細谷治嘉の発言 (本会議)

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○細谷治嘉君 四半世紀もの長い間、米軍支配のもと、あらゆる差別と辛苦をなめ尽くしてまいりました沖繩百万同胞をあたたかく迎え入れ、平和で豊かな沖繩を建設して、アジアの平和と幸福に寄与するか、それとも、安保条約をアジア安保、核安保へと発展させ、沖繩基地をそのキーストーンとして軍国主義への道をひた走りに走るか、重大な方向選択が、沖繩国会と呼ばれる第六十七国会の本日のこの本会議で決定されようとしております。まさに重大な歴史の一こまであります。
 私は、日本社会党、公明党及び民社党を代表いたしまして、沖繩の復帰に伴う特別措置に関する法律案、沖繩の返還に伴う関係法令の改廃に関する法律案、沖繩振興開発特別措置法案とその修正部分、沖繩における公用地等の暫定使用に関する法律案、及び人事院の地方事務所設置に関し承認を求めるの件に対しては、いずれも否決さるべきであるとの少数意見留保の理由を説明いたしたいと思います。(拍手)
 沖繩百万の県民が、戦後二十六年の間、あらゆる苦難と弾圧に耐えつつ熱望し続けてまいりました本土復帰は、ただ施政権が日本政府の手に返るということだけでは決してないのであります。沖繩県民が力づくで奪われた父祖伝来の土地を県民一人一人のもとに返し、沖繩県民が奪われてまいりました基本的人権を完全に回復し、沖繩県民が受けた損害を十分に補償し、本土との間の一切の差別、格差をなくして、日本国憲法のもとに復帰するということでなければなりません。(拍手)
 佐藤総理は、「沖繩県民の苦労は十分理解している、あたたかく本土に迎え入れたい」と、繰り返し述べられたはずであります。しかしながら、政府提案の沖繩における公用地等の暫定使用に関する法律案を見ますとき、総理の言明は偽りであると断定せざるを得ないのであります。この法案は、沖繩にある巨大な米軍基地をそのまま存続させ、かつ、米軍の返還する基地を自衛隊用地として確保するため、なりふりかまわずに、憲法の精神に違反して、沖繩県民の財産権を侵害し、憲法が保障する手続を無視して県民の土地を強制的に使用しようとする、いまだかつて例を見ない悪法案であります。
 総理をはじめ、自民党政府の皆さんは、沖繩の米軍基地が、どのようにして沖繩の人たちから取り上げられたかを知らないのか、いな、知っていても胸の痛みを感じないのであって、沖繩の心、あたたかい同胞としての心を失っているのではないかと疑いたくなるのであります。
 さきの大戦で、沖繩は、二十万余の同胞がとうとい生命を失う犠牲を払いました。戦後の破壊された耕地の復旧に、沖繩の農民は不眠不休の努力を続け、ようやく農作業ができる状態になったとき、米軍の土地接収にあい、農産物を踏みにじられ、土地を奪われ、耕地と家屋を失った農民は五万人をこえ、生活の基盤を奪われて路頭に迷い、住むに家もなく、非衛生的なテント住まいをしいられて病人が続出したという例は、枚挙にいとまがないのであります。
 村全体の七五%を軍用地に接収された小禄では、昭和二十八年十二月五日、千五百人の部落住民が総出で、土地を守ろうとすわり込んでいるところに、銃剣を手に、完全武装した二百名の米兵が武力介入し、七時間にわたって、なぐる、ける、打ち倒すの暴力が加えられ、強制収用されたのであります。
 このようにして奪われた土地が、沖繩全県面積の一二・五%、沖繩本島では二二%以上、そしてコザ市は六七%、読谷村や嘉手納村などは八〇%から八八%が軍用地となっておるのであります。これらをそのまま米軍に使用させあるいは自衛隊に使用させることは、軍事占領の状態をそのまま存続させるということにほかなりません。悲惨な戦争体験を持つ沖繩県民の多くが基地の撤去を要求し、自衛隊の配備に強く反対しているのは当然過ぎるほど当然であります。この法案は、このような沖繩県民の切実な声を全く踏みにじるものであります。
 しかも、本土においては、自衛隊用地は公共用地の対象からはずされ、自衛隊のための土地等の強制収用、使用の根拠法がないのに、この法案で沖繩だけを差別し、自衛隊の土地強制収用に道を開き、公用地等というあいまいなことばを使ってごまかし、ことさらに道路、水道、電力等の公共用地暫定使用の規定まで抱き合わせて、軍事優先の外面をカムフラージュしようとしているのであります。
 さらに、暫定と称しながら期間を五年以内としていることは、日米地位協定に基づく土地使用特別措置法の暫定使用期間六カ月と比べて異常に長く、日弁連などが指摘しているように、一時使用の域を越え、不当に私権を侵害するものであり、本土に例を見ない差別であって、法のもとに平等を規定した憲法第十四条に違反すると申さなければなりません。
 一般に土地の収用は、たとえ公共のためであっても、財産権を侵すこととなるため、慎重な手続が要求されているにもかかわらず、この法案は、使用しようとする土地を告示し、所有者、関係人に通知するだけというもので、法定手続の保障に関する憲法三十一条に違反する疑いも濃厚であります。さらに、土地を強制収用された者が不服申し立てをして裁判で争うこともできないという点で、憲法第三十二条の精神にも違反するものであります。
