武内五郎の発言 (農林水産委員会)

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○武内五郎君 亀井、前川、河田及び私の四名は、農林水産政策の樹立に関する調査のため、二月八日から同月十一日までの四日間、香川、愛媛の両県における農林水産業の実情を視察しましたので、その概要を御報告いたします。
 香川、愛媛両県はともに地域経済開発による条件変化に応じた農業の振興施策を総合的、計画的に行なうこととしております。すなわち、瀬戸内海に沿う大工業地帯の建設、四国縦貫道の建設の促進、吉野川総合開発事業の推進、さらに瀬戸内架橋の具体化への動きが活発になっております。したがって、農業を取り巻く諸条件に一大変革がもたらされようとしております。
 今回は、香川県においては、用水事情並びに栽培漁業の実態、愛媛県については、かんきつ農業等に関するものを重点に視察いたしました。
 まず、香川県であります。
 本県は、慢性的な水不足に悩んでおり、一万八千余のため池の水に依存しなければならない、きわめて制約された農業経営が行なわれております。しかも、これらのため池の大部分は老朽化し、その維持経営も困難となり、農業をはじめ、各種の産業を進めるための障害となっておりました。この困難と障害を克服するために計画されたのが、香川用水事業であります。
 香川用水事業は、豊富な未開発の水資源を持つ吉野川総合開発の一環として実施されておるものであります。その総事業費は二百六十七億円で、その内訳は、水資源公団営百五億円、国営七十五億円、県営四十六億円、団体営四十一億円で、昭和四十三年より四十九年に至る七カ年で完成しようとするものであります。すなわち、徳島県の池田ダム左岸から取水した水は、阿讃山脈を貫く八キロメートルの幹線トンネル導水置により、香川県財田村の東西分水点に導入するもので、現在すでに財田村で約四百メートルのトンネルが掘さくされております。トンネルの掘さくには、国鉄が青函トンネル等で使用しておりますロック・トンネリング・マシンが活動し、一日に十メートルから十八メートル掘進しており、私どもも掘さく現場を見てその威力に驚嘆いたしました。導入水量は、農業用水年間一億五百万トン、工業用水七千九百万トン、上水道用水六千三百万トン、合計二億四千七百万トンを計画し、幹線水路共同区間三十九キロメートル(施行主体、水資源開発公団)、農業専用区間六十三キロメートル(国)、農業専用支線水路六十キロメートル(県)であり、農業用水受益地は、水田二万五千百ヘクタール、畑地五千六百ヘクタールで、香川県の耕地面積の五七%強を潤すことになります。
 また、私どもはため池についても視察いたしました。
 高松市街地を眼下に見おろす同市仏生山町の平池は、実に七百九十年前、治承二年に築造されたものであります。この池は老朽度が激しいため四十二年度から漏水防止等の工事が行なわれ、すでに、四十四年までに総事業費一億円余、うち国庫負担六千三百四十六万円を要しております。
 なお、県下の老朽ため池として整備を要するものは、実に一千五百七十個所もあり、その事業費は総額五十五億円余が見込まれ、本県農業総生産額の約一〇%の巨費をつぎ込まねばならないので、香川用水事業に対する期待はきわめて大きいものがありました。したがって、香川用水事業完成の暁は、本県の用水不足を抜本的に解消し、ため池の水に依存する農業を一変し、豊富な水による栽培作目の自由な選択により、生産の増進、安定に寄与することができると考えられております。よって、機能を失なった多くのため池は、防災や、レクリェーション施設等への転用を計画的に検討する必要があると考えられます。
 次に、坂出市の香川県坂出食肉コンビナートは、坂出市営屠畜場と香川県経済農業協同組合連合会坂出食肉センターと協同食品株式会社坂出工場とが合体されたものでありますが、ここを視察いたしました。ここでは、牛、豚、鶏の屠殺から枝肉、ブロイラー、ハム、ベーコン、ソーセージの製造出荷が行なわれ、その施設は最も近代的であることを誇っており、特に、汚水処理については、かなり配慮されているものがあります。
 また、私どもは本県の養殖漁業を視察いたしました。
 本県には、ハマチ養殖発祥の地である安戸池があり、多くの漁家は、ノリ、ハマチ、クルマエビ等の養殖漁業に従事し、その伸長の大きいものがあります。
 瀬戸内海栽培漁業センター屋島事業所は、国が沿岸漁業のモデル水域として瀬戸内海の地を定め、昭和三十八年春、愛媛県の伯方島事業場とともに、内海有要水族の種苗生産と漁民研修の場として発足したものであります。その運営は、国が施設した事業場を、内海関係の各府県及び漁業協同組合連合会(漁連)の設立による社団法人瀬戸内海栽培漁業協会が国の委託事業費の交付金と、会員たる府県と漁連との会費によって運営されております。
 香川県の栽培漁業事業は、四十三年度において、クルマエビ三百二十八万尾、アイナメ三万尾、カサゴ六万尾、ハマチ八千尾、ニジマス一千尾、ガザミ四十五万尾を放流し、新しい漁場づくりに努力しております。
 なお、瀬戸内海栽培漁業センターは、前記二事業場のほか、大分県の上浦、岡山県の玉野、鹿児島県の志布志に事業場を、また、関係府県には、稚魚中間育成場を、それぞれ二ないし四カ所、合計三十八カ所設置され、年間稚魚五千万尾余、保護魚卵一千二百万粒余を生産しており、その事業効果の認むべきものがありました。
 また、次の二点に関して要望がありました。
 一つは、塩業の合理化推進に関するものであります。それは従来の塩田製塩方式からイオン交換樹脂膜法への転換が進められております。その助成に関する要請でありました。
