三宅正一の発言 (本会議)

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○三宅正一君 明八月六日は、二十三年前、世界最初の原子爆弾が広島に投下された日であります。この日を迎えて、全国民が覚える激しい心の痛みと、未来永遠に戦争と核兵器の惨害を絶滅しようとのかたい誓いと、その同じものが、はたしていま佐藤総理の胸中に宿っているであろうか。私は、この点に関して、多大の疑いを表明せざるを得ません。(拍手)
 原爆被害の実態を明らかにすべき被爆者白書の作成を、いまなお怠っているのはなぜであるか。アメリカから返還された原爆映画の全面公開を押えるのはなぜであるか。野党が一致して要求いたしました非核武装宣言を、理屈にならぬ理屈をつけて、握りつぶすのはなぜであるか。昨年十月、国連に提出されたウ・タント事務総長の核兵器白書にしても、口に国連中心主義を唱え、広報宣伝に熱心な政府が、これを出版する手続をとっているとも聞きません。何がおそろしいのか知らぬが、これら一連の態度をもってみれば、核アレルギーなどと不遜な言辞を弄するあなた方は、むしろ核不感症というべきではないか。(拍手)あげくには、日本を核武装に導こうという底意がないと佐藤君は断言できるであろうか。原水爆禁止運動が起こってすでに久しいが、政府こそ、率先してこの運動に協力し、真の世界的運動にまで広げ、高める努力をなすべきであります。五月三日の憲法記念式典をサボタージュする政府の態度と、核兵器絶滅への努力を回避する態度とは、決して別個のできごとではない。(拍手)過去の悲痛な国民的体験と将来への民族的、全人類的悲願こそ、戦後政治の初心でなければならないのに、この初心に対する忠誠と熱意を持たざる佐藤君とその政府が国政の座にあることに対して、国民多数が覚えるであろう不満を冒頭にまずお伝えせざるを得ないのであります。(拍手)
 佐藤君、同じ不満と疑惑は沖繩返還問題についても高まっております。すでに周知のように、去る三月二十五日、米下院秘密会において、スナイダー米国務省日本部長は、「佐藤・ジョンソン会談において、大統領は沖繩返還について何の約束もしなかった」と証言している。これは総理の強調する「両三年内に返還のめどをつけるとの合意がなされた」という発言とは明らかに食い違うものであります。一体ジョンソン大統領との間に何らかの密約があったのか、それとも佐藤君は共同声明の翻訳文に小細工を弄して、両三年内に返還のめどをつける約束があったと主張しているにすぎないのか、明確な答弁をお願いしたいのである。(拍手)
 沖繩の早期返還は、あなたも言うがごとく、全国民の悲願であります。しかし、日米共同声明によると、あなたは沖繩における基地が将来も引き続き重要な使命を果たすことを認めておられるのであります。その口の下で早期返還は必ず実現すると言い張るのはどういうことなのか。これは単にひとりよがりといって済まされるものでなく、国民を欺くものというべきでありましょう。(拍手)実はあなたは、「日米関係の友好と信頼」に名をかり、その実、アメリカの言いなりになって、沖繩を核基地つきのまま受け入れる方向に国民を追い込もうとしているのではありませんか。
 沖繩返還の方式について、総理は白紙だと言われます。その白紙には、核持ち込みもあり得ると書くかもしれないという意味での白紙なのか。そうとすれば、それは日本国民の総意に対する裏切りといわなければなりません。(拍手)あなたは、本土並みなどの条件をつけたら話が進まぬとも言われるが、それは、アメリカの意向をこちらが代弁していることばで、いやしくも日本の首相の言うべきことではないでありましょう。総理の立場は、あまりにアメリカの意思をそんたくし過ぎた卑屈な態度といわねばならない。沖繩返還の手続や条件について、いつまでも国民を疑惑の雲の中にどとめておくことなく、総理のこれに対する明確な意向をこの際表明されたい。
