細谷治嘉の発言 (本会議)

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○細谷治嘉君 私は、日本社会党を代表して、政府の昭和四十四年度予算三案について、これを撤回のうえ編成替えを求めるの動議の趣旨を要約して御説明申し上げます。
 わが党がこの組み替え動議を提出いたします基本的な考え方は、第一に、長い間の保守政権のもとで累積した大企業と資産所得者優先の経済、財政、第二に、大衆生活を圧迫するインフレ、物価高、第三に、経済、社会のあらゆる部面における格差と不公平の拡大、事故、災害、犯罪の倍増による生活不安などの根本的解決のため、政治、外交、経済、社会、教育の各部門の大改造のために、全面的な政策の転換が求められていることに根ざしているのであります。(拍手)
 申すまでもなく、わが国の経済は、昭和四十一年以来、毎年一七%以上の高成長を続け、自由世界第二位の生産を誇っています。しかしながら、大企業優先のインフレ政策によって進められた経済は、一皮はげば大衆収奪のからくりとインチキに満ち、国民福祉とは完全に遊離した成長の姿が明らかになってまいるのであります。この見せかけの成長の実態は、次の四つの決定的な矛盾と腐敗を生み出しているのであります。
 その第一は、経済の成長に伴い、資本も生産高も利潤も巨大企業に集まり、大企業と一部資産階級への富の集中をもたらしておるのであります。
 昭和四十二年度の法人企業統計によると、資本金、売り上げ高、純益の大半は、九百数十社の資本金十億円以上の会社に集まり、取引所に上場される株式の六割は、一部少数の大株主の所有に帰しておるのであります。このような富の集中は、佐藤内閣の財政、金融政策によって一そう激しくなりました。しかも、悪名高い租税特別措置などによって、大企業、資産所得者の税金は一そう軽減されております。その上、土地も大企業に集中し、その値上がりで、ものすごい利益を得ておるのであります。これらの大企業は、さらに合併、産業再編成を進め、寡占化、独占化の様相を濃くしております。
 第二の矛盾は、消費者物価の恒常的な上昇であります。
 政府の統計によっても、消費者物価は、池田内閣以来約五割、佐藤内閣に至ってからでも一七%以上の値上がりを見せ、年率五%以上が続いております。その根本原因は、政府の計画的インフレをてことした経済成長政策によるものであります。すなわち、大企業の設備投資をまかなうためのオーバーローンと、これをしりぬぐいする日銀の通貨増発など、信用膨張にささえられたインフレ政策による需要の拡大が重大な原因だと申さなければなりません。こうした計画的インフレによる物価上昇は、勤労者の実質賃金の切り下げと生計費への圧迫となるばかりでなく、これによって損をする大衆貯蓄者と、反対に利益を受ける土地など実物資産への投資者との間に著しい所得の格差、富の不均衡を招いておるのであります。
 第三には、あらゆる格差と不公平、不均衡を拡大している点であります。
 勤労者は、職場では低賃金と合理化により、さらにインフレ、物価高によって二重に搾取され、税金の天引きによる重税によって、まさに三重収奪の中に投げ込まれております。サラリーマンは五人家族で九十三万円から所得税がかかるのに、数千万円の株券を持つ配当所得者には二百八十二万円まで一銭の所得税もかからないという実態は、不合理の極と申すべきであります。(拍手)また、いわゆるイザナギ景気の中で、石炭などの斜陽産業が整理され、中小企業の倒産は一万件を突破する情勢にあります。農業経営も、米価の抑制と食管制度の取りくずしによって、その前途は極度の不安にさらされております。生産者米価と兼業収入によってささえられている農家所得は、四十四年度の米価据え置き、自主流通米制度によって所得の減退を来たし、兼業、出かせぎなどを一そう刺激し、都市と農村の格差をさらに広げることは必至であります。
 第四の矛盾は、人間不在の経済成長のもとで、国民生活に欠くことのできない交通、住宅、保健衛生、社会福祉施設は取り残され、著しい交通渋滞とおびただしい死傷者を生み出しているばかりでなく、空気のよごれ、水質汚濁、地盤沈下、騒音、中毒など、新しい公害や災害が耐えがたいまでにふえ続けておるのであります。
 以上、四つに集約されますように、大企業と資産所得者優先の経済成長は、国民の健康と生活を犠牲にするばかりでなく、金権万能、弱肉強食の世相を生み、道理を押しのけ、汚職と犯罪を激発し、贈収賄、背任、不正、麻薬、売春、暴力などを横行させ、人間疎外と人間性破壊による深刻な社会腐敗を生み出しておるのであります。しかるに、このような情勢に目をふさぎ、新しい角度から経済、財政の基本を検討し、政策の根本的転換をはかるべきであるにもかかわらず、依然として従来の態度で予算を編成したことはまことに遺憾であり、強い怒りをすら覚えるのであります。(拍手)