 二は、小豆島の山林火災に関するものであります。去る一月十二日、小豆島の山林に火災が発生し、被害が総計一億二千万円余にのぼり、これが復旧のための援助に関する要請であります。
 次に愛媛県であります。
 本県の農業生産の推移を生産額の作目比率で見ますと、米麦のウエートが逐年低下し、これにかわって果樹、畜産が急速に拡大しております。特に米は昭和四十一年に二七・二%となって、果樹の三一・一%に首位を譲って第二位となり、畜産が第三位で一九・八%となっております。
 農業生産を主導しているミカン、夏カンは、全国の一五・一%、二十七万五千トンの生産をあげて、静岡県の一八・八%に次いで第二位の生産県となり、ことに夏カンは、七万八千トンと、全国第一位を占めておるのであります。その十アール当たりミカン、夏カンの生産額は、それぞれ十九万二千円、十六万一千円と他作物の比ではなく、その収益率もミカン三九・一%、夏カン三九・四%を示して、米の三四・五%を優に乗り越えております。まさにかんきつ王国として大きな発展の姿が見られるのであります。
 本県では、久松知事が南米その他諸外国から持ち帰った種子や苗によって、県果樹試験場で育成研究が進められ、この中から果汁の多い新品種が生まれておりました。この県試験場では、ミカンの農業構造改善事業推進のために必要な、大規模経営の技術体系を確立するための研究を進められておりまして、ミカンの総合実験農場として、菊間町にその成果の実態を見ることができました。
 その概要は、大規模なかん水施設、防除施設及び作業用機械を導入し、協業の組織によるミカンの集団生産体制と、その効率的な栽培の管理及び技術体系の確立をはかって輸入かんきつ類に対抗できるようにするものであります。
 一例をあげますと、作業道は等高線に沿って、平たんに二メートル幅をとり、木は斜面に植えつけ、当初は十アール当たり百六十五本を植え、生長するに従って計画的に間引きし、成木は、樹高約三メートル、枝の伸び幅を二ないし二・五メートルとすれば、傾斜面に横に帯状の垣根の階段型がつくられることになります。作業道は、この階段状の樹間につくられて、トラクターの運転が自由にできるのであります。追い込み剪定は、カッティング・マシンを使用するもので、従来の円形型の育成を直方型仕立てに変えて、太陽光線を根や幹まで通し、単位面積当たりの着葉数を多くして、生産を高めようとするものであります。試験場の実験から経営改善後の試算を見ますと、成木園十アール当たりの労働人員は、二四・五人で、一般かんきつ園の約二分の一となり、収益も三千七百五十キロにのぼり、一般の二千七百十五キロより千キロ以上の増収をあげておるのであります。
 なお、果実の糖分は土中の水分に左右されることが多く、水分を十四度に保持することを考究し、黒色ポリエチレンを敷くことにより乾燥を防止するとともに、雑草の発生もあわせ防ぐ効果をあげ得られることが明らかになりました。また、過度のかん水は、かえって好結果が得られず、むしろ七、八月の夏季には、七日間隔で三十ミリのかん水にとどめ、冬季の一月下旬、二月上旬の渇水期にこそ十分なるかん水をすることとしておりました。
 また、ポン純なまオレンジ・ジュースで知られる県青果農業協同組合連合会のジュース工場は、特異な存在として広く知られておりますが、県内外のかんきつ類増産見通しから見て、本工場の二万トンの処理能力も限界に達しており、かんきつ類の加工処理のため施設の拡大増設が強く望まれておりました。
 また、松山市農協低温倉庫は、昨年十一月十一日に落成したもので、全国で最も新しい設備を持つ、近代化されたものであります。すなわち、H型鋼キール構造で、壁、屋根には、防熱、防湿のために比重〇・六の普通コンクリートの四分の一の軽量気泡コンクリート板を、床には断熱材スタイロ・フォームを使用しております。壁、屋根の硬質ポリウレタン・フォームは、現場でスプレー発泡処理を行なったものであります。低温設備には、加湿器を組み込んだパッケージ型水冷式低温倉庫用クーラーを一室当たり二台設置し、送風ダクトにて冷気分散吹き出し冷却方式を採用しております。機械操作室は庫外にあり、電子回路を組み込んだ完全自動制御方式を採用し、一度機械に記憶させてスイッチを入れますと、機械の運転状態、米の貯蔵状態など自動的に記録され、もし、倉庫内で異常事態が起こるときは警報するようになっております。倉庫は、一室床面積五百二十七平方メートルのものが二室あり、一室二万五千俵、計五万俵の貯蔵能力を持ち、組合員の生産した米の円滑な買い入れ、集荷を進め、消費の動向に合わせて低温貯蔵による味のよい米の供給を可能にしようとするものでありました。米の貯蔵が重要な問題となっている今日、貴重な検討資料を提供するものと言わねばなりません。
 また、井関農機研究所松山工場を視察いたしました。当工場は、全計画の約二分の一が建設途上にあり、手押しの二条刈りコンバインの部品鋳型工場と組み立て工場が完成し、手押しコンバインの組み立てと始動試験が流れ作業で進められておりました。農業の機械化が今日重要な課題であるとき、私どもは、農業用機械の製造工程の一部でも視察できましたことはとうとい資料を得たものと考えております。
 以上視察しましたことについて、その概要を報告いたしました。他に多くの重要なこともあると存じますが、割愛させていただきます。
 最後に、私どもの視察にあたって、香川、愛媛両県の関係各方面からの好意ある御便宜をいただいたことを感謝申し上げて、報告を終わります。

発言情報

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発言者: 武内五郎

speaker_id: 26205

日付: 1970-03-05

院: 参議院

会議名: 農林水産委員会