 佐藤君はまた、「沖繩百万の同胞が現実に祖国へ復帰するまでの間は、本土との一体化を各分野において着実に推進する」と述べているが、私は、ここにも佐藤君の言行不一致の見本を見るのであります。何ゆえなら、われわれ社会党は、沖繩県民が現在じゅうりんされている日本国民としての固有の権利を行使できるよう、沖繩県民代表をこの議場に迎えるための沖繩県における公職選挙法の適用の暫定措置に関する法律案を、民主社会党、公明党の諸君とともに本院に上程してあります。しかるに、政府・自民党は、これに対して協力を示さず、対米折衝においてもこの問題を提出しておりません。もし佐藤君が真に沖繩と本土との一体化を推進するつもりなら、なぜこの問題に正面から取り組もうとしないのでありましょうか。
 なお、国政参加の問題について、先ごろ沖繩県民代表が上京し、総理に会見を申し入れたのに対し、あなたは、沖繩自民党代表とは直ちに会いながら、祖国復帰協議会の代表諸君に対しては会見を拒否いたしました。このことは、十一月の主席公選を前にした党利党略もはなはだしい行為であり、沖繩百万の同胞に対する首相の誠意を疑わざるを得ないのであります。(拍手)
 過般の参議院選挙においても、また、一昨日の所信演説においても、佐藤君は、日本の安全と繁栄は安保条約のおかげであると強調されましたが、佐藤君が本気にそう思っておられるならば、その無知さかげんはとうてい総理の重職にたえるものでなく、また、本気にそう思わずに言うておられるとすれば、希代のデマゴーグといわなければなりますまい。(拍手)戦後二十三年、日本の安全と繁栄が保たれたのは、日米安保条約があったがためではなく、実に平和憲法あってのおかげであります。(拍手)もし日本に平和憲法がなかったならば、日本の青年は朝鮮戦争にかり出されて、アジア人同士殺し合う悲劇に追い込まれていたことは明らかであり、また、今回のベトナム戦争においても、平和憲法がなかったならば日本も出兵せざるを得なかったことは明らかであって、長くアジア人同士が恨みを結ばずに済んだのは、全く平和憲法のおかげであるといわなければなりません。(拍手)
 また、朝鮮戦争の戦局が困難になったとき、当時のマッカーサー元帥が、鴨緑江周辺に原爆を使おうと決意したことは周知の事実であります。幸い当時のイギリス労働党内閣アトリー首相が、もし満鮮国境においてアメリカが原爆を使えば、ソ連、中国の公然たる参戦となることをおそれて、トルーマン大統領にマッカーサー元帥の罷免を要求し、シビリアンコントロールの伝統あるアメリカは、かくかくたる戦勝の栄誉に輝くマッカーサー元帥を直ちに罷免したのであります。もしこのことなく、鮮満国境に原爆が使われておれば、日本もまた原爆の報復を受け、佐藤君も私も、生きてこの議場にまみえることはなかったでございましょう。(拍手)
 今回のベトナム戦争にいたしましても、幸いにしてパリ会談の開催にこぎつけましたが、もしこれがエスカレートして米中戦争に発展するがごときことがあれば、米軍進発の基地を持つ日本は、当然戦争に巻き込まれざるを得ないのであります。日米安保条約が常にこの危険を包蔵していることに、佐藤君は目をおおわんとするのでありますか。あなたの恩人吉田元首相が、サンフランシスコ平和会議において、池田、星島、一萬田君等の全権団全員で講和条約には調印されながら、安保条約のみは吉田茂ただ一人の責任において単独調印した事実は、あなたもよく御存じと存じます。吉田氏は、安保条約にこの危険な面もあることを洞察して、歴史に対して責任を負うたことと私は考えておるのであります。(拍手)
