小沢貞孝の発言 (本会議)

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○小沢貞孝君 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま説明のありました政治資金規正法及び公職選挙法の一部を改正する法律案について、佐藤総理並びに藤枝自治大臣等に対し、若干の質問をいたしたいと存ずるものであります。
 言うまでもありませんが、政治資金規正法は、政党、協会その他の団体等の政治活動の公明をはかり、選挙の公正を確保し、もって民主政治の健全な発展に寄与することを目的としておるのであります。
 昨年以来、政治資金をめぐって国民の疑惑を招くような事態が相次いで起こってまいりました。選挙制度審議会は、このような状況にかんがみて、当面緊急を要する措置として、四月上旬、佐藤総理に対し、政治資金の規正等に関する答申を行ないました。その冒頭に、「政党の政治資金は、個人献金と党費により賄なわれることが本来の姿である」、こういうように、これは基本的態度として明示しておるわけであります。しかも、具体的には、おおむね五年後にそれを実現するために、政党は近代化、組織化をはかるべきことを要請しております。先ほどの佐藤総理の答弁は、たいへん自信のないようなお話でございましたが、目標は、船の行き着くべき港は、政党近代化の目標として個人献金でなければならない、こういうように明示されたわけであります。
 わが国においても、科学技術も発達するし、機械も人もみんな変わって、日本経済は、多くの問題点をはらんでおるとはいえ、着々と発展して、西欧に追いつき追い越すような状態となってまいりました。しかし、ひとりわが国政治は、その政党の非近代的なるがために、依然として後進性を保ったままであります。この事実は、党派を越えて国民のひとしく憂うるところでなければなりません。
 今度の規正法に関する答申は、この国民的目標に対してその一里塚として与えられたものといっても過言ではありません。現実に足を踏まえ、さしあたり実現を期することを求められたものでございます。しかるに、答申案と今日提案された法案とを比べてみますると、一体どこに答申の精神が生かされておるでありましょうか。基本精神が全く失われておると申しても過言ではございません。(拍手)私は、まずこの点を佐藤総理にお尋ねいたしたいと思うわけであります。
 第二には、政府は、審議会の答申が出されてからすでに二カ月有半、今国会会期末まで提案の日を送ってまいりました。その間自治省案ができるまで、あるいはまた、自治省案ができてから政府最終原案ができるまで、自民党の幹事長が先頭に立って、いまだかつてないと思われるようなブロック会議も招集して検討を重ね、修正に修正を重ねてまいりました。したがって、ここに提案された本法案は、政府と与党とこん然一体となってつくり上げた法案であると私は信じて疑いません。
 しかるに、どうも紙上伝えられるところによれば、国会審議の過程で政府・与党の手によってさらに改悪されるのではないかというように伝えられております。何がゆえに、本法案に限って、政府と自民党はかかる態度、言いかえるならば、二昭和四十二年六月二十二日刀づかいをしなければならないか。現にいま社会労働委員会に付託された健康保険等特例法案の審議にあたっては、この法案の中に自民党の議員の中ですら多くの疑問を持っておりますけれども、なおかつ文字どおりごり押しのために政府・与党一体となって戦っておる現実であります。政府は一体政治資金規正法を本気で今国会で成立させようとしておるのかどうか、政府の責任者としての立場から明確な御答弁を佐藤総理にお願いいたしたいわけであります。(拍手)
 どうも政府は、腹の中では、とにかく提案だけはしたということでその責任をのがれようとしておるように見えてなりません。国会審議の中でこの法案がさらに骨抜きになって成立するか、あるいはあわよくば審議未了、廃案となることを望んでいるのではないでしょうか。しかも、事もあろうに、先ほどの質問にもありましたが、労働組合の献金のほうのチェックオフを規制して、そうしてその責任の一部を野党に負わせようとしております。言いかえるならば、提案まぎわになって、あわてて、労働組合の行なう寄付について、先ほどの質問のあったように、チェックオフを禁止する条文を挿入したのであります。こういうことは、明らかに野党を刺激してこの法案を成立させないようにして、その責任の一端を野党に負わせようとする魂胆であるに違いありません。(拍手)労働、自治両省の事務当局は、天引き禁止の条文は不適当だ、と言っております。このことは新聞にも明らかに出ております。しかし、先ほどの早川労働大臣の説明ではその点が不明確でありました。基準法できめられ、当局が不適当と思われるようなものを、なぜ提案まぎわに挿入しなければならなかったか、この経過について自治大臣並びに労働大臣の明確な御答弁をお願いいたします。
 さて、従来から、政治資金規正法は、食管法あるいは売春禁止法とともに、ざる法だといわれてまいりました。まことに遺憾であります。したがって、このような弊害を除くためには、規定された条文がだれにもわかりやすくなければなりません。答申案では、国または公共企業体と請負その他特別の利益を伴う契約の当事者であるもの及び特定の政府関係金融機関から融資を受けているものは、すべて一般会社の寄付制限額の二分の一、どういうようにきわめて明確であります。しかるに、提案された改正案は、契約高や融資額が十分の一以下のものは除外いたしました。これによって、あとでこの十分の一の制限をさらに十分の二、十分の三と、次々とワクを拡大するような余地を残した点、これが第一点。第二点としては、ざる法としての、そのざるの目をいよいよ拡大する役目をこれによって果たさせようとしたことであります。一体、特定会社と政府との契約がその会社の売り上げまたは融資額の十分の一以下であるかどうかということは、事務的に調査し、公表し、周知徹底することはなかなか至難であります。単に、答申案のように、政府と関係がある、こういうことであるならば、きわめて明確であるわけであります。
