曾禰益の発言 (本会議)

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○曽祢益君 私は、民社党を代表いたしまして、一昨日本院におきまして行なわれた総理の所信表明に対しまして、若干の質問をいたしたいと存ずるものであります。(拍手)
 総理は、三日、本院において、参議院選挙を通じて、政府並びに自民党の政策が国民大多数の支持と理解を得たと確信し、心を新たにして政局を担当すると胸を張って述べられました。私は、首相のこの姿勢、すなわち、佐藤内閣の施策に対する国民の強い批判と不満に耳を傾け、反省する謙虚さを失い、楽観的ムードに浸り、権力的姿勢を強めようとするこの首相の態度そのものの中に、わが国の民主主義の前途に対する危険信号を見出すものであります。(拍手)総理は、選挙戦のさなかにおいて、国民の六割以上が生活の現状に一応満足しているという世論調査を引き合いに出され、また、二十一世紀においては、日本の国民一人当たりの所得はアメリカを凌駕するというハーマン・カーン博士の夢物語を引用されまして、軽率にも昭和元禄時代の到来を謳歌されたのであります。
 さらに、選挙後発表された四十三年度経済白書は、経済成長を通じて国民福祉の増進をはかるという旧態依然たる姿勢を示しております。なるほど一千二百億ドルをこえる国民総生産、二千万台のテレビ、一千万台の自動車保有に象徴されるわが国の高度経済成長は、確かに世界を驚かせるものがあります。しかし、この経済成長は、はたして国民に福祉と安らぎをもたらしているといえるでありましょうか。いな、むしろこの急激、無計画な高度経済成長、特に巨大民間企業による設備投資の競争こそが、大都市に対する人口の集中、交通戦争、公害、住宅環境の悪化、青少年の非行化と、他方では農村における過疎地帯の出現と労働力の不足、出かせぎ留守家族の悲劇等々の幾多の人間性疎外の現象を引き起こしている元凶でもあるのであります。
 今日わが国は、まず高度経済成長、次いで国民福祉の増進という段階ではなく、成長のもたらしたひずみを是正し、失われた物心両面の福祉を補うことなくしては、もはや成長すらあり得ない段階に達したのであります。(拍手)したがって、いまや経済力の量的な増大と物質的な欲望の充足に狂奔してきた従来の池田、佐藤両内閣の経済政策、いな政治の方向そのものをここに転換いたしまして、国民生活の質的な向上と精神的な福祉の増進に重点を置く、均衡ある発展と清潔な政治を打ち立てることが緊要だと信ずるものであります。(拍手)
 学生の集団暴力にしても、基本的には政治の貧困に責任があると思うのでありまするが、首相が、その所信表明の中で言及された比類のない繁栄の二十一世紀とは、経済至上主義を意味するのか、それとも物心両面のバランスを得た社会を意味するのか、ここに明らかにされたいのであります。
 国民の政治に対する不満の最大のものは、言うまでもなく物価高であります。よって政府は、最重点施策として、消費者米価を含む一切の公共料金の据え置きを断行し、かつ、消費者物価値上がりの四割を占める生鮮食料品の価格安定のための実効的な措置をとるべきと思うが、総理の見解を承知したいのであります。(拍手)
 次に、最近輸出の増進と国際収支の改善が顕著となったため、すでに政府や財界の方面に、公定歩合の引き下げ、銀行の窓口規制の解除等、一連の金融引き締め緩和の要望が高まりつつあります。しかしながら、従来の政府の景気調整の実績が示すように、今回の金融引き締めの緩和もまた民間設備投資の増大、景気の過熱、輸入の増大と国際収支の悪化、したがって金融の再引き締め、不況の到来という悪循環を繰り返すであろうことはあまりにも明瞭であり、このような景気の波動は、そのつど中小企業や勤労大衆に過酷な犠牲をしいることも周知のとおりであります。よって、政府は、この機会に、漫然と従来の金融面のみからする景気調整策にいずることをやめ、設備投資の直接規制及び国際通貨制度に触れた円価格の維持策等の総合対策を樹立するとともに、とりあえず、すでに欧米で実施されている、金融操作に法人税を併用する行き方や投備投資調整基金の創設等、多角的な対策を採用すべきと考えまするが、総理の見解を伺いたいのであります。(拍手)