 ともかくこの危険を包蔵する安保条約を、日本の守り神のごとく宣伝して、国民にこの危険な一面を知らさないような政治家は、ステーツマンとはいえず、一介のポリティシャンといわなければならないと存じます。(拍手)佐藤君の所見をお伺いいたします。
 日本が安全と繁栄を保持し得たのは、平和憲法によって戦争放棄を国家意思として世界に向かって宣言したからであり、他国の脅威となる戦力を保持するに至らなかったからであり、国内に、この憲法をたてに平和と戦争反対を要求する強い世論の形成があったからであり、さらにまた、重い軍事費負担を免れて余力を経済建設や民生の向上に振り向けたからであります。(拍手)
 佐藤君は安保堅持を強調もれるが、あなたは、核時代における世界の安全と平和はいかにして保たれると考えられますか。現に、米ソ二大強国の保有する核は、世界人類を百回以上もみな殺しにする戦力となり、恐怖の均衡をますます拡大しつつあり、予算の半額を国防費に使いながら一日も安心せず、さらにさらに軍備費をエスカレートしている状態であります。この核兵器保有国がフランス、中国その他にさらに広がっていくならば、やがて人類はみずから開発した核によって滅亡する運命をたどることは自明の理でございます。
 いまわれわれがやるべきことは、平和憲法を改悪することではなく、平和憲法擁護の信念をますます強固にし、この平和憲法をアメリカにもソ連にも中国にも適用させ、核兵器の廃棄はもとより、世界の国々は一国の軍備を持たず、軍備は国連の警察軍のみとなし、国際紛争は国際司法裁判所の判決に服するという、新しい世界の秩序を創建することにあると信ずるものであります。(拍手)
 日本の総理は、毎年の国連総会に出席して必ずこのことを訴え、人類の英知がこの新しい世界秩序を支持するよう働きかけるべきであります。この秩序を創建することに成功したときにのみ、初めてこの地上より戦争がなくなり、人類が貧乏から解放されるのもまたこのときであります。そのためには、国連の普遍性を一そう広める等の努力がもとより必要であり、そのためにも中国の国連加盟の実現は緊急の要務であります。重要事項指定の発議国ないし賛成国になるがごとき愚を避けて、中国の国連加盟を推進しなければならない。と同時に、中国も台湾も、ともに一つの中国を主張しておるのであるから、平和的に中国が一つになるよう努力すべきであると考えるが、総理の所見はいかがであるか。(拍手)
 また、昨年十一月以降、政府、日赤が帰国申請を受け付けた一万七千余名の在日朝鮮人の帰国問題については、人道問題の見地からいっても、国に帰りたい外国人を一日も早く帰国さすことが日本の国際的義務ではないか。総理は、予算委員会で、「帰国は自由だ、その方法を日赤が政治とは別に人道上の見地から話し合いを続けるということであれば、ぜひそういうものをまとめたい」と答弁しているが、また例によってその場のがれのことばだったのでありますか。帰国事業を妨げているほんとうの事情は何であるかを明らかにされたいと存じます。(拍手)
 ここで私は、社会党の主張する非武装中立論について一言いたします。
 核時代における世界の平和と安全を守る方途は、核が万一にも使われれば世界の破滅につながることを考えるとき、仮想敵国を想定する軍事同盟方式ではなく、いわゆる武装中立論でもなく、非武装中立政策こそ、最も有効にして実際的方策であることを確信するものであります。(拍手)私の属する社会党も未熟な点が多いのでありますが、しかし、百年の後を考えると、非武装中立論こそ、社会党の民族と世界に対する大きな功績であったことを歴史が証明するものと私は確信しておるのであります。(拍手)
