曾禰益の発言 (本会議)
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○曽祢益君 私は、民社党を代表して、ただいま議題になりました、社会、公明、民社三党共同提案にかかる佐藤内閣不信任決議案に対し、賛成の討論を行なわんとするものであります。(拍手)
不信任の第一の理由は、本年夏以来の二つのニクソン・ショック並びに中国の国連参加及び年末のドル切り下げ、円切り上げ等に象徴される、戦後体制の終わりという画期的な歴史のうねりを予見し、これに対処する準備と能力とを佐藤内閣は全く欠き、ために、国際政治の舞台でのわが国の評価を著しく低下し、経済的にはわが国益をはなはだしく棄損したということであります。(拍手)
ニクソン訪中に関するキッシンジャー補佐官の行動は、極秘に進められたとはいえ、これに先立つ同大統領の外交路線の、対決から対話への切りかえや、米中接近への段階的なアプローチ、さらには、毛沢東主席のニクソン訪中歓迎の談話等のできごとは、いずれも世界周知の事実であり、米中双方の政策転換のまぎれもない前兆でありました。したがって、アメリカの頭越しの中国接近をうらむ前に、安易にアメリカに寄りかかって、大きく変化しつつある国際情勢の分析を怠り、対米、対中国政策の自主的な転換につとめなかった佐藤内閣の先見性の欠如と無能こそが責められるべきであります。(拍手)
いずれにしても、現内閣の対米、対中国政策の完全な失敗のため、わが国は、嘆きのピエロと国際的にあざけられ、かつ、日米関係の悪化と米中の直接対話の進展は、わが国の対中国バーゲニングパワーをはなはだしく弱めたのであります。
他方、米国のドル防衛対策についても、青天のへきれきと受け取り、あわてふためいた佐藤内閣に大きな責任があることは争えないところであります。(拍手)
すなわち、その経済成長至上主義、輸出強行政策とわがほうの貿易・資本自由化のおくれは、欧米先進国からは、日本の経済的侵略の脅威と反発され、発展途上国からは、エコノミックアニマル、軍国主義の復活と警戒されるに至ったのであります。
しかも、この間、アメリカのベトナム戦争介入の結果、ドルの危機が深刻化し、アメリカの経済の弱体化が顕著となったにもかかわらず、サミュエルソン教授の言うごとく、佐藤内閣のもと、日本は公害輸出、低賃金輸出がいつまでもアメリカ市場をたよりに可能だという夢を見続けてきたわけであります。
日本経済が貿易勘定の大幅黒字基調の上に独走する中で、佐藤首相は、ハーマン・カーンの、二十一世紀は日本の世紀だとの予言を信じて、GNP拡大に安住し、国際経済への順応に対する当然の配慮を怠ったところに、八月のドル・ショックが発生したのであります。(拍手)それでもなお佐藤内閣が、厳重な為替管理の上にあぐらをかき、平価調整は主権の問題だとうそぶいて、段階的な円切り上げを怠ったところに、今回のワシントン十カ国蔵相会議において、日本が孤立無援の中で円の大幅切り上げの受諾に追い込まれ、その結果、輸出産業、中小企業、農業を中心とする国民経済に大きな混乱をもたらした原因があります。(拍手)これは、国際通貨戦争における米仏両国の勝利とは対照的に、わが国の惨敗であり、佐藤内閣の責任はまことに重大であります。(拍手)
およそ、政治は政策の選択であり、先見性の有無がきめ手であります。戦後四半世紀にして発生した国際政治経済の大きな転換に対する洞察を欠き、したがって、これに対処して外交、政治、経済、社会の各般にわたって国政を運営して誤りなきを期する能力の欠如を露呈し、国の威信と国益に重大な損害を与えた佐藤内閣は、いさぎよく責めを負って一刻もすみやかに退陣すべきであります。(拍手)
佐藤内閣不信任の第二の理由は、その経済成長の偏重と人間性不在の姿勢のゆえであり、なかんずく物価高、地価の高騰及び環境破壊の責任を負うべきだということであります。
