堀昌雄の発言 (本会議)

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○堀昌雄君 私は、日本社会党を代表して、一昨日総理大臣の述べられた所信についてお尋ねをいたします。質問はすべて佐藤総理にいたします。総理の答弁を補足される必要があると感じられた閣僚は、どうぞ補足してお答えいただければ幸いです。
 さて、これからお尋ねする問題が、はたして国民がほんとうに佐藤さんの答えを求めているものとなっているかどうか必ずしも自信はありませんが、つとめて私自身を一人の国民の立場に置いて伺うことにいたします。佐藤さんも、お答えは社会党の代議士堀昌雄にしていただくというよりも、日本の政治の責任者である佐藤さんから、今日の課題について、また明日の課題について、ほんとうのことを聞きたいと静かに耳を傾けている国民に向かって、責任のあることばで答えていただきたいと思います。(拍手)
 私は、土曜日の佐藤総理の所信を聞いて、率直なところ、きわめて不十分だと感じました。私たち国民の暮らしについては、ただ「物価、減税、住宅、公害、交通など、国民生活に大きな影響のある問題の解決に努力することを約束いたしました。今後これら諸問題の解決を通じて、国民生活の安定と向上に全力をあげてまいります。」と述べられただけで、中身が一つもないのに驚きました。もっとも、きょうの私の質問に答えるためにわざと省かれたのかとも考えてみましたが、どうでしょうか。私がもし総理大臣であったら、十分だとか十三分だとかと、けちなことは言わないで、いまの時期に国民が聞きたいときっと思っているに相違ない事柄を、十分詳しく述べただろうと思います。なぜこのようになったのか、お答えをいただきたいと思うのであります。(拍手)
 昨年来心配されておりました国際収支の状態はとみに改善をされて、ようやく引き締めもゆるめることができるようです。大きな会社からのしわ寄せで、次々と倒産に追い込まれていた中小企業の方たちは、さぞやほっとされることでしょう。国民の一人として私もうれしいことだと思います。しかし、やがてことしも昨年に引き続き、年度の初めに予想したよりもかなり大幅に経済は成長することになるでしょう。この三年続きの高度成長の中で、私たち国民の生活は一体どのような影響を受けているでしょうか。
 ことしの経済の規模は、アメリカ、ソ連に次いで世界で第三位となるそうですが、一人当たりの国民所得は、一九六六年で七百九十一ドルであります。イギリス、フランス、西ドイツの千五百ドル台の国と比べてみますと、半分にしかなりません。また、暮らしの中身について経済白書は、イギリス、フランス、西ドイツの平均を一〇〇とした場合の日本の指数を示していますが、日本がすぐれているのは、テレビが一六七%、電気洗たく機が一五三%の普及率で、肝心な生活のかなめともいうべき食生活では、一日当たりカロリーは七七%、一年間の肉と卵と魚の消費量はわずかに四七%と、これらの半分にも足りません。野菜は一二二%ですが、これは動物性蛋白質のかわりにとられているとも考えられるのであります。
 一方、生活環境について見れば、住宅の部屋数では一人当たり六八%、下水道の普及率は二二%、自動車一台当たり舗装道路の長さは二〇%と、比べようもありません。確かに、国民の生活の内容をよくするためには、資源に乏しい日本の場合、生産をふやして輸出を多くしなければなりません。しかし、それにしても工業生産第一と比重がかかり過ぎて、私たち国民の暮らしのほうが二の次となっているために、このような姿となってきているのであります。次に、土地の値上がりも、経済の成長に見合ってたいへんな値上がりです。工業地が上がり、引き続いて商業地、つれて住宅地と順に値上がりをしております。この十二年間に工業地は十倍、宅地は八・九倍と、たいへんな値上がりをしています。そのために、国民の手で建てられた家は、建設省によれば、部屋数は三つくらい、十五畳から二十一畳というのが一番多くて三七%、十二畳未満が一七%、敷地も百平方メートル以下が半数近いという状態で、これではいかに自分が建てた家とはいえ、あまりに狭くてマイホームの夢をかなえるというわけにはいきません。家を建てられない人たちの場合、家賃は三十一年から四十年までに普通の借家で十倍、間借りで四倍強という値上がりですから、この間の収入増加などではとても追いつかないというのが現状であります。この狭いわが家に、テレビや電気冷蔵庫や洗たく機が所狭しと置かれ、冷蔵庫の中には野菜やみそが入っているといういまの国民の暮らしを、佐藤さんはどうお考えになりますか。「一将功なりて万骨枯れる」ということばがありますが、「大企業栄えて国民枯れる」では困ります。(拍手)繁栄の陰にこのような不十分な国民生活があることを真剣に考え、まず経済第一主義のいままでのやり方を、もっと国民生活を充実させるための新しい政策態度に切りかえるべきではありませんか。佐藤さんのお考えを承りたいと思います。(拍手)
