増岡博之の発言 (本会議)

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○増岡博之君 私は、ただいま趣旨説明のありました社会党提案の最低賃金法案並びに政府提出の最低賃金法の一部を改正する法律案につきまして、自由民主党を代表して、社会党提出法案の提案者並びに政府に対し質問をいたすものであります。
 まず、社会党提出の最低賃金法案につきましては、全国一律に最低賃金を設けるということがこの法案の中心でありますので、私はこの点に焦点を合わせて質問いたしたいと存じます。
 御承知のごとく、わが国の経済は近年高度に成長し、賃金の水準は急速に上昇し、賃金格差も次第に縮小しているとはいえ、いまだにかなりの格差があり、現状では次のごとくであります。
 企業の規模別の格差は、昭和四十一年においては、大規模事業所労働者の賃金を一〇〇といたしますと、中規模のそれは六九・八であり、小規模のそれは六一・六となっております。さらに地域別の格差は、製造業の定期給与で見ても、東京を一〇〇といたしますと、最低の鳥取県は五五・二でございます。もっとも平均化が進んだといわれる新規中学卒業者の昨年の初任給をとってみても、東京の一万四千九百七十円に対し、青森では一万百三十円でありまして、約四千八百円も差があるのでございます。また、産業別に見ても、製造業を一〇〇とした場合、繊維六八・二、木材七五・一、家具八〇・二となっており、産業により少なからぬ格差が存在するのであります。
 このように、いまなお地域別あるいは産業別により格差が大きい現状において、全国全産業一律の最低賃金を決定しても、はたして実際の効果があるのでございましょうか。このような格差の存在を無視して、あえて一律の最低賃金をきめるとしても、もし低いほうを基準にしてきめれば、高いほうには何の役にも立たないのでございます。また、高いほうを基準として最低賃金をきめた場合には、低いほうでは企業がつぶれるか、最低賃金を守らないかのいずれかでございます。いずれにしても実際の効果ある賃金額を決定し得ないと思われるのでございます。社会党法案の提案者は、この点につきどのように考えられるのか、承りたいと存じます。(拍手)
 そもそも、以上申し上げた規模別や地域別あるいは産業別にある賃金格差は、それぞれの企業の付加価値生産性の差がその原因をなしておるのであります。すなわち、通産省の工業統計によれば、企業の規模別の付加価値生産性の格差は、大企業一〇〇に対し、中小企業五〇、零細企業に至ってはわずかに二四にしかすぎないのであります。にもかかわらず、賃金の格差は、労働省の統計により、大企業一〇〇に対して、中小企業六九・八、零細企業は六一・六であり、賃金の格差は付加価値生産性の格差よりもかなり緩和され、改善された状況となっております。そのことは、中小零細企業が人手不足ということから、企業の計算に合わない、比較的高い賃金を支払っていることを示すものでございます。
 このことについては社会党もよく御承知でありまして、昨年の十月発行せられた「社会党の政策」という冊子の中で、中小企業の数多くの倒産の理由として、若年労働力が逼迫し、賃金の上昇と労働力の確保が困難であることを原因の一つにあげておられるのであります。その社会党が、いま直ちに全国全産業一律の最低賃金を決定すべく、新しい法案を提出されたのでございます。しかも社会党は、総選挙ハンドブックの中で、最低賃金額を月額一万八千円に決定しようと明記しておられるのであります。しかし、昭和四十一年の労働調査によれば、月平均の賃金が一万八千円以下の労働者は六百五十万人も存在するのでございます。したがって、もしこのような全国一律の最低賃金が決定されるならば、大多数の中小企業の支払い能力の限度を越えることは明白でございます。(拍手)そこで、社会党法案は、現行法の認める賃金決定の原則のうち、事業の支払い能力をわざわざ削除しておられるのでございます。
 このようなことから推察いたしますと、社会党は最低賃金の名のもとに、法の拘束力により、数多くの中小企業者が倒産してもいたし方がないという考え方をお持ちであるように思えてならないのでございます。(拍手)
 その反面、ふしぎにも社会党は、中小企業の重要性をも認めておられるのでございます。すなわち、「社会党の政策」という冊子の中で、中小企業は数において日本の九九%を、出荷額において五〇%を占め、千八百九十二万人が働いており、日本経済に果たす役割りは大であると明記しておられるのでございます。それほど重要な中小零細企業であるにもかかわらず、これらの企業の支払い能力を無視し、多数の企業が倒産し、そこに働く何百万人もの労働者が失業するおそれのあるような法案を提出されたことにつき、どのような責任を持とうとされるのか、提案者にお聞きしたいのであります。(拍手)
 また、社会党は、中小企業対策については別途に法案をお考えのようでございます。かりにその法案が同時に承認されたといたしましても、中小零細企業の体質改善が瞬間的にできるものでないことは明白でありまして、依然として弱体なる体質はそのままに、全国一律の最低賃金の負担は即座にかかることになると思うのでございます。法律により、一瞬にして企業の体質改善を行なう方法があればお示しいただきたいとともに、それができるものとして全国一律の最低賃金を実施しようとしておられるのかどうか、お尋ねいたしたいのでございます。(拍手)
