愛知揆一の発言 (外務委員会)
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○愛知国務大臣 ただいま議題となりました太平洋諸島信託統治地域に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
政府は、かねてより、戦前わが国の委任統治地域であった太平洋諸島信託統治地域の住民が国連に対し提起している戦争損害請求問題につき、このような請求には応じられないとの法的立場を堅持しつつ、その実際的解決をはかるため、同地域の施政権者たる米国政府と交渉を行なっておりましたが、この問題については、日米両国が、第二次世界大戦の結果住民がこうむった苦痛に対し同情の念を表明することとし、他方、住民の福祉のために両国がそれぞれ十八億円相当額の自発的拠出を行なうことにつき合意を見るに至りました。また、この機会に、平和条約に規定されている信託統治地域に関する日米間の財産・請求権の処理の問題につきましても、その最終的解決を確認することに意見の一致を見るに至りました。よって、政府は、米国政府との間にかかる合意の線に沿った具体的な協定案文の作成交渉を進めました結果、その成案を得るに至りましたので、昭和四十四年四月十八日に東京で、わがほう私と米側オズボーン駐日臨時代理大使との間でこの協定に署名を行なった次第であります。
この協定は、本文四カ条からなっており、さらに、これに交換公文が付属しておりますが、その内容は、信託統治地域の住民の戦時中の苦痛に対する日米両国の同情の念の表明を前文に規定しつつ、本文において、両国が、住民の福祉のためにそれぞれ十八億円相当額の自発的拠出を行なうことを定めるとともに、両国は、信託統治地域に関する財産及び請求権の処理の問題で平和条約第四条(a)にいう特別取りきめの主題となるべきすべてのものが完全かつ最終的に解決されたことに合意する旨を規定し、交換公文において、このような解決の結果、日本国及びその国民が信託統治地域側の請求から完全に免除されることを確認しております。
この協定の締結は、日米間で多年の懸案であった問題を解決するとともに、経済協力を通じ、わが国と信託統治地域との間の経済関係の増進をはかるものであります。なお、このほかにも、この協定に基づくわが国の経済協力が実施の段階に至れば、わが国の漁船は、信託統治地域のトラック及びパラオへの寄港を認められることとなり、漁船の操業の便に資するところ大と考えられます。
よって、ここにこの協定の締結について御承認を求める次第であります。
次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とベルギー王国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
政府は、ベルギーとの間の所得に対する租税に関する二重課税の回避のための条約を締結するため、昭和四十一年五月以来ブラッセル及び東京において交渉を行ないました結果、昭和四十三年三月二十八日に東京においてわがほう三木外務大臣とベルギー側ユッペール駐日大使との間でこの条約に署名を行なった次第であります。
この条約は、本文二十九カ条及び付属議定書からなり、その規定は、OECDモデル条約案にできる限り従ったものであります。条約のおもな内容は次のとおりであります。
事業利得につきましては、相手国にある支店等の恒久的施設に帰属する利得についてのみ相手国において課税できるものとし、船舶または航空機による国際運輸からの利得につきましては、相互に全額免税としております。投資所得に対する源泉地国での課税につきましては、配当及び利子については一五%、使用料について一〇%をこえない税率で課税し得るものとしております。さらに、政府職員、短期滞在者、短期滞在の教授、学生等の受け取る報酬や手当等につきましては、原則として滞在地国で免税としております。
この条約の締結によりまして、二重課税の回避の制度を通じ、両国間の経済、技術及び文化面での交流は一そう促進されるものと期待されます。
よって、ここにこの条約の締結について御承認を求める次第であります。
最後に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアラブ連合共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
政府は、アラブ連合共和国との間の所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための条約を締結するため、カイロ及び東京において交渉を行ないました結果、昭和四十三年九月三日にカイロにおいて日本側在アラブ連合共和国安藤大使とアラブ連合共和国側シャーバーン財務次官との間でこの条約の署名を行なった次第であります。
この条約は、本文二十六カ条からなり、その規定は、OECDモデル条約案をできるだけ採用しておりますが、発展途上国としてのアラブ連合共和国の経済構造を考慮して投資所得について源泉地国の課税を相当広範囲に認めている点に特色があります。内容のおもなものは、次のとおりであります。
すなわち、事業所得につきましては、相手国内にある支店等の恒久的施設に帰属する利得についてのみ相手国において課税できるものとし、船舶または航空機による国際運輸からの利得につきましては、相互に全額免税としておりますが、これらの点は、OECDモデル及び先進国との最近の条約例と同様であります。
次に、投資所得のうち特許権等の使用料に対する源泉地国での課税につきましては、先進国との条約例と同様に税率は一五%をこえないものとしておりますが、利子及び配当につきましては、源泉地国での課税を相当大幅に認めております。すなわち、利子につきましては、源泉地国においてその国内法令に従って課税し得るものとし、配当につきましては、わが国が源泉地の場合には、一五%をこえない税率で課税できるものとしておりますが、アラブ連合が源泉地の場合には、ほぼ同国の現行国内法令による課税ができるものとしております。
さらに、短期滞在の教授、学生等が受ける手当等につきましては、他の条約例と同様に原則として滞在地国で免税としております。
この条約の締結によりまして、二重課税の回避の制度を通じ、両国間の経済、技術及び文化面での交流は、安定的な基礎の上に発展するものと期待されます。
よって、ここに条約の締結について御承認を求める次第であります。
以上三件につきまして、何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。