 次に、公正取引委員会の機能の強化について伺います。
 引き続く物価の値上がりの中で、いま国民は公正取引委員会の活発な活動を期待しております。ところが、公正取引委員会は本来物価のための委員会ではありません。それにもかかわらず公正取引委員会に国民が期待をしているのは、不当な再販売価格維持や、やみカルテル、再販類似行為等、わが国の会社が手段を選ばず利益追求に走り、消費者の正当な利益が無視され過ぎているところに問題があるわけであります。しかし、どうもいま一つ歯切れが悪く、牛乳の問題や松下電器の再販問題等、国民が大きな関心を寄せている事件の解決も遅々として進んでいません。一方では、大型合併の問題等、最近では公正取引委員会の役割りは国民生活にとみに重要な関係を持つことになりました。ところが、仕事の増加に見合って人員が増加しているかというと、本年度でもわずか五名しかふえていません。現在、中央地方を含めてわずかに三百四十一名です。一方公正取引委員会が取り扱っておる審査件数は、三十八年八十七件、三十九年九十三件、四十年百十九件、四十一年百九十一件と、年を追ってふえています。これではすべての仕事がおくれがちとなるのは全く無理からぬことです。さらに、公取の調査や審査を必要とする事案は、今後一そうふえこそすれ当分減る見込みはありません。
 事情は十分おわかりになったと思います。この際、佐藤さんは、国民の期待にこたえて、四十四年度こそ公取の予算と定員を大幅にふやして、公正な取引を通じて物価の安定をはかることを国民に約束していただけないでしょうか。お伺いいたします。(拍手)
 ここで、公正取引委員会にも関係のあるカラーテレビの問題に触れておきたいと思います。
 昭和四十一年の十二月、私たち社会党は、大蔵委員会でカラーテレビの問題を取り上げました。当時輸出用のカラーテレビは六万五千円で輸出されているにもかかわらず、国内では十九万円台で売られておりました。なぜこのように値段に開きがあるのかという点について、通産省は、輸出向けはキャビネットが鉄製でアフターサービスが不要であるからと答えましたが、納得できません。私たちの要望に基づき、公正取引委員会は、調査の後、カラーテレビは価格協定の疑いがあるとして、電機メーカーに勧告をいたしました。あたかも総選挙中の一月中旬、ついにサンヨーが十六万円のカラーテレビを発売することを発表いたしました。ようやく競争が行なわれることになりましたけれども、いまでも全体としてはカラーテレビの価格は依然として高過ぎるのであります。それゆえ、先日九万八千円で三越がカラーテレビを売るということになりますと、買う人たちが殺到するというのが現在の状態であります。一体、電機メーカーはなぜ輸出用と同じカラーテレビを国内で安く売ることができないのでしょうか。(拍手)輸出は安くしないと売れないが、国内ではキャビネットを少し上等にして高く売ればよいというのであれば、あまりに国民がばかにされているのではないかと思うのであります。
 そこで、私は国民の皆さんに提案をしたいと思います。今後、国民の皆さんが、カラーテレビは十万円以下でなければ買わないことにしたらどうだろうかと思うのであります。ことしのカラーテレビの生産は約二百万台、国内向けがおよそ百五十万台ですから、もしほんとうに国民が十万円以下でなければカラーテレビを買わないということになりましたならば、そういつまでも滞貨をかかえているわけにはいきませんから、必ずそのうちに十万円以下になることは、私は間違いがないと思うのであります。(拍手)で、そうなれば、国民はどんどんカラーテレビを買うことができましょう。会社もそれによって薄利多売によってもうければよいのであります。電機メーカーも消費者のことをもっとまじめに考えるべきではないでしょうか。そうすれば、アメリカからダンピングなどといわれるようなこともなくて済むことになるのであります。
 このような日本の有力な輸出商品の価格の問題は、当面重要な検討課題です。佐藤さんは私の提案をどのようにお考えでしょうか、お答えを願いたいと思います。(拍手)