 論より証拠、昭和四十四年度予算案は、佐藤内閣の大企業、資産所得者中心の経済矛盾を一そう激化させ、重税と物価高を推し進め、国民生活圧迫、人間不在のインフレ予算となっており、しかもその上に、七〇年に備える安保予算の本質を露骨に示しておるのであります。すなわち、自衛隊の増強、継続費、国庫債務負担行為の拡大、F4Eファントム戦闘機を含む軍事予算の増大など、危険な経済軍事化の方向を進めようとしております。加えて、警察機動隊の増員、公安関係費の増強など、七〇年に備える反動的な予算であります。このような予算案を容認することは断じてできないことであり、いな、むしろ認めることは国民に対する背信行為だといわなければなりません。(拍手)
 わが党は、四十四年度予算について、何よりもまず平和と自立経済を確立し、国民生活と福祉につながる経済発展を目標として、予算案の根本的編成替えを強く要求するものであります。
 わが党が要求する予算編成替えの重点施策は、以下に申し述べる八つの柱からなっております。
 すなわち、第一は、物価の抑制。第二は、所得再配分の機能を強化することにより、格差と不公平を是正すること。第三には、住宅、生活環境を整備し、交通難を打開すること。第四には、教育、科学技術の振興。第五は、地方財政の充実。第六は、沖繩に対する財政措置の強化。第七には、防衛費等経費の削減と海外経済協力費の是正。第八には、財政投融資計画の根本的組み替えであります。
 これらの重点施策の内容につきましては、すでに議員各位に配付されておりますので、その要点だけを御説明申し上げます。
 第一の柱は、言うまでもなく、物価の抑制であります。
 政府は、公共料金主導型の物価値上げ政策をやめ、強力な物価政策を推進することを要求いたします。国鉄旅客運賃一五%の値上げは絶対に避け、財政投融資、政府関係債務のたな上げ、利子補給など、所要の措置を講ずべきであり、また、消費者米価をはじめ公共料金の引き上げを行なわないよう最大限の努力を払うべきであります。さらに、地価インフレを克服するとともに、独占価格の引き下げや、成長から取り残された農業、中小企業などの発展、向上につとめなければならないのであります。
 第二の柱は、所得再配分の機能強化によって格差と不公平を是正することであります。
 その一つは、大衆所得減税を断行し、大資本や資産所得に片寄った租税特別措置を大胆に改廃すべきであります。現在、税制の最大の欠陥は、勤労大衆には生活費にまで食い込んで重税を課している反面、取るべき税金を取らず、逆にこれを軽減している点であります。わが党は、この際、生活費には課税せずとの原則を守り、所得税の課税最低限を標準世帯百二十万円に引き上げるとともに、利子、配当分離課税などの特別措置を徹底的に改廃し、大企業の交際費、政治献金に対する課税の強化、大法人の税率引き上げなどを強く要求いたします。
 二つ目は、生命と健康を守る施策の充実であります。人間回復が強く叫ばれている今日、社会保障関係費、公害対策費などは予算編成の最重点に置くべきであります。しかるに、政府のこれに対する取り組みは、総合予算主義、受益者負担を口実として後退しつつあることは、まことに遺憾であります。わが党は、社会保障費を飛躍的に拡充し、生活保護基準、医療保障に対する施策の充実、同和対策の推進、老後不安の解消を推進し、各種年金の引き上げとスライド制、重症心身障害児、交通遺児、保育所対策など、社会福祉予算の大幅な増額を要求するものであります。また、公害、災害等の克服のため、公害対策基本法及び実施法の整備、制定とともに、緊急課題である公害被害者の救済、公害研究機関の整備充実、風水害等における個人災害の補償、職業病対策などを強力に推進することを要求いたします。
 その三つ目は、食管制度を堅持し、農政の根本転換を行なうことであります。政府が考えている米の買い入れ制限や自主流通など食管制度の根幹をくずす施策を取りやめ、食管制度を堅持しつつ、米以外の農作物についても、農民が安心して生産できるよう総合政策を推進するとともに、土地基盤の整備、価格政策などに十分な予算を確保すべきであります。
 その四は、中小企業の近代化、石炭鉱業の再建であります。特に、石炭鉱業審議会の答申に基づく政府の石炭政策は、大企業救済、金融機関保護に終始したもので、絶対容認できないのであります。政府は、石炭産業を再建する道は国有化以外にないことに思いをいたし、これに必要な予算の増額を要求するものであります。