 日本国憲法をすなおに読む者から見れば、世界第七位の戦力を持つ自衛隊が憲法違反の存在であることは明らかであります。国の基本法である憲法をごまかしておいて、小さなことで順法精神を説いても通用するものではありません。(拍手)われわれは、戦争の反省の上に、国民の大部分が心から喜んで賛成した平和憲法を初心に返って守る意味からも、憲法違反の自衛隊などを存続させるべきではありません。(拍手)自衛隊を憲法違反の日陰者としておく限り、彼らのコンプレックスは、汚職等の堕落に走るか、クーデター等の暴発へおもむく危険をはらむかのいずれかであると存じます。(拍手)われわれは、勇断をもって自衛隊を解体し、一部は国民警察隊として、万一の天災地変その他の社会事変に備え、また、密入国等の海上の警備に当たらせ、その一部は平和建設隊として、国土の建設と災害その他の復旧、救援に役立たせ、開発途上国に対する技術協力に参加させる等、非武装憲法に抵触せぬ存在とすべきであると存じます。(拍手)
 この上に立って、世界の各国と積極的に友好関係を樹立する積極中立の立場をとれば、世界は日本を尊敬し、信頼こそすれ、この国を侵略するものなどないことは明らかであります。世界に局地的紛争の起きている国は、大国の横暴から、同一民族の国家が分割されたり、国境を接しての紛争があったり、民族や宗教が異なるために、国内に紛争が起きるという事例におおよそは局限されているのであり、海を隔てた同一民族で構成した日本などを侵略する国などはあり得ないのでありまして、戸締まり論のごときは、子供だましの愚論にすぎません。(拍手)
 第二次大戦後、植民地は続々と独立して、その数は百をこえるに至りましたが、大国の領土や保護領を続々独立させざるを得なくなった今日、侵略などのできなくなった世界の情勢を物語るものと存ずるのであります。最近の最もよき実例として、かつて欧州にハプスブルグ大帝国としてその勢威を誇ったオーストリアは、第一次世界大戦後分割されて、ウイーンを中心とする小国に転落しましたが、第二次世界大戦中ナチ・ドイツの占領下に置かれ、終戦まぎわにソ連の占領するところとなりました。しかし、一九五五年永世中立を宣言し、ソ連軍の撤退を求めるにあたって、米ソ英仏の不侵略保障を獲得いたしました。それより以後、三、四万の観兵式の兵隊を持つごとき非武装に近い中立国として、欧州大陸のまん中に安全に存在しておるのであります。(拍手)欧州の中央に位するオーストリアにソ連軍が駐在することは、独仏に対する大脅威であり、ドイツ軍が駐在することは、ソ連にとって耐えがたき恐怖でありまして、ソ独ともに撤退して、中立のオーストリアがまん中におることは、かえって大国の緊張緩和にもなることになるのであります。
 米ソ中三大国の谷間にある日本が、どの国と軍事同盟を結んでも、他の国を脅威することは当然でありまして、非武装、積極中立の立場に立って、どの国とも軍事同盟を結ばぬことが、米ソ中三国ともに安心するゆえんであり、アメリカが共産圏への武力封じ込め政策を放棄した暁には、中ソ両国のみならず、米国もまた日本の非武装中立を歓迎することは、オーストリアの例に見ても明らかであります。(拍手)
 明治百年の歴史を顧みて、明治の先輩の最大の偉業は、四百の諸侯の藩籍を奉還さして統一日本をつくり上げたことであります。今日の世界は当時の日本よりなお実質的に狭くなっておるのであり、各国の自主性は尊重しながらも、世界を打って一丸とする世界連邦をつくり、一国は軍備を持たず、国際司法裁判所と国連警察軍の権威に各国とも服する新しき世界秩序をつくり上げることこそ、日本の安全を永遠に守るとともに、世界の平和を守るゆえんでもあります。核時代に人類が生き抜く道は、これ以外にありません。日本民族のビジョンをここに統一し、世界国家創建に一億の全日本民族が努力することこそ、やがて八月十五日の終戦記念日を迎えるわれわれが、数百万の戦死者と、また日本の侵略に倒れたアジアの同胞に対しその霊を慰める最良の道であると考えるが、総理の所見はいかがでありますか。(拍手)
 次に、内政について質問をいたします。