 暑い夏の一日の仕事を終わって、まず私たちの頭に浮かぶのは、一ふろ浴びて汗を流したいという気持ちだと思います。蒸し暑い日本の夏は、入浴をしないでは過ごせません。しかし、収入の少ない、家族の多い家庭にとって、毎日おふろ屋さんに行くのはかなりの負担になっています。いま東京の入浴料金は、おとなが三十二円、中人十五円、小人八円、洗髪料五円です。所得税の標準世帯として大蔵省がきめている、夫婦と子供三人の家庭では、一家そろって入浴すると百二十四円かかります。一月毎日入れば三千七百二十円となりますが、一方、自宅にふろのある家庭では、五人入って、追いだきを含めてもガス代が約六十円、水道代は三円三十銭です。都合六十三円くらいです。収入の少ない家庭の人たちが、収入の多い、自宅にふろのある人たちの倍もの費用を入浴料としてかけている矛盾については、すでに昭和四十年十二月の予算委員会で取り上げました。総理も御記憶のことだと思います。都内でのおふろ屋さんの利用者は、東京都の経済局によれば、一日当たり五百十万人と推定しています。東京都の人口の半分は公衆浴場の利用者であります。国民の一割が住む東京で、その半ばが自宅にふろを持てないという実情は、国民の半ばは政府の皆さんが考えているほど楽な暮らしはしていないということを物語っていると思うのであります。(拍手)私が重ねて入浴料金に触れたのも、こうした実情を理解していただきたいからにほかなりません。
 これらの家庭にとって、秋に予想される消費者米価の値上げは、これをきっかけに起こる諸物価の値上がり毒とともに、きわめて大きな負担の増加となることは明らかであります。さらに、生産者米価の決定に伴って、逆ざやの価格を直したいと政府は考えているようですが、そうなれば、さらに大幅な消費者米価の引き上げとなります。そのようなことを国民は一体納得するでしょうか。泣く子と地頭には勝てないというような政治を今日してはならないと私は思うのであります。(拍手)
 また、ことしも現在のところお米は豊作のようですから、とても政府の予定している買い入れ額では済みますまい。政府が考えておられる総合予算主義なるものは、もうすでにくずれておるのではないでしょうか。何にしても、物価の安定は消費者米価の安定からだと思います。必要な補正予算を組んで、消費者米価をできるだけ押えてほしいと国民は願っていると思います。私もそうすべきだと考えます。
 ここで少し総合予算主義なるものについて触れておきますが、佐藤さん、国の予算というのは、行政を運営していくためにのみあるのではなくて、私たち国民の暮らしを少しでも豊かにし、しあわせな日々を送ることができるように政治を行なうための手段としてあるのではないでしょうか。(拍手)いまの政府の皆さんが言っておられることを聞いていると、総合予算主義を貫くことが、あたかも目的であるかのように感じられてなりません。私は、ことしの予算は、何も総合予算などとこと新しく呼ぶまでもない、現在の財政法を正しく実行した予算にすぎないと思っています。私は、数年来、財政法を正しく守るためには、このような予算を組むべきことを主張してきましたけれども、それは必要があれば、国民のために必要があれば、必ず補正予算を組むという現在の財政法を正しく守るということにもとを置かなければならないと思うのであります。(拍手)国の予算は、大蔵省のために都合のよいことが必要なのではありません。国民のために財政が適切に運用されれば、それで目的は達せられておるのであります。政治家としての佐藤さんは、この問題をどう考えておられるか、お答えを願います。
 なお、つけ加えておきますが、ことしの経済成長は、当初は名目で一二・一%を見込んでおりましたけれども、現在の情勢では、名目一五%をこえることは間違いがないと思います。自然増収は十分期待できますから、補正予算の財源にこと欠くことはないことを申し添えておきたいと思うのであります。
 次に、公務員のベースアップについて伺います。
 総理府の調べによれば、四十三年上半期の消費者物価指数は、前年同期に比べ五・五%上昇しています。秋には、すでに触れたように、消費者米価の上昇が必至で、ことしの物価は、政府の見通しの四・八%に落ちつきそうにもありません。公務員の方たちは、民間も公労協の人たちも昨年を上回るベースアップが行なわれている際でもありますから、物価の上昇も激しい今日、人事院勧告を心待ちしておられることでしょう。一方では、同じ公務員でありながら、財政硬直化の名のもとに、できるだけ押えたいと財政当局は考えていることでしょう。また、行政管理庁は、国家公務員の三年間五%削減の案をまとめ、八月中ごろの閣議で決定の上、今年度から定員縮減を実施に移す考えであると新聞は伝えているのであります。これまで公務員の給与は、いつも人事院勧告が値切られて、それでも昨年は八月実施とこぎつけましたが、なお五月、六月、七月の三カ月は切り捨てられております。
 国民は、公務員が公僕として勤勉に働いてくれることを望んでいますが、その仕事に見合った給与が支払われることも当然だと考えていると思います。さらに、高能率、高賃金ということばがありますが、公務員に高能率を期待するためにも、ことしは思い切って勧告の完全実施を行ない、その上で公務員の納得のもとに、定員の検討に入るというのが筋ではないでしょうか。