 さらに五つ目は、労働者の生活保障であります。なかんずく、公務員給与の引き上げについて、四十四年度分として七月から約五%の引き上げを前提にしているが、これは、政府みずから人事院制度をじゅうりんするものといわなければなりません。政府は、国会決議を尊重し、少なくとも、人事院勧告が完全に実施できるよう予算措置をとるべきであります。
 第三の柱は、住宅、生活環境の整備と交通難の打開であります。
 政府の住宅五カ年計画は、すでに四年目を迎えたにもかかわらず、その進捗率は依然立ちおくれております。政府は、国民に約束した一世帯一住宅の実現と、安心して生活できる生活道路、清掃施設、下水道、公園など、国民生活に最低必要な施設を整備するとともに、いよいよ激化する交通戦争に対処するため、交通安全施設の増強、被害者救済措置、救急医療体系の確立等に必要な予算を積極的に確保すべきであります。
 第四の柱は、教育、科学技術の振興であります。
 今日の大学紛争の大きな原因の一つは、大学が社会の進展に大きく立ちおくれ、研究及び教育の機能がきわめて不十分なところにあります。大学が憲法と教育基本法の精神にのっとって新たな発展を遂げるには、私学を含めて、それに必要な予算の充実が必要であります。さらに、育英資金の増額、教職員の待遇改善、社会発展の原動力である科学技術、特に基礎研究を推進するための制度の確立と予算の大幅な拡充を要求するものであります。
 第五の柱は、地方財政の充実であります。
 政府は、四十三年度に引き続いて、四十四年度もまた地方財源から六百九十億円を国に借り上げています。現在、多くの地方自治体は、住民福祉のためなすべき多くの仕事も実施できず、その行政水準はきわめて低いのであります。加えて、過疎、過密に象徴されるように、財政需要は急増しつつある反面、住民は過酷きわまる住民税や国民健康保険税、個人事業税に泣いているのであります。こうした実態を無視して貴重な財源を国が取り上げたことは、法の精神に反し、地方自治をじゅうりんするものと申さねばなりません。(拍手)わが党は、地方自主財源の強化、超過負担の解消、地方公営企業の経営基盤の強化を強く要求するものであります。
 第六の柱は、沖繩関係予算の強化拡充であります。
 戦争で痛めつけられ、戦後二十数年間異民族の支配に泣き、膨大な基地で悩まされ続けた沖繩の即時無条件復帰を願わない者はだれ一人おるまいと思いますが、本土との行政水準の格差は、また著しいものがあります。この格差を早急に是正し、本土の類似県、市町村並みの行政水準を確保することは、現下の最大急務であります。したがって、本土の県、市町村及び住民同様の国庫支出が可能になるよう予算措置をとるべきであります。
 第七の柱は、防衛関係費等の削減と海外経済協力費の是正であります。
 政府は、一九七〇年の安保条約改定期を控え、防衛関係費、警察費等の経費を優遇し、特に第三次防計画に伴うF4Eファントム機国産化の予算を組んでおります。わが党は、防衛費を削減し、自衛隊員の増員を取りやめ、第三次防計画の中止と、ファントムの採用をやめることを強く要求いたします。(拍手)また、警察費の増大は、七〇年を控えた治安対策にすぎないので、これを削減すべきであります。
 さらに、ニクソン新大統領の登場により、アメリカの援助肩がわり要求と相まって、東南アジアへの経済協力費が大幅に増額されています。自由主義国に片寄った政治的援助は取りやめ、平和中立外交の精神にのっとって、中立国、社会主義国にも公平に援助を行なうとともに、輸銀資金は日中貿易拡大のためにも振り向けるべきであります。
 最後に、第八の柱は、財投計画の根本的組み替えであります。
 わが党は、大資本、大企業に奉仕する政府の財投計画を根本的に改め、運用の重点を農業、中小企業の近代化、住宅、生活環境の整備、国や地方の公営企業、公共料金の値上げ抑制のための措置等に振り向けることを強く要求いたします。
 以上、私は、社会党の組み替え案の概要を御説明申し上げましたが、議員各位におかれましては、わが党の動議に賛成されんことをお願いするとともに、すみやかに政府は予算案を撤回し、わが党の要求に基づいて組み替えすべきことを強く要求いたしまして、趣旨説明を終わります。(拍手)

発言情報

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発言者: 細谷治嘉

speaker_id: 29839

日付: 1969-03-04

院: 衆議院

会議名: 本会議