 このように考えてまいりますと、十分の一のワクをわざわざつけたということは、その意味がきわめて重大だというように感ぜられます。まずこの点について自治大臣の所見を私はお伺いいたしたいと思います。
 そもそも、かくのごとく答申の線から一歩二歩と後退して、ついには答申の精神そのものの否定にもなりかねまじき状態にまで寄付制限の緩和をはからざるを得なかったのは、公然と派閥の温存を許したことをはじめ、候補者の支出のほうを食いとめなかったことにその根本原因があると思うのであります。すなわち、従来の派閥を公然と政治団体として認めたり、公職の候補者の寄付の禁止について、その規制が答申案よりもはるかに後退して、政治上の主義または施策を普及するための講習会や、政治教育のための集会に実費を支出してよいということがきめられまして、いままで行なわれたような東京見物あるいは温泉旅行等を堂々と認めているところに問題があるわけであります。(拍手)
 初めは与党の審議会委員もこの支出の全面禁止には賛成しておったと聞いております。一体、いかなる理由でかくのごとく後退せざるを得なかったか、これまた自治大臣の御答弁をわずらわしたいわけであります。
 総じて、本法案は、匿名寄付の問題といい、法の実施が適正に行なわれておるかどうか、調査、監視、取り調べ、こういうことがきわめて困難であります。われわれもまた、この法の実施にあたって権力の介入を戒めなければならないと信ずるものでありますが、本法の適正な実施をいかにして行なわんとするか、担当大臣の所信を承りたいと存じます。
 さて、私は先ほど、本法はざる法の一つであると申し上げました。この法案を、政党とその資金を規正し取り締まるというように、受け身の見方で見るならば、まさにざる法となるでありましょう。そうではなくして、冒頭に私が述べましたように、政党近代化の一里塚として前向きに受けとめまして、政党近代化のための教育法、こういうようにして受けとめるならば、その意義もまた評価できるわけであります。しかし、そのためには、政府と自民党の最高責任者、佐藤総理の態度いかんに私はかかっておると信じて疑いません。答申以来、後退に後退を重ねてくることを許したことは、総理の責任はまことに重大であります。この点について総理はいかなる反省をなされておるでありましょうか、明確な御答弁をわずらわしたいわけであります。
 その上、この法律は、施行を一体いつにするかきめてありません。先ほどの自治大臣の答弁は、準備のでき次第、国民が十分了解した後にということで、堀議員の質問に対して明確ではありません。国民はいま、車の両輪論者との妥協で、選挙区制とからませようとしているのではないか、あるいはまた、政治資金を規正して政治の姿勢を改めたいという国民世論の冷却を待ってうやむやにしようとしているのではないか、こういう不信の念を持って見ておるわけであります。したがって、この点については、今度は総理から、いついつから実施する、こういうように明確な御答弁をわずらわしたいわけであります。
 さて、最後に、私は、国民から政党政治の信頼を高めて議会制民主主義の発展を期するための方途についてお伺いいたしたいと思います。
 先ほども堀議員が若干申されましたが、私は、本年二月末の自治省発表の四十一年度上半期の政治資金をもとに、主要政党等の収入を分析してみますと、発表のあったものの中で、明らかに各政党に属するもの、あるいは派閥に属するものとわかったものを加えて、これを比較の便宜のために、その当日の衆議院議員の数で割ってみました。そうしたら、指数だけ申し上げますが、自民党は、議員一人当たり、ここ半年でありますが、千七百という数字が出ました。共産党のほうは一億六千六百という数字が出ました。公明党のほうは約千九百という数字が出ました。社会党百十五、民社党百四十、こういうような数字となります。これは一応の比較のめどであります。与党の政治資金は、民社党や社会党等野党の政治資金の約十倍であるということであります。
 政治資金は、各政党いろいろと事情がありましょう。しかし、公平な使用額によって、政党間の争いは政策によって争われ、国民の審判を求めることが、より好ましいことであると私は信じて疑いません。かりに、ある政党が政治資金の絶対的優位が保てないならば、その政党が凋落の危機に瀕する、もしこういうことであるならば、それはその政党の政策の貧困を物語っておる、こういうように断じて差しつかえありません。(拍手)
 私は、四月に審議会の答申が佐藤総理に提示されてから今日までの政府と与党の動きを静観してまいりましたが、そのあわただしい動きは、何か焦燥にかられていると申しても過言ではありません。会社の寄付のほうは、先ほど来論議されているように、骨抜き的修正を加え、税の優遇を行ない、反対に、約一割の政治資金しかない野党のほうに対しては、法律的に見ても不適当あるいは妥当性のないという方法で規制しようとしております。これはまさに党利党略でなくして何でありましょうか。(拍手)こういうことで一体党近代化を志す政党といえるでありましょうか。この点について、国民は佐藤総理と自民党に注目いたしております。佐藤総理のこの点に関する所信をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕

発言情報

speech_id: 105505254X02819670622_024

発言者: 小沢貞孝

speaker_id: 34017

日付: 1967-06-22

院: 衆議院

会議名: 本会議