 佐藤さんは、国家公務員の最高責任者ではありますが、その立場を離れて、一人の公務員の立場に立って、ことしは勧告を完全に実施をいたします、その上でひとつ皆さんと定員の問題を話し合いたい、こういうことにどうしてならないのでしょうか。財政硬直化の打開は、少なくとも人間味豊かな政治によってのみ行ない得るものではないかと私は思うのであります。
 ここで特につけ加えておきたいのでありますが、国の権力を代表して国民に接する仕事に携わっておる警察官や税務職員については、その仕事の性質が、必ずしも国民に好まれることだけではありません。職務のために困難な仕事を続けている人たちでありますから、その給与の改善については格段の配慮がされて当然だと思います。特に佐藤さんに、この点をつけ加えてお答えをお願いいたします。
 七月十二日の厚生省の発表によりますと、日本人の平均寿命は、男子が六十八・九一、女子が七十四・一五歳と、昨年より約〇・五年延びてきました。喜ばしいことだと思います。しかし、寿命が延びただけ、お年寄りの方たちがしあわせに暮らしていただくのでなければ、およそ意味のないことになってしまいます。老齢福祉年金の制度は、お年寄り一人のときは、年額一万九千二百円支給されますが、夫婦二人のときは、おのおの三千円ずつ減額されることになっています。
 北海道にお住まいの牧野さんが、この夫婦受給制限は憲法に違反していると、東京地方裁判所に、国を相手どって行政訴訟をしておられましたが、七月十五日、杉本裁判長は、この受給制限は憲法第十三条、第十四条に反しているとして、牧野さんの勝訴となりました。この訴訟で、国の側は、夫婦減額の必要な理由として、一人で暮らすより、二人のほうが家賃や電気代が安くて済むと、こう主張していました。しかし裁判長は、年金を受ける老人のほとんどは、収入の少ない子供の世帯にやっかいになっている。とすれば、一人より二人のほうがよけい子供たちの生活に負担をかけていることになるとして、その主張を退け、さらに、ただでさえ年金は少な過ぎる、その上に夫婦受給制限を加えることは、財政の都合で老齢者の生活実態に目をおおうものであるとしています。心あたたまる判決だといわなければなりません。(拍手)
 ところが新聞の伝えるところによると、園田厚生大臣は、十六日の閣議で、国会で成立した現行の法律に違憲性があるというのは重大な問題なので控訴する、しかし、夫婦受給制限については来年度から廃止すると述べ、閣議もこの方針を了承したとのことです。日本人の平均寿命をこえて長生きをされた御夫婦に、おめでとうございますというのなら話はわかりますが、このような冷たい仕打ちが続けられていて、たびたびの国会で附帯決議までつけて、この受給制限の廃止を求めていたことが、裁判所の判決でようやく廃止されることになったことについて、日ごろしばしば人間尊重に触れておられる佐藤さんは、一体どのように感じておられるでしょうか。行政というものは本来冷たいものだと思います。そこにあたたかい血を通わせるのが政治家のつとめではないでしょうか。今後お年寄りの数はだんだんふえてきます。しあわせな老後をこの方たちに送っていただくために、いま何をなすべきか、佐藤さんのお考えを承りたいと思うのであります。(拍手)
 次に、医療保険の抜本対策について伺います。
 先ほどわれわれの寿命が延びてきたことに触れましたが、それはわが国の乳幼児の死亡率が近年急激に減ってきたことに基づいているのであります。欧米諸国に比べてもわが国の乳幼児の死亡率は著しく低く、千人に対して日本は十八・五人、アメリカは二十四・七人、イギリス十九人、フランス二十二人と、先進諸国で最低であります。このことは日本の医学、医術の進歩と社会保険医療の普及によってもたらされたものであります。にもかかわらず、日本の医療の問題は、常に政府と医療を担当するお医者さんたちとの間の、政府と野党の間の激しい争いなくして行なわれたことは一度もないのであります。
 暮らしの指標の中で、ただ一つ先進諸国に誇り得る日本の社会保険医療、それがどれだけ国民のしあわせに役立っているかを、佐藤さんは一度冷静に考えていただきたいと思います。ところが政府は、ただ単に財政上の見地からのみ、科学である医療にいろいろの制限を加えてきました。しかし、国民の命も健康もお金で買うことはできません。ここでは、経済第一主義というのは通用しないのです。これまでの争いの責任が政府の側にあったことは明らかです。今日、社会保険の医療は、国民の生活にとってはなくてはならぬものとなっています。その抜本的な改革は、保険経済の合理化だけを目的として進めるべきものではなく、国民が安心して治療が受けられる制度を、医療の専門家であるお医者さんたちとも十分話し合って進めるべきものです。再び争いを繰り返してはなりません。
