赤澤正道の発言 (本会議)
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○赤澤正道君 私は、自由民主党を代表して、今回提案になりました政治資金規正法に対し、内閣総理大臣をはじめ関係各大臣に若干の質疑を試みんとするものであります。
この法案は、近来まれに見る世評騒然たる中に策定せられました選挙制度審議会の答申を受けて、これを尊重しながら法文化せられたものでありますが、この法律は、言うまでもなく、わが国民主政治、政党政治の将来にきわめて重大な影響を持つものであります。しこうして、近く改正される選挙制度全般の一環をなすものでありますが、これら一連の法律の施行によって、わが国政党政治を正しい軌道に乗せ、議会政治の健全なる発展と、政党政治への信用を回復しなければならないことは当然のことであります。
昨年秋以来、政界に不祥事件が相次ぎ、国民のきびしい批判を受けたことは、引き続いて議席にある者として、まことにざんきにたえないところであります。事件は司直のさばくところとなり、すべてが白日のもとにさらされ、政界にも大いなる反省が起こったことは事実であります。
しかしながら、議会政治、政党政治は、人類がとうとい血と汗によってかち得た衆民政の所産であって、われわれはいかなる犠牲を払おうとも守り抜かなければならないものであります。このため、政治の衝に当たる者は、すべて姿勢を正し、清潔なる行動に終始し、全国民の信頼にこたえなければならないことは言うまでもありません。議会政治における政党活動の目的は、その主義、政策を国民に周知徹底せしめ、選挙を通じてその支持を受けるにあります。したがって、平素の政治活動と選挙とは表裏一体をなすものであって、政党が選挙に勝つために平素あらゆる努力を傾けるのは当然のことであります。
第五次選挙制度審議会は、本来政党本位の選挙、金のかからない選挙について、その制度を審議し答申することを使命といたしているのであります。その使命を実現するためには、選挙区制の抜本的改正、選挙運動の方法の改善、それに資金の規正が総合的に実施された場合初めて実効があがるものと信ずるのであります。しかるに、昨年の秋の不祥事件に刺激されたとはいえ、きわめて重要と思われる他の事項に先んじて政治資金の答申のみが行なわれ、今回法案の提出を見るに至ったのであります。
政治資金については、制度全般の改正があったあとと現行制度のもととでは、考え方に根本的相違があることは言うまでもありません。佐藤総理は、この重大な関連についていかなるお考えに立っておられるものか、御所見をお伺いしたいのであります。
私は、審議会の特別委員として多くの発言をいたしました。その中で、政党に対する寄付は制限すべきではない、その他の寄付についての制限はやむを得ないことを繰り返し強調いたしました。議会制民主主義の基礎は政党にあります。政治活動は本来自由に行なわれなければなりません。わが国の民主政治を発展させるためには、金のかからない選挙を行なうことは当然としても、政党の政治活動自体は、より活発に、より徹底して行なう必要があり、そのために必要な資金を伴うことはやむを得ません。このことは、諸外国の実例に徴しても明らかであります。わが国の政党はいまだきわめて未熟であって、その活動も不徹底でありますが、これは資金が不十分であるところにも原因があると考えられるのであります。
佐藤総理は、本法案に関連してこの点をいかがお考えになっているか、あわせてお答えをお願いいたします。
次に、本法案の主務大臣である自治大臣に二、三お尋ねいたします。
私は、政治資金規正の眼目は、公開の原則を守らせることにあると存じます。この点、現行法に多くの欠点があったことは周知の事実であります。元来、政治資金の取り扱いがガラス張りの経理で行なわれる限り、国民監視の目は十分に行き届くはずであって、その間の不正は国民の良識によって判断され、また十分防止せられると思うのであります。しかし、相次ぐ事故への反省もあり、国民の怒りがこの法案となったことは認めざるを得ませんが、寄付を受ける側、また、寄付する側にそれぞれこまかい制限を設け、さらに罰則をつけたことは、はたして適当な方法でしょうか。法案によれば、受ける側の個人は、一年間に同一会社、労働組合、個人等から五十万円をこえて寄付を受けてはならない。また、寄付する側については、資本金二億円の会社は、寄付と名のつくものは、政党であれ、後援会であれ、一切加えて、年間を通じて五十万円以上してはならないとか、綿密に規定してあります。しかし、この程度の、しかも善意の寄付について罰則をつけることは、あまりに神経質に過ぎ、常識から考えて納得のいかないところでありますが、自治大臣の御所見をお伺いいたします。