 次に、過般の日通事件に露呈された政界の腐敗、業界の道義の退廃は、単に一握りの人物の司法処分をもって払拭されるようななまやさいものでないことは言うまでもありません。そこで私は、首相が所信演説の末尾に述べられた「政治が正道を歩み、正しい指針を示す」とか、「清潔な政治に徹し、綱紀を粛正する」という決意が、またもや単なることばの羅列に終わらないためには、何よりもまず、先ほど堀議員も指摘されましたが、政治資金規正について前国会に提出した悪名高い政府案の再提出はいさぎよく取りやめ、選挙制度審議会答申を忠実に守る立法のため、あらゆる党内外の障害を乗り越える勇断とリーダーシップを首相に期待したいのでありますが、率直な御答弁をお願いいたします。(拍手)
 米価問題については、その実質的な審議を委員会段階におまかせしたいので、私は、米価に取り組む政府、なかんずく首相の姿勢についてのみ言及するものであります。
 まず、選挙中に、米価は自民党がきめる、いやきめてやるのだと豪語して、米価問題を選挙戦の道具に供するやり方を容認した首相の態度は、不見識もはなはだしいと存ずるのであります。(拍手)しかも、選挙後の米価問題の経緯は、一そう奇々怪々であります。政府は、米審に対し政府試算米価を提示し、その答申を受けながら、中立であるべき米審の意向を無視して、みずから政治加算を上積みするという混乱をあえてしました。さらに、与党たる自民党が、総裁選挙にからめてゆさぶりをかけ、ついに政府・与党は、本年度生産者米価の決定を本臨時国会終了後に持ち越すという前代未聞の醜態を演ずるに至ったのであります。(拍手)
 政府並びに自民党のこの態度は、米価決定に関する食管法の規定を無視し、その財源を負担する国民の立場をそこない、議会主義の権威に挑戦し、生産農家と消費者を愚弄するものであり、特に議院内閣制の運用に欠くべからざる政府・与党の権限の適正な区分を破壊するものといわなければなりません。(拍手)ここに、首相の深い反省と誠意ある釈明を求めるとともに、食管制度の根幹を維持しつつ所要の改善を行なうとは、一体何を維持し、何を変更するものであるか、この点を明らかにされんことを要求するものであります。(拍手)
 次に、外交問題に移ります。
 総理は、一昨日、選挙の結果、日米安全保障体制を基調とし、自衛力を整備して、わが国の安全を確保する政府の基本方針が国民の理解を得ているとの確信を深めたという自画自賛の楽観論を展開されるとともに、基地提供の義務を強調されました。
 選挙の前後に行なわれた二、三の有力なマスコミ機関による世論調査が一致して示すように、国民の大多数は、安保即時破棄、自衛隊解散のいわゆる非武装中立論に賛成していないことは明らかであります。しかし、同様に、多数の国民が、自衛隊強化、安保長期固定化に対しても、強く反発していることもはっきり示されておるのであります。このような国民の両極に対する警戒的な態度は、この困難な、複雑な選択にあたり、国民はよく良識を示していることの証左でありまして、まことに慶賀にたえないと存ずるのであります。首相が非武装中立論の弱点に安易にもたれかかり、政府の安保堅持と、その上に立った自衛力整備の基本方針が国民の支持を得たとひとり合点することは、はなはだ危険であります。特に、前述の世論調査にあらわれている世論の動向が、過度の対米依存に対する反発、わが国の自主外交、自主防衛への共感、安保の軍事的な面を薄め、逐次解消に導く方向への傾斜と、駐留と基地に対する反感という形で明らかに読み取れることは、総理もまさか否定されないところだと信じます。
 したがって、総理は、非武装中立か安保堅持かというような子供だましの二者択一をもてあそぶことをやめられ、安全保障に関する中庸を得た道の探求とコンセンサスの形成に努力を傾けるべきであります。その上で一九七〇年の再検討期に際する具体的方策が、廃棄通告でなければ所要の改正か、その改正は、長期固定化か駐留と原則的基地の排除の方向か、それともいわゆる自然延長——自然継続かの点を明確にすることが、政府の当然の責務であります。事態は、もはや船田安保調査会長試案の形で自然延長の方向を模索する段階ではなく、首相の決断が要請されております。お答えを願います。