すなわち、物価対策においては、逐年、政府の予測、すなわち前年比四・五%程度をはるかに上回り、東京では七・二%に達する消費者物価の高騰のため、庶民の暮らしが破壊されつつあるにかかわらず、政府は、物価抑制のために何ら真剣な努力を払わず、有効な具体策を実施せず今日に至ったのであります。
一方、政府の地価抑制策は皆無にひとしく、わが国の大都会及び近郊の地価は世界最高であり、ために住宅建設は進まず、三百六十万勤労者世帯の住宅難は果てしなく続いており、さらに道路、鉄道の建設も、いたずらに土地成金の利潤追求に奉仕しておくれがちのありさまであり、政治の不在これよりはなはだしきものはございません。(拍手)
次に、産業及び都市公害と環境破壊の深刻化は、佐藤政治の非人間性の代表的なものであり、これは国内的に重大な政治問題であるにとどまらず、国際的にも世界第一位の公害国日本は、他国の迷惑を顧みず輸出を強行する経済的アウトローとしてつまはじきされる原因となったのであります。今回の国際通貨、貿易の調整にあたり、日本が袋だたきにあったゆえんがここにございます。
したがって、国際通貨調整、貿易規制に伴う当面のわが国経済の立て直しがいかように行なわれるにせよ、基本的かつ長期的には、わが国経済のあり方は、GNP偏重から国民福祉中心への転換と、輸出依存の産業構造の国内社会資本充実型への移行を必要とすることは明らかであります。
これらの諸問題、特に高度成長でなく、安定成長、社会資本の充実、人間尊重、物価安定等は、今日まで佐藤首相がしばしば提起し、かつ公約したところであります。しかしながら、佐藤首相の言動の特色は、その有言不実行と公約のたなざらしにあります。(拍手)無為無策や無能内閣ならば、その罪はまだ軽しといえます。有言不実行は、うそつきの別名でありまして、政治家の最も恥ずべき行為といわなければなりません。(拍手)このような首相の有言不実行は、その在任中、日韓、健保、沖繩、大学法等の審議にあたり、問答無用の強行採決に訴えた権力主義的議会運営と相まって、国民の政治、特に議会政治に対する不信を深めたところの、民主主義に対する重大な背反であって、断じて許し得ないところであります。(拍手)これ、すなわち、佐藤内閣不信任の第二の理由であります。
佐藤内閣不信任の第三の理由は、難問題には積極的に取り組まず、あと回しとし、圧力団体には弱い、その日暮らしの無責任な態度のゆえであります。
その適例は、三K、すなわち、国鉄、米、健保であります。このわが国財政の三大赤字源、すなわち、国鉄、食管会計、政府管掌健保に対し、史上最強の絶対多数の上に立脚する佐藤内閣が、七年の施政を通じ、結局何一つ根幹に触れた改革をなし得ず、いな、なそうとすらしなかったことは、驚くべき責任回避であり、かつ、佐藤内閣が巨大公共企業の民主的な管理、農業の近代化並びに健康保険制度や社会保障制度の改革については、全然無能力な内閣であることを証明しております。(拍手)
佐藤内閣不信任の第四の理由は、相次ぐ外交上の失態であります。
まず、沖繩と繊維問題については、首相は、六九年のニクソン大統領との会談の際に、この両問題のからみ合いを認めるような思慮の足りない言動をあえてし、日米間に誤解の種をまいたのであります。しかも首相は、第二回ニクソン大統領との会談で、みずから行き詰まった政府間交渉の再開を提議して、先方に対し品目別規制政府間協定成立への期待を与えながら、最後に、本年初頭、大統領のライバルであるミルズ下院歳入委員長とわがほう業界との間に民間自主規制案が成立するや、保利官房長官が軽率にも日米政府間交渉打ち切りを声明し、米大統領を激怒せしめたことは、驚くべき外交史上の失態であります。(拍手)
この失策の代価はきわめて高価でありました。政府は、ついにニクソンのドル・ショックに屈し、最も不利な条件で政府間繊維協定を受諾しましたが、それは繊維産業に甚大な損害をもたらしたばかりでなく、国会軽視の不法、不当な措置であります。しかも、タイミングをはずれたこの譲歩は、全く代償なしでもぎ取られ、かえって日米間に重大な感情のしこりを残した外交上の大失敗であります。