次は、国または公共企業体と請負その他特別の利益を伴う契約の当事者、あるいはまた、特定の政府関係金融機関から融資を受けている法人の寄付制限についてであります。国または公共企業体は国内最大の消費者であって、この制限に該当するものは無数にあると判断せられるのであります。融資についても同じでありますが、法文に書けばわずか数行であっても、これに罰則がつくとすれば容易なことではなく、この法律の運用いかんによっては、生産活動、経済活動を麻痺させ、警察国家の招来なしといたしません。私どもは、政治活動が不当に弾圧されたことによって、次第に取り締まり国家に移行していった戦前の忌まわしい記憶を持つものでありますが、自治大臣はこの点についてどのような御所見をお持ちになっているか、お伺いしたいのであります。
昭和四十二年六月二十二日
次は、金のかからない政治活動、選挙についてであります。最近政治活動のための経費が次第に膨張して、まことに耐えがたいものになっているのは事実であります。このことはまことに憂うべき現象でありまして、これを解消する名案については、ひとしく頭を悩ましておるところであります。政治資金公開の原則によってその収支を届け出る場合、政治活動のための必要経費は何々をいうかについて、特に審議会で十分御検討願いたい旨を主張したのでありますが、これについての審議は全くありませんでした。政治活動のための必要経費について、その範囲と限界をきめることはきわめて困難ではありますが、わが国の慣習を認めながら、個々のケースを取り上げてこれを検討し制限することは可能であって、たとえ完ぺきが期せられなくても、これこそ、権威ある第三者で構成する審議会の任務であったと考えるのであります。政治に金をかけるのは悪である、資金さえ制限すれば政治活動も衰えるであろうという誤った考え方が法案を支配していることはまことに遺憾であって、私は資金規正の方向を誤っているものと判断せざるを得ないのであります。
政治資金の誤れる使用は、これくらい国民を毒するものはありません。また、この使い方を規正することによって、政治が姿勢を正すことにもなり、かつ、いつも問題になる政治家個人の所得の計算も可能になるのであります。しかるに政府は、これを十分検討することもなく、答申をうのみにして、寄付のみ厳に制限し、政治活動のためにする必要経費の規正にほとんど配慮がなされないのはいかなる理由によるものか、あわせてお答えをお願いいたします。
現行選挙法のもとにあっては、各政党ともよって立つ基盤を異にするので、政治資金のみ規正することははなはだ不公平を招くことになると思うのであります。自由民主党は大政党であって、それぞれ選挙区ごとに複数の候補者を立てる関係上、勢い平素の政治活動は個人後援会を基盤といたします。社会、民社両党は、組織された労働組合を基盤といたします。また、公明党は、宗教団体が基盤となっていることは周知の事実であります。
あなたも御承知のとおり、選挙に関する後援団体結束の要諦は、所属の各個人が相互に常に意思の疎通をはかり、集会を開き、団結を強固にするにあります。しかるに、今日、革新政党の後援会ともいうべき労働組合は、年間の財政総額数百億円に達し、その決算報告書によれば、そのうち大きな部分が政治資金として支出されていると推定せられるのであります。労働組合は、組合員の経済的地位の向上、また、労働条件の維持改善のため、その団結権を憲法によって保障されているものであり、選挙のための団結を憲法が保障しているものではないことは言うまでもありません。(拍手)また、宗教法人と一体をなす政治結社の場合、資金の使用と会員の団結の点に関する限り同様であって、政治活動と宗教活動との区別を明らかにすることは不可能であると考えるのであります。
選挙制度審議会においては、政治活動とは何ぞや、その実態は何をさすかについて一言も審議することなく、また、労働組合、宗教法人の内部で消費されるばく大な資金は、政治活動、ひいては選挙活動と全く無縁のものかいなかについて一言も触れられなかったことは、私の全く不可解とするところであります。(拍手)
本法案には、それぞれ基盤の異なる政党に対し、少しでも公平に資金を規正しようとの意図があらわれていることは当然の措置と考える次第でありますが、しかし、さらにもっと根底からこの問題を検討する必要があったと思うのであります。自治大臣並びに労働大臣の御所見をお伺いいたします。
以上申し述べたとおり、基盤を異にする政党の政治資金を、いまだ政治活動の本質や相違も見きわめず、実態の調査も行なわずして、単に寄付の面からのみ簡単に制約することは、現段階においてはなはだ不公平のそしりを免れません。
しかも、この法律起案の過程を通じて、世論の一圧迫があったことは事実でありますが、さりとて、この種の重大法案は、拙速を旨として処理せらるべきではありません。政党の近代化あるいは体質改善については、ここに御列席の各大臣は長い体験を通じてよく御承知のはずであります。拙速をとうとぶあまり、角をためて牛を殺すの愚を行ない、それによってわが国議会政治の進展に思わぬ蹉跌があれば、それは取り返しのつかないことになると思うのであります。政府としては、審議会においてすでに完成しておる次の答申に期待し、これを同時に法案化して審議の機会を与え、また、その施行期日は同時とせられんことを切に希望いたしまして、私の質疑を終了いたします。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