 次に、駐留並びに基地問題と安保との関係については、総理の説明をまつまでもなく、現行条約のもとでは、第六条に基づき米軍に基地と施設の使用を認めることは、わがほうの義務とされております。したがって、現行安保の終了または改正を外交交渉によって行なわずして、裏面から基地の空洞化をはかり、または実力による撤廃闘争をあおる行き方は、議会主義に反するもので、賛成し得ないところであります。さりながら、首相のごとく、基地の提供が、日米安保の根幹に触れる問題であるばかりでなく、米国側の日本に対する安全保障の約束に対応する日本の義務とまで公言しておきながら——ついでながら私はこの見方には賛成できないのでありまするが——運用上だけで基地の不安と不便は何とかしてやると国民に約束する態度、私はこの態度にこそ少なからざる不安を覚えるものであります。(拍手)われわれも、現行条約のもとにおける基地の整理縮小に賛成であります。しかし、そこには大きな壁があり、やがては基地問題をめぐって、国民の欲求不満とアメリカ側の対日不信とがぶつかり合うであろうことを、私はここに予言しておくのであります。
 さきの二月六日、本院予算委員会で私が指摘したごとく、安保条約の欠陥に目をつぶり、基地問題をその日暮らしで糊塗していくやり方は、日米両国の理解と協力をむしばみ、基地に関するトラブルの激化は、極東の情勢が緊迫するほど高まり、ついには有事の際に日米の防衛協力が円滑に作動するという、安保の戦争抑止力としての有効性と信憑性がそこなわれるに至るおそれが大きいといわなければなりません。(拍手)
 したがって、私は、ここに総理に対し、安保の十年目の再検討期を迎えんとするにあたり、日本の自主性の増大、自主防衛を基調としつつ、その補いとして位置づけられる日本防衛についての日米協力は、これを国際緊張の緩和、国連機能の完備を目途とし、当面継続するという両国共通の利益に立ちつつ、かつまた、極東の安全に果たすアメリカの抑止力と、これに対する日本の便宜供与はどうあるべきかということについて協議するという、前向きの態度で安保条約そのものを再検討するための日米間の対話を行なうことを求めるものであります。
 特に、私は、この際、日米国務、外務両当局が、議会や国民の説得が困難だろうとおそれをなして、条約そのものをタブー視する傾向が強いこと、しかし、それを乗り越えることがステーツマンシップであり、日米間の永続した友好と協力の道であること、また、現行安保が結ばれてからの十年間のこの画期的な情勢の変化に対応して、特に駐留、基地をめぐって所要の改正を行なうことがむしろ当然であることを強調しておきたいのであります。(拍手)
 さらに、首相の注意を喚起したいことは、米軍の駐留と某地の使用の目的が、日本の防衛のためよりもむしろ極東の平和と安全のためであるという、このことの重大性についてであります。
 このような条約上の権利の設定は、あらゆる安全保障条約のパターンとして全く類のない例外的なものであります。最近のソ連、チェコの間の紛争の中心課題の一つが、東ヨーロッパ共産圏の安全のためのチェコ領内のワルシャワ条約軍の演習、または駐留権の問題を含んでいることを他山の石として、この際、自由な国々である日米の間においては、いつまでも占領時代の遺物である米軍の常時駐留や、極東のための基地の使用を、権利義務の問題として処理することはやめていく方向で日米間の会話を開くことを首相に強く要望したいのであります。(拍手)
 関連して、中央公論八月号に掲載された、元駐英大使西春彦氏の安保条約中の、いわゆる極東条項を削除すべしという意見にも触れて、総理の見解をここに表明されたいと存ずるのであります。
 次に、前に三宅議員等が触れられた沖繩問題については、私は、過般の米国下院におけるスナイダー証言の発表が内外に波紋を広げたことは承知しておりまするけれども、ワシントン巨頭会談の日米共同声明によれば、沖繩返還を目途とする日米間の継続的な検討に入ることについては、確かに両首脳間に合意が成立いたしました。しかし、「両三年中に返還の時期について合意したい」という首相の希望表明に対して、ジョンソン大統領は、「よくわかっている」と言ったが、同意したとは言っていない。このことは、当時われわれがはっきりと指摘したところであります。したがって、スナイダー発言に驚くとすれば、それは国民に対し、ジョンソン大統領との公式の約束と、これに加えた佐藤首相の希望的観測とを混同した説明ぶりそのものの責任であります。返還後の沖繩の基地のあり方に対し、神経質過ぎるほど白紙白紙と言い張る首相が、沖繩返還の約束と時期については、冷厳な事態をバラ色の夢で着色しようとするのでありましょうか。あらためて首相の決意を披瀝されたいのであります。(拍手)