繊維問題のもつれは、さらに、ニクソン大統領の頭越しの二つのショック療法の際における日本の処遇にも投影しなかったとは断じ得ないのでありますが、確実に言えることは、沖繩返還協定に大きな悪影響を及ぼしたということであります。すなわち、政府は、一応、わが民社党の主張した早期、核抜き本土並みの軌道の上で詰めの段階に入ったのでありますが、国務省側は、繊維問題を中心とする貿易、経済問題についての議会側の対日不満を理由に、上院の批准を得るためと称して、基地、請求権、VOA問題等について強硬に既得権擁護の態度をとり続け、これがために、でき上がった協定の内容は、核抜き本土並みの線から著しく後退したものになったことは、周知のとおりであります。(拍手)
このほか、ニクソン訪中決定以後の緊張緩和の新しい動向に顧み、この際、沖繩返還協定に関しては、少なくとも日米共同声明第四項、特に朝鮮、台湾条項の再検討並びに基地縮小についての再協議が当然必要かつ合理的であるにかかわらず、これを行なわない佐藤内閣の姿勢は、全く沖繩百万同胞の期待を裏切る対米追随以外の何ものでもございません。(拍手)
以上を総括して、われわれは、繊維問題、沖繩問題に関する佐藤内閣の外交の失敗に対し、ここに首相自身の政治責任を鋭く糾弾するものであります。
佐藤内閣不信任の第五の理由は、中国政策の失敗についてであります。
わが党は、七年前佐藤内閣成立のころから、すでに、北京政府を中国の代表者として国連に迎えることと、日華平和条約の正しい解釈に従い、この条約の存在に妨げられることなく北京政府との国交樹立につとめることを主張してまいりましたが、佐藤内閣は、ときとして、思いつきのように中国問題に前向きのジェスチャーを示しつつも、実は一貫してかたくなに国民政府を唯一の正統政府と認め、大陸中国とは政経分離でいくことに固執し、国連においては、重要事項指定方式によって北京政府の国連参加を妨害してまいりました。そこに過般の米中接近の新事態が発生したのでありますが、首相は、それでもなお、国連総会において、複合二重代表制への軌道修正とともに、台湾の議席擁護のための逆重要事項指定方式の積極的な推進役を、党内外の慎重論を振り切って買って出たのであります。
国連における二重代表制はいまや完全に手おくれであり、また、国府追放に積極的に賛成しないことは理解できるものの、わがほうが進んで逆重要事項指定にまで国府議席問題を深追いすることは、主観的には一佐藤内閣の国民政府への義理立てであっても、客観的には、わが国の敗北を一そうみじめなものとするばかりか、わが国と人民共和国政府とのみぞを深める結果を招来した大失策であります。(拍手)
われわれは、どこまでも日本の主体的立場を堅持しつつ、この際、人民共和国政府を中国の唯一の正統政府と認め、台湾は中華人民共和国の領土であるが、その処理は平和的に行なわれることを期待し、日華平和条約は中国との国交樹立の過程において解消されるとの原則に立って、両国間に平和の回復と国交樹立のための政府間交渉に入るべきだと確信し、その意味で佐藤内閣の決意を促してきたのであります。
しかしながら、日中国交回復国会決議に関する与野党間の交渉が、佐藤首相の不決断のためについに決裂したからには、われわれは、北京政府の佐藤内閣に対する批判とは別に、日本の主体的立場から、もはや佐藤内閣には日中国交回復交渉を担当する意思と能力なしと認め、ここに国民の名において、厳粛に、佐藤内閣の退陣を求める次第であります。(拍手)
以上の理由に基づき、私は、ここに佐藤内閣不信任案に賛意を表するとともに、最長不倒距離を誇るといえども、史上最低の支持率という芳しからざる新記録の保持者である首相佐藤榮作君に対し、この際、退陣することによってせめて最後の出処進退をすがすがしくせられんことを衷心より勧告し、かつ、自民党の心ある同僚議員諸君の御賛同を得て、本決議案が可決せられることを期待しつつ、討論を終わります。(拍手)