 次に、諸外国の最低賃金制につき、提案者及び労働大臣にお尋ねいたしたいのでございます。
 私が聞いておるところでは、ILO二十六号条約も全国一律の最低賃金を指示していないのみならず、わが国のような経済の二重構造が存在せず、賃金格差が少ない欧米先進国においても、イギリスでは業種ごとに賃金審議会を設け、地域別や性別をも加味した業種別の最低賃金をきめており、フランスの職業別最低保障賃金についても、農業は別建てとなっておるほか、六区分の地域差が設けられ、アメリカにおいても連邦の公正労働基準法による最低賃金が適用されるのは州をまたぐ産業だけで、その他の労働者はそれぞれの州法により別々の最低賃金の適用を受けておるのであります。いずれも社会党案のような全国一律最低賃金制はとっていないものと承知いたしております。もし、先進国の中で全国一律最低賃金制をとっている国があれば示していただきたいとともに、それらの先進国がそのような制度を採用していないことをどのようにお考えになるのか、お尋ねいたしたいと存ずるのでございます。(拍手)
 他方、政府提出法案は、現在に至るも制度の適用を受けていない残された分野に対し、すみやかに最低賃金の設定普及を行ない、労働者の生活の安定をはかり、さらに日本経済の発展に寄与するため、業者間協定方式を廃止し、労使、公益、三者構成の審議会決定方式を中心とすることに改正するものであって、明らかに一歩前進でございます。ILO二十六号条約との関連においてもまことに時宜を得た提案であると思うのであります。
 しかしながら、制度として前進であるだけに、その円滑な実施のために、中央審議会の答申も次のごとく述べておるのであります。すなわち「産業、企業の側においては、中小企業も含めてこのような情勢に対応できるよう経営の近代化、合理化を進め、その体質の強化改善をはかっていくことが要請されるのであって、最低賃金制の検討についてもこれらの事情を十分考慮する必要がある」としるしております。
 そこで、この際、政府提出の改正案が、答申の趣旨に沿い一歩前進であり、さらには、中小零細企業に対する通産、大蔵両省の施策の万全を期するならば、それらの企業の付加価値生産性を向上し、経済界の混乱を招くことなく、低賃金労働者の安定向上に寄与し得るものと確信し、次の諸点をお尋ねいたしたいのでございます。
 まず、総理大臣にお尋ねいたしたいと思います。
 ただいままで申しましたように、中小零細企業者は、経済発展の谷間にあり、二重構造に悩みながらも低賃金解消に鋭意努力せざるを得なかったのであります。なお、この際、法の改正によりその適用範囲が拡大し、より零細な分野にも普及せられることと思われます。したがって、零細企業に対し、従来からなされておる政府の施策を大幅に拡充せられることが必要であるのではないかと思うのでございます。金融、税制等に加うるに、零細企業者の能力を向上せしめるためには政府のより積極的な指導が必要であり、それに対し、将来大幅な予算の増額が必要ではないかと思うのでありますが、この点、総理大臣から御見解を示していただきたく存ずるものであります。
 次に、大蔵大臣にお尋ねしたいことは、中小零細企業並びにその団体に対する各種税制上の配慮をいただいておることは、中小零細企業者が深く喜んでおるところでございます。が、しかし、中小零細企業の個人経営の場合、税の申告の有無によって生ずる家族専従者控除の不公平があり、この際この点を是正していただきたいのでございます。また、現在、中小零細企業の法人の九〇%以上が税法の適用にあたって同族会社としての取り扱いを受けております。そのため、非同族である大企業との不公平、すなわち内部積み立て金に対する課税、行為計算の否認、配当分離課税の適用除外等の是正を行ない、最低賃金法改正の機会に事業の合理化を行ない得るような力を蓄積せしめることが、この制度改正を無理なく有効に活用し、労働者の賃金向上に役立つと思うのでございますが、大蔵大臣の御見解を承りたいのでございます。
 労働大臣には、国際情勢を含めての諸般の情勢から、本提案をされたことは全く同感でありますが、まず、ILO二十六号条約の批准につき御所見をお伺いいたします。
 次いで、社会党提案のごとく一挙に全国一律の最低賃金を決定することは、いたずらに数百万人の失業者をちまたにあふれしめ、社会不安の発生を見ると思うのでございますが、その間の御見解をお聞かせ願いたいのでございます。
 さらに、政府改正案を適用するにあたり、労働省あるいは審議会が従来示されていた最低賃金の目安の指示があるのかないのか、もしあるとすれば、経済発展段階にふさわしい目安とし、逐次改正していただけるのかどうかお尋ねし、最後に最低賃金審議会の構成並びに運用に留意していただいて、公平に最低賃金を決定し、真に労働者の安定と経済の発展に寄与するよう、十分なる御指導をいただくべく御所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  〔川崎寛治君登壇〕

発言情報

speech_id: 105505254X03119670629_009

発言者: 増岡博之

speaker_id: 24704

日付: 1967-06-29

院: 衆議院

会議名: 本会議