 以上のように、憲法第九条をはじめ、第十四条、第二十九条、第三十一条、第三十二条、第九十五条など、多くの点で違憲の疑いがある法案をわれわれは断じて認めるわけにはまいらないのであります。(拍手)
 同時にまた、われわれは、異民族支配のもと、戦後二十六年間に及ぶ沖繩県民の辛苦を全く無視したかかる法案を、日本国民として絶対許すことができないのであります。
 佐藤内閣は、沖繩県民のための返還よりも、返還協定とその関連法案によって、米軍の極東戦略への協力、日米安保条約の拡大強化にきゅうきゅうとしているとしか考えられないのであります。
 沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案を見ましても、米軍の謀略放送であるVOA放送を存続させるために、国内法規をねじ曲げ、明らかに軍事優先の方針が貫かれているのであります。
 沖繩振興開発特別措置法も同様であります。膨大な米軍基地をそのままに残し、水源地の多くを米軍が所有したままで平和な沖繩の経済開発の計画を樹立することは、木によって魚を求むるのたぐいで、不可能であります。
 佐藤内閣は、沖繩県民が望んでいることにこたえないで、望んでいないことを県民に押しつけようといたしております。
 離島が多く、無医地区が数多く残され、本土との医療施設の格差も大きい沖繩に、県民の大半が反対している自衛隊を六千八百名も配置するというのであります。そのための費用は一千百億円といわれ、昨年度の琉球政府予算の二倍に近いのであります。県民の生活よりも米極東戦略への協力を第一と考えていることは、もはや明白であります。
 沖繩県民が、多年にわたる英語とドルのアメリカ支配のもとで、日本国民としての教育を守り育てるためにどれほど努力し、苦労してきたかは、筆舌に尽くせないものがあります。その柱である民主的教育制度を全く一方的に、本土並みの名のもとに廃止しようとする態度は、沖繩の心を全く理解しない、冷たい、画一的官僚政治といわなければなりません。(拍手)
 また、沖繩県民が、米軍占領下でいかに不当な人権じゅうりんを受けてきたかは、数え切れないほどであります。米軍人、軍属による犯罪の多くが泣き寝入りに終わらされ、逆に、県民が生活権を守るためのやむにやまれぬ抵抗でさえ、不当な弾圧と差別を受けるなど、同じ日本国民として承服することが絶対できないのであります。しかるに、米軍占領下で行なわれた刑事裁判までその効力をそのまま引き継ぐというに至っては、主権国家としての自主性まさにいずこにありと疑わざるを得ないのであります。(拍手)
 以上のほか、沖繩の労働者が二十数年間の戦いによってかちとってまいりました労働者の権利を保障せず、琉球政府が、復帰時一万九千人の失業者が発生すると推定しているのに、わずか五千人を対象とする対策ではまことに不十分であります。特に、きわめて抽象的、包括的な政令への委任条項を設けて国会の立法権を侵害したり、あるいは財政援助に名をかりて、沖繩開発審議会の委員のうち沖繩県の代表者を少数に押え、また、膨大な機構と権限を有する総合事務局を現地に設置し、県の自主制と自治権を圧殺しようとするなど、県民の権利を不当に押えるばかりか、国会のはなはだしい軽視であって、その態度と姿勢は許すことができないのであります。一体、これでは米軍占領とどれだけの違いがあると言えるでありましょうか。
 初めに私が触れました小禄の米軍による土地強制収用の際、米軍に雇われてブルドーザーを運転していた日本人に対し、すわり込んでいた住民の間から、「日本人ならばブルドーザーをおりて私たちと一緒にすわってほしい」と呼びかけられ、その悲痛な訴えに、本土からの出かせぎ労働者である運転手たちは、ついに、「自分たちも日本人だ、同じ働く日本国民として、農民が土地を強奪されるのに手をかすことはできない」と、ブルドーザーをおりて沖繩県民の側に回ったといわれます。
 佐藤総理、あなたも日本人であります。米軍によって無理やり奪われた沖繩同胞の土地を、憲法違反の悪法によって再び強制使用させようとする冷酷無情な態度を改め、いまからでもおそくはありません、法案を撤回しで、沖繩県民の立場に立って早急に再交渉すべきであります。
 沖繩同胞百万の心と日本国民の魂を踏みにじる政治は、決して長続きするものではありません。早期返還か、再交渉すれば返還がおくれる、いずれを選ぶかというごとき二者択一の態度は、沖繩県民に対するこの上ない侮辱でありましょう。
 昭和二十年、沖繩陥落の直前、大田海軍司令官が本土に向かっての最後の打電「一木一草焦土と化せん、沖繩県民かく戦えり、県民に対し、後世特別の御高配を賜わらんことを」の精神を静かに想起し、決意を新たにして沖繩百万同胞にこたえるべきであります。
 私は、正しい者が最後には必ず勝つという真理を確信して、少数意見の留保を行なうものであります。(拍手)
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発言情報

speech_id: 106705254X02319711214_007

発言者: 細谷治嘉

speaker_id: 29839

日付: 1971-12-14

院: 衆議院

会議名: 本会議