 選挙中、佐藤総理や福田幹事長は、食管制度の堅持を約束し、福田君のごときは、日本武道館で全国の農民代表数万人を前に、「わが輩は何よりも農民を愛す」、「米価は自民党がきめる」と大みえを切って農民を喜ばせておきながら、選挙が済んだら手のひらを返すごとく食管制度の改正を問題にし、関係各省はあげて米価の抑制に動いたのであります。選挙のときは票がほしくて農民に顔を向け、選挙が済んだら財界の要望にこたえるというカメレオンのごとき場当たりをやるあなた方の言動は、国民に政治不信の念を植えつける以外の何ものでもありません。(拍手)
 食管法は、昭和十七年成立以来、戦中戦後の食糧危機に農民から保有米以外は全額を供出させて、あの困難な時期に食生活の安定に寄与し、日本人の生活を守った重大な法律であります。しかるに、昨年の大豊作でちょっと余剰米が出ると、大蔵省は米の買い入れ制限と自由米構想を打ち出して、農民に動揺を与えております。さらに、この問題につき木村官房長官は、政府の統一見解として、「保有米以外の米は全量を政府に売り渡すべきものだとの規定は、農民への義務規定であって、農民の権利規定ではない」と答えておるのであります。何たる暴言でありましょうか。これでは、政府の考えは農民を敵とする封建的支配者の考えと同一であって、絶対に許すことはできません。(拍手)食管法は、生産者たる農民にはその生産費と所得を補償し、消費者には家計を安定させる価格で米を売り渡す、いわゆる二重価格の制度をとっているのでありまして、この法を基本的に改めぬ限り、生産者米価と消費者米価をスライドするがごときは、自由米制度とともに明白な法律違反であります。法律違反をあえて犯すつもりかどうか、総理の所見を伺います。(拍手)
 農業基本法は、制定以来七年、われわれが初めから指摘したとおり、むざんに失敗いたしました。
 失敗の第一は、農村から多数の中堅労務者を工業や土建業等に引き抜きながら、農家戸数はほとんど減っておらず、農業経営の零細性はそのまま残ったのみならず、農業自体はいわゆる三ちゃん農業に転落して、老人と婦人に重労働をしい、出かせぎ農家を激増させて、戦争でもないのに半年後家、十カ月後家をつくって、人道上もゆゆしい社会問題を起こしながら、五百五十万農家の八割を低い生産性に停滞する兼業農家に追い込んでいるところにあります。
 農業基本法失敗の第二は、農林省に巣くう戦前からの保守的観念から、二町そこそこの自立農家の育成を目標として、社会党が主張した農業共同化の方向に背を向けた結果、大機械体系による近代農業等に発展する余地もなく、個々の小農がそれぞれ数十万円もする耕うん機や百万円をこすトラクターを買っても、これを使うのは年間十日そこそこという機械貧乏に泣き、それだけ生産費が高くなり、生活は苦しくなるという悪循環を生み、今日では政府のいう自立農家の生活が最も苦しく、農外収入にたよる兼業農家のほうが生活が楽だという、農村荒廃に追い込んでいるのであります。農業以外に仕事の少ない山村地帯が幽霊部落、過疎地帯に転落しつつあるのも、かかる農政の貧困も一つの理由であるのであります。
 失敗の第三は、選択的拡大と称して、米の生産は抑制し、米以外の乳、肉、くだもの、野菜、麦、大豆等の選択的拡大をはかろうとしたのが、拡大を目ざした作物はことごとく減産して自給度を下げ、食糧輸入を昭和三十五年度の八億八千四百万ドルから、四十年度の二十二億六千三百万ドルと激増さしたのであります。これらの作物には、米のごとく価格の安定が保障されていぬことからくる暴落、暴騰を繰り返す不安定さがここに至らせたのであり、価格の安定した米作のみは、勢い不適地にまで耕作が広げられるという結果になったのであり、この惨たんたる失敗の責任はだれが負うのでありますか。派閥操縦の都合で経綸なき閣僚をところてんのごとく半年、一年で入れかえた無責任政治の結果であって、その暴政にほんろうされる農民こそ救われないといわなければなりません。(拍手)総理はこれに対しいかなる責任をとられますか。
