言をしているが、それが政府の本心なのか、伺いたい。
次に、中小企業振興事業団についてお伺いいたします。
この事業団は、高度化資金融通特別会計と中小企業指導センターを合併したにすぎず、従来の施策から何ら前進していないのであります。いままで政府が最も力を入れていた高度化資金特別会計の決算を見ると、三十九年度二十億円、四十年度二十九億円と多額の不用額を出しております。このことは、対策が当を得ていない証拠を示しているのであります。したがって、単なる衣がえにすぎないこの振興事業団も、希望が持てないではありませんか。政府はこの振興事業団によって、はたして中小企業の振興を可能と考えているのか。この振興事業団の具体的運営の方途について、総理並びに通産大臣にお伺いします。
さらに、協業化に進めるのはごく限られた一部の企業であります。そこで残された企業の多くは、望むと望まないにかかわらず、転廃業の問題を考えざるを得ない状態に追い込まれているのであります。政府の転廃業者に対する助成措置の態度をお伺いしたいのであります。
政府は多くの施策を打ち出しておるけれども、その効果において、先ほど来事例をあげたとおり、抜本的な対策とは言えないのではありませんか。ここにおいてわが党は、大企業優先の現在の通産行政から、血の通ったしかも抜本的な中小企業振興をはかるため、現在のばらばら行政を一元化する中小企業省の設置を提案するものであります。これに対する総理の所見を伺いたい。
次に、具体的な問題についてお伺いいたします。
わが党としては、かねて中小企業といっても大企業に近いものから、家族だけで経営している零細企業まで、その規模は広範囲であります。したがって、現在の画一的に講ぜられている対策を、規模別、構造別に対象をきめ、きめのこまかい具体的な対策を推進すべきであると主張するものでありますが、総理並びに通産大臣の所見をお伺いしたいのであります。
第二点は、中小企業と大企業との関係を合理化し、両者の分野調整を行なうことが必要であります。
最近の著しい傾向は、資本の自由化を控え、大企業が中小企業、小規模企業の専門分野に手を広げる傾向も、日増しに強くなってきております。過当競争を激化しているだけでなく、中小企業を市場から駆逐したり、倒産させたりしておるのであります。また大企業が持ち株一〇〇%の子会社を中小企業の中につくり、これが中小企業を圧迫して、経営を困難にさせており、さらに中小企業が生存していくためには、中小企業の系列化や、下請工業化の傾向が強く見られ、大企業への完全な隷属という姿も多く見られております。現在、中小企業団体法によって行政指導がされているものの、力を発揮していないのが実情であります。
わが党は、大企業の進出から中小企業を守る意味から、中小企業の出荷額、あるいは付加価値率七〇%以上を占める分野を、中小企業の専門として、大企業の新たな進出を規制するよう、産業分野調整措置法を制定することを主張しております。
この法律は、市場支配率がきわめて高い産業分野や、ほとんど中小企業で占められている産業分野、あるいは大企業がまだ進出していない産業分野について、調整機関を設けて、業種別に分野調整をはかることを目的とし、これによって大企業の不当な進出を規制するのであります。さらに、産業分野の調整は、大企業と中小企業間だけでなく、中小企業相互間にあっても行ない、過当競争を防止するよう提案するものでありますが、実施する考えはないか。
第三点は、下請企業の問題であります。
中小企業の危機を端的に示し、中小企業が直面している各種の問題を集約的に包含しているのが下請企業であります。わが国の下請取引関係は、経済の二重構造のもとで、親企業が下請企業を収奪することによって、自己の資本投下を節約し、雇用労働者の労働条件抑圧の効果をおさめ、下請企業を景気変動の安全弁として利用するという、きわめて冷酷な日本的特殊性を持っております。一たび親企業が倒産すると、親企業自身は会社更生法の適用によって再建されるにもかかわらず、下請企業は下請代金を更生債権として凍結され、銀行では約手買い戻し請求を受け、一切の私財を投げ出して債務を処理せざるを得ず、結局、親企業のために自滅するのであります。このような親企業と下請企業の関係は、まさに前近代的な身分的支配、従属関係が今日歴然として存在することを示すものであり、二十世紀における日本のふしぎといっても過言ではありません。
そこでまずお伺いしたい点は、政府は会社厚生法の改正を考えているようであるが、今国会に提案するのかどうか、お伺いします。さらに、会社更生法を改正するにあたっては、下請債権者の権利を守る方向を堅持するのかどうか、お伺いいたします。
次に、中小企業を大企業による金融面での圧迫から守るために、下請代金支払遅延等防止法がありますが、下請業者がこの法律に基づいて大企業と交渉することは、かえって親会社ににらまれて、不利な扱いを受けることがありますので、現実には下請業者にとって救いとならないざる法であります。したがって現行法を抜本的に改正し、不当業者に対する罰則規定を強力にし、さらに支払い利息を日歩五銭ほどに改め、絶えず中小企業を守り、大企業の圧迫を排除していく考えはないか。
さらに、下請業者の利益を守り、その地位の改善をはかるために、公正取引委員会の担当官を増員し、その権限を強化しなければならない。特に、支払い遅延の場合は申告制になっているが、これを改正して調査と取り締まりに重点を置き、紛争処理機関などをつくり、法の活用をはかる。このため、その地方機関を新たに大都市に設けて、強力な行政命令を出せるようにしたらよいと考えるが、総理並びに公正取引委員長の見解をお伺いしたい。(拍手)
次に、特定繊維工業構造改善臨時措置法について一、二点お伺いします。
政府は、三十九年六月に繊維新法を制定し、百万錘の紡機を凍結したが、まだまだ過剰設備を解決できず、四十年十月には不況カルテルを結成し、さらに今回この法律により合計三百万錘を破棄しようとしているが、政府の見通しの甘さが見られる。今回のこの措置で抜本的に繊維業界の不況を克服できるのかどうか、お伺いしたいものであります。
次に、三百万錘といわれる紡機の破棄によって、中高年層の労働者をどう処理するかが問題であるといわれるが、完全に対策が講ぜられなければならないが、この点についてお伺いします。
最後に、中小企業の金融制度改変についてでありますが、答申はいつごろ出されるか、さらにいまの試案から見ると、中小企業専門の機関をつくれ、あるいは中小企業銀行をつくれというようないろいろな案が出ておりますが、制度の改変というのはきわめて主要な問題であります。この答申によって中小企業向け銀行をつくったり、あるいは地方銀行と合併するとかの場合、それがいつの間にか大銀行あるいはただの金集めに終わる銀行となって、中小企業にお金が出ていかないということになりかねない。そこで中小企業の要望を十分に受け入れる用意があるかどうか、大蔵大臣並びに通産大臣に伺い、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