川崎寛治の発言 (本会議)

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○川崎寛治君 増岡君にお答えいたします。
 現行法が実施をされて八年、業者間協定で賃金が上昇していないということ、それから産業別、地域別の格差がたいへん多くあるということは、御指摘のとおりであります。そして、それゆえ、この現行法の業者間協定方式によります現行最低賃金なるものが、ただいまの法律の第一条の目的であります「賃金の最低額を保障し、労働条件の改善を図り、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」という、その目的を達成していないことをみずからお認めになったと思うのであります。(拍手)
 今日、取り残されております低賃金労働者の層、それは特に婦人労働者、年少労働者、臨時工、社外工、日雇い労働者、小零細企業労働者であり、商業労働者等であります。日本の全労働者の過半数を占めておりますこれらの労働者が、いま、先ほど御指摘のとおり低い賃金に停滞いたしておるのであります。現行最賃法が有力に作用していないということは、先ほど指摘したとおりであります。増岡君は最低賃金制について御理解がないといわざるを得ません。(拍手)
 なるほど、特定の者だけが一万八千円以上で、他が一万八千円以下ということであれば、倒産等の問題も出てくるかもわかりません。しかし、それ以下の労働者がいないということになれば、下請代金の算定の基礎、これは変わってまいるのであります。公正な下請代金にならざるを得ません。そしてそのことが底辺の零細企業、下請労働者の下請賃金を公正にいたしてまいるのであります。今日、日本の下請の上に大企業がそびえ立っておるという二重構造を解消していく方向に行くのであります。(拍手)全国一律の最低賃金制がいまこそ必要なゆえんであります。
 第二には、支払い能力の問題でありますが、そもそも一九二八年、すなわち三十九年前、ILOの二十六号条約が採択されます際にも、支払い能力の問題はたいへん議論になりました。しかし、支払い能力を入れるということ、このことは、これを理由にして低賃金にくぎづけをしようとする経営者の意図が露骨であるという理由で、このILOの二十六号条約から支払い能力のことばが削除されておる歴史的経過があるのであります。(拍手)このILO二十六号条約は、もともと低開発国に適用されるようなラフな形で仕組まれております。全く最低の基準を示しておるのにすぎません。これに抵触しなければよいのだ、そういう考え方は、みずからが低開発国水準であるということを暴露しておるといえます。(拍手)
 また、アメリカ州際の最低賃金決定に際して、アメリカの経営者も支払い能力の問題もやかましく論じました。しかし、最低賃金実施によって倒産がない、その例がないということは、アメリカの文献にも明らかなところであります。今日倒産の最大の原因は何か、それは労務不足であります。まさに最低賃金制をしくから倒産するのではなくて、安定した労働力確保のためにも最低賃金制が今日必要なのであります。支払い能力論をもって、労働者を低賃金あるいは無権利の状態に置いておこうという資本家にとっての、ありしよかりし日をいつまでも夢みておるということは、時代錯誤もはなはだしいといわざるを得ません。(拍手)
 一律最低賃金制を実施するとともに、わが日本社会党が中小企業対策として中小企業省設置の法案あるいは中小企業事業分野確保の法案等、あわせ準備をいたしておることは御承知のとおりであります。また、社会保障制度の拡充が必要であることも申すまでもありません。
 支払い能力に関してこの際つけ加えておきたいと思いますが、一九三三年、すなわち三十四年前にアメリカのルーズベルト大統領は、最低賃金の決定については生活賃金の原則を強調いたしておるのであります。そして産業復興法の法案署名に際しまして、労働者に生活賃金よりも低く支払うことによって存在を続けている企業は、この国、すなわちアメリカでありますが、アメリカでは存在する権利を持たない。生活賃金とは、私には最低生活水準以上のものを意味しているのだ、こう言い切っておるのであります。私は、この際、佐藤総理に、ルーズベルト大統領のステーツマンとしての聡明さと勇気を、あわせて要望しておきたいのであります。(拍手)第三には、先進国の例はどうかというお尋ねでありますが、世界で最初に最低賃金制が設けられましたのは、ニュージーランドで一八九四年、七十三年前であります。イギリスの賃金局法案は、いまから五十八年前の一九〇九年に成立をいたしております。フランスにおいては、婦人の家内労働者を対象にした家内労働法が……(発言するあり)歴史の経過を説明しておるのだからよく聞きなさい。家内労働法が一九一五年、いまから五十二年前に成立しました。そして、これが後に拡張され、他の産業にも拡大され、今日の最低賃金制に発展いたしてまいっておるのであります。アメリカにおいて最初に最低賃金法が成立をいたしましたのは五十五年前、一九一二年マサチューセッツ州においてであります。増岡君も御承知のとおりに、アメリカはユナイテッドステートであります。連邦国家であります。でありますから、先ほど御指摘の法律、公正労働基準法は州際産業のみだ、こういう御指摘をされておりますが、そのことは、アメリカが連邦国家であり、連邦議会における法律制定の過程というものを御存じないからであります。(拍手)一九一二年のマサチューセッツ州にできました第一回のもの、各州におけるその州最賃法、それらが積み上げられ、さらに公正労働基準法が州際通商に関係のある労働問題に適用されてまいることになったわけであります。それゆえ、アメリカにおいては全国一律でございます。そして連邦労働法は、時代の進展とともに拡張され、他の産業に広く適用されるようになってまいっておるのであります。
 以上の例に見られるごとく、欧米の最低賃金制は、本来苦汗労働を救い、家内労働者を救うということから始まり、それを解消することに重点が置かれてまいったのであります。そして職業別、産業別最低賃金の形をとってきたのでありますが、まさに数十年の歴史の積み上げであります。今日、日本で家内労働法が制定されずに、労働力の需要者側だけできめられます業者間協定方式などは、世界どこにもその例を見ないのであります。(拍手)
 増岡君にここであらためて特にお答えいたしたいと思いますが、先ほど歴史の経過を申し上げましたように、各国が今日新しい最低賃金制を定めるといたしましたならば、ただいま私が提案いたしましたこの全国一律制をとるであろうことを、私は断言いたしたいのであります。
 中央最低賃金審議会が過去二回にわたって一律最賃制がよいと指摘いたしております。あるいは大橋、石田元労働大臣も再三にわたって全国一律制がよい、また、可能であるということを言明いたしてまいっておるのでありますが、今日こそ、すみやかに全国一律制の最低賃金制を制定すべき時期であります。
 以上、お答えをいたします。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕

発言情報

speech_id: 105505254X03119670629_010

発言者: 川崎寛治

speaker_id: 34024

日付: 1967-06-29

院: 衆議院

会議名: 本会議