 私は、スナイダー発言の内容そのものよりも、この時期にこれを発表した米国側の意図を重視したいのであります。われわれは、米国国会の空気をありのまま伝えてもらうことを歓迎いたします。だが、もし米国側が、沖繩県民を中心とするわが全国民の返還の要望にブレーキをかける意図でこのような公表を行なったとすれば、それは日米友好の前進に役立つ意味の率直な意見開陳とは考えられないことを米国側にわかってもらいたいと思うのであります。(拍手)
 同様に、日米間の率直な対話という見地から、総理に向かって特に一言したいのは、沖繩返還の際における基地のあり方についてであります。
 アメリカ側の沖繩基地に対する評価は、量的、質的に本土以上のものであるといたしましても、その法的な地位につきましては、施政権返還後は本土と同様でなければ、断じて首尾一貫しないことは言うまでもないところであります。したがって、米側との折衝の場合の日本側の基本的態度としては、沖繩の基地もまた核基地を認めず、かつ事前協議制のもとに置かれるという、いわゆる本土並みでなくてはならないと信じます。このたてまえは、米側に対しあらかじめ明確にしておくほうが、かえって双方の間に誤解や思惑を防止するゆえんと信ずるものでありまするが、総理の見解を披瀝されたいのであります。(拍手)
 最後に、中国政策に言及したいと存じます。
 元来、政府の中国政策、すなわち政経分離、国連からの中共締め出しの政策は、現実を無視するものであるから、早晩行き詰まらざるを得ない運命にあったのであります。いまやベトナム戦後が展望されるに至ったので、国民が歴代保守内閣、特に佐藤内閣の中国政策の転換を求めるのはきわめて当然と存ずるのであります。そこで必要なのは、あくまでわが国の自主的立場に立った中国政策でなければならないということであります。それはむろんアメリカ迎合や台湾追随でないが、さりとて対中共媚態ではない真の自主的な政策であります。
 たとえば国府及び中共関係については、政経分離などというフォーミュラに束縛されるべきではなく、総理がその政治的指南役であった故吉田氏の教えを正しく受け継ぐならば、台湾との平和条約が国民政府の実権の及ばない地域には適用されず、したがって、大陸中国と日本との関係の成立を排除しないという原則は、とくと御承知のところと思うのであります。さすれば、ここに国府との条約を守りつつ、中共との間に弾力的に経済、文化、政治関係を進展させる余地を活用すべきではないか。この日華条約の解釈について三木外相の答弁を、また、この基本方針について総理の答弁をそれぞれ求めたいと存じます。
 また、吉田書簡に今日に至ってまで拘泥することは、おそらく吉田翁をして草葉の陰から苦笑せしめているであろうことは想像にかたくありません。筆者の吉田翁とともに静かに眠らせるお考えはないか、首相に伺いたいのであります。
 なおまた、国連総会においては、わが国は、重要事項指定方式をやめ、積極的に中国代表権問題審議委員会を設置するよう提唱すべきと存ずるのであります。他方、中共に対しても、わが自主性を守ることは当然であります。われわれは、中華人民共和国を中国の主権者として、これに国連代表権を容認する方向に賛成いたします。しかし、台湾の処遇を含めて中国代表権問題は国連の場で処理することは当然であり、かつ、台湾住民の運命をみずから決定する自決権は、国際法の原則として尊重されなければなりません。
 この点に関し、ライシャワー前駐日大使の近著「ベトナムを越えて」——「ビヨンド・ベトナム」の中に、中共の国連承認、同時に台湾に国連の議席と自決権を与えよという示唆に富んだ提案がなされておりますことは、おそらく総理も御存じのところと思いまするが、この案に対し深甚な考慮を払うべきものと考えまするので、総理及び外務大臣の御所見をお伺いいたしたいのであります。
 さらに、選挙中に西村民社党委員長の提唱したごとく、中国問題に関して超党派的に国民合意に立った前向きの政策をつくることが可能と思われまするが、総理の所信をお聞きいたしまして、私の質問を終わるものであります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕

発言情報

speech_id: 105905254X00419680805_021

発言者: 曾禰益

speaker_id: 12807

日付: 1968-08-05

院: 衆議院

会議名: 本会議