 現在、世界の食糧事情は、西欧並みの三千カロリーの食糧を南の人々にもとらせるためには、世界の食糧生産を三倍にしなければ足らないといわれておるとき、日本農政の使命は、まず、主要食糧の自給化を達成するとともに、南の国々の人々の餓死と栄養不良を防ぐため、進んで後進国に食糧援助をもなし得るだけの余裕を持つべきであると信じます。(拍手)
 そのためには、一、全額国庫の負担による土地基盤の整備、二、大機械による作業一貫体系を可能とするように経営規模と耕地区画を拡大し、これを少なくとも作業集団化で活用することであります。三は、そしてそれに必要な所要営農資金の長期低利融資の道を確立し、四には、価格支持の制度を米以外の主要農産物にも及ぼすべきであり、かかる一連の方策をとりまするならば、十年を出ずして日本農業の底力は、外国食糧より高くない値段で消費者に食糧を供給しながら、しかも農家の生活水準は都市勤労者の水準を抜き、かつ、主要生産物を自給する体制を実現することは可能であると信じます。この農業経営革命を達成するためにも、農民の努力と天候の恩恵で戦後初めて米の一〇〇%自給という金字塔が打ち立てられたとき、これを天と農民に感謝することも忘れて、寄ってたかってけちをつけるようなことだけは慎んだらどうでございますか。(拍手)政府の猛省を求める次第であります。総理の所見を承ります。
 以上、私は、数項目にわたって国民の抱く疑問と不満をいささか代弁したのでありますが、その向かうところはすべて佐藤君の政治姿勢の根本に触れるものであります。佐藤君は、現実政治を言われるが、そのことばは、やる気のないことはやらずにごまかす、有言不実行を正当化する隠れみのにすぎないのではありませんか。食管制度の問題といい、政治資金規正の問題といい、あるいはまた沖繩問題といい、何ゆえ佐藤君は二枚舌、三枚舌を使われるのであるか。かつてある新聞があなたを評して、慢性虚言症と述べた事実は御記憶にないのでありますか。(拍手)総理たる者、「民に信なくんば立たず」ということばを思い起こして、深く反省すべきではありますまいか。
 あなたは、一部学生の暴力行為を非難されました。暴力そのものには、われわれも、もとより反対であります。しかし、彼らが口にする政治不信、議会無視の声は、一笑に付し去ることのできないものを含んでいるとは思われませんか。あなたとその政府の時代となって、にわかに体制不信の声と行動が高まったのは、決して単なる偶然ではありません。
 先日の毎日新聞の世論調査によれば、自民党支持率は四一%であるが、佐藤内閣に対する支持率は二七%であったという。数字の物語るものは冷厳であります。議会政治擁護そのことには、賛成こそすれ、反対すべき理由はありません。議会政治を守り、政治への信頼を回復するために、一国の総理が他に先んじてなすべきことは何でありましょうか。この問いに身をもって答えることこそ、いまや佐藤君にとって最大の急務でなければならないが、われわれは、はたして心の底からこれを期待することができるでしょうか。深刻なる疑問を表明して、私の質問演説を結ぶものであります。(拍手)
 社会党を代表してということばが抜けておると言いますので、あらためて、社会党を代表して質問をいたしました。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕

発言情報

speech_id: 105905254X00419680805_015

発言者: 三宅正一

speaker_id: 26816

日付: 1968-08-05

院: 衆議院

会議名: 本会議