 このことは、明日の政治課題として、国民のしあわせにかかわるきわめて重要な事柄ですから、厚生大臣にまかせ切りにするのではなくて、総理大臣の責任において進めるとのはっきりしたお約束をしていただきたいと思います。お答えを願います。(拍手)
 七月三十日、北海道夕張市の北炭平和炭鉱でまたしても坑内火災が発生し、死亡九名、行くえ不明二十二名と報じられております。その後の様子では全員死亡のようですが、まことに痛々しいことで、心からお悔やみを申し上げます。
 昨年からことしにかけて、北海道の美唄、夕張地区には事故が続出。昨年上半期の事故死者六十四人に対し、ことし上半期は九十三人と激増しています。今度の火災の原因は、いまのところベルトの過熱ではないかと見られています。この炭鉱は、昭和三十、以来徹底的な合理化をやっているので、五百メートルのベルトに原動機が二つ、係員は一人ということです。はたして一人で、五百メートルのベルトとその端にある原動機を点検できるのでしょうか。さらに、火災の発生したのは三時五十分ごろなのに、地上で気がついたのは一時間二十分もたってからだということですから、近代化、合理化のみに重点が置かれて、保安のための人手が不足していたことは明らかです。
 こうして見ると、採算に合う保安対策には限界があるのではないかという疑問が生まれてきます。このような危険な状態で人々を働かせるということは、はたして許されてよいことでしょうか。最近の大きな、そして最も悲惨な事故はすべて炭鉱の事故です。そして緊急質問のたびに、このようなことの起こらないよう善処すると繰り返されて、またしてもこの事故です。炭鉱に働く人たちもその家族の方たちも、どんなに不安な気持ちでおられるか。胸の詰まる思いがするのであります。特に優良炭鉱といわれる平和炭鉱ですらこのありさまですから、今後のことが思いやられます。鉱山保安について、根本的に再検討を加え、事故の責任を十分にとらせるとともに、監督を一そうきびしくして、いやしくも保安要員不十分な炭鉱では、就業を禁止するくらいの強い態度で臨む必要があります。佐藤さんのお考えを伺いたいと思うのであります。(拍手)
 最後に、参議院選挙が終わりまして、今日参議院の選挙制度のあり方や、地方区の有権者の数と議員の定数の間に著しいアンバランスが認められることについて、国民は大きな関心を寄せているのであります。
 一例をあげますと、鳥取県の有権者と東京都の有権者との間には、一対五・二の開きがあるのであります。大阪府の場合は一対四・二の割合になっておるわけでありまして、都市の有権者がきわめて不利な条件に置かれていることは、これからも御理解いただけることと思います。法のもとにおける国民の平等の権利を守るためにも、東京、大阪等の地方区の定数是正というのは当然行なわれなければならない問題なのであります。すでにこれらは、第五次選挙制度審議会で取り上げられて審議中のものでありました。政府はひとつすみやかに第六次選挙制度審議会を設け、次の参議院選挙までに定数是正を行なうべきだと思いますが、これについて佐藤さんのお考えを承りたいと思います。
 現在なぜ第六次選挙制度審議会が開かれないのか。これは御承知のように、あの第五次選挙制度審議会における政治資金規正法の答申に、自由民主党が少しも誠意を示さないことに端を発しておるわけでありまして、(拍手)第六次選挙制度審議会を開く自信がないことを実は物語っておると思うのであります。しかし、このままでは問題は解決いたしません。われわれは、前の国会に提出された法案、このような政治資金奨励法には、どうしても賛成するわけにはいかないのであります。
 そこで、私は一つ提案をいたします。第六次選挙制度審議会をさっそく設けて、そこに現状を考慮した政治資金規正の方法についてあらためて再諮問を行ない、この際、次に出られる答申については、総理大臣の責任において、答申そのものをそのとおりの法案にして、国会に提出することを約束をしていただけないかと思うのであります。(拍手)政治資金の現状をこのまま放置することは、国民も許さないことであります。どうかひとつ、一歩前進のため、審議会の委員の良識を信頼して、再検討を求めることにしてはいかがでしょうか。佐藤さんの決心を伺って、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕

発言情報

speech_id: 105905254X00419680805_018

発言者: 堀昌雄

speaker_id: 13201

日付: 1968-08-05

院: 衆議院